投稿元:
レビューを見る
6編の短編集。
表題作だけでなく、どの話も重かった。みんな孤独で、重い過去を背負ってなんでもないように毎日の生活を送っている。
背負ってるものが大きいんだから、お願い!それ以上踏み込まないで!っていう登場人物がいて、でもその人もやっぱり何かしら重い荷物を背負ってる。
言わないだけで、普通の生活をしてるつもりの私たちの周りにももしかしたらいっぱいいるのかも…
ご近所と仲良く行き来して、親戚づきあいも丁寧に親しくして、職場の仲間や学校の友人たちも何でも話せる大切な関係…??
普通の暮らしをしたいだけなのに必ずついてくるこういう周りの存在。
とても丁寧に上手にお付き合いできる人がいる。
私は…別に何も背負ってないけど、少なくても今は自分のことと家族のこと、せいぜい実家のことを考えるので精いっぱい。
なんだか、負の荷物を背負ったような気分…
投稿元:
レビューを見る
皆さんの★の評価も微妙で、読もうか読むまいかと迷っていたところに、カバーが映画の佐藤浩市と本田翼になったものだから尚更手を出し辛くなったこの本。
だけども読む本切らして入った本屋の書棚でも行けそうなのはこれくらいだったので、漸く手にする。
“開拓のためによそから流れて来た者が住み着いた”土地、北海道。その寂れた町を舞台にして、他者と切り離された人生を送る者たちのお話が6つ。
なんだ、どのお話も生きる孤独とそれと交錯する他人の情とが絡まりあって読ませる佳いお話じゃないか。
私には、特に最後の2話、
歌人である老女と晩年の彼女と行動をともにした若い男の過去を辿って、ミステリーのような趣で読ませ、歌人の鮮やかな生き様を浮かび上がらせる「たたかいにやぶれて咲けよ」、
弟が起こした事件で街を追われた女性とその街で一人で暮らす老女の交流を描いて人生の諦観と達観を滲ます「潮風の家」
が良かったです。
投稿元:
レビューを見る
孤独な人達のお話
何故だか、すっと物語の中に入っていけた。
映画化された表題作
終わり方が…
映画はどう表現されているのだろう?
ちょっと気になったので
映画も見てみようと思いました。
投稿元:
レビューを見る
どの作品にも孤独な人物が登場し、人の死というものに関わっているので、重いです。それでも最後に希望が見える作品もあるけど、元気のない時に読むとちょっとしんどい。
装丁から受ける印象と、本の内容に隔たりがあるんじゃないかと思ってしまいました。
今の私には合わなかったけど、物語自体はじんわりと沁みる話が多いかと思います。
投稿元:
レビューを見る
直木賞を最近取られた方だ、という情報と、佐藤浩市さん主演で映画化されている、という情報だけありました。
だからまあ、正直に言うと、「佐藤浩市さんが、まあまず面白い、と思ったはず」というのが保険としてはありました。
(そんなこと言われても佐藤浩市さんも責任取れないでしょうけど)
全般的に、ちょっと影があって、浮世は何かと生きづらく。
男女関係は常に何かしら不幸という湿気を含んでほんのりと色づいているような。
解決は常に明快ではなく、曇り空の人の営みが愛おしいような。
嫌いじゃないです。そして、なかなか筆が上手い!
連城三紀彦さんの「恋文/私の叔父さん」とか思い出しました。
短編集。ただ、ある種、連作短編の趣もあります。
6編全てが、舞台が北海道各地。それから、6編のうち2編は主人公が同じです。
で、率直な印象で言うと、どれも雰囲気はあるし読ませる力はあるんだけど、なかなかこういう娯楽小説って実は難しい。
ただ、表題作は面白かったです。(さすが佐藤浩市さん?)
