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言葉選びがきれいなんだよなあ、この方の文章。久々によんだ杉本作品。女の一生のなかで共感できる思いがあちこちぎゅぎゅっと詰まっていて、ところどころ、ほろりとさせられた。あったかいラストに心ぬくまった。
“口入れ屋”を舞台にしたものでは、ちょっと前に西條奈加さんの「九十九藤」を読んで、「お江戸」×「人情」にはうってつけの舞台だなあとおもっていたけれど、またこれ違うかたちの、いろいろあって口入れ屋の女あるじとなる物語。おこうは、この仕事を通して、じぶんの人生も、芯をぐいっと入れ直したかんじだよね。お島もいいなあ、すきだなあ、こういう芯の強い女性。ふたりのご隠居婆様たちがまたどちらも、いい味。そして、おけいが、ほんとにクズすぎてぎゃくに彩るよね。お雪、お関、お徳、それぞれに、自分とはタイプが違っても、ああ、ちょっとわかるかもしれない、、、、女ってさあ、、、なんかみんなで飲もうか!
って、心の奥で好きになってしまうような、へんな感情が芽生えつつ読んだ。
これは女性向け、できれば、アラサーアラフォーもしくはそれ以上の、うまくいかない人生の愚痴のあれこれを飲み込んで日々過ごしてるあらゆる女性に、読んでほしい。どこかで涙するとおもう。そしてちょっと、襟を正す気持ちももらえる。心ほぐされる良作でした。
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人との結びつきを連作短編で書き表しており、女の底力みたいなものも感じさせる小説であった。
書き方が、優しく、読み易さと、内容の面白さに、のめり込んでしまった。
7話共、人のつながりで、幸せの糸口をつかむことも出来ると、、、。
主人公、口入屋になったおこうの人柄の良さが、著者の人柄のように思える。
おこうは、嫁いだ先の夫が、浮気お相手がおり、子供まで生してしまった。
舅や姑からは、石女と、言われて、嫁としての立場も居ずらく、奉公人からは、冷たくされており、縁を切ってもらったのだが、実家に戻っても、持参金の返却金を当てにした兄と兄嫁がおり、母親までが、それに加担するような身の置きどころが無い始末である。
幼き頃のおこうを可愛がってくれた奉公人のおとわの店の三春屋(口入屋)へ、おこうは、訪れて、自分の父親との関係も知ることになるのだけと、、、、なんと、綺麗に、物語っているのだろう。
違和感なく、おとわの優しい気持ちが伝わって来る。
おとわ亡き後、三春屋を受け継いだおこうの人との結びつきが、又良い。
亀屋の友二郎との恋に、又お久の関係が、心憎いほどに書かれている。
こんな姑に感慨深い友二郎が、居れば、おこうはこれから幸せになってくれることだろうと、安心して、本を閉じた。
最後のおこうの「義母さん、ただいま」の言葉が、頭の中に漂っていた。
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起き姫とは起き上がり小法師のこと
子供が産めず、居場所のなかったおこうは、夫に、外で子供が出来たのを潮に、婚家を去った。
実家に戻ったが、兄夫婦が、おこうの持参金をあてにし、母親も、兄嫁の味方をする。
二百両の持参金の内、百九十両を、兄夫婦に譲り、おこうは、昔の乳母を頼りに、実家を出て、口入屋「三春屋」を始め、人と人の縁を繋ぎ、ようやく自分の居場所を見つける。
「三春屋」にやってくる女たちが、起き姫のように、転んでは起き上がり、自分の道を進んでいく。
そして、おこうにも、幸せがやってくる。
江戸の情緒が偲ばれる、なんとも後味の良い作品。
ワタシも、起き上がり小法師を買ってみようか。