投稿元:
レビューを見る
石田衣良さんの作品で今までにも重いテーマの作品はいくつもありましたが、これは本当に重いテーマです。作者の言葉の選びは重たいテーマでもやっぱりおしゃれです。全体的に少し冗長かなと思います。もう少しテンポよく展開したほうが、インパクトが残せたかなと思いました。
投稿元:
レビューを見る
ノンフィクション書くような人じゃないけど、これは本気でノンフィクション化と思うほど。凄くリアル。
作者、石田衣良らしい要素も沢山ありました。たとえば裁判の広さの表現、裁判官の発言のたとえ、などなど。
この本を通して、やはり虐待というところが焦点でしょうか。虐待が与える影響は本当に残虐極まりないなと。
感情を殺さないと生きていけない。
それはある意味私と同じなのかなと。
別に私は虐待とかそういうの何も無いんだけど、看護学生なので、勉強の山だらけ。感情にいちいち振り回されてたら何も手がつけられないことが大にあるんです。だから感情殺して、気にしないふりして平然と生きているんです。なんか、ちょっと共感しました。
投稿元:
レビューを見る
「人を愛することと憎むことは、本来同じ執着の裏表ではないだろうか。六十兆の細胞を持つヒトの身体の中では、日々の無数の細胞が死に、無数の病原菌や癌細胞が免疫系によって殺戮されている。」
「誰一人自分を愛してくれる人がいない世界で、もう生きていたくなかった。形を変えた自殺だったかもしれない」
ああ、どんな人間もきっと変わる。そいつがいいほうか、悪いほうかは分からないが、同じままでいられないのが人間なんだ」
投稿元:
レビューを見る
前半は順調に読み進んだけど 半ばくらいから なかなか進まなかった。やっと読み終えました。
里親のお母さんをなくしてからが、長くつらく何度も読むのを放棄しそうになりました。あまりに重くつらい物語。
投稿元:
レビューを見る
虐待描写が生々しく長く続き、途中まではまるで呪いの様だった。主人公の北斗の両親の思考と行動が恐ろしすぎて読むのをやめたくなるほど。
でも、そのしつこい描写が後半の魂の劇といわれる法廷劇で効果的になっている。
ある事件の被告人となった彼の人生、そして彼自身が法廷で丸裸にされていくのだが被害者と被害者遺族の心境を鑑みても、彼が披虐待児として生きてきた事を強く痛感させられ彼の人生に寄り添ってしまう。
裁判が進んでいき様々な人間が北斗を語る。
その中で遺族の息子の乱暴と思われる北斗への言葉に胸を打たれる。その息子は、母親を殺した憎むべき相手だというのに対等の人間として北斗に言葉を放つ。橋爪北斗さん、と彼は確かに言った。
北斗は対等な人間として見られた機会が少ない。だから北斗は彼の事を永遠に忘れないだろう。
立場が違えば友人になっていたかもしれない、という一文に切なさがこみ上げた。
又、虐待をし、又させた北斗の実の母親の登場場面も衝撃的だ。更に衝撃なのはその証言内容。
愛とは何なのかを考えさせられた。また、どんなに歪でも愛は愛だという愛の難しさを感じた。
そんな裁判で気づく。人を救うのは法律ではない。法律を作った未完成な人間が必死にその法律を使っているにすぎないことを。
法律上で親子と認められようがそのままにしてはいけない親子がいるように。
北斗は様々な証言者の言葉を聴き、仕事の立場以上に自分を思ってくれる弁護士や裁判官に出会う。それが自己肯定感のない彼の心を揺さぶっていく。そして同じ披虐待児童で同じ里親の子供であった女性の存在と、彼女の「生きて」の三文字が裁判の最後まで彼を支えることに。
独房で1年間、北斗は時に寝ずに自身の心と対話をする。裁判も終わりに近づき死にたくないと恐怖にかられた彼に全力でほっとした。
