どうせ読むなら前作から・・・
2015/08/22 03:19
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投稿者:arima0831 - この投稿者のレビュー一覧を見る
高野秀行氏のソマリアもの、第二弾。『謎の独立国家ソマリランド』の姉妹編だ。
前作は500ページを超える分厚さで、ソマリアの地誌背景政治状況などを、面白おかしくも綿密に解説しながらのルポルタージュだった。構えとしてはこっちの方がかなり重厚で、本としての評価はやはり圧倒的にこちらが上だとは思う。
今回の本は、その後の作者のソマリアとの関わり合いを描いたもの。
細かい背景をきっちりとまとめあげた後段なので、本作では心置きなく高野節が炸裂した取材記となっている。全体の構えは軽めで、サクサク楽しく読める感じだ。
しかしそうやってサクサク出てくる話は、作者の現地化と相乗して危険度も難易度もはるかに増している。
再びソマリランドに入国した作者、まず早々に警察に連行されてしまう。その(ユルい)顛末は・・・?!
そして再びソマリアの首都モガディショへ。そして南部ソマリアに取材に入り、ついに現地で戦闘に巻き込まれる、危険極まりない取材の一部始終。
骨子としてはおそろしくタフでワイルドなものだが、これが一貫して例の「高野節」でユルユルゆるるんと語られていく。実際に命がけになったシーンもあるのに、全てが絶妙な脱力感で支配されていて、そこにだらんと身を委ねているだけで脳内にヘンなα波が出始めるようだ。
この独特な語り口を通せば、話がなんであってもとりあえずおもしろ楽しいのだが、現地で戦闘に巻き込まれた一部始終から、家庭の主婦に料理を習う経過(実は戦闘取材並みの難易度ではあるらしい)まで、ネタの鮮度がまた比類なく高いのだから、スゴイを通りこして呆れかえった話。
そんなこんなで、スルスルと楽しく一気に読んでしまった。
そうしたソマリアと作者の「蜜月」は、一体どのような展開を見せるのかと思えば、あれあれあれれれれ、と不思議なところに着地。はてさて、今後はどうなっていくのだろうか?
前作を読まなくても十分面白く読める一冊だとは思うが、ソマリアの全容をある程度イメージできる状態で読んだ方が面白さは広がる。どっちにしろ本作を読んだら、まず前作も読みたくなるはずなので、どうせだったらまず分厚い方から攻めるのがオススメかも。
未知の世界が展開される
2015/05/25 21:55
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投稿者:うにょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作である『謎の独立国家ソマリランド』の続編である。前作が衝撃的かつ面白かったので、手に取ってみた。
ソマリランドで著者が体験したことを書くという基本的スタイルは変わらない。やはり、ディープな世界を垣間見ることができた。ソマリランドで家庭料理をしたり、あるいは、ひどい便秘に襲われた中、危険なところを移動したり。国や地域が違えば色々違うことはでてくるが、違いがありすぎる。違う世界を覗いてみたいという人にはぜひおすすめの一冊である。
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待ってましたのソマリア本!
前作があまりに奇想天外抱腹絶倒、世界情勢なんてこれっぽっちも理解できていない私ですら楽しくすいすい読めたので、ずっと心待ちにしておりました第二弾!
さすがにソマリ世界にも詳しくなった著者だし、こっちも多少は知識があるんだよねぇぇ、二作目だしさ、前作のような驚きに満ちた展開もあまりなさそうだなあ、などと高をくくって読み進んだ前半。
ソマリ娘に料理を習うくだりなど、ほほえましく楽しく読んでいたが、侮るなかれソマリア紀行!最終章で命からがらの絶体絶命の危機が待っていたとは!
うーん、なんて危ないんだ。高野さん生きててよかった。本作が読めた。
こんなに危ない目に遭っても、まだまだソマリ熱が冷めていないようなので、第三弾もあるかな!
