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意識の存在について科学的にアプローチした作品。
誰でも一度くらいは、緊張で頭が真っ白になってしまったり、前触れもなく恋人から別れを告げられたり、意識を失いそうになった経験はあるハズだ。でも本作はそんなメンタルな意味ではなく、もっと生理学的な意味合いでの「意識」がテーマである。
不幸にも大きな事故に遭い昏睡状態となってしまう人がいるが、実のところ本当に意識がないのか、それとも外部からの刺激に反応出来ないために、意識がないと診断されてしまうのか、そもそも意識があるというのはどのような状態を示すのか、という疑問にも迫っている。
本作では「統合情報理論」という、意識の謎を解くカギとなる理論に関して、TMS脳波計という新しい測定装置を使用した、今まで不明瞭だった意識レベルの研究成果が紹介されている。今まで脳科学がテーマの書籍はわりとよく読んだが、ここまで生物の意識という事象に特化している作品は、意外と少ないのかもしれない。
人間の意識を解明するという行為は、人類が今まで歩んできた道を再び辿るような、気が遠くなるほど地道な営みであると思う。このような研究が、回復の見込みがなかった重篤な患者たちを、再び社会に復帰させるための大きな一歩につながることを期待したい。
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統合情報理論と聞いてもピンとこないかもしれないけれど、人にあってコンピュータにはないと言われる「意識」について、わかりやすく解説している。
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」
この本を読むと自分なりの答えが見つかるかも。
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医学的な臨床事例などから意識を考察し、数々の臨床における脳波の動きと情報理論を結びつけ、意識とは「多様性があって、統合のある」として考察を続けるも結論的には哲学なども引用し、やや曖昧な形で終わる。脳の謎が完全に解明されるのはまだまだ先のようです。
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素人には難解な内容を『潜水服は蝶の夢を見る』での閉じ込め症候群や、ネーゲルの『コウモリであるとはどのようなことか』などを例にあげるなど、人文学的アプローチで著者は軽快に解説してくれている。訳の日本語は柔らかくて優しい。どうやら翻訳者はタブッキの研究者のようだ。
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冒頭に「『意識とは何か』という哲学的な問いには答えない」とあるように、「意識」が発生するための必要条件について考察する本。なぜその条件が整うと「意識」が発生するのか、や「意識」が発生する過程といった内容については触れられないため、「意識」の持つ神秘性に興味を持ってこの本を手に取ったとすれば、肩すかしを食うかも知れない。
しかしこれまでは可視化できなかった「意識があるかないか」を外部から観察できるようにする手法は見事というほかなく、この方向で研究が進めば今回この本で触れられなかった上記の内容についてもいずれ明らかになるのではないか、という希望は充分に持てる内容だった。
著者の今後の著作にも注目していきたい。
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「意識」とは何か。何が「意識」をつくるのか。「意識」と「無意識」の違いは何か。世界的な脳科学者が「意識」の正体を解き明かすサイエンス・ノンフィクション。
著者が提唱する「統合情報理論」によると、「意識」とは、主に大脳において、高度に専門化したニューロンが相互作用により無数の選択肢を組み合わせたり排除したりして、最終的には統合された情報として認識することをいう。例えば暗闇にいる人は、「明るい」だけでなく、「赤い」「星空」「音」など、膨大な数の「闇ではないもの」を情報処理している。逆に小脳のニューロンは連携せず、単独で特定の処理のみを行う。これにより、例えば瞬きなどの習慣化された「無意識の行動」が可能となる。
200億個のニューロンによる「多様な相互作用と統合」の「奇跡的なバランス」がもたらす「選択肢の広さ」を「φ(ファイ)」という情報量の単位であらわし、この値が大きければ、たとえ「植物状態」で身体反応がない人であっても、「意識がある」可能性が高いことが実証されている。専門書ではなく、一般読者向けに平易に書かれており、読み物として純粋に楽しめる。何より、脳というシステムが、極めて優れた組織行動によって機能していることに驚かされる。知的好奇心が刺激される一冊。
