紙の本
こんな日本人がいたのか
2015/09/11 05:44
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投稿者:Toshi - この投稿者のレビュー一覧を見る
東チモール、アフガン、シエラレオネと世界の代表的な紛争地で命を賭して平和のために闘う日本人。一民間人が、世界中の軍人や政治家などを巻き込んで解決していく、その知性はもとより人間性に誰しもが賞賛するのではないでしょうか。
紙の本
武力なき紛争解決
2018/09/22 23:36
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投稿者:やすし - この投稿者のレビュー一覧を見る
武力に頼らない自衛隊派遣を説く著者の背景にある、平和に慣れたこの国では容易に想像できない経験と現実が、淡々と語られていく。
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伊勢崎賢治氏。このような日本人がいらしたということ。今の今まで、それを全く知らなかったことを、とても後悔しています。同時に、本書で知ることができたことを感謝します。
インドのスラムでのオルグ活動からNGO(プラン・インターナショナル)に就職し、クーデター・内戦最中のシエラレオネ、エチオピアで活動後、国連に呼ばれ東ティモール・アフガニスタンで武装解除の責任者として現場を統括してきたという、日本人としては異色と言える経歴を持つ伊勢崎賢治氏。
一民間人として文字通り紛争の現場で活動し、常に実績を残てつづけてきた「紛争解決人」の目は、日本が行うべき国際貢献とは何かを圧倒的な説得力とともに見据えています。
個人的には、これまで素晴らしい人々や書籍との出逢いをいただきながらも「あー、もっと早く出逢っていれば・知っていれば」といった出逢い・知識に関する後悔めいたものは何のプラスにもならないと思っていることもあり、そのような感情を抱くことはなかったのですが、本書(または伊勢崎賢治氏)ははじめて、それを感じた一冊でした。もちろん、今からでも遅くはないのですが。
伊勢崎賢治氏は、一般的にはいわゆる「護憲派」と言われているようですが、日本国憲法に対するその考えや行動は、いわゆる護憲派とは全く異なります。国際貢献・国際紛争解決のために憲法を利用する価値がまだある、いずれ改憲するのは間違いないが価値がある間は使い古せば良い、という現場叩き上げならではの現実的な発想と国際社会の現実を知る広い視野と豊富な知識・経験に基づく提案をされています。
何より、私たちが自分たちのことと国際社会の現場を知ること。そして、何をするべきかを考え・行動すること。そのきっかけとして、比類なき一冊です。
【本書抜粋 元アイルランド軍将校 デズモンド・マロイ】
(伊勢崎賢治について)
ケンジは大統領だろうが、現地の部族のトップだろうがあ、常に同じ態度で相手に話をすることができる。傲慢さがまったくなく、誰に対しても尊敬の念をもって接する人だ。しかも相手が彼の話に必ず耳を傾ける。特異な能力の持ち主です。
(中略)
彼は見つけうる最高の人材を自分の周りに置き、自由に周囲を働かせ、効果をあげる。彼といっしょに働くのは楽しいし、彼には間違いなくマネジメントの才能があります。ケンジは国連事務総長にふさわしい仕事をしてきたといえます。国連はとても官僚的な組織なので、ニューヨークの国連本部で偉くなるとは思えないし、そういうタイプではありませんけど...
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日本人にこんな人居るんだな。
ngoの組織での活動は現地でリーダーを養成して、リーダーから組織化して進めてもらうとか、なんか、いまのプロジェクト管理支援に通じるところがある。
凄い人だとは思うが、紛争は解決できてはいない。自分でもそれは分かっていて、自分の事を紛争屋と呼んでいるのは、凄いと思った。
活動も枠を超えてはいるものの職業としてやっている様に見えて、逆にそうでなくてはならないとも思った。そうじやないと続かないし、広がらない。
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長年に亘り、世界の紛争地域の最前線で、その解決に携わってきた伊勢崎賢治氏の活動を追ったノンフィクション。
本書で語られる伊勢崎氏の主な活動は以下である。
◆インドのボンベイ大学大学院に留学し、ソーシャルワークを研究しつつ、50万人が住むインド最大のスラム・ダラビに住み込み、コミュニティ・オーガナイザーとして活動。
◆世界最大級のNGO「ブラン・インターナショナル」に就職し、シエラレオネへの援助、農村開発を指揮。その後、ケニア、エチオピアへ異動し、同様の活動を行う。
◆国連PKO部隊の東チモール暫定統治機構の上級民政官として、同国13県の一つであるコバリマ県の県政を指揮し、武装解除を実施。
◆国連シエラレオネ派遣団の国連事務総長副特別代表上級顧問兼DDR部長として、内戦後のシエラレオネでDDR(武装解除、動員解除、社会復帰)を指揮。
◆日本政府外務省特別顧問として、アフガニスタンで、タリバンと対峙してきた北部同盟の武装解除を指揮。
伊勢崎氏は、上記のような治安においても衛生面においても極めてハードシップの高い地域で活動しながらも、常に冷静かつ客観的に物事を捉えるリアリストである。
NGO活動に関しては、その活動はある意味、貧困や差別を対象としたビジネス・職業であり、だからこそ、その効率性・採算の管理はシステマティックに行われなければならないし、ドナー(寄付者)へのアカウンタビリティも重要であると言う。7百億円の資金で、30ヶ国以上で投資型オペレーションを行うブラン・インターナショナルのような国際的NGOと、日本のNGOのイメージは全く異なるのである。また、NGOの活動がかえって、問題国の民衆の不満を薄め、政治家の延命をサポートしているのではないかとも語る。
武装解除に関しては、それまで対立していた武装勢力に、政治レベルでの停戦の後、武器を放棄させていくことは、軍事オペレーションとしての判断が重要であり、それを間違うと状況は基に戻ってしまうばかりか、更に悪化させることにもなりかねないと述べる。
そして、今後の日本の立ち位置について、武装解除や復興支援、停戦監視などを効果的に行うためには、当事者の人心掌握が最も重要であり、それができるのは、第二次大戦後戦争をしたことがない日本しかないとも語っている。
世界で絶えない紛争については、多くのジャーナリストが現場の悲惨さを伝えているし、政治レベルでの紛争の解決についての記録も少なくはないが、紛争を停止させるために最前線ではどのようなことが行われ、起こっているのかを知る上で、本書は貴重な記録である。
(2015年3月了)
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伊勢崎賢治氏の本は何冊か読んだことがあるが、その中でも伊勢崎氏の生い立ちや軌跡が丁寧に書かれている良書。シエラレオネ、東ティモール、アフガニスタンなどの紛争地で武装解除や開発援助に長年携わってきた伊勢崎氏の苦悩も読み取れる。特定の軍閥の武装解除をすると、力の空白が生まれ、力のバランスが崩れさらに混乱するという。平和なんて訪れるのだろうかと悲観してしまうが、一歩一歩進んでいくしかないと感じた。