楽しみにしています。
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毎度ながら市井の人々の暮らしや文化、宗教など細やかなところに焦点をあて、大袈裟でも説明不足でもなくちょうどいい、完全にわたしたち目線でレポートしてくれる。
様々な局面を多面で捉えて知りたい欲で突き進む「謎の国家ソマリランド」からの本作。ほんとに恋しているんだな。
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いやあ、これはたまげた! 高野さん、危機一髪だったんじゃないか! こんな目に遭ってたとは。ブログやインタビューなんかではほとんど語ってなかったのでは? 待ちかねていた二年ぶりの新作は、まったく驚きの内容なのであった。
タイトルからして、「謎の独立国家ソマリランド」のゆるめの(ほめ言葉です。念のため)後日談的なものだと思って読み出した。実際、終盤まではそういう感じで、高野さんが再び三たびソマリランドや南部ソマリアを訪れたときの、変わったり変わっていなかったりするあちらの様子が書かれている。おなじみワイヤップやハムディたちと再会し、ずいぶん治安の良くなった南部ソマリアで念願の家庭料理を習ったり、人気歌手に会いに行ったり。
前作ではソマリランドの特異な政治経済状況に驚かされたのだが、今回は、「素の」ソマリ人の生活を知りたいということが興味の焦点となっている。これが思いの外難しくて苦労しつつ、でもまあ、そこは高野さん、普通はよそ者を決して入れないソマリ家庭の奥にまで入り込み、普段の姿をばっちり見てくる。このあたりは独壇場。特に女性たちの姿が活写されていて楽しい。
一般のムスリムについて、私たちが知っていることはあまりにも少ない。特に「ソマリ人社会」については、そういうものが存在することすらまったく知らなかった。世界中どこへ行こうがソマリ社会の枠の中で生きるほどの強固なつながりを持ちつつ、いくつもの国に分かれているソマリ人。「氏族」というものが争いの種であり、同時に平和をもたらすものともなっているという。そのありようはまったく興味深い。
自分たちから見て理解しがたく、常識では計り知れないと思えることでも、その民族・宗教をよく知れば、そこには一貫した論理があり、伝統に従った行動規範がある、と高野さんは書く。イスラム社会との軋轢が高まりつつある今、そういう視点は実に貴重だ。同時に、世界は広いなあ、異文化というのはそう簡単に理解できるものではないのだなあとしみじみ思う。
わたしにとっては、高野さんの一連の著作ほど、イスラム社会について理解する手がかりをくれるものはない。今回なるほどなあと思ったことの一つが、民主主義選挙についてだ。エジプトの事態をはじめとして、イスラムの国では、民主的に選挙が行われたのに混乱が深まったりするのはなぜか、疑問に思ってきたのだ。簡単に図式化すると、宗教による抑圧を嫌うインテリが民主主義を持ち込む → 選挙が行われる → 宗教は選挙には強い(インテリは理想主義で団結しにくい) → イスラム厳格派が政権をとる → 世俗派が反政府活動をする → 政府が弾圧する、ということのようだ。「民主派は民主主義選挙では弱い」というこの皮肉。エジプトなんか軍と結託してしまった。うーん。
あ、もちろん、高野さんの本なのだからして、笑いももれなくついてくる。とぼけたエピソード満載だが、最高なのはモガディショで便秘に苦しむくだり。悲願だった南部ソマリア初見学の日だというのに、「覚醒植物」カート摂取の副作用である極度の便秘に苦しむ。ソマリアで初めて畑や川を見たり、長老たちの話し合いを間近に見たり、願ってもない経験をしながら、高野さんの頭は「大腸と肛門の異常事態」でいっぱい。「半分尻を浮かせたような、ひょこひょこした歩き方」を想像してかなり笑った。
と、これだけでも十分面白いのだが、それで終わらなかったのだ。便秘解消(この場面もケッサク)の二日後、とんでもないことが起こるのだ。まさに危機一髪。それは…、いやこれは語るまい。読んでください。びっくりするよ~。
しかしまあ、フツーのジャーナリストはこういうふうには書かないわなあとつくづく思う。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それをおもしろおかしく書く」というモットーを、まさに文字通り実践している。やっぱり「われらが高野さん」である。
