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済州島を舞台に、アジア・太平洋戦争から朝鮮戦争に至る激動の歴史を少年の視線から描いた長篇小説。村の有力者の家に生まれ、叔父が日本兵として沖縄で戦死。解放後は町長を務めた父がパルチザンたちによって惨殺されるが、こんどは先輩や先生たちが逆に「共産ゲリラ」として討伐される。朝鮮戦争が勃発すると、こんどはソウルから避難民の子どもや親を亡くした孤児たちが学校にやってくる――。少年の目線で描かれるからよけいそうなのだろうが、誰が敵で誰が味方なのか、戦争によって引き裂かれ、対立の記憶に流されてしまう人びとの姿がとても印象に残る。
ただし、同じ理由で肝心なことが書かれないという問題もある。日本敗戦直前の日本人と朝鮮人たちの様子、解放後から4・3事件までの動き、そして「4・3事件」の経緯。「戦争ごっこ」に興じる子どもたちの無邪気さと残酷さは印象的だが、「書かれないこと」をどう見るかによって評価が変わる作品とも思う。