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極貧に生まれ育った男には指が6本あった。
自らその過剰を切り落としのしあがっていった男、影山博人。
彼と関わった女たちを通じて、博人の底知れない魅力と哀愁が浮き彫りになる。
霧に覆われた釧路の町が頭の中に広がっていき、なんとも言えない余韻を残す。
今まで読んだ桜木作品の中で、一番良かった。
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指が6本ある男、影山博人と関わりをもった
女たちそれぞれの目線で描かれる
男の一生。
すさまじい過去を持ち
波乱万丈な人生を歩むのだけれど
いたって冷静沈着、クールで
悪なんだけど
困った女性にはめちゃ親切。
なんて魅力的なヤツなんだ。
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影山博人を巡る物語。初めてこの人がしゃべった。
桜木紫乃さんの主人公を巡る物語で、この主人公が登場することがあまり少ないので。
それにしても、かっこよすぎですよ。
ある時は強いものから巻き上げたり、利用したと言わんばかりで、またある時は人を助け(お金の苦心に困っている友人を助けたり)。
なんだか、こういう真っ直ぐな人(裏世界の人だけど)いて欲しいなあ。私の身の周りに。
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桜木紫乃氏のお得意の北海道を舞台にした連作短編集。
いつものようにちょろっとエロも散りばめた作品。
もっと違うシチュエーションでは書かない作家さんなのかなあ。
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指が6本ある長屋育ちの博人をめぐる女たちの話。
博人の感情がよくわからず(そういう人物設定なのだけど)、物語に感情移入ができなかった。
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『影山博人』という1人の男と8人の女たち。帯に書いてある、著者の新境地という言葉を読了後に納得。なるほど、そういう事かと。『影山博人』は女たちを魅了する力というか、オーラが生まれながらにあるのだろう。『影山博人』とは良い意味で非常に恐ろしい男である。野生っぽさ、男らしさ、彼をどう表せばいいのか上手く言葉が出てこない。それくらい難しい。
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またも桜木紫乃お得意の連作短編パターンで(まあ男版ではあるけれど・・・)またか!とも思いますが、しかし、これが彼女の作風なんだし、このまま突き進んでほしいと思います
・・・が、「蛇行する月」はよかったと思うんだけど、「星々たち」や今回の「ブルース」だと、ぜんぜん主人公自体が見えてこないんだけど。
結局、主人公が何を考えて何を望んでいる人間なのか、よく分からず、なんだか消化不良。
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女たちを次々魅了していったのは、6本の指を持つ美貌の男。
この指が多い、というのがなんとも官能的。
最後まで生き様が美しいのが、いかにも女性の理想。この著者の他作品が断然読みたくなりました。
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エロ描写が多いけど、桜木さんらしい空気感はそのまま。
こういう『繋がりのある短編小説』を書くのが桜木さんはうまい。
ひとつひとつは微妙かもしれないけど、全体の繋がりでみると「うまいなぁ」と、思う。
ひとりの男とその男に関わったたくさんの女たち。
自分も誰かの物語の一部なんだよな、とあらためて気付かされた。
読んでいて色々な個人的なことを思い出して苦しくなって悲しくなって勝手に涙が出た。
沢山の女性と付き合ってきたセックスの巧い男性のことや、昔付き合っていた男性のことを思い出して、恋しくなって悲しくなって苦しくなって一度涙がぽろりと零れたら止まらなくなってわんわん泣けてしまった。
雪山で自殺するイメージやセーヌ川やドナウ川で身投げするイメージが離れなかった。
物語の内容にというのではなく、桜木さんの文章が醸し出す暗さや孤独感みたいなものに、私の心がすっぽりと取り込まれてしまったんだと思う。
相変らず冷たくて閑散とした世界だった。
湖に浮ぶ月みたいな小説。
やっぱり桜木さんの小説は好き。私に合っていると思う。
私が描きたい世界の文章版。
この装幀は小説のイメージに合っていると思う。
人のいない駅のホームというのは内容に沿ったモチーフだ。
モノクロームが似合う感じの小説だった。
人生の断片であり、ひとりの人生の記録である小説。
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劣悪な環境で幼少期を過ごした男はやがて、夜の世界の支配者へとのし上がっていく。その彼がひとときを過ごした女性たちの情と欲の有様を描いた物語です。
ときにあけすけに描かれる情を交わす場面は淫靡でそして刹那的で、あまりに「愛し合っている」という喜びや明るさを感じないものばかりで、どちらかというと悲しさを感じさせます。
うまくいかない人生、思い通りになにひとつ運ばない自らを、ひとときなげうって男に預けているようなだらしなさ、投げやりさが漂います。けれど、ただその世界の残酷さが描かれているだけではありません。そんな打ち捨てられたような日々を送っていてさえ、人はそれでも生きていくという根本的な逞しさ、強さをも同時に感じたのでした。
だから人はこんなに長いあいだ人として栄えつづけているんだろうな…などと、春の陽気の中、どこまでもくすんだ空のある世界を描くこの本を読みつつ思ったのでした。
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一編だけ読んで、短編集かな?