そしてなにより、70年代から80年代のにっかつロマンポルノ映画のような、後ろ向きな人間模様。
ため息と諦めと不幸と男女関係をブレンドして蒸留したような、負け組の背中が煤けた焦げ目が味わい深いような。
こういう肌合いと世界観っていうのは、無くならないんだなあ、というのがちょっと、嬉しいような。不思議なような。
フランスの恋愛ミステリー、ジョルジュ・シムノンのメグレ警視とか。ジャン・ギャバンの映画「ヘッドライト」とか。そういうムード。
そんな懐かしい、ちょっと甘口のお酒を飲むような。
たまには、悪くないものです。
#####################
簡単に備忘録。
●「かたちのないもの」
東京の大手のデパートでバリバリ働く、アラフォーで独身の女性総合職。
かつて、愛人関係にあった、やり手で魅力的だった年上の上司。
その上司は、今の主人公の人間性もキャリアも作り上げてくれた。
だが、出世街道の途中で、ポキリと折るように退職して故郷の北海道に隠棲してしまった。そして長い年月の末、病死。
その葬儀で知り合った不思議な持ち味の若いイケメンの牧師男性と、酒を飲んだり、死んだ元上司の心象風景を探ったりする。
謎は謎のままで、という淡い味わい。「こういう雰囲気で行くからね」というA面1曲目、という感じ。
●「海鳥の行方」
北海道の新聞社。そこの入社2年目くらいの若手女性記者。
男社会でセクハラ、パワハラ。嫌な上司に苛められ。トイレで泣いたりの日々。
というありふれた青春模様なんですけど、「大学時代の彼氏が同じような境遇なのか、鬱になった」というスパイスがあったりします。
ひょんなことで知り合った人生に一度挫折した中年男性。
その人が事故死。実は聞かされた人生の話は半分嘘で、前科者だった。
その男の記事を書こうとして、元妻に会いました。でも色々な人生模様を感じてしまった。
●「起終点駅ターミナル」
北海道で、国選弁護しかしない、という偏屈な初老の男��弁護士。
過去に元カノとの浮気から、その元カノが自殺して、罪悪感で妻子を捨てた。元裁判官。
そういう過去から、他人との交流を避けて隠棲しているが、ひょんなことからヤクザの情夫をかばう可哀そうな境遇の女性と交流してしまう。
恋愛関係になりかかるけど、そうならずに別れる。
●「スクラップ・ロード」
サラリーマンからドロップアウトした主人公。
ひょんなことから、かつて自分と母を捨てて蒸発した父と再会。
父は、スクラップ・ゴミを拾ってごみためで生きていた。
ごみのように人生ぼろぼろになった女性を拾って、共に暮らしていた。
詰ったりするけれど、父はそこで体を壊して死んでしまう。
●「たたかいにやぶれて咲けよ」
「海鳥の行方」の主人公の女性記者が、無くなった北海道の大歌人の追悼記事を書く。
奔放に恋多き女性だったその歌人。
その歌人の晩年の愛人と言うかパートナーと言うか、そういう存在だった、小説家志望の男性から話を聞く。
世間の評判に撃たれながら、懸命に生きた歌人の晩年を知っていく。
●「潮風の家」
北海道の場末の田舎町。貧乏な家に生まれた女性。弟が街の中で殺人を犯した。
貧しい上に後ろ指を指される中、故郷の街を出る。
当然のように水商売、そして、水商売仲間と、ほそぼそと堅気な仕事を始めた。
年月が過ぎて、もう若くない。
法事があって、故郷の街を数十年ぶりに訪ねる。
家族同様に面倒を見てくれた、近所の老女とのふれあい。
同じように苦しい境遇で、恐らくは水商売どころか風俗までやっていたらしき、老女のキャラクターが魅力的。
投稿元:
レビューを見る
鷲田完治が道東の釧路で法律事務所を開いてから三十年が経った。国選の弁護だけを引き受ける鷲田にとって、釧路地方裁判所刑事法廷、椎名敦子三十歳の覚醒剤使用事件は、九月に入って最初の仕事だった(表題作「起終点駅」)。久保田千鶴子は札幌駅からバスで五時間揺られ、故郷の天塩に辿り着いた。弟の正次はかつてこの町で強盗殺人を犯し、拘留二日目に自殺した。正次の死後、町を出ていくよう千鶴子を説得したのは、母の友人である星野たみ子だった(「潮風の家」)。北海道各地を舞台に、現代人の孤独とその先にある光を描いた短編集を、映画化と同時に文庫化!