彼は今まで殺されかけ生き伸びてきたにすぎない。本当の意味では、一度たりとも生きていないのだ。今まで披虐待児童であったがゆえ心を殺してきた彼から出た些細な欲望を叶えてやりたくなった。
生をと…。独房の外で鳴く鳥の名前を調べるといった、平穏な時間をと…。
判決の主文の文字を見た時、声を押し殺して泣いてしまった。真夜中でなければ声をあげていただろう。そして、改めてこの裁判の弁護士と裁判官が彼らで良かったと天に祈るような思いにかられた。神様はいるのかもしれないと思わされた。
そこまで北斗を見守る気持ちになれたのは、作者の主人公の心理描写が巧いからに他ならない。
特に証言台での生きた言葉、北斗が初めて見せる本音には魂が揺さぶられる。
遺族への誠実な自省の言葉に回心とはこの事か…と唸らされた。
投稿元:
レビューを見る
序盤、あまりにも残酷で目を背けたくなるような虐待描写に、読んではいけない本を手に取ってしまった、と思った。読むのを止めようかとも思った。初の石田衣良だったにも関わらず。
里親との出会い、死、詐欺、そして殺人。後半はほぼ裁判。裁判シーンの描写の細かさは見事。裁判官、裁判員、弁護士、検察官、被疑者の心情が上手い。映像を見てるかのよう。孤独だった北斗が犯した罪を裁くのは、やっぱり人なのかな。この判決によって、北斗は報われたのかな。
これをドラマ化したのかあ。見たい反面、ちょっと怖いな。
投稿元:
レビューを見る
両親から激しい虐待を受けて育った北斗の物語。前半のリアルな虐待描写から後半の緊迫した裁判シーンまで見事な展開で読み応えがあった。こんな社会サスペンスはもうWOWOWでしか映像化されないんだろうな。ドラマが楽しみ。
投稿元:
レビューを見る
凄惨な児童虐待を受けて育ち、里親に出会えて初めて人として、普通という幸福を感じられた北斗が、がんになった里親の為、医療詐欺にあい復讐の鬼となり転落し、裁判を受ける中で回心していく話。 虐待の事実、被虐待児の心情、裁判、どれも内容が充実し、引き込まれて心が動き、沢山泣きました。これだけ余すとこなく充実感を味わえるのは小説だからこそだと思いました。心に残る1冊です。
投稿元:
レビューを見る
ある青年の虐待の物語。
この世に生まれ落ち、幼稚園に上がる前から、虐待を受ける。平手ではなく拳で。
愛を知らず、優しさを知らず、恐怖と暴力の中でのみ育ちゆく。
父親からの殴る、蹴るは当然で、また母親も子をかばえば自分が殴られる為に、父親以上に子を虐待する。固く捻られた針金のハンガーで執拗に叩き殴り、腫れ上がった傷口の間に更に叩き込む。ミミズ腫れに身体が変形してゆく。そこから冬の寒空に裸で外に出される。
そんな幼少期から、小中高生と事細かに、虐待の連鎖が描写されてゆく。
主人公が高校生になった時、父親が精神を患い入院、さらにそこから病死。
父の死により一時的に虐待の嵐が止むも、暴力に依存していた母親が、今度は虐待されていた子供に虐待していた夫の役を望むようになる。
このままでは、いつか母親を殺してしまうと児童福祉司に相談する。
結果、主人公は養護施設に預けられ、ある里親に出会う。当初は、大人を信頼できず、里親を試す行為に走るが、心通じ、愛や温もりを知る。
不幸は突如やってくる。穏やかな時間は続かない。そんな信頼できる初めての大人が悪性の癌を患う。懸命に介護をする最中、里親の友人が、縁戚の胃癌が治ったという胡散臭い水を持ってくる。
薬の投薬でもの食べれなくなり、口に出来るのは水だけになり、中でもこの水だけは美味しい気がすると里親は欲する。
一本数万円の水を。里親はその値段を知らず、主人公は里親が自らの大学資金や生活費に充てる為の資金を切り崩し、水を購入してゆく。金も底をつき始める。
ある時、その水が医療詐欺だと気付いてしまう。
不幸の連鎖はまだ続く...
