紙の本
付録を含めて面白い
2019/04/13 22:21
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:十楽水 - この投稿者のレビュー一覧を見る
優勢な物語は、他の物語を圧殺しうる。多数派は、優勢な物語に心地よい涙を流す。読んでいて心が重くなるところもあったが、欺瞞を排する徹底ぶりには脱帽。著者だからこそ、「絆からの自由」も「絆への自由」も説得力を持って説くことができる。どちらも人生の支えになる視点である。著者のような精神の持ち主には今後もその違和感を世に発表してほしい。
以下、忘備録として。
「共同体が窮地に陥った時、緊急事態の名のもとに、人間の思考の質は低下し、感受性や信念の違いは無視され、社会全体の効率的機能だけが求められ、繊細な精神は根こそぎ失われる」。
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中島さんも早、60代後半なんだなぁ。こういう内容を書くと脊髄反射で嫌悪を示すひとがいることを容易に想像できるけど、概してそういうひとは人の話を聞かない傲慢な人で付き合いたくない人種だ。御本人は謙虚な人柄なんだろうなと毎度思う。
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人間を美談という一つの物語に安易に閉じ込めるべきではない。ひとはそうするとき、自らの快さにプライオリティを置くあまり他人の何かを犠牲にしているのだと著者は説く。
さらにこの無反省な善意の受け手は、弱者としての処世術として偽善を判別する嗅覚を身に着けているのだから、なおのこと問題になる。
この伝でいくと、最近よく聞かれる「どうせ同じ偽善ならやらないよりやった方が人の為だ」という一見真っ当で格好の良い言い様も、独り善がりの欺瞞でしかないということになる。偽善であり誠実さを欠く以上、やはりそれはすべきではない。むしろ無自覚な「絶対的美/善」の押し付けが、共同体に思考停止をもたらすことの害悪を認識すべきなのだ。
今まで自分が四六時中感じていながらうまく言語化できないでいた違和感を、極めてクリアに示してくれたこの本に感謝したい。
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私の嫌いな言葉「木を見て森を見ず」が浮かぶ(個と全)。木が森が、と大忙しな一冊。
森に入って木の側に立って、落ちたドングリがどう芽吹くのか、なぜオタマジャクシがカエルになるのか、オナモミが絶滅しそう、タガメは変なかたちだ、わたしはそんな事を考えていたい。
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強靭で繊細で鋭敏な個としてあるための、著者なりのありようを提示していて、感心した。新書であるせいか、議論の運び方に雑なところも見受けられたように思うが、潔く孤独であり、かつ絆を求めることの難しさ、厳しさが伝わってきた。なんか、中島先生、議論が丸くなったかなという感じもするけど。心地よい絆はどこかに落ちているものではなく、求めて創り出すものだ、という結語に頷かされた。(感受性がマイノリティだ、という自己認識とそこからの展開にはやや我田引水な印象を受けた。)
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自分の弱さを抱えたままでより快適な絆を求めても、究極的には何も与えられない。強くなければ生きられないのだ。
いかなる正当な戦争でも、それが正当だとみなされれば、みなされるほど、思考の質を低下させ、繊細な精神を粉砕し、内面の尊重を忘れさせる。
絆の中核をなすものは他人の幸福をもとめること。しかしこれは哲学的には当然のこととはみなされない。
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自分の哲学思想を見直すきっかけにはなった。でも人間必ずどこかに属している限り、その色に染まるものだからこの本のことをそこまでまにうける必要はない。でも読むべき!
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学生時代から縁のなかった哲学に関する本。
たまたま図書館で借りて読み終えました。
損得で物事を考えている自分を反省する良い機会になりました。
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「(…)その時代や社会において『疑いえないほどよいとされていること』こそ、同時に個人を最も暴力的に圧殺する(…)、このことこそ『繊細な精神』の敵、すなわち哲学の敵だ(…)」(p.88)
あと「第五章 (自他の)孤独を尊重する」にはいつもながら賛同。
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「絆」は、絆に入れてほしいのに入れない人や、絆に入りたくないのに入れられた人の個性を完全に無視している。
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絆は確かに素晴らしいものだけど、だからといっていつでもすべての人がそれを求めているとは限らない。つながりを求めていない人もいるという事実を無視した絆なんて、暴力でしかない。個人の違い、多様性を大前提にしないといけない福祉の世界が、一番“絆”を訴えているけれど、それは正しく理解された“絆”なのだろうか?
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中島義道氏3冊目。内容は想定、期待通り。
「絆」は不可侵存在であり、私たちを縛る。当然のものとして存在し、時には暴力的な様相を醸し出す。