投稿元:
レビューを見る
桜木さんの著書は初めてでした。
北海道の田舎を背景に、リアルに描かれていてよかった。
面白かったです。
投稿元:
レビューを見る
映画化で気になり、桜木紫乃さんの作品を初めて読んでみました。
人生で挫折を経験した人達が、諦めと共に生きている様子を切り取った短編集です。
全編通して著者の地元である北海道の寂れた街が描かれていて、物悲しさに拍車をかける一冊。
解説を読むと、"孤独"や"生きづらさ"を感じる人達を描く著者が、"孤独"と"生きづらさ"をどう捉えているのかがわかり、胸を打たれます。
他の作品もぜひ読もうと思いました。
個人的には、強い女性ばかり登場するのが印象深かったです。たしかに真理かな。
投稿元:
レビューを見る
初の桜木紫乃作品でしたが
6編の短編集です
とれもハッピーな物語ではなく
孤独で悲しい結果のお話でしたが
すべて後に希望もない
終わりではないなと思った
読者がその後の登場人物の
物語を作れるような作品で
今後も桜木紫乃作品読みたいと
思いました。
投稿元:
レビューを見る
桜木紫乃『起終点駅(ターミナル)』(小学館文庫)読了。
読了といっても『イン・ザ・プール』とほぼ同時に読み終えたのですが。
『ホテルローヤル』を読んだこと、昨年11月に映画化されたことが手に取ったキッカケでした。
表題作を含む6編を収録した短編集。
6編に何かつながりがあるのかなと思いながら読んでましたが、「海鳥の彼方」(2編目)に登場する新米新聞記者、山岸里和が「たたかいにやぶれて咲けよ」(5編目)に再登場するだけで、ひとつひとつが独立した小説でした。
この手の地域を限定した小説は、その土地に住んでいるかいないかで印象がずいぶん変わるように思います。
函館、釧路、札幌郊外、天塩…。その土地の独特の雰囲気(風、空気、風景、方言、なまり)が感じられるかどうか。
その点では小生は『たしかにそうだよなあ』と思いつつ読み終えることができました。
タイトルにしても、その土地が起点であり終点であるということを知らないと、単に人生の起点と終点を扱っていると誤解し共感できないでしょう。
総じていえば、桜木紫乃の文章はみずみずしい。
ちゃんと物語を作りながら、登場人物が目に見えるような文章で、男には書けない視点で丹念に描かれています、それが男視線でも。
しかも桜木紫乃の文章表現は実にうまい。
たとえば、道央の銀行勤めをドロップアウトした主人公が母が住む故郷に帰る場面(「スクラップ・ロード」)。
今なら、夫を失い息子も寄りつかなくなった母に集落は優しい。生まれ育った土地の人間関係を外から見れば、銀行の上下関係よりもはるかにわかりやすい『哀れみ』の尺度があった。故郷に戻った自分にいったいなにがあるのか。考えると心臓がぎゅっと絞られるような痛みが走る。[p.178]
「夫を失い息子も寄りつかなくなった母に集落は優しい」なんて表現、どうやったら思いつくのでしょう。しかも「『哀れみ』の尺度」というおおよそはかることができないスケールを持ち出して、「たしかに」と思わせてしまうんだよなあ。
またたとえば、笑えない現実。
24歳で故郷の天塩を出た千鶴子が30年ぶりに故郷に戻り、若いときにお世話になったたみ子(85歳)を訪ねていき、そこでいうたみ子の近況(「潮風の家」)。
たみ子は三軒向こうの-といっても百メートルは離れているのだが-ヤッコを覚えているかと訊ねた。
「うん、行き来はないけど」
