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直木賞の選評まで読む輩以外にはまだ知名度も低く手に取り易いのでブレイクする前に青田買いしておくことをお勧めしたい。
それ程までに出来が良い、これでデビュー作とは畏れ入る。
物語の主は大河ドラマでも陣内孝則が怪演したことで記憶にも新しい稀代の悪人宇喜多直家、そのおどろおどろしき故まず映像化は無理であろう生き様をここまで見事に描き切られては歴史小説の御大も冷や汗ものだろう。
捨て嫁のタイトルも秀逸、時系列を微妙にずらした構成にも唸る、そして何よりも徐々に剥がされていく悪の仮面の下の直家の素顔の描写が素晴らしいではないか。
久々に巡り会えた読み応えある時代物の一冊、お見事です
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家族を愛する豊かな善性と、あわせて乱世の英傑の技「無想の抜刀術」をもつ宇喜多直家。彼がいかに梟雄と呼ばれるように至ったのか、複数の短編が紡ぎだしていく。
直家の晩年、実の娘からも忌み嫌われている「宇喜多の捨て嫁」から始まり、時期・人物が入れ替わりながら短編が続く。最後の短編「五逆の鼓」は、意外な滑り出しだが本作をまとめる最後の話としてとても完成度高く、面白かった。
「第92回オール讀物新人賞受賞」とのことだが、納得の力作。第二作目以降も楽しみです。
(人物・官職名をできるだけ読みやすくされているのもよかったですね。)
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備前の戦国武将、宇喜多直家を中心とした、主君、母、妻、娘たちの人生を描く、全6編の連作短編集。
一編一編話は完結するのだが、各話が綿密につながって全体を構成しているので、まるで長編作品を読んでいるかのようだ。
デビュー作とは思えない、ベテランのような重厚感がある表現が印象的。
三悪人に数えられる直家だが、その本心の苦悩を描き、ただの悪人ではない直家の別の人物像を引き出している。
もちろん小説なので本当かどうかはわからないが、この作者の直家の描き方に一票を投じたい。
ifついでに言うと、宇喜多家の存続のため、直家は信長、秀吉、毛利に対して謀略を論じているが、もし生きていたら関ヶ原のときは東軍・西軍どちらにつくのか気になる。
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戦国の梟雄、宇喜多直家。軍師官兵衛でも、陣内 孝則がその狂気を好演していて、あの大河ドラマの中でも荒木村重と並んでかなり興味を引かれるキャラクターでした。今回、いかにして、宇喜多直家という怪物が作られたのかを、その主君、母、娘などといった登場人物から描き出している。非常に完成度が高く楽しめる歴史エンターテイメント。
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表題作はなんともざらざらした話で、しかもそれでいて作中に散らしたネタがキチンと回収されていて、作者の律儀さが感じられた。更に、表題作で回収されたはずのネタは、以降の話で広げられ、また最終話でキチンと回収される。一話を読み終える度に変化する読後感も、非常に緻密である。それであっても計算高さを感じさせず、乱世の武士はこんな緊張感の中で日常を送っていたのだなと、素直に楽しめた。
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歴史好きな人にはものすごく面白いと思うが、日本史オンチな私は、人の名前を認識するだけで一苦労。
だが物語の深さは感じ取ることが出来た。
しかし人がよく死ぬこと。
まったくスゴイ世界。
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20160104 面白かった。宇喜多家の娘がこんなにひどい扱いを受けていたのかと思うほど。三章ぐらいまでが面白い。
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宇喜多秀家に好感を持っていたので、読んでみた。
薄気持ち悪い話のてんこ盛り。表紙も気持ち悪い。
秀家は出てこず、秀家の異母姉妹、その父親直家のことが、主人や義父、本人など視点を変えて語られる。
直家の病気も気持ち悪いし、老婆が着物を洗う姿も気持ち悪いし、作者が人の不幸を心底から願う性格なのではないかと疑ってしまう胸糞悪さ。
戦国時代だから、虚言に騙されて、思いに反して大切な人を手に掛けないといけないことも実際にあっただろうと思う。しかし、この本では、その葛藤などはあるにはあるが焦点をあてれず、ただ気分の悪さだけが残った。
もう多分、この作者の本は読まないと思った。
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戦国時代の梟雄、宇喜多直家の姿を描く。連作短編集。
時系列はバラバラ、視点も直家本人であったり、娘の於葉であったり様々。1章めの於葉目線の話では、流石梟雄と呼ばれるだけあってか、身内にさえも情けも何もない、謀略だけに生きる男としか直家を見れなかったが、2章め以降、印象がガラリと変わる。梟雄にならざるを得なかった直家の哀しい運命を見せつけられたような気がして、胸が締め付けられる想いに駆られた。時を遡り、視点を変えていくことで、直家の隠された真の姿を映し出すことに成功し、また思わぬ形で人物が重なったりと、ただの歴史小説ではない、文章の上手さを随所に感じる作品でした。
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直家は業病“尻はす”を長年患っていたというのは作者の着想でしょう。腐臭を漂わせながら鬼謀を巡らすという設定に唸ってしまいました。しかも、腐臭がかすむほどの獣のような低い声の持ち主でしょ!凄いキャラですね。業といえば、無想の抜刀術のアイデアも唸ります。連作短編集ですが、娘於葉や一枚欠けた貝合わせ、洗濯する老婆などのモチーフを完璧な織物のように配されています。媚びない文体、息苦しいほどの腐臭、今後の活躍が楽しみな一級の才能を見せつけた本格伝奇ものです。
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娘の嫁ぎ先を攻め滅ぼすことも厭わず、下克上で成り上がる戦国大名・宇喜多直家。その真実の姿とは一体…。ピカレスク歴史小説の新旗手ここに誕生!!第92回オール讀物新人賞受賞作。
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戦国時代の名将の一人、宇喜多直家の物語。
下剋上の時代にあって裏切りを繰り返し家名を残したと若干悪名高い人物かと思っていましたが、なぜそうなったのか、をうまくストーリーとしてまとめられた作品。
タイトルからいろいろと連想しながら読み進めると、あれ?あれ?と思ってたものがなるほど!とうまく収まる感じがよかった。
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表題作を読んだときは、宇喜多直家が、自身の身内を捨て駒にする冷酷無情の主に思えたけれど、読み進めていくうちに・・・。
戦国時代の、しかも下剋上のどうしようもなさを感じた。
最後の老婆のシーンが一番胸を衝く。
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時代小説はあまり読まないのだけれど、なんとなく手にとってみたら、面白かった。
『尻はす』がなんなのか、ググりまくったのは私だけではないはず!!
史実にもしっかり残っているという『尻はす』という記述、実際はなんだったのだろうか。。。
さて、表題作だけではわからない話だが、以降視点を変えて紡がれる短編で、ようやくすべてが氷解する。
史実に詳しくないからこそ、余計に楽しめたのかもしれない。
文章もきれいだったしほかの作品も読んでみようと思った。
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2015年12月20日に開催されたビブリオバトルinいこまで発表された本です。テーマは「ささるセリフ」。