紙の本
その心は大空よりも広く、大海よりも深い。 人のために明かりを灯せば、自分の前が明るくなる。 さりげなくて深い、母の愛の物語。
2021/10/14 11:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
「おそれいりましてございます」
近所の定食屋に新しく入った店員は広美といった。
長距離トラックドライバーで、妻をがんでなくしたばかりの健介はまだ30代。
小さい3人の子どもたちと暮らしている。
こんなハンバーグを、子どもたちに食べさせてやりたい。
健介の何気ない一言をきっかけに、広美は子どもたちの面倒を見るようになる。そして生活を共にするように。それもごく自然な形で。
そして時がたち、生活が落ち着いた頃、彼女は風のようにいなくなっていった。
10数年がたった東京郊外のスナック。
そこに恋人の祐理が通いつめていることを知った大学生のあおいは、祐理を問いただす。
真面目で成績優秀な祐理がそこに通うのには、深い理由があった。
広美が歩んできた「家族たち」との時間と、祐理とあおいが学生時代を過ごす現代を交錯しながら、物語は進んでいく。
様々な事情から、「母がいない家庭」を渡り歩き、全身全霊で尽くしぬいた後、静かに去っていく広美。
彼女がそんな人生を歩まずにいられなかったのにも、深い理由があった。
子どもに会えない母もいる。
子どものいない母もいる。
血のつながらない母もいる。
ただ、目の前にいる子どもに、なりふりかまわず尽くしていくのが母の愛情。
その心は大空よりも広く、大海よりも深い。
人のために明かりを灯せば、自分の前が明るくなる。
さりげなくて深い、母の愛の物語。
紙の本
パッチワークのよう
2024/04/05 22:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ピーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
過去と現在を平行して描いている。
初めは分からずに読んでいて、少しずつ気付く。
主人公は自分の子どもを置いて婚家を去った女。
彼女の強い母性本能が他人の子供を放っておけなくなり世話を焼き、いつの間にか母親を演じ、そしてスッと去って行く。
彼女の生き方も、そして文の構成もパッチワークのように思えた。
紙の本
テーマをどう感じるかで好悪が分かれそうな話。
2015/09/03 21:50
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
悪くはない。筆力が確かで、構成もちゃんとしていると思う。
ただ、話自体はあまり好きになれなかった。別れた子どもの代わりに他の子どもの母親になることを求めて放浪する女、というテーマがいまひとつぴんと来ないというか、興味や共感を持てなかった。読んでいてもざらざらした気分になるところがあった。あと、話が分断されすぎているのが読みにくい。
紙の本
きもちわるい
2022/10/16 11:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nap - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分の子供を捨てた代わりに、他人の子供を面倒見る。
ただし、一定期間だけ。
で、関わった子供のことは、後ですっかり忘れる。
投稿元:
レビューを見る
母性愛とは違う何か.強いて言えば人間愛だろうか.
それにしても歪で不器用な感じがする.
主人公の思考が読めず,只々不思議な感覚だけが残る.
天童荒太さんの「悼む人」にも同じ印象を受けたが,それ以来かも.結末を読むと少し納得しました.奥深く,評価が難しい作品.
以下あらすじ(巻末より)
いつも行く食堂で出会った女の名は、広美といった。気づけば死んだ妻に代わり、子供たちの面倒を見てくれるようになっていた広美。しかしまたある日突然、彼女は家族の前から消えてしまう。身体一つで、別の町へと去って行ったのだ―。家族から次の家族へ、全国をさすらう女。彼女は一体誰で、何が目的なのか?痛快で爽快な、誰も読んだことのない女一代記。
投稿元:
レビューを見る
父子家庭の家に入り込み、他人の母親になる広美。母親が必要な家と、子供が必要だった広美、現在と過去を交互に進めながら話が展開していく。リアリティは置いといて、面白いストーリーだった。
投稿元:
レビューを見る
「人生オークション」「東京ロンダリング」を読んでいたので購入しました。
原田さんは素材選びが個性的で、設定だけでワクワクします。
が、この作品はなかなかページが進みませんでした。
合わなかった…というより、主人公の広美がフワフワしすぎて体温を感じられなかった。
終盤に広美の過去を知るまで、読者である私は世界に入り込めず、ストーリーの傍観者で文字をなぞっているだけのような気分でした。
テーマは今よくテレビや雑誌でも取り上げられることが多い「母と子」の関係です。
終盤で、遠野なぎこさんのブログに通ずるものがあるように感じました。
時間を置いて再読したい作品。
投稿元:
レビューを見る
いろいろな人の母親役をやってフラフラしている主人公。自分が母親になったからか、「今まで関わった子どもたちのこと、殆ど覚えていない」というのは、全然納得がいかなくて…そこは不満だけれど、全体的には面白かったので星-1で。
投稿元:
レビューを見る
母親のいない家庭にいつのまにか入っていき、子供の世話をする広美。
子供たちは皆、広美に懐く。…が、いつの間にか姿を消してしまう。
彼女はなぜそんな暮らしを選んでいるのか?
不思議なだけでなく、ホロッとしてしまう部分がたくさんあった。
2016.1.23
投稿元:
レビューを見る
本気で子供のことを思う主人公、広美の姿はぐっとくるものがあった。
だけど、本人の思いとは裏腹に子供たちの想いが切ない。
不思議と広美に幸せになって欲しいと願ってた。
H27.4.1~4.6
投稿元:
レビューを見る
あるときはバブル景気の真っ只中の東北、
あるときはバブルがはじけた時期の北海道帯広に
北海道えりも町、
あるときは宮城県のとある町。
各地を転々としながら
定食屋「いろは」の店員、
スナック「卑弥呼」で働くホステス、
スーパーの洋品店の店員など職を変え、
男やもめで母親のいない家庭にふらりと現れ、愛情に飢えた子供たちに愛を与え去っていく広美。
身体一つで、家族から次の家族へ、全国をさすらう女。
果たして彼女は一体誰なのか?