「昨年の暮れに家の中で死んでたんだわ。孤独死だと。なぁんとも流行りのない町に、流行最先端の死人が出たんで、しばらく大騒ぎだった」
それから、たみ子にもたびたびデイサービスの声が掛かるようになったのだという。たみ子は「年寄りが年寄りと一緒に折り紙折って、なぁに楽しいってよ」と言って、更に笑う。[pp.253-254]
笑い話の中に笑えない現実を描き出しています。「年寄りが年寄りと一緒に折り紙折って、なぁに楽しいってよ」って、ブラック過ぎ。
ところで、映画にもなった「起終点駅(ターミナル)」は、映画を観ていないのにどうしても佐藤浩市の顔がイメージされてしまって、個人的には少しばかり残念でした。
むしろ、道報新聞の山岸里和が登場する2編を映像化して欲しいなあ。
こちらも北海道新聞(道新)と村上里和(元NHK札幌放送局アナウンサー)をイメージしていまいましたが。(笑)
さてお仕事に復帰しまーす。
投稿元:
レビューを見る
表題作もよかったが、そのほかの短編もよかった。
北の大地をベースに、少しずつ無理をしたり、自分に嘘をついたりしながら、懸命に生きる人々の物語。
スクラップ・ロードの最後の方で、鬱になって仕事を辞めた主人公にかける母の言葉がとてもよかった。
「母さんのことなら心配いらんから。お前がやりたいことをやったらいい。ちっちゃいころからいっつも無理して、そのうち無理が癖になってたもんねぇ。なんかお前を見ていると、こっちは胸のところがざわざわしてしかたなかった。男だからいろいろあるけれども、あまり深く考えないことだよ。身の丈超えれば、足元がおろそかになるから」
夫の失踪後、一人で牧場を必死で支えてきた女性の言葉の重み、温かみ。
私も、疲れた人にこういう言葉を自然にかけてあげられる、器の大きな人になりたい。
投稿元:
レビューを見る
短編集だけど、北海道つながり。一部主人公が同じ話あり。良かった、なんか。この人の本、他も読んでみたいと思った。一人旅など、一人でいるときに読みたい本。
投稿元:
レビューを見る
僕が学生の頃、本屋の棚は男性作家、女性作家と分けられていた。今はそんな棚分けをしているところは少なくなっているが、この小説は女性にしか書けないものだと思う。
しかし、その内容は男、女に関わらず、”私はどうあるべきか”を問われているような感じで、物語に哲学的な力強さを感じる。
読後は涙を止められない。
投稿元:
レビューを見る
6つの、それぞれの人生をいきる人々の話。
新社会人里和の、ギスギスした職場での、空回りの奮闘。その末の、決して栄転ではない異動。2つの物語に登場する彼女は、他の登場人物の人生と共にあり、決してそこだけに焦点が当たっていない。
けど、この物語を20代前半で読んでいたら、私はどんな感想を持ったかなあと、思う。
自分は違うと思ったか。自分もこうなると思ったか。
結局、里和の様なポジションで、上司や同僚に小馬鹿にされて20代が終わってしまった今の自分には、彼女のやるせなさはリアルで、苦い。
救いの無い日々を過ごすしかない人物が多い物語だけれど。ほんの僅かな希望を、作者は描く。哀愁に覆われた物語で、その光は眩しい。
映画公開の原作の短編が、一番ストーリーに動きがあるんだけど。他もオススメ。登場人物が少ない分だけ、その人生の無情が、克明に炙り出されている。
投稿元:
レビューを見る
ただひたすら重かった…
何かしら世間からはみ出した?人達を主人公にした短編集。
私には訴えるものが何か、理解出来なかった。
もう少し年齢を重ねたら分かるようになるかな?