表紙は「モガディショの剛腕姫」ハムディ。なんともかっこいい!こんな面構えの娘さんってあまりいないだろう。オソロシイまでの行動力と胆力。こういう人がいるんだなあと感心する。また、「おわりに」でふれられる元ソマリ海賊である受刑者とのエピソードも印象的だ。待った甲斐のある一冊でした。
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面白かった「謎の独立国家ソマリランド」の続編。著者本人が片想いと称しているように、最初から最後まで自由奔放で、掴みどころがなく、即断即決、行動力の権化で、タフでドライなソマリ人たちに振り回される様子が楽しい。その一方で友人のジャーナリストが暗殺されたり、撃たれたり、自分も戦闘に巻き込まれて九死に一生を得るなど、命の危険とも隣り合わせ。この人はジャーナリストではない。観察者になれないのだ。当事者になってしまう。探検。
ソマリ人の娘さんに料理を習ったり(これは政治家のインタビューより難易度が高いらしい)、長老に会いに行って感銘を受けたり、ソマリ社会への浸透度は前作よりずっと深化している。
嬉しかったのが豪腕姫ハムディ、盟友ワイヤッブなどの写真。みんな映画の登場人物みたいに、いきいきとした、味のある、いい顔をしている。この人はきっとこういう話し方をするんじゃないか、この人はこんな性格に違いない、と思わせるところがあって、見ているだけで楽しい。不思議だ。
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高野秀行さんのソマリア本第2弾。前作に引き続き、面白い一冊に仕上がっておりまして、高野さんに新しいテーマが見つかって本当に良かったと、生意気にも思ってしまうのでありました。読みごたえという意味では、やっぱり前作『謎の独立国家ソマリランド』の方がすごかったし、きっとあちらが代表作になっていくのだろうなとは思うのですが、こちらも情報量としては十分。特に後半の料理の話や、実際に襲撃を受ける話は現地まで行って、奥まで入り込んだからこその話。なかなかほかで読めるモノではないでしょう。ソマリアで高野さんをナビゲートしてくれていたハムディが亡命してしまったこれから、さてどうするのか。これで終わり…ではないよね、と今後への期待も込めて。
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前作も面白かったが氏族の話など
読むのがしんどかったところもあった
今回はさらっと読め
なおかつソマリアの家庭にまで入り込んで
ソマリアの文化、社会がわかる
著者にはソマリア研究家?にとどまらず
世界中をまだまだ旅してほしい
旅行作家は数多くあれど
文化の内奥にまで入り込み
怪しいブラックホールみたいな世界を
面白く描く作家は唯一無二だ
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前著「謎の独立国家ソマリランド…」が大ヒットし、いくつもの文壇の賞を受賞した高野秀行のソマリア物第二弾である。
本書を読む人はほとんどが前著を読んでいるだろうが、おそらく前半は既読感を味わうだろう。一般家庭とか家庭料理など庶民の生活に重点を置いて前著とは異なる視点で描いているにもかかわらずだ。しかし、後半ソマリランドではなくモガディショの描写になると、ソマリランドとのコントラストのせいか緊迫感が出てくるせいか一気におもしろくなった。
ところで、表題の恋するソマリアとは筆者を引き付けるのはソマリランドだけではなく、ソマリ人世界のことを示している。いや、ハムディのことに違いない。この魅力的な美女がいなければ、筆者の思い入れも本書のおもしろさも一気に冷めることだろう。
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http://www.geocities.jp/keropero2003/hikounin/somaliland.htmlここで読んで依頼気になっていた国ではありましたが、実際に行かれた人がいたことに驚きです。ジャーナリストという職業の本髄をみた気がします。
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言語を覚え、人の行けないところへ行き、人の出来ない体験をする。高野さんはそれをモットーにあちこちの辺境を訪ね歩いてきた。行動力といい洞察力といい、文章のわかりやすさといい、図抜けた存在だとこの作品でも改めて思った。
