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ブームは一段落したようだが、大変おもしろく読んだ。
中ほどは、ほとんど同じような議論が延々続くので、バルザックの「ゴリオ爺さん」の話なんかだけ飛ばし読みして、主には「はじめに」と第I部,第IV部を、なるほどなあと思いつつ読んだ。
生まれからして不公平で、やってられないよと皆が捨て鉢になってしまうような社会がよいとは思わないので、なんとか妥当な対策が民主的に実施されることを望む者だが、そのあまり「1914年-1945年のような衝撃」を望んだりはしない。
20世紀的な爆発的成長はもうなく、人類にとってはむしろ普通であった停滞の時代になるのであれば、それに適応するライフスタイルへの変化が、最富裕国である日本で生まれてくることに期待したい。
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山形氏のおしゃべりなあとがきはこの本には付属しておりません。
http://cruel.org/candybox/pikettyjapaneseFAQ.pdf
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資本収益率が産出と所得の成長率を上回るとき(19世紀はそうだったし、また今世紀でもそうなる見込がかなり高い)、資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生み出し、それが民主主義社会の基盤となる能力主義的な価値観を大幅に衰退させることになるのだ。p2
【格差拡大の根本的な力―r>g】p27
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5年以上、積読だった本。きっと一人じゃ読まないままだ、と思い友人を巻き込みたった二人の読書会を企てました。二週間に一部ずつ読んで、週末2時間zoomで語り合うという方式です。全4部構成を4回で読み終わりました。ものすごい達成感!ノートを取りながら読書したの学生以来か。夜、夕食後に自宅で集えるzoomという仕組みに感謝。いやいやこの試みに付き合ってくれる友人の存在することが最大の幸せ。大昔、パルコのコピーに「本読む馬鹿が、私は好きよ。」というのがありましたが、本を読む馬鹿仲間は宝物です。この読書会と同時に読んでいた「人新世の資本論」でピケティの新刊「資本とイデオロギー」が出ることを知り、次のテキストはそれにするか?その前に、もう一発、別の読むか?そんなやりとりも楽しいです。
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ようやく読了。
格差問題を「r>g」で可視化した大著かつベストセラー?
好著かどうかは自分の手に余るが、過去の経済統計を挙げた丁寧な説明は説得力があり、じっくり読めば理解できる。
所々挙げられている富豪の例等は面白かった(不愉快でもあるが)。
格差解消には資本税が必要、との説は分かるが、実現はなかなか難しそうだ。
さて我が国。公的債務削減のためには、資本課税、インフレ、緊縮財政の3手法があるとのこと。そのどれもやる気のない現政権に(まぁ先送りつづきの2%目標はあるが)不安
一杯の今日この頃…
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最近話題の本でありいろいろと特集等々も組まれているが、そういった要約ではなくしっかりと読んでおくべき本だと思う。
結論ばかりが取り沙汰されているが、この本で最も強調されるべき点は今までにない規模で長期間かつ多くの国に渡ったデータを収集し、その分析の上に結論を導き出していることである。その上で、こうした事実に基づいた研究が民主主義には不可欠であり、現在の法と社会制度にはそれを担保するだけの透明性が全く欠けていることを問題視している。
種々の解決策そのものに関しては異論があると思うが、氏の指摘する格差拡大の問題認識そのものが正しいかどうかを検証する為にもこうした基礎的統計データの整備は官民共通の21世紀の問題として共有されてしかるべきだと思う。
と、少し堅苦しく書きましたが純粋に知的好奇心としてもとても面白い作品でした。常々思っていた種々の疑問にも一定の答えを与えてくれた気がします。
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人気テレビゲームよろしく、邦訳と同時に解説本が複数出ているのを見て当初は食指が動かなかったが、結局購入。厚い、重い、高いの三拍子が見事に揃った本だが、意外に内容はシンプルで読み易い。
