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本書の主旨は、「人類は進化を達成した」「進化が起こる単位は、少なくとも数十万年かかる長いものだ」という理論が似非科学であることを証明する科学解説書である。そして読者を導くテーゼが「糖質制限ダイエット」の元になった理論「原始時代の食生活こそが現代人の不健康を取り除ける」というパレオ式生活が、いかに間違っているかを科学的に反論するものである。
「パレオファンタジー」原始時代の生活こそが現代人にとっても最適で正しい生活だ、という幻想11
実は人間の進化は数千年単位以下の時間で起こっているようだ。進化により鳴かないコオロギが発生したのは20世代で、これを人間時間に直すと400年たから、このくらいで進化している可能性もある16
2010年に雑誌で紹介されたニューヨーカーたちは、健康や人間の本来性回帰のため、原始時代の生活を取り入れている(これを著者はパレオ式と表現)。穀物を避け(農耕だから)、主に肉を食べる(調理するかは議論になっている)、徒歩移動(狩猟の疾走)、献血(猟の負傷)、などを取り入れている24
ジャレット・ダイヤモンド(ベストセラー『銃・病原菌・鉄』の著者)などの文明批判者たちは、農業を「人類の歴史の中で最悪の間違い」ととらえる。「農業によって人類はでんぷん質まみれの破滅の道を転げ落ち始めた」「私たちは農業によって生まれた檻(肥満と病気と社会的階層が付き物)に囚われている」「農業の出現とともに、社会的、性別による不平等、病気、専制政治など、私たちを苦しめるものも生まれた」「農業は諸悪の根源か?」52
トリニダード島のグッピーは四世代で進化した90
「狩猟によって引き起こされる進化」がある。オオツノヒツジはより大きな角を持つ雄の個体が狩猟の価値が高い。そのため小さな角の雄が進化の過程で有利になり、現在のオオツノヒツジの角は小さくなった96
第三章まとめ
生物は、われわの常識と違い、相当速く進化する。数十万年単位だと思われていた進化速度は、数十世代、あるいはもっと少ない世代で可能だと、最近の研究でわかってきた。
「牛のミルクは子牛のため」をスローガンに牛乳廃止を訴える反対派がいる。人間は原始時代の食生活か肉体に合っており、乳製品を止めると一週間で人体が健康になる、という間違った主張をしている104
ミルクを摂取出来る遺伝子は2200~2万年前に生まれた。つまり人間のゲノムは文化的習慣によって進化した証114
よく噛まないと下痢など腹壊す(唾液のアミラーゼが腸まで行くが、それが足りなくなる)138
日本人が海藻を消化出来るのは、海藻についていたバクテリアが日本人の腸に住み着いて、それが人間の遺伝子と結合し、さらにそれが遺伝したから145
人間はあらゆる哺乳類に比べ、持久走が得意な種である。160
他の動物に比べ、人間の子供は飛び抜けて自立が遅い。これは生活技術を覚える、あるいは集団生活の社会性を会得するためと近年まで言われてきた。しかし最近、「親のため説」が出てきた。親が新たな繁殖を行うため、ある程度成長した子供がコストの低い使用人を担うためだと(雑��、農作業、弟妹の子守り等)。216
ミーアキャットは「協同繁殖」する代表的な動物。人間も協同繁殖をすると考えられている222
人間に閉経が存在するのは祖母が「アロペアレント(父母以外で子育てに協力する存在)」になるため説がある231
1869年イギリスの医師ローソン・テイトは『種の起源』の衝撃を嘆いた。「今後世界は、医学の進歩によって夭折を免れた人々が繁殖して、『適者生存』を通らなかった『不完全な人間たち』がはびこってしまう」268
「糖質制限ダイエット」はなんと、パレオ式生活の流行から始まった299
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進化は完璧なものではない。間に合わせのシステムが働いている。
旧跡時代は子どもを持てる男は半分以下だった。多くの種ではほとんどのオスは子孫を残せない。
女性はX染色体を二本持つ=すべての子供は母親から引き継ぐ。娘だけが父親からx染色体を引き継ぐ。女性のほうが多様性に寄与する。一夫多妻制では、全体的には多様性が減ずるが、x染色体に関しては例外。一夫多妻制は歴史の一部である。
予防接種のおかげで依然なら天然痘で死んでいた虚弱な人が生き続けている。
現代は科学のおかげで進化は止まったという主張もある。捕食者や病気の脅威がなくなった。
文化も環境の一部。食資源と同じように自然の一部。
人口が多いほど突然変異の余地が大きく進化の余地が大きくなる。
進化と自然選択の違い。進化はある遺伝子の頻度が変化すること。
遺伝子浮動は軍全の出来事で起きる遺伝子頻度の変化。顔がごつごつしていた原始人からほっそりした現代人になったのは遺伝子浮動によると考えられる。
遺伝子流動は個人の遺伝子があちこち移動すること。国際的な世界ではこれが増えるという意見と減るという意見がある。
進化していないという見解は、進化がある目的に向かって起きるという誤解から生じるもの。自然選択は今でも働いている。固体の子供の数が違う以上、進化は続いているとみるべき。
進化は不都合な面もある。高山病に対する耐性は3000年以内のこと。日本人が足が長くなったのは自然選択なのか。
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序章と一章を読んだが、同じ進化は思ったよりも急速に起こる。生物にとって進化は環境に間に合わせのための妥協であり、人間にとって原始時代の生活が適しているわけではない。
以上の繰り返し。