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今日の年金制度を概観できるかと購入。前半はわかりやすかったのだが、後半具体的な制度の問題になると、読みにくくなったが、何とか読了。
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本書は現在の日本の年金について、現状・問題点・改善点などについてまとめられた本である。本書をじっくりと読むことで、年金について確たる理解が出来る内容となっている。
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確かにほとんど理解していない人には、微に入り・・ということで詳説されてはいます。
しかし、部分的な理解がある者にとっては、ポイントがうまくつかめないまま、饒舌さで辟易するところもあります。
専門用語の難しさがそのまま社会保障制度を持てあましている国や行政の右往左往が目に浮かぶよう…。
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教科書的な部分(これまでと現状)、新書的な部分(これからと論争的記述)から構成。もちろん新書的な部分が興味深い。
危機を煽るのではなく、冷静な提案だ、GPIFへの政治介入を除いて。GPIFは存在自体、知らなかった。年金積立金を市場の活性化に使おうという魂胆は許せないものが私もある。
年金については、世代、職業的な立場によって、異なる感情を抱いているだろう。利害と政治的信条がぶつかる問題だ。だからこそ、本書のようなものが必要だと思う。教科書的な部分の理解が面倒だが。
・課題:1.少子高齢化の中で、年金財政の持続安定性の確保。2.非正規労働者の国民年金未納問題。3.低所得者への生活保障。
・マクロ経済スライド:高齢化率に連動して年金の所得代替率を下げる仕組み。
・なぜ100年先を想定するか。この期間を短くするほど誤差は小さくなり、見かけ上、早期の積立金の取り崩しが可能になったり、高い所得代替率の維持も可能になる。しかし、日本の場合は2050~2070年が高齢化がもっとも進むため、60年未満の想定は無責任になる。
・実際に未納による財政的な影響は限定的。むしろ貧困高齢者への対応が問題になる。
・未納者の増加は非正規雇用の増加が原因。年金制度への不安や疑問ではない。
・年金改革の肝:1.課題の共有。2.必ず合意する。3.合意内容を一方的に破棄しない。4.年金改革を政治的な駆け引きの材料にしない。5.利害関係者の影響を受けない。
・日本の高齢化の問題は、労働者不足。問題は高齢者がよい条件の雇用を抑えてしまい、若者にチャンスが無くなることだから、企業内の雇用システムの改革は不可欠。
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新書でありながらも、年金制度について歴史的にも、諸外国との比較の点でも、幅広くそして深く論じている一冊。
理解できるところもあるのですが、特に後半は私にとっては難解なところも多くありました。
つくづく、年金なるものが巨大で利害関係者も多く時間軸的にも長大なものであることを再認識することの出来た一冊でした。
この先の年金、どうなってしまうのでしょうかねぇ。
付箋は28枚付きました。
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2025年団塊の世代が75才に到達し、2030年には65才以上が32%、75才以上が20%となると予測されている。人口は9%減少するが単独世帯は11.5%増加して全体の1/3超が単独世帯となる。特に都市部の増加が目立つ。これまでの日本の住宅政策、教育システム、そして年金も正社員の一括採用、終身雇用と言う日本型雇用システムに合わせて設計されており「階保険・階年金」のしくみが成立した。しかし90年代後半から派遣労働などの非正規雇用が増加し厚生年金と健康保険の適用対象者から外れた非正規労働者は国民年金、国民健康保険に加入することになったが、これらの保険料に企業の負担はなく、おおむね定額負担であるため低所得者ほど負担感が高くなる。そのため、未納者が急増している。2013年国民年金(第一号)の未納率は39%、国民健康保険の滞納率は18%になっている。公的年金は2011年現在高齢者世帯の所得の68%を占めており高齢者の生活の柱となっている。