と、ここまでが半分手前くらいなんだが、この後の堕ち方が壮絶。
一冊の半分後半は、裁判について。
一冊を通して虐待について、どう思うとかではなく、善と悪そのもの、法律、裁判制度、被害者、加害者、一体何が正解なのか、答えなんか無くて、人間社会が勝手に作り出した概念で、、、なんて、頭が混沌としてゆく。
あくまでもフィクションではあるが、限りなくノンフィクションに近い重厚な一冊でした。
長編だけども、久しぶりに読むのを途中で止められなかった。
我が子がいる人はどういう感想を持つのだろうか。
投稿元:
レビューを見る
WOWOWドラマきちんと見ておけばよかった。裁判のシーンはすごい名シーンだろうなぁ。
北斗くんの物の考え方、捉え方、たまに屈折してるところはあるけど、しっかりしている。もっと良い出会いがあればこんなことにはならなかったのに、、、
わたしが救ってあげたいとも思えるくらい人間味がある魅力ある人です。そんな人物像を描ける石田衣良さまさすがっす!
投稿元:
レビューを見る
主人公の幼少時からの虐待のくだりから里親との生活まで生々しく丹念に描かれるやがて殺人、殺人後の裁判のくだりも半分ほどあるので、サスペンスというよりはドキュメンタリーのように感じられた。
1点作者の癖というか同じ描写をしている箇所があり、妙に心に残った↓
----------------------
【生田友親の描写】
『~最も印象的なのは、外見ではなく穏やかな話し方だった。(中略)それは揉め事が起きた小学校のクラスを平静にさばく副校長のような態度だった。』
【平岡裁判長の描写】
『白髪の平岡裁判長は、地方の小学校の副校長のようだった。穏やかで野心はなく、その地位のまま静かに引退していく。』
----------------------
おそらく白髪で物腰軟らかな人物の印象が『副校長』なんだろうけど、生田は親の仇で平岡は裁判長なんで人物的には正反対なんですよ!
たぶん『大型犬のような穏やかさ』みたいな描写だとふーんで済んだ話ですが、副校長がいる学校に通ったことがないため「え?副校長?」と引っかかった。副校長はメジャーでないと思うんだけど。
投稿元:
レビューを見る
1805 特に前半は読み進めるのが辛く、読了まで時間が掛かりました。後半は心の動きが気になりやっとペース上がった頃に読了。ここで終わって良かったんだろうけど今後の心の動きも気になる。。。
投稿元:
レビューを見る
ずっと気になっていて、やっと読めた本。
分厚く濃厚な内容、そしてひたすら重い。
果てしなく重い。
家は安らげる場所ではなく、愛を与えられず、抱き締めてもらう事もなく、父からも母からも激しい虐待を受け続けた彼の壮絶な人生は、目を背けたくなり、胸を締めつけられる。
でも、知らないでいる事が一番罪だとも思った。
知らないといけない、知ろうとしなければならないと思った。
人の不幸を目の当たりにして自分を振り返り、なんて幸福なのかとおこがましく思う自分が恥ずかしい。
無条件に受け入れ認めてもらえる事が、誰かに愛された記憶が、その後の人生をいかに豊かにするのか。
不幸の連鎖が取り返しのつかない所までいってしまわない内に、たったひとつの安全基地を見つけられますように。
投稿元:
レビューを見る
いまいち。長かった。
北斗自身の心情を第三者目線で書いているから、気持ち悪いことになるのだろうか?
投稿元:
レビューを見る
もう少し淡々と三人称で語ってもよかった。北斗の心情は書き手が説明を加える事で鼻白むものもあり蛇足と感じた。幼少期の北斗に対する虐待と裁判シーンのバランスを反対にする方がよかった。全体としてもう少しスッキリまとめた方が迫力が散文的にならなかったように思う。最後のシーンも心情としては薄い。
手記ではなく作家か構築した内容としては素晴らしかった。