魂を揺さぶられる
2015/09/07 20:33
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投稿者:納豆 - この投稿者のレビュー一覧を見る
国際霊柩送還士の実話。
国際霊柩送還士とは、とても大雑把にいうと、亡くなった方に生きていた頃の姿を留めるよう、遺体に防腐処理やお化粧を施す(エンバーミングというそうです)仕事をする人たちのことです。
「おくりびと」のお仕事と違うのは、外国から日本へ、日本から外国へご遺体を運ぶ点でしょうか。
旅行中に海外で不慮の死を遂げられた方、葬儀を海外で行いたいためご遺体を空輸しなければならない方、ご遺族の事情は様々です。
遺体のことや、死についての多くが語られますが、決して残酷な話ではありません。むしろ、希望に満ちているのではないでしょうか。
エピソードのひとつなんですが、海外で登山中に滑落死してしまった方がいたそうです。ご遺族が現場まで遺体の確認に行くんですね。亡くなり方が亡くなり方ですから、とても無残な姿なんです。
これはとてもじゃないけれど、お葬式でみんなに顔を見せてあげられない…。
辛い思いを抱いて、ご遺体を送還士さんに預け、ご遺族は日本に帰宅します。
ここからが送還士さんに腕。生前の写真を確認しながら、様々な技術を用いて、ご遺体を生前の姿へと戻すのです。
半ば諦めつつ、ご両親が着いたお棺を開けてみると、なんと、あんなに悲しい姿をしていたはずの家族が、生きていた頃の姿そのままに眠っているんですよ。
もちろん、見た目は元に戻っても、魂は戻りません。
それでも、亡くなった方が穏やかに顔をしてくれているおかげで、遺された家族も心静かに別れを告げられる。
そして、送還士さんたちは自分たちの仕事は裏方だと、決して表には出てこない。本物の職人さんです。
連ねられたエピソードはこれだけじゃありません。
泣けます、全ての章でもれなく全部泣けます。
人は誰しも必ず、いつかは死ぬ。
この本は、遺体処理の専門家たちの仕事を追いかけると同時に、死と生に真正面から向き合う作品でもあります。
死は悲しいことですが、人生は悲しくはないということを伝えてくれる秀逸な本だと思います。
文章も分りやすく読みやすいですし、是非!
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投稿者:積読 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本屋で何気なく手に取った本なのですが、非常に面白かったです。
海外でなくなった人ってどうやって運ぶんだろう?貨物室に棺桶を積むっていうウワサだけどほんとなのかな?…一度くらいは考えたことある疑問ですが、あまり深く考えない疑問。
その舞台裏で働く人々を描いたルポですが、単なる葬儀屋ではなく、故人に対する愛情がないととてもできない仕事だと思います。頭が下がります。
エンボーマーという職業が、欧米(キリスト教国家で、だと思いますけど)では非常に尊敬されているということも、この本で初めて知りました。
日本では死に関わる仕事は忌み嫌われたりする感覚があると思いますが、私たちはいろんな人に助けられ、支えられているのだということを改めて考えさせられました。
ドラマに興味があって
2023/07/13 08:44
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投稿者:マツモトキヨシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
米倉涼子さんが主演でドラマ化と聞き興味が出て読んでみました。
軽い気持ちで読みましたが途中何度も本を閉じることがあって
なかなか読み終えることができませんでした。
給料がいいから、と葬儀系の仕事に転職した同僚がいますが
彼に読ませてあげたい一冊です。
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本書を読んでいる間中、自分が遺体を迎える立場だったらどう感じるだろう、自分だったら自分の遺体をどうして欲しいだろう、と考えていた。答えは見つかっていない。
自分の、家族の、いろいろな「死」について考えさせられる一冊である。
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国境を越えて遺体を受入れ送出しをする“国際霊柩送還士”を描いたノンフィクション。
開高健ノンフィクション賞は2年前に「空白の五マイル」を読んでいて、あれもまあまあ面白かったけれど、これもなかなか良かったですね。
言われてみると確かにこういう仕事があるのだよなぁと思うけど、実際、これにあのように携わっている人たちがいることはかなりの驚き。
ここに描かれるのは遺体を扱うこと自体の苛烈さと、それを仕事してとして行なう人の心持ち。
次の日には骨になってしまうのに、葬儀までの短い時間、生前の姿に整え直すことに心血を注ぐ立ち振る舞いに触れて、私は死について、そして生についての思いを深くする。
