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「彼らはもう死ぬことは覚悟しているのだが、これ以上疲れるのはいやなのだった」
朝鮮戦争に派兵されたフランス兵たちの物語。戦略上なにも価値のない山を奪い合いながら対峙するフランス軍と中国軍の間で、凄惨な戦闘が繰り広げられる。
大義名分の失われた戦争に参加するとこになったフランス兵たちが、戦略上意味のない山に命をかけることになるまでの半生を語るのが、本書のメインストーリーになっている。
戦争の時代。朝鮮半島の山に集まったフランス兵たちの経てきた戦争は、スペイン内戦、祖国開放戦争(対独戦)、ロシア戦線(独軍捕虜としての戦い)、ヴェトナム戦線。
反戦文学とは趣を異にする。対独戦は戦わなければならなかった戦争として、本作中で輝かしく屹立している。本書は、戦わなければならなかった戦争を戦った兵士たちが、戦争の終わった世の中に順応できず切り詰めて暮らし、やむなく「生きるために死地に赴く」悲惨な姿を描いている。
朝鮮半島のパート、兵士達が動かざる肉に化していく姿を即物的に淡々と語る、作者の目線が恐ろしい。戦後のフランスで無為に生きる兵士たちが、地球の反対の名もない山で命を削る先に、見えた地平は。最終章は、例えれば嫌な予感が的中したときのような気持ちと、いやな予感が運良く外れたときの気持ちが、ないまぜになったようなエンディング。
読むべきか、迷ったのであれば、読むべき本。