本書によれば、経済成長率gは実体的に決まり低下が予想される一方、資本収益率rは時間的選考性により心理的に決まるので、不等式r>gが恒常的に成立し、資本家は常にプラスの貯蓄を蓄積できてしまう。またテクノロジーの発達により今後も資本と労働の代替性が高まるのだとすれば、資本の限界効用が増え所得の資本シェアも増大していくから、資本の所有者は労働への分配を相対的に増やす必要がないまま所得の一部を貯蓄に回せることになる。これが動学法則β=s/gを通じてさらなる資本蓄積の集中につながっていく。
著者の主張を受け入れるとすれば、このまま行けば21世紀は益々「ネットの資本収益率が先に決まる」社会になるということになりそうだ。外的要因にさほど影響されることなく資本所有者がまず自らの取り分を決め、それから労働その他の生産要素への配分が事後的に行われる。エクイティ利回りにとってリスクフリーレートという参照点が何の意味もなさなくなるということだ。
ただその前提である「土地や株などの安定的資本の長期的な収益率rは概ね5%」の根拠は若干曖昧に思えてならない。いくら著者が収集したデータが膨大とはいえ、そこから18・19世紀の土地の収益率がそんなに簡単に求まるのだろうか。また確かに5%という数字には直感的な納得感はあるが、時間的選好に関する効用関数が長期的に一定だとする根拠は乏しいように思える。実際、著者の集計にもあるように直近の先進国における資本収益率は4%に近づいているし、投資機会の競合でr-gがさらに減少する可能性は相当にあるような気がするのだが…。資本労働代替性が収益率低下をオフセットして、数量効果が価格効果を上回ることを示すような実証性あるデータは、少なくともここでは示されてはいない。
なお、著者が公的債務の増大それ自体はさほどの問題でないと考えている点は興味深い。純資産に対する累進課税による税収を公的債務の償還に充てれば、資本蓄積の不平等も解消できて一石二鳥というわけだ。現実的にそういう政治的コンセンサスが得られるかどうかは別として。
と、様々な論議を呼びそうな内容だが、兎にも角にも20世紀後半の世界が歴史的に如何に特殊な世界であったか、そして(著者の言うほどに極端かどうかは別としても)資本が支配する来るべき世界にどのように身構えるべきかを本書は教えてくれる。また何よりも、戦後の資本破壊からのキャッチアップでしかなかった高度成長のアノマリーを長期的な前提とすることの愚かしさを理解できるだけでも、十分に読む価値のある本だと思う。経済学はプラグマティックであるべしとする著者のスタンスにも共感が持てた。
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延べ20時間ほどかかり、トマ・ピケティの『21世紀の資本』を読了した。話題になっているだけあり、確かに素晴らしい仕事。この本の卓越した点は、様々な国の資産・所得・税等に関する定量的なデータを200年間もの長期間にわたって集計したところから、貴族や宗教家が富を独占しており不平等な社会であった18世紀のレベルにまで、現在の経済格差は実は拡大し続けているという点を明らかにした点であろう。
そして、
・資本主義社会の序盤、工業化が始まる段階では確かに格差は拡大するが、資本主義社会の成熟化に伴い格差は低減する
・公的債務を用いた公共支出やインフレーションは、所得の再分配という効果をもたらすため、格差を低減させる効果がある
という世間一般で考えられている言説は、どちらも誤りだということが示される。
では20世紀の後半に拡大し続けている格差が21世紀においてどうなるのか?著者によれば、何も手を打たなければ格差は拡大し続けるだろうと警鐘を鳴らす。ここでポイントになるのは、「r>g」という不等式であり、この不等式が成立し続ける限り、資本主義は格差を益々拡大し続けるだろうと予測する。
この式において、
・rは資本を投下することにより得られる収益率
・gは経済成長率
をそれぞれ意味し、第二次大戦の復興時期にあたる1945~1970年くらいまでの経済成長率gが極めて高かった時期を例外として、歴史的に見れば「r>g」という関係性は常に世界各国で見られた事象であるとされている。
さて、gは分解すると、人口増加による自然成長分と技術革新等による生産性向上分となる。現代の先進国では人口増加率は極めて低いこともあり、gは今後も低迷することが容易に予想されるし、高いgを誇る中国やインドのような国々においても人口増加率はどこかで低減し、先進国レベルの生産性に追いつけば生産性も限界を迎えることから、21世紀のどこかでgが低減するのはほぼ間違いがない。
