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都、建物、服飾、年中行事、交通、信仰、娯楽などなど、平安中期の貴族を中心とする生活の諸相を記述した事典。
内容としては、昔、今は亡き至文堂の『平安時代の文学と生活』シリーズ三作に似ている…と思ったら、そのはずで、編者の倉田さんはそちらのシリーズにも関わっていた人だった。
図版・写真が、多くはカラーで載っているので、見やすいし、見ていて楽しい。
知らないこともたくさんあった。
例えば、平安時代の「宿直」。
早朝出勤し、十時から十一時には退勤というレギュラーの勤務を「直」、泊まりの勤務を「宿」というのが本来のことばの意味。
しかし、当時の勤務のルールでは、午後から、あるいは夜からといった勤務は許されなかったらしく、「宿」の人は、必ず「直」から引き続いている(!)ことになり、「宿直」という言葉が生まれたとか。
今のブラック企業も真っ青な過酷な勤務形態なのだが、どういう理屈だったのだろう?
斎宮の卜占は亀の甲羅をあぶっていたというのも意外だった。
貴族の暮らしが中心ではあるが、邸を建てる職人のこと、庶民の食生活や市の様子などもあって、面白い。
道具の作り方や使われている技術についても解説してほしいところだ。