ソマリランドとプントランド、ソマリアと巡った前作が質といい量と、独創性といいあまりに圧倒的だったので、二番煎じだと思ってあまり期待せずに読み始めた。
しかし、その語り口のなめらかさもあってスルスルと一気読みしてしまった。
ワイアップ、ハムディといった登場人物の描写は生き生きしているし、源氏物語やら石田三成といった例えは前作のようにやりすぎてなくて良い。リアル北斗の拳という書き方も一箇所しか出てこず効果的だった。家庭料理をマスターしようと執念を燃やしたり、誰も噛んでないのにカートを噛みまくったり、石のような糞をひり出すところは情けなくていい。
戦闘については、「生きている兵隊」を読んだばっかりだし、高野さんの平易な書きっぷりが緊張感をそこなっている感じ。まあ戦場って案外そんなものかもしれないけど。それよりは戦闘を経験し、現地ジャーナリストに認められるというくだりには感動させられた。
高野さんの作品を読んで、致命的だなと思うのは、親の描写が出来ないこと。大事なのは家庭料理よりも家庭なんだと思うが、そのあたりは子どもを作らず、勝手気ままに世界中を歩き回ってきたために、獲得できない視点なのだろう。高野さんが寄せてくれた、拙著「床抜け」の感想。そこには離婚や子どもに会えないということに関しての言及がまったくなかったことからも、そうなんじゃないかと思っている。
とはいえ高野さんが所帯じみたことを書き始めたら、彼の作品のエンタメノンフとしての魅力は半減するので、今のまま突き進むのがいいのではないかな。
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「謎の独立国家ソマリランド」の続編は、リアクション芸人が如く過激な方向へ突き進む。この路線だと次は死んでしまうので、遺跡調査などの方向転換が良いかと。
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前著からの急展開もあり、危機一髪もありと、読み応えのある内容。イスラム過激派がなぜ外国人を標的にするかについてのソマリ的解釈にはなるほどと思ってしまった。
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『謎の独立国家 ソマリランド』に続く高野秀行ソマリもの第二弾。タイトルにある通り、著者はソマリ社会に認められたくて仕方がない。日本にほとんどソマリランド/ソマリアについての知識がある人がいないため、我こそが第一人者であると認められたい。警護一つとっても客人であることは明らかなんだけれども、どこかで仲間だと思ってもらいたい。だってこんなに好きでのめりこんでいるんだもん、という感じだろうか。それは正しく片想いというものに近い。ソマリ人が正しくツンデレ派なので、ますます焦れる。時々向こうも気のある素振りをするものだからますますだ。最後の「裏切り」は著者ならずともちょっと切なくなる。
内容は、前著以降も定期的に訪れているソマリランド/ソマリアについての話。
若干ネタバレになるが、ソマリランドの有名ミュージシャンへのインタビュー、ソマリランドへの中古日本車の販売ビジネス、ソマリア人早大生からのお遣い、ソマリ家庭料理の体験、ソマリの知り合いのTV記者の暗殺事件、などなどが著者の切なる想いとともにつづられる。その中でもハイライトは、何よりもシャベル・ホーセ州知事と国会議員との南部ソマリアの取材旅行でゲリラに襲撃された下りだろう。相手は火器で武装して攻撃してきているのだから、本当に死んでもおかしくなかったのだろう。
著者が相手側に肩入れして深く入り込んで取材をしていることで、「文化の違い」というものがよくわかる。違いはあっても、優劣はないのだという思いを強くしてくれる。
『謎の独立国家 ソマリランド』ほどの衝撃はないが、『謎の独立国家 ソマリランド』が気に入った人なら文句なくお薦め。挿入されているカラー写真もアフリカらしくカラフルで素敵だ。
→ 『謎の独立国家 ソマリランド』レビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4860112385
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●学校の勉強や普段の生活からでは、全く馴染みのないソマリアについて書かれたルポルタージュ。まさに未知の世界のことが書かれていて面白かった。