とすると、21世紀においてほぼ間違いがなく「r>g」の不等式は成立することとなり、格差の拡大は進行し続けるであろう。
では、こうした格差を是正するための手段は何か。著者が示すのは、公的債務を用いた公的支出でもインフレーションでもなく、資産に対する累進的な課税である。現在取られている所得に対する課税(所得税・法人税など)では、その所得が自己申告に基づく性質を持つ以上、正しい所得の把握が困難となる。一方で資産を評価することは、現在も固定資産税における資産価値の評価等で実績があるように、まだ実現性が高い。
ただし、この際、資産(ここには当然、現預金や有価証券等の流動性が高い資産も含まれる)をどこか別の国やタックスヘイブンが移転してしまえば、正確な把握は不可能となる。そこで対応すべきはまずヨーロッパのような地域レベルで、各国の金融システムを統合し、ヨーロッパ全体でどれだけの資産が蓄積されているのかをトレースできるようにする仕組みである。
つまり、経済がグローバル化し企業や個人は自由に資産を扱うことができるのに対して、現在の課税システムは国民国家の枠内に閉じられたものとなっており、もはやこれが整合していないの��当然であるのだから、課税システム自体をグローバル化させるべき、という主張である。この際、既にEUという形で地域連合が進んでいるヨーロッパが最もその実現に適しているのは言うまでもない。
600ページを超える大著ではあるが、論理は極めて明晰だし、ところどころ出てくる恒等式や不等式もシンプルでありわかりやすい。何よりも、経済格差の問題を極めて実証的に示した上で、その解決策まで踏み込んだ本書の議論は、その正当性に関する経済学者・歴史学者・政治学者等の議論を踏まえて、更に洗練されていくべき問題だと思う。
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本書の価値は、何よりデータの豊富さである。このデータの収集だけで、非常に読む価値がある。また、そのデータ一つ一つを丁寧に考察するというスタンスは、少なくとも経済学において良きスタンスであると言える。
一方、経済学という巨人の肩に乗るスタンスがあまりなく、独自路線で書かれているのがウィークポイントかと思った。あと本書最大の主張であるr>gというのが少しアドホックなのが微妙である。
なにはともあれ、良書であることには間違い無いので、何度も読み直してみたい一冊である。個人的には、マクロ経済学や経済成長論を復習した上で、それらと絡めて批判的に読み直してみたい。
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今後、全世界にとって、成長率が1-1.5%を超えないだろう。そして、平均資本収益率が4-5%だとすると、資本主義は構造矛盾を抱える。
果てしない格差スパイラルを避け、蓄積の動学に対するコントロールを再確立する為の理想的な手法は資本に対する世界的な年次累進課税を行うこと。
20世紀初頭までの各国国家は、君主的役割(警察、法廷、軍、外交等)を果たすだけであり、当時の税収は国民所得の10%未満であった。それが今日では30-55%にまで増大しているが、それは「社会国家」の構築に使われ、その内容は大別し二つに分けられた。それは、1.保健医療と教育、2.代替所得(年金)と移転支払であり、それぞれ国民所得の10-15%を消費している。つまり、財政増大は社会革命であった。
フランス人権宣言は、第1条に
「人は自由に生まれ、自由のまま権利にいて平等な存在であり続ける。」
とあるが、その次の宣言に、
「社会的差別は共同の利益に基づくものでなければ設けられない」
と追加されている。つまり、絶対的な平等の原理を主張していながら、本物の格差の存在も言及している。
ハーバード大学の学生達の両親の平均所得は45万ドル。これは米国のトップ2%層である。
理想的な税制は、インセンティブの論理(資本ストックへの課税を重視)と、保険の論理(資本から生じる収益ストリームへの課税を重視)との妥協である。
今日のヨーロッパでは、民間財産がGDPの6年分近くある。
ヨーロッパや世界で最大級の富に対する実質収益率は6-7%以上である。
新興国の公的債務は平均でGDPの30%程度。
1992年にマーストリヒト条約がユーロを創設した時、加盟国は財政赤字をGDPの3%以下、公的債務総額はGDPの60%以下にとどめる事と定めた。
あらゆる市民は、お金やその計測、それを取り巻く事実とその歴史に真剣な興味を抱くべき。数字との取り組みを拒絶したところで、それが最も恵まれない人の利益にかなうことなどあり得ない。
