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小説の主人公である少年が作者の知らないうちに死に、現実の世界には少年から託されたトカゲのアルタッドとサボテンが出現する。架空のものだったはずのそれらを、現実世界で育てていく作者(小説家志望の大学院浪人生)の話。
設定こそ奇妙でシュールだが、テーマは「書くこと」とそれによって与えられる「命と死」である。物語からこぼれ落ちてしまったトカゲとサボテンの飼育を通して、作者は書くことの根源、意義を真っ向から見据えて、ラスト数ページで明らかにしている。
トカゲとの生活はリアルで、微笑ましい。爬虫類は得意でない私ですら、愛着が涌くほどだ。小説が完成したとき、アルタッドは現実の世界から消えてしまうのだろうな。
元恋人との距離感も絶妙だ。
頭でっかちで堅苦しくなりがちなテーマを、じつにうまくアレンジしている。
文藝賞を受賞したデビュー作で、大学院在学中に執筆したそうだ。新鮮さに今後どんな魅力が加わるか、楽しみな作家だ。
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いかにも「小説」らしい文体。今までのお話をキレイに纏めようとするラストの存在。それらを除けば、まるで見本のようなデビュー小説だ。
主人公の書く小説から生まれた実体が、非常に精緻でリアルな感触を持って存在していて、それが想像上の存在だったことを忘れさせるだけの筆力がこの小説にはある。
そこに引きずり込まれていくのはとても気持ちが良くて、早く読み終わりたいというよりは、いつまでもこの良く出来た虚構を読み進めて行きたいと思わせる。
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個人的には元カノがちょっと邪魔だった、アルタッドとずっと二人きりが良いなと思った
でもそれじゃモラトリアムの引きこもりになっちゃうわけで、それは人間としてあかんのだろうな