と思いましたが、繋がってました。
浅いかなー
と思いつつ読み進めていくうちに
ちょっぴりはまりました。
なんとなく六次の隔たりを
思い起こさせる本でした。
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北海道の寒村の、さらに貧民層の長屋で生まれた男が、裸一貫からのし上がり、町の裏のボスとして君臨するまでになる姿を、彼と関わった女たちの視点から描く連作短編集。
いつもながら、釧路の暗い風景がよく似合う。
震えるようないい男を書いてやる、と作者が臨んだ作品だと、以前新聞のインタビュー記事で読んだ。感情を排し、非合法なことも怖れず、無口でセックスがうまい。関わる女性はことごとく、呆気なく彼のとりこになっていく。しかも、自分を頼ろうとする相手を、するりとかわして姿を消して…。
最初のうちは、これがいい男なのかなと首を傾げつつ読み進めたのだが、そのうちじわじわと魅力が浸透してきた。自分を頼ろうとしなかった女性と結婚し、最後はその連れ子をかばって命を落とす。なるほど、作者の好みは、究極のハードボイルド男だったのね、と納得。
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道東の港町のはずれの貧しい地域に、影山博人は生まれた。
生まれつき6本ある手足を持った博人と中学の同級生だった、彼が初恋の牧子。
プレス機で6本指の1本を潰してしまった彼を介護し、もう片方の1本を切り落とした事務員。
金でつながっている結婚に嫌気がさして博人を金で買った美樹。
夫に病死され残された借金に途方にくれるときに再会した博人に救われた圭。
まち子の何もかもを奪い、そして彼女を気に入って助けてくれたのは博人だった。
男好きの母から生まれ、店を失い博人にも助けてもらえなかった娘の決意。
兄の市長選のバックアップの見返りと、誰もが博人に丸め込まれていると感じた兄嫁の出産。
カメラマンの莉菜を支えてくれる母まち子と父博人の存在。
貧しく親にも恵まれなかった影山博人が、自力で社会の頂点にのし上がっていく過程。
星々たちと設定が似ているね。あれは転落していく感じだったけど、こちらは君臨する感じ。
オトナ向けの一冊です)^o^(
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指が6本の影山博人。
彼と身体を重ねた色々な立場の女性たち。
濃厚な描写にたじろぐが、新鮮さとリアルさを感じた。
面倒くさいところがなく、ぐんぐん進んで行くのも好き。
権力の使いっぷりも好き。
集中して入り込める幸せな読書だった。
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貧しく過酷な環境で育った男の暗いサクセスストーリー。成功の裏には、不幸な生い立ちの中で手にした、尋常ならざる女性の肉体のコントロール能力がある。
とにかく、あっという間に女性を虜にし、本人は女性に対してほとんど思い入れを持たない。生まれから没っするまで、さまざまな女性を通して彼の人生が垣間見られる短編集。
かなり強い性描写がある中、煩悩あふれる自分としては、どうしても表面的に「女性の扱いが圧倒的にたけていて、なんてうらやましい」と思う気持ちがぬぐえない。これはこの本のテーマとかなり反する、生物学的な感想であるが(恥ずかしい)、それがあるゆえに、なんとも真に作品を楽しんだ感が得られなかった。(自分のせいですが。)