そして、作者の母の「胃ろう」の話について、私も亡くなった父にそういう話が出たことがあり、幸いその後の経過の中でそうしたことを深く考えずに済んだのだけど、その時のことを思い出すと今更ながらに心が揺れる。
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考えてみれば、当然そういう仕事があることは分かりそうなものなのに、なぜかあまり考えが及ばない・・・。
国際霊柩送還。私にとっては、そういう仕事の一つだったからとても興味深く読んだ。
海を越えて帰ってくる遺体はかならずしも、日本国内で亡くなったときのような状態にはない。ときには悲惨な状態にある遺体を、ただひとめ、家族にきれいな姿を見せてあげたいという思いでもってエンバーミングする・・・生き返らせるわけではなく一瞬のための処置に、ここまで真剣に向き合うエアハースの社員たち。
その胸中を探りつつ、また出迎える遺族の気持ちも推し量りつつ、著者は国際霊柩送還という仕事の本質を追いかけていく。
葬儀の意味や死生観などに踏み込んで書いているので、かなり感情のこもった著作になっているように思う。
何度も同じ趣旨の文が書かれ、最後のほうは少々くどいかなと思わずにはいられないが、人の死をめぐる事象には誰しも色々と考えさせられるということなのかもしれない。
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海外で亡くなったヒトの遺体を受け家族に帰す、また日本でなくなった外国人の遺体を故郷へ送り返す仕事があるという。
国際霊柩送還士。
海外から戻ってきた遺体には様々な事情があり、またその日数も長い場合がある。
そんな時の遺体の損傷はひどくなる。
そういった時にも、家族や友人たちに良い状態で再会出来るように処置を施すという。
また昼も夜もない大変な仕事である。
国内の葬儀社とは違い、広く知られていないが、もっと知られるべき仕事だと思う。
2018.5.29
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海外旅行で保険に入ったりするが、まさか死を意識することは少ない。残された立場の方から、死というものを考えさせられた。
年明けには重いが、印象に残った一冊。
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異国で不慮の死を遂げた遺体を、きちんとした形で遺族のもとへと届ける。そういった仕事、会社があるということすら知らなかった私にとって、この本は新鮮な驚きを与えてくれた本となりました。
葬式は生きている人が「区切り」を付けるために行う儀式、という考え方がありますが、この仕事も、遺族が死を受け止めてきちんと別れを告げることができるようになるために必要不可欠なプロセスであるものなのだと思いました。そしてこの仕事を行うということの困難、辛苦をおそらく一部分ながら理解したのです。
とかく死は不吉なものとされがちですが、そうではなく、いずれ誰にも等しく訪れるものだと考えれば、「死」もたったひとつのかけがえのないものであり、人の一部分でもあるのでしょう。
だからこそ、とても大切に、真摯に、死に直接携わる仕事はなされていかなくてはいけないのでしょう。そう思いました。
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国外で亡くなったご遺体を遺族の元へ送り届ける国際霊柩送還士の仕事を描くノンフィクション作品。
時に忌みされ話題に出すことが憚られる人の死。本来、日常に密接な関係にある人の死を我々は(無)意識的に目を背けて生活している。その人の死を真正面から受け止め遺族の方々が故人とお別れをする機会を設けてくれるのが国際霊柩送還士である彼等の仕事だ。
海外から送られてくるご遺体を生前と同じ状態に近づけるために行うエンバーミングをはじめ、彼等の仕事は『最後にたった一言「さよなら」を言う機会を用意することだ。』。
家族が日本で死ぬということすらどうすればいいのかわからないのに、海外で死んでしまった場合どうすればいいのか、まったく検討もつかない。
人の死を考えるきっかけにもなる。私たちは彼等のような人たちに支えられて生活出来ているということも改めて思い知らされた。
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海外で亡くなる人がどのように日本に帰ってくるのか、遺族の元に戻るまでどのくらいの時間がかかって、それによってどんなことが起こるのか、この本を読むまで考えたこともなかった。身を削ってこの仕事に打ち込むエアハース・インターナショナルの皆様には頭が下がるばかりです。日本では遺体に対して報道されることはまずないけど、滑落事故や交通事故、災害で亡くなったらどうなるか詳細に書かれているので、気持ち悪いと思う人もいるかもしれないけど、自分の家族や自分にそれが絶対に起こらないないなんて言えないもんな。遺体を移送するにも莫大なお金がかかるということも、言われればそうだと思うけど今までは他人事だったことは確か。そういった意味でも読む価値のある本です。お昼休みに会社で読んでたら、涙が堪えきれなかったので、読む場所には注意です。