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年末年始タスクの一つといってもいいピケティ本の確認。がっつり論文なので読むのはとても疲れますが、読んでおきたかったので時間を作れてよかったです。
論文読みが好きでない方は、著者が多数のインタビューを受けていて記事もたくさんでているので、そちらを拾うのがよいと思います。
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21世紀の資本の感想
r:資本の収益率
g:労働収益の成長率
歴史的にr>gが成り立っていることが著者の研究によって明らかになった。
格差はr-gの増加関数となる。
ヨーロッパは戦前に格差のピークを迎え、現在は米国が格差大国なのに比較してヨーロッパはそれほどではない。
しかしヨーロッパ諸国もいずれ米国並みの格差社会にならない保証はない。
現在の日本は(米国と比較すれば)ヨーロッパと同様にそれほど格差はない。
資本課税は格差縮小の非常に有望な手段だ。(資本課税はrを直接引き下げる)
資本所得や労働所得のシェアをみれば格差の推移がよくわかる。
資本所得トップ十分位や百分位は自身の富をタックスヘイブンに移動させ、課税を逃れる。
国際的な枠組みが必要だ。
ピケティはリーズナブルな格差を否定しているわけではない。ただ、r>gという状況が続けば論理的に富は一部の集団に集中してしまい、いずれ非合理的な水準に達するというのだ。
この本には書かれていないが、「格差社会の衝撃(リチャード・ウィルキンソン著)」には格差は人々の健康に直接害を与えることが指摘されている。
人間に対する格差の影響は研究途上であり、ピケティの研究はその土台となるものだ。
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日本の高度成長期には誰もが豊かになりました。それが最近では二極化とかジニ係数が拡大しているなどの話を良く聞くようになりました。本書によれば米・英に比べるとまだ格差はフランスと同程度で少ないとのことですが、これからの日本そして世界の行く末が気になったので608ページの大著に挑みました。
本書の何が凄いって、マクロ経済のデータが無い18世紀からの資本やGDPの動きを当時の税務書類から調査して導き出し現在までを時系列に並べて見せたことです。これによると格差が少なくなったのは第一次大戦から45年、すなわち資本主義のデフォルトは格差拡大とのことで、GDPの成長率が資本収益率を上回るときのみ格差は縮小するとのことです。日本では高度成長期の終焉と共に格差が拡大していたのは決して気のせいではなかったようです。
また、税制によってこれらは調整可能として、思いのほか富裕層に厳しかったレーガン・サッチャー以前の米・英の税制などについて言及し、最終章ではグローバルな資産課税を提唱しています。以前からグローバル資本のカウンターパートが無いことに疑問を持っていたので、これは同感、難しいとは思いますが、早期実現を祈念します。
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資本主義システムを分析すると、以下の2つの基本方式が成り立つ
資本主義の第一法則:所得の中の資本シェア(α) = 資本収益率(r) × 資本/所得比率(β)。βは簡単に言うと、資本規模が、1年分の所得の何倍あるか、を表している
資本主義の第二法則:資本/所得比率(β) = 貯蓄率(s) / 経済成長率(g)。貯蓄を多くすれば、資本が増え、経済成長率が上がれば、1年分の所得が増えることで、βは減少する。
資本収益率(r)と経済成長率(g) の関係を見てみると、資本収益率(r) > 経済成長率(g) のとき、つまり資本がもたらす所得が、労働による所得より大きければ、資本をもっているものは益々資本が増え、格差は拡大する。経済が成熟すると経済成長率は下がり資本の収益率が上回るので、常にr > gとなる。このように、民主主義の基盤を脅かす仕組み(不平等拡大)が資本主義に含まれている。
このまま放置すると格差は拡大するが、国際的に共同した累進課税で対応できる。重要なのは、金融ではなく、税制である。国際的に資本に対する累進課税のシステムを導入することで、資本は年々減っていき、格差が縮まっていく。
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みすずの本とは思えない行間の広さとフォント、とだけ言っておこう(笑)
データをHPから手に入れられるのが、さすが現代の欧米経済研究書って感じですね。自分でエクセルをいじりながら読めば、私のような門外漢にも多少勉強になりそうだ。
中身を読まなくても事前情報がかなり手に入ったのは良かったが、どうなんだろう。