日本の所得代替率は60%程度とされているがこれは現役時代の年金の6割を受け取ると言う意味ではない。マクロ所得代替率は、現役世代と高齢者世代の所得比の目安でありかつては70%程度であったのがマクロ経済スライドにより60%程度まで下げられた。比率を維持するためには今後も保険料を引き上げ続けることが避けられなくなり、2004年の改革で政府は一定のマクロ所得代替率を維持することは諦めた。こういった手直しは必要なもので年金制度がすぐに崩壊するわけではない。しかし、何も手を打たなければ年金の受給額は確実に減っていく。
年金制度の抜本的な改革は2009年に民主党が掲げた案がある。職業別に制度が統合されてこなかった年金制度を一元化する。保険料率は15%で固定し、所得が同じなら同じ保険料を負担し納めた保険額を基準にする「所得比例年金にする」。消費税を財源とする「最低保証年金」を創設し全ての人が7万円以上の年金を受け取れるようにする。そして、所得比例年金を一定額以上受給できる人には最低保証年金を減額する。悪くない案に思えるが所得の定義とその把握、財源確保、そして移行過程の作成で課題があり改革は実現されていない。
所得の定義については自営業と被用者の所得の定義をどうするかが問題になる。自営業は「事業収入ー必要経費」を賦課対象所得と考えるのが普通だろう。被用者も同様に「報酬ー給与所得控除=所得」とすると保険料率を上げる必要が出てくる。民主党案の15%では財源が足りなくなるのだ。定義をどう変えても必要な財源の額は変わらず国民負担が増えるわけではないのだが制度を一元化しようとすると日本では被用者の所得控除額が大きいため所得税制の見直しが必要になり、自営業者の所得の把握をどうするかと言う点も課題が残る。自営業と被用者の賦課対象の所得が異なるアメリカやスウェーデンでは自営業の所得の把握を厳しくしている。徴税コストはかかるが公平で納得感のある制度を作るための必要経費とみているのだ。
民主党案の最低保証年金を確立するためには消費税を上げる必要が有る。最低保証受給者の前高齢者に対する割合を58.3%とした試算では元寇年金制度より消費税は1.4%高くする必要が有るが、現行制度では年金受給者の1/3近くが受給額が5万円を下回るのに対し1.4%増加で5万円未満の年金を受ける高齢者はゼロになる。
むしろ一番難しいのは移行期間をどうするかのように思える。どうやっても財源の確保や不公平感はなくせず、最も不公平でない方法は40年(=加入期間)かけて移行する方法だ。スタートが20年遅れてる様な気がするが。結局一気に改革しようとしてもなかなか上手くいかず連続的に手直しをし続けるしかなさそうだが高齢者ポピュリズムがはびこるとそれもなかなか進まない。
いずれにせよ年金未納者は年金を受け取れないので財政破綻の要因になるわけではないのだが現在の加入者の負担は上昇する可能性が高い。それ以前に現在年金を払えない非正規雇用の低所得層は高齢になっても生活保障の対象になる見込みが高いのが問題なのだろう。金がないのが未婚率や少子化の原因になるのが人口のデフレスパイラルのように見えてくる。
駒崎氏の年金改革案は正社員と非正規雇用者が同じ年金制度に加入できるようにすることが一つで、単純に言うと非正規雇用者の厚生年金負担を企業に求めることだ。また高齢化が進展する以上年金給付水準の引き下げ、需給年齢の引き上げも必要になる。最低所得保証は税金など所得の再分配でまかなうしかなく、一方で市場メカニズムを重視したリバタリアン的なアプローチも併用すべきだと言うのが現実的な提案なのだろう。今後の社会保障全体を見渡すと、政府か市場か地域互助かという選択ではなく、三者の適切な連携と役割分担が必要になることがわかると締めくくっている。これからの重たい話を俯瞰的にみわたし、具体的な提案もある。さて、実行できるのか。
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きっぱり、すっきり、アジテーションのない、まんまのタイトルで勝負するだけあって、大変に分かりやすく、読み応えのある内容だった。あまりに複雑な年金制度の成り立ち、国内並びに海外の現況と課題、向かうべき姿に関してはその選択肢をしっかりと示している。少子高齢化は問題というより既に抑えられぬ現実と受け止めた上で、非正規労働者への厚生年金適用や自営業者等の所得捕捉が制度維持に欠かせぬという基本を理論的に学んだ。莫大なコストを必要とするマイナンバー制度への疑問も、いくぶん晴らすことができた。