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世界へ羽ばたき、かの国に様々な理由で、この世を去った邦人の祖国「日本」の家族への帰宅を、その逆に諸外国から日本に来て無くなられた方の本国への送還を、少しでも生きて今ままの姿で一刻も早く返したいという仕事があることを知りました。
その苛酷な仕事と遺族との間に立つ苦しい仕事。
真似のできない心打たされる仕事でしょう・・・
こうした仕事に疲れている皆様に経緯を表したいと思います。
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日本人が海外で亡くなったり、国内で外国人が亡くなったりした場合に、遺体を祖国へと送り届ける「国際霊柩送還士」の仕事を描いたノンフィクション。テレビで柩が到着したシーンは何度か観たことがあるし、考えてみれば当たり前の話ではあるのだが、こういう仕事の存在は、この本を読むまでは気に留めたことがなかった。そういう意味では、その存在に着目してスポットライトを当てた本ノンフィクションの意義は大きいと思う。ただ、本の内容をみていった場合に、評価できるかどうかはまたべつの問題。たしかに興味深くは読めるのだけれど、それは題材の妙といった感じで、手法としては拙さが目立つと思う。たとえば、木村利惠社長にはパワー・ハラスメント的な口ぶりがあるが、それを単なる厳しさを象徴するエピソードとして終わらせてしまっている。傍目からみて感じることと、じっさいに体験して感じることとはべつなので、パワハラのようにみえるだけで、ほんとうはただの叱咤、指導の範疇なのかもしれないけれど、いまはそういったハラスメントにスゴく厳しい時代だし、日本は鬱や自殺者が多いので、人によってはそういったことにもなりかねない。ただ肯定するのではなく、もうすこしネガティヴなことにも突っ込んだ取材をしてほしい。利惠が、遺族の要望を突っぱねる面にしてもそうだ。コチラにかんしてはちょっとは否定的な質問もしているようだけど、エゴの押しつけともいえるような方法を、ただの利惠の遺族への思いやりとしてしまうのはやはり違うのではないか。文章じたいも、いきなり著者本人のエピソードが随時挿入されるなど、全体として拙い印象を受ける。著者のパーソナルなことを書くことそれじたいは悪くはないけれど、どうにも不必要な部分が多すぎる。国際霊柩送還にかかわる「悪徳ビジネス」を糺弾しておきながら、エアハースのビジネス的な側面にはいっさい触れないなど、ノンフィクションの手法としてはアンフェアだし、著者はちょっと取材対象に肩入れしすぎ。金がないせいで、祖国で遺体を迎え入れることができない遺族も多いのではないか。せめてあとがきでは、そのことについても触れてほしかった。とはいえ、この本がなければこの世界を知ることはできなかったのは事実であり、そういう対象を見つけてきたのは著者の偉大な功績である。著者は取材当時まだ作家ではなかったようなので、そういった人物に完璧を求めるのは酷ではある。素人では、取材したくてもできないことも多かろう。ココで指摘したような問題点が、キャリアを重ねることでどのように修正されるのか。著者の今後に注目したい。
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「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」というタイトルから、Angel Flightだと思っていたら、Angel Freightだという。それって「フライト」はなくて「フレイト」だろうよ。Flightだと思っていたので、Flightに関する記述がほぼ無いことに失望。
海外で亡くなった邦人など、遺体は貨物で送られるということは世間の承知の事実だろうけど、日本での受け入れ、遺体の修正・化粧などを引き受ける専門家がいることは知らなかった。
もう少し彼らの仕事ぶりにフォーカスした内容だったらよかったのに。
著者の母親の話や、自分が遺体と向き合うこととそれを記事にすることの葛藤とか、はっきりいって無駄じゃないだろうか。
途中の写真、イメージカットなんだろうけど、人物の顔が写っているのはいったい誰?説明がいっさい無し。
読んでいて、著者が伝えたいことがストレートに伝わってこないので星ひとつ。
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本を通じて世の中に在る事を知る事が沢山ある。
職業もその一つ。
考えればその職業が無いと成り立たない事が多い様に思う。
縁の下の力持ちと言えばそれまでだが
想像力を駆使して感謝することも必要なのかも知れない。