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現代の作家が描いた戦記物って言う処が新しいのかな。
戦闘シーンは冒頭のみで、殆ど野戦病院を舞台とする一見のどかな場面が多い。
情報が不足している時代だから前線が前進しているのか後退しているのか、日本軍は勝っているのか負けているのかも判らないままに医薬品不足から傷病兵はバタバタ死んでいく。
タイトル名は死んだ戦友の遺骨の一部を主人公が故国へ持ち帰ろうとするところから取ったのだと思うが、それも果たせずに行軍の最中にあっけなく死んでしまう。
苦い余韻が残る小説でした。
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芥川賞候補作品だったんですね(納得) あまりにリアルな内容だったので…感想らしい感想はやめときます(^^;;
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20150824 芥川賞候補作になった作品。戦場の描写がリアル過ぎて、描写がすごい。もっと人に読まれるべき。次回作が気になる。
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第46回新潮新人賞受賞作であり、第152回芥川賞候補作。戦争を知らない、体験すらした事がない。そんな世代の作家が描く、戦争小説。正直、そんなに期待をしてはいなかったのだが読んでみると違和感なく、すんなりと文章や描写が頭の中に入ってきてびっくりした。戦争を知らない世代が戦争を執筆する事により、戦争の惨劇が次の世代へと受け継がれ、語られていくのではないだろうか。そんな風に思った。
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戦争がテーマの本は数あれど、これほどに戦闘や被害を語らずに戦争の悲惨さを表現した本を読んだことがない。目を背けたくなるような場面はなく、淡々と語られる死へ導かれる兵士たちの様子は少し観念的で、それでも戦争のない世界を実現したいと思わせる新しい切り口。若い作者の初の著書とのことで、今後も期待。
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太平洋戦争での日本兵は、実際の戦闘による死よりも圧倒的に戦病死のほうが多かったのです。兵站を軽視して戦線を拡げるだけ拡げた結果、飢えと熱帯地方特有の病に侵され多くの命が失われていきました。戦闘場面はわずかで、多くは野戦病院での日常の様子や現地人との淡い交流が、乾いた文体で描かれています。そして、死の影がひたひたと忍び寄ってくるのを、多くの兵士が自覚しながら死んでいった様子が描かれています。
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目新しさやリアルさを感じるかと言われると疑問を覚える。
でも線や陰影の美しさ、いい意味での入りやすい人間像に、これは伝記ではなく戦争小説なんだと思った。
戦争に興味があり、既に何冊も読んできた人には物足りなさを感じると思う。
でも「永遠の0」が映画化され大きな反響を生んだように、若い世代が共感し戦争を知ろうと思う一歩になる。そういう小説にはきっととても価値があるんじゃないかと思う。
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ーー黄色い街道がどこまでも伸びていたーー一本の欅に似た樹木の下に身を預け、飢えと病による死を目の前にして、同輩たちの最期を思い返す一人の若き兵士がいた。
太平洋戦争で激戦地となった南洋の島、その殺戮の描写は少ない。むしろ、確実に死が迫ってくる野戦病院の日常を、そこに収容されている負傷した兵士たちを描くことでしか表せない戦争の姿がある。
人の死が日常になり、心身に空洞ができたように、もはや哀しみも感じなくなった兵士。
この作品の淡々と、そして乾いた描写が悲惨な状況を読み進めることをかろうじて助けてくれる。
ーー果たしてこれは戦争だろうか。・・・我々は誰と戦うでもなく、一人、また一人と倒れ、朽ちていく。ーー
飢えと、病と、手榴弾による自決・・・敵機は最早、攻撃すらせず、通り過ぎていく。これも戦争。
タイトルの表す意味、それがわかるとき、こみあげてくる何かがある。それでも、故郷に帰って行ける者はまだいい。
遠く離れた南洋の島に、今なお眠る遺骨が多数あることに思いを巡らすにつれ、哀しく、辛い気持ちを抑えられない。
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戦争小説。
太平洋戦争、南洋の密林での戦い。
死と隣り合わせのなか、故郷や死んでいった仲間たちを思い、自分の死をやがて忘れていったこと。
負傷して野戦病院にいた若き兵士。
死んだ兵士たちは、指を切り落とされ、それすらも故郷に帰ることができる可能性も薄い、国のために命を捧げた証。
悪化する戦中、動ける負傷兵たちだけでもと、戦うために密林の中をさまよった日々。
何と戦っているのかもわからないまま、次々と死んでいった若き命。
その場にいるかのようにリアルに書かれていて、それでいて戦争でたくさん人がなくなったのも事実で、なんともやるせない。
正直主人公は助かるのではと思ってたのに、最後死んでしまうのとんでもなく悲しかった。
人って愚かで愛しい。
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122ページの小品だが非常に濃い作品だと感じた。こんな戦争ものを広島 原爆記念日の日に読むとは何かの縁かな? それにしても作者初の著書とは思えないくらいな水準の高さだと思う。
この作品も含め何回も芥川賞候補になり、ついに今年の芥川賞を受賞したのが首肯できる。
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戦闘する様な激しい戦争についてではなく傷を負った兵隊たちの話。
戦争を知らない私と同世代の人が描いたとは思えないくらい鮮明な表現力で書いてあった。
最初は薄い本でびっくりしましたが、読み応えがあり、考えさせられる作品でした。
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終戦のこの時期に読んでみました。
作者の方の非常にリアリティのある表現で、経験者と思ってしまうぐらいです。
読んで感じた言葉は、「人間死ぬ時は死ぬ」ということ。
この作品の舞台は、第二次世界大戦中の南方戦線。
傷ついて野戦病院に担ぎ込まれた主人公が、上官、仲間の死に面するまでの経緯や感じたこと、そしてついには自分も、、、そんな流れが切々と描かれてます。
戦争の戦いの中で敵に立ち向かって死ぬ、
味方の誤射に当たって死ぬ、
疫病で死ぬ、
衰弱して死ぬ。
至る所に死の影は潜んでおり、
戦争が有ろうと無かろうと、
戦争が良いものであろうと悪いものであろうと、
全てを超えたレベルで、誰の身にも死は訪れるものである。
私は長生きしたいので、死を怖れてます。
しかしいずれ死ぬ時が来る。
その時までに自分は何をしておくべきか。
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文章も端正で、ストーリーの運びもリアル。戦後派の誰かが書いていれば、評判になるだろう。しかし、この作品を今書くこの作家が、信用ならない。まあ、読み手の感覚が古いのであって、書くということは虚構だというふうにいえば何を書いてもいいんだろう。
でもこれ嘘でしょ。そんな感想から逃れられないのは何故なんだろう。こう書いている、ぼくが古いのだろうか。
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戦争ってなんなんだろう?使い古された言葉なのかもしれないが……この話には戦闘など殆ど出てこない。南方に出征された祖先の方々に心からの感謝と哀悼の意を表します。
日本軍は本当に人を大事にしなかった。葉書一枚でくる兵隊は馬よりも安いと言われた。悲しいけど日本人の本質がそこにある気がする。
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淡々とした、ただ淡々とした、ある男の戦記。
派手な戦闘シーンはない。エンタメ的なストーリーもない。周りの男たちが一人また一人と怪我や病気で死んでいく日常の風景の描写が続く。
「果たしてこれは戦争だろうか」「これは戦争なのだ」「これも戦争なのだ」
感情を抑えた徹底した観察描写が効果的な小品。
戦争物としてはどうしても古処誠二さんと比べてしまうため見劣りがしてしまう。この作品に興味を持ったら、ぜひ古処さんの「接近」や「ルール」も読んで欲しい。