何が目的なのか?
『東京ロンダリング』で一躍注目を浴びた著者の長編第二作であり、
ちょっと変わった家族小説。
初めての原田ひ香作品だったけど、
木皿泉の解説にあるようにタイトルの秀逸さと
主人公広美のワケの分からなさが面白くて(笑)
一気読み。
(映画ファンであればタイトルから往年の西部劇の傑作「シェーン」を思い浮かべるだろうし、その発想は正解です)
伊丹十三の傑作映画「たんぽぽ」がラーメン屋版「シェーン」だったのに対して、
こちらは母親版「シェーン」。
悪者たちがはびこる荒廃した西部の町に流れ者がふらりとやってきて
父親のいない母子と知り合い
ひととき共に暮らし、
悪者たちを成敗して
またふらりと去っていく。
(勿論、一緒に暮らし懐いた子供は、「シェーン、カムバック!」と別れを惜しむわけです)
これを現代の母親に置き換えたわけだけど
もうその斬新な発想からして
心躍るし、
主人公広美の過去パートと
幼少期に広美に育てられた青年が広美を捜す現代パートを交互に描いた巧みな構成、
リズム感のいい文体と
胸を打つ借り物でないセリフ。
そして、無理のないその土地土地の方言が
いいアクセントになって飽きさせません。
色白で小柄。透明感のある赤い唇と笑うとえくぼのできる愛嬌のある顔。
「申し訳ございません。おそれいりましてございます。」
というなんとも奇異な挨拶が口癖の(笑)
ミステリアスでなんとも魅力のある謎の女、広美にどんどん惹かれていく不思議。
広美の行動はホンマ無茶苦茶なんやけど、
なぜか憎めない。
子供に食べさせるために魚の小骨を丁寧に取ってあげたり、
風呂に一緒に入ったり、
保育園に毎日一緒に行き一緒に遊んだり、
謝ることの大切さ、挨拶の仕方、ご飯食べるときのマナー、花の名前、折り紙の遊び方、ホットケーキの作り方、勉強のやり方を教えたり、
夜明けにヴァン・ヘイレンの「Jump」をみんなで歌ったり、
ひととき広美と時を過ごした子供たちも
感謝こそすれ、誰も彼女を恨んでなんかいない。
人が人として甦るためには
何も特別な儀式なんて必要ないのだろう。
なんでもない日々の暮らしを積み重ねることこそが
胸に巣くう悲しみや怒りや孤独を浄化し、
穏やかな日々の暮らしでのかけがえのない記憶が心の核となり
どんなときも人を救ってくれるのだと、
自分���母親に捨てられ施設で育った経験から
身に沁みて解っている。
誰かのためにではなく、
あくまでも自分のために行動した広美だからこそ、
関わったすべての家族の心に消えない記憶を残したのだと思う。
今は朽ちないことや老いないことをよしとする風潮が主流だけど、
歳をとったり、朽ちていったり、変わっていくことを怖れず書いている小説が僕は好きだ。
この小説も、
家族から家族へ
母親を必要とする家族を渡り歩き、
崩壊した家族を立て直すと
またどこかへ消えていく広美という女の20年に及ぶ一代記だ。
そう、映画「グロリア」のように
戦うおばさんはカッコいいのだ!
投稿元:
レビューを見る
初物。久しぶりに文庫化されるのを待ってた作品。設定は多分有り得ない。ヒロインに共感を持つことは勿論出来ない。けど、引き込まれて読み進んだ。最後、やっと帰る場所が見つかったヒロインにホッとしてる自分がいる。本当に不思議な作品。良い出会い。チャンスあればこの人の他の作品も読んでみよう。
投稿元:
レビューを見る
これがウエスタンか! え? と思いながら読み進むうちに、構造的にウエスタンだ、と思わざるをえない。
よく分からないよ!と思いながら読んでほしいけれど、あらすじレベルのネタバレを含むならばこんな感じ。
子供たちや弱者から見れば頼もしくある人物(西部劇で言うところのガンマン、この本で言うところの彼女)が、ばったばったと洗濯物やたまった茶碗、湿った布団を片付けていき、家庭の安定を守る。
帰ってきて!と子供が泣き叫んでも、彼女は振り返らず、前に進んでいく。
かっこいい。
西部劇のガンマンもこんな気持ちだったんだろうか、とか良く分からない気持ちになってくる。
なんかすごいものを読んだ気がする。
表紙も格好いい。
投稿元:
レビューを見る
家族から家族へ、母親不在の家族の下へ全国をさすらう謎の女・広美の一代記。
まずタイトルが巧すぎる。西部劇の名作がパッと思い浮かび、あの独特の世界観が現代日本に甦る。
「おそれいりましたでございます」という不思議な言い回しも、彼女の辛い過去を知ることで深みが出てくる。人間って幸せな時には気づかない大切なことがある。一方通行ではなく、お互いが求め合うから愛が成立する。そんなことを教えてくれる秀作。エピローグの出来事もほっとする。
投稿元:
レビューを見る
家族モノを読むと母に電話しようかなあとか思うんだけど、大抵の場合本を読み終わるのが夜なので、結局しないことが多い。
まあそのうち帰省しよう。