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「流しの母親」をやる女性の一代記みたいな作品。
著者の長編ははじめてだが、読み甲斐のある小説だと思う。
ストーリーもキャラクターも、奇抜なようで自然な、不思議な感触だった。展開も、ぼんやり掴めながらも収束が読めない。文章が滑らかさも加わって、なんとも引き込まれる仕上がりになっている。
文芸として、巧い作品だった。他作も、少しずつ読みたくなる。
4-
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初めて読む作家さん。
母親を必要とする家庭に入り込み、一つの家庭に居座ることなく時期がくると去ってゆく、流れの母親『宏美』。
謎が多く、物哀しさ漂う物語だったが最後で少し救われた気持ちに。
やはり子供は無条件で愛されている期間が必要なのだと改めて実感する。
子供時代くらい、疑うことなく心身ともに安心して生活して欲しいと心から思う。
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どういう風に転がるか分からないスタートで、だんだん薄皮がめくれるように色々な事が明らかになっていき、柔らかな着地点に到達する、まさにエンタメ小説のお手本のような一冊。
個人的にはNHKでやっていたECDのドキュメントと被る部分も有ったり。
血の繋がりが有る一般的な家族であれ、そうではない家族であれ、最終的にはやはり皆1人1人の個人。だからこそ愛しいし、憎たらしい。
母親がいないという共通点はあるものの、住む場所も生活のレベルも違う、登場人物達の様々な家族像を作者は見事に描き出しています。
ドライとウェットが入り混じった家族という関係性の特別さにあらためて感じ入りました。
主人公の広美は果たして全員の事を本当に忘れてたのかな?実はそうじゃないんじゃないかな?
突然来て突然去っていく、しかし全員の心の中に暖かい繋がりを残していく、そんなミステリアスな広美の姿は言ってみればメリーポピンズですよね。
そんなメリーポピンズの姿のままでいてほしかった自分としては、出来れば最後の章で彼女の秘密のベールをはがしてほしくなかった。
それで星1つ削りました。
だけど読む人にとってはあの章が一番良いとも思います。なので、あくまでも個人的な評価として。
すんません。
だけどお話のレベルは文句無しの5つ星です。
いつか映画になるだろうな。
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最後までどういうこと?と思いながらの読了。読了してもすっきりしない。時系列も過去と現在が交互で慣れてくるまではよくわからないまま読み進めたけど。非現実的だなと思ったけど母性本能のかたまり?
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「おそれいりましてございます」
近所の定食屋に新しく入った店員は広美といった。
長距離トラックドライバーで、妻をがんでなくしたばかりの健介はまだ30代。
小さい3人の子どもたちと暮らしている。
こんなハンバーグを、子どもたちに食べさせてやりたい。
健介の何気ない一言をきっかけに、広美は子どもたちの面倒を見るようになる。そして生活を共にするように。それもごく自然な形で。
そして時がたち、生活が落ち着いた頃、彼女は風のようにいなくなっていった。
10数年がたった東京郊外のスナック。
そこに恋人の祐理が通いつめていることを知った大学生のあおいは、祐理を問いただす。
真面目で成績優秀な祐理がそこに通うのには、深い理由があった。
広美が歩んできた「家族たち」との時間と、祐理とあおいが学生時代を過ごす現代を交錯しながら、物語は進んでいく。
様々な事情から、「母がいない家庭」を渡り歩き、全身全霊で尽くしぬいた後、静かに去っていく広美。
彼女がそんな人生を歩まずにいられなかったのにも、深い理由があった。
子どもに会えない母もいる。
子どものいない母もいる。
血のつながらない母もいる。
ただ、目の前にいる子どもに、なりふりかまわず尽くしていくのが母の愛情。
その心は大空よりも広く、大海よりも深い。
人のために明かりを灯せば、自分の前が明るくなる。
さりげなくて深い、母の愛の物語。
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不遇の子どもがいると聞けば、どんな手を使おうともその父子家庭に入り込み、赤の他人の子どものために最善を尽くす女。そして自分の去り時だと思うと速やかに姿を消し、また次の家庭を探しては移る。
父子の父親のほうからはもう不要だと思われていたとしても、子のほうにとっては実の母親同然の存在。大人になった今も彼女のことを忘れられない子どもたちが、彼女を追いかける。
感情が読めないから彼女を理解しづらいけれど、母性とはこういうものなのでしょうか。不思議なタイトルに思い出すのは映画『シェーン』。「カムバック!」と言われたらそうしてもいいと思う。きっと、戻れる。
「借して」という誤字のせいでかなりテンションが下がってもったいない気がしたのは否めません。(^^;
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図書館でジャケ借り。
どんな状況?どうゆうこと?って思いながら読み進めて、最後まで完全にはスッキリしなかったけど、引き込まれて描写が浮かびやすく一気に読めた。