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20150724-0906 ほぼ通勤電車内で読んでいるので時間がかかった。2014年現在までの年金制度について概説されている。海外事情もコンパクトにまとまっているので使いやすそう。単純に、所得比例型にすればよいというものでもないのね・・・年金関係は初心者なので用語や文献など目新しいものも多かった。
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破綻していると言われている年金制度の現在に至るまでの歴史的経緯と国際比較による日本の制度の特徴を解説しながら課題と提言をあげている。ここまで複雑になったものをどうやって変えるのか。読めば読むほど学者や官僚に解決策を頼むのではなく国家としての決断を国民に納得させられる政治家を待つしかないのかも、という思いに至る。
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日本の年金
社会保障制度の中で年金の理解度が低いと感じたので、本書を手に取った。本書では年金制度の過去から現在までの経緯や他国の制度との比較など、日本の年金制度を多面的に解説しており、非常にわかりやすいと感じた。また、個人的に年金制度の理解度が低かったのは日本の年金が年金「保険」と呼ばれていたことに起因していることもよく分かった。保険会社出身の私としては、保険は応リスク負担の保険料の拠出により、トリガー要件に合致すれば、予め設定した保険金を受け取ることができる仕組みという理解であり、保険の原義としてはこちらが正しいだろう。しかし、日本の年金制度において年金保険と言う場合、そもそも応能負担と言う形で保険料はリスク量ではなく所得に応じて設定されており、年金に関しても予め約定したものではなく、年金の受給時期の財政状況によって検証された金額であるなど、いわゆる保険の原義からすれば別物であったことが明確に理解でき、年金制度への理解が深まった。
また、日本が採用している賦課方式の意義として、実際に年金を受給する際の物価や賃金の水準に合わせるために、定額ではなく、所得代替率と言う形で表していることもさらに理解できた。実際、老後2000万問題と言われているが、単なる貯蓄の場合、老後になって物価上昇した時点では、日本円の価値も異なる。いわゆる現在価値という金融の初歩的な概念だが、自助で老後資金をためるためには、少なくとも物価上昇と同レベルの資産運用が必要であるとも感じた。複利計算によって資産運用も年月を重ねれば大きな変化になる。少なくとも流動性の限界の範囲内で、老後資金をためるうえでは運用を強化しなければならないとも感じたし、その点、日本の年金制度は少なくとも今は所得代替率を指標としているため、よくできた仕組みであると感じた。マクロ経済スライドにより、年金制度自体はなくなることはないが、年金額は大きく少なくなると予想される分、やはり自助での老後資金の確保と、老後になったときのインフレに対応できるような資産運用の必要性を改めて感じた。また、年金の障害給付の要件に関しても海外では就業不能をトリガーにしている国もあるという記述があり、日本もこうした形で変化させた方が良いと感じた。実際に障害給付が必要となるのは就業不能状態に陥った場合であり、日本の障害給付の1~3級の認定の場合、少しずれが生じるようにも感じた。
なお、被用者には厚生年金という2階建ての年金制度があることは、自営業のように持ち家や土地などの資産が少ないことに起因しているという記述があったが、被用者が急増している日本では、改めて資産を持ち、資産を運用しているいわゆる資産家と、資産を持たず被用者として生活している労働者という構図の格差は拡大しているのではないかと感じた。昨今では、ほとんどのモノがサービス化している傾向があるが、少なくとも家などという生活の基盤になるものに関しては資産として持つことがベターであると改めて感じた。年金制度の前提にあるフローとストックの考えが明確に理解できたとともに、以前、広井先生の本に記載があったストックの社会保障の強化と言う観点も改めて重要であると感じた。
また、1980年代ごろから非正規雇用が拡大していき、厚生年金に入っていない人やジョブホッパー的な人で国民年金の受給要件を満たしていない人など、いわゆる下流老人と呼ばれる層は潜在的に存在しているという事実にはかなり危機感を持った。今後も厚生年金の被用者拡大等、年金にとっての延命措置を積極的に続けなければならないと感じた。