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「赤毛のレドメイン家」「闇からの声」と読んで、「誰がコマドリを殺したのか」にたどり着きました。イーデン・フィルポッツのミステリースタイルはここでも濃厚に出ています。緻密な心理描写を中心に展開しながら、いつの間にか作者の術中に嵌まるような体験です。ヴァンダインが賞賛したのも納得。名作。
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人生を謳歌する女性と盲目的な恋に落ちた医師。彼女と結婚するために手放したものが、やがて自分自身を苦しめていく物語です。
前半は恋愛、中盤は夫婦関係、後半はミステリと、変わっていく見処それぞれに読み応えがあります。展開と真相はある程度予測がつく分、登場人物たちの絡み合った心理や、どうやって真相に辿り着くか、どう証明するかを楽しむ余裕がありました。ちょっとした会話の中に興味を惹かれる表現や当時の観念が出てくるのも面白く、特にスポーツに関する医師の私見がなかなか印象的です。後に起こることを思えば、ある種の皮肉を含んでいるような。
愛情と憎悪は表裏一体。我が身を振り返り、意図的な誤魔化しをするのはうしろめたさがあるからだと自覚したいと思います。
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解説を読むまで古典のミステリーとは思わなかった。
医師のノートンはダイアナに一目惚れをする。それまでは伯父の元、順風満帆とも思える人生を歩んでいたノートンであったが、その恋に身を投じることにより、数奇な運命に導かれることとなる。
最初はノートンとダイアナの恋愛パート。結婚する際にノートンがダイアナについた嘘「伯父の財産を相続できるだろう」というところから歯車が狂っていく。
中盤はその嘘をめぐってノートンとダイアナの夫婦生活がうまく回らなくなることが描かれる。
そして、ダイアナの謎の死。と、それの謎を解く名探偵が登場する本格的なミステリーに。最後の名探偵の推理までトリックが見破れなかったのが悔しかった。
死体の摺り替えトリックには完全に騙された。ノートンが殺したとしても疑念がないくらいの心理描写があったように読めた。また、押さえきれなかったダイアナのノートンへの復讐心は死とともに完成するものだとも読めてしまい作者のミスリードにしてやられた感じがして、とても面白かった。
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原作は1924年、なんと100年前に書かれたもので新訳刊行された古典ミステリー。ミステリーとして秀逸だし、情景もありありと浮かぶような描写。世界に入り込むことができたし、面白かった。いっとき盛り上がった恋も永くは続かなかったり、ウソをつかれて激怒したり、今も昔も同じようなことで人は悩んだり苦しんだり喧嘩したりするものだなあ。