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ラスト、祐理と暮らすことにならなくてよかった。グッときたのは夜逃げの時に秋夫を誉めてあげてたシーン。淡々と飄々と進んできた物語なのに、あそこはなんか温度が高かったな。
あおいが少しずつ成長する感じもよかった。就活で煮詰まってる時、適当にガス抜きしてくれた広美。
映画にしたら面白いと思うたしかに。主演はだれにしよう、登場人物多すぎだな、子役もたくさんいるし。
親子ってほんと厄介だとつくづく思わされはしたけど、嫌な読後感ではない。それが原田ひ香の良さだろう。
ジャケットは単行本の方がずっといい。
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不思議な話です。でもホンワカします。登場人物と時系列がややこしく、面倒なところもありますが、さじを投げてしまわない程度の微妙なラインで踏みとどまってくれています。こんなお話が2015年に出版されて図書館に眠っていたのですね、探し当てて良かったです。
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各地を放浪して、子供がいなくなったさみしさを紛らわせる女性の物語。
こんなに簡単に誰かの家に入れるのかと思うとびっくりするけど。
登場人物が多くて「え?この子は以前の話に出てきた!?」と確認しながら読みました。
虐待する男性を殺したんじゃないかという描写があったけど、殺すのはわかるんだけど、その後子供を施設に預けて出て行っちゃったんだ…と思うと複雑。
逮捕されたときや、真実がわかってしまったときのことを考えてのことだったのかなぁ。
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母親を必要とする子供と、必要とされたい元母親の長い物語だった。
25歳の広美の1番初めの話が、母親ウエスタンを始めるきっかけだったのではないだろうか。
「母親」として扱われることに喜びを感じたのだと思う。
ラストシーンは、「母親」としてではなく、「広美」を必要とされたことに安堵した。
それが物語のきっかけとなった健介によるものなのが尚更よかった。
裕理もあおいも「母親」として広美を受け入れようとしていたから、このままじゃ「広美」としての人生が死んでしまうと感じた。
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題名からどんな話か全く想像がつかず、なんとなくパワフルで物悲しいイメージがあった。
読んでみるとと、これまで読んできた話とは違う感じでかなり新鮮だった。
なんらかの事情で母のいない子どもを世話して各地をまわるというお話。
現代と過去の二つの視点が交錯する。
母親をテーマにした作品は数あれど、ほんのいっとき、全身全霊の愛情を注いでいなくなる母親の姿に胸がいっぱいになる。
同時に、母を求めてやまない子どもたちの姿も心が痛む。
広美さんが子供を求める姿は、ちょっと狂気的なところもあり、子どもと一緒にいられるのなら、身も心も男に捧げることすらある。
後半は子どものためにここまで…という場面もあり、広美さんの愛の深さを痛感させられる。
一人の母親の生き方が周囲を変えていく様子も描かれ、なんとも言えない後味もよかった。
血のつながり、法的なつながりを持たない母親の姿を描き、母とは親子とはということを考えさせられる。
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どこにもいないような女の人の、フィクション!という感じの小説。
原田ひ香さんの小説は2冊めですが、1冊めで読んだ『三千円の使い方』とは全く異なるテイストで、リアリティのなさが面白かったです(もちろん、こんな生き方をしてる人も実際にはいるのでしょうが)。
血縁のない親子(のような)関係で、大人が子供を思って守る、というシチュエーションは『そしてバトンは渡された』に通じるものがある気がしましたが、こちらは心温まるお話ではなかったかな。
でも、誰にも頼らずに生きる広美さんの潔さは気持ちよかった。
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ウェスタンといえば「シェーン」
子供のいる家に母はやってきて、ふらりと去っていく。かっこいい〜
木皿花さんの解説も、また絶妙。
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父子家庭を渡り歩く主人公の広美は、様々な環境で必死で生きているこどもたちを、少しでも支えてあげたいという一心で、日々を過ごしている。
それは、広美のエゴのようにも感じられるし、実際に育てられたこどもの何人かは、大人になってからも、広美の存在に振り回されているし、とはいえ、広美がいなかったらまっとうに成長できていたかも危ういし。
納得いく部分と、しっくりこない部分とがある一冊だった。
私には、ここまで自分を犠牲にしてまで、こどもたちのサポートにコミットできるとは思えない。
広美にどんな過去があるのか、お話の中では明らかにはなりきらないが、そういう人生もあるのか、いや現実にはないだろう。
ただ、それくらいの気持ちで、自分のこどもや、場合によっては生徒たちなどと向き合う人たちには、本当に尊敬しかない。