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紙の本
ベンツに人間はなにをしたのか。野生動物との関係を考えさせられる。
2015/08/04 11:04
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投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
高崎山自然動物園で長い期間群れの先頭に立って他の群れと闘ってきたベンツ。実力はあっても一位のサルが高齢になって群れをぬけてしまうまでは二位にとどまったベンツ。ボスになったときは既に老いていたが、群れを抜け出して連れ戻されてもまだボスだとサルたちが認めていたベンツ。最後にいなくなった後、園内に建てられた像は出世や長寿の象徴として参拝されるようになったベンツ。「ベンツの日」というのもあるそうだ。
伝記が書かれ、記念像まで建ってしまう生き物は数少ないだろう。人間にだって少ない。動物園での記録や、ベンツを知る動物園職員や来客からの聞き取りなどを中心にまとめた本書の著者は、ベンツがサルたちのルールである「順位」に忠実で、最後までそれをつらぬいたところが人間にも賞賛されているようだとしている。ニホンザルの観察調査研究も行っている施設であるので、記録はかなり詳細に残っている。だからこそこのような伝記もかけたのだろう。ベンツについては、絵本にもなったりして多数の本が出版されているが、本書は良くまとめられていると思う。
周辺の畑を荒らさないように一か所に集めようと始まった餌付け。しかし保護すれば増えすぎて再び畑にも害を及ぼすようになったという。その先には「駆除」も考えなくてはならなくなってくる。最近ではオーストラリアでのコアラ大量駆除のニュースがあったが、どちらも人間がメリットを考えて始めたつもりのことでも、すこし長期にみればどうなのかわからないという実例になってしまっているようだ。餌をあげたくなってしまう、人間側の心理についても考えなくてはならないだろう。人間は他の動物とどう付き合っていけばよいのか。餌付けがなければベンツはどうなっていただろう。ベンツを描いた本書は、一頭のサルを通してそんなことも考えさせる。
餌付けのデメリットが大きくなっても、いきなり餌付けをやめるわけにはいかない。今しばらくは彼らの姿に私たち自身の社会や人間関係を投影して学ばせてもらうことにしたい。
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