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用語も平易で、文章もこなれていて、かつ構成もミステリー小説を意識して書いたと著者が言うように、疑問とその回答を対置する形で書かれていて、この種の科学読み物の中ではずば抜けた読みやすさだと思う。
ただ、結局のところ本題の意識が何かということに関してはよく理解できなかった。
構造的な話、情報量の話、情報の統合の話というヒントは提示されているが、結局結論としては解明されていないわけで、その点がちょっと読んでいて歯がゆいというか、物足りない気がした。
まあしょうがないと言えばしょうがないが。
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意識を説明する理論として、統合情報理論というものが提唱される。
「ある身体システムは、情報を統合する能力があれば、意識がある」というもので、これ自体は目新しいものではなく、前半はやや退屈。
後半はとたんに面白くなってくる。
この理論の一つ、重要な点は定量化を可能にしている点で、系の複雑さがΦ(ファイ)として測られる。Φの具体的な計算法は「難しすぎるから」ということで説明されていないが、経路の情報を含んだ組み合わせの數のようだ。なので、小脳のようにニューロンの数こそ多いが、小脳皮質間の連絡線維というものはなく、独立したモジュールが集まったような系では低くなる。また、モジュール間の連結が多ければいいというものではなく、全てのモジュールが同じように繋がった系では、結局はどのモジュールが興奮しても全てのモジュールにそれが伝播するだけなのでやはりΦは小さくなる。ある程度のランダムさをもった結合の系でΦは大きくなるようで、脳のように層化していたり半球にわかれている方が値が大きくなる。
もう一つは、実際に理論を確かめているところで、TMSによる刺激後の脳波をとり、意識がある場合はその棘波が脳全体に複雑な形で広がるのに対し、意識がない(睡眠、昏睡)の場合は同じ波形が広がっていくだけであることを確認している。これもΦの値が小さい系(睡眠・昏睡)では同じ波形が伝播するだけで、理論とよく合っている。
また、われわれがコンピューターに意識がないと考える根拠は、われわれ自身がそれを組み立てたから、ということにすぎない。その動作の秘密を知り尽くしているからだ、というのもナルホド、という感じ。やはり意識は何らかの創発性によって生み出されるもので、そのためにはよく分からない部分が残っていないとダメなんだろう
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分割脳に芽生える二つの意識、小脳よりも少ない細胞数で意識を生じさせている大脳の謎、それらの事実から導かれる結論に納得させられた。
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シナプスの量からいえば小脳のほうに多いのに、なぜ意識は大脳にしか生じないのか。重要なのはたんなる複雑さではなく「システムが抱え持つ潜在的なレパートリーの大きさ」なのだと説く。人間が部屋を「暗い」と言うとき、そこには「明るくない」だけではなく「赤くない」「星空ではない」「音がしない」といったあらゆる「ではない」が含まれている。意識とは、こうしたありとあらゆる情報が統合されたものでありるのだという主張だ。
大脳は左右の半球に分かれていて、その間で対話をすることで複雑性が高められている。あらゆる情報からひとつのものを取り出すことと平行して、わずかな情報から多様な可能性を引き出すことが、「意識」の条件であり、結果でもあるということだろうか。
視聴覚器官からの情報が脳みそをぐるっとまわって、いろんな可能性のなかからひとつを取り出してくるには、0.3~0.5秒ほどかかるそうだ。「自由意志」仮説への疑いとして、「手を伸ばしてアレをとろう」と考える0.3秒前にはすでに手には信号が発せられているというものがあるが、最初のピン!という信号から「意識」のほうが遅れて形成されるとすれば、頷ける話だと思う。
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意識や自由意思とは一体なんなのだろうか。こういった脳科学系の本は好きで色々読むが研究や実験が進めば進むほどに答えが近くなるというより遠ざかるような気さえする。それでも非常に惹かれる分野である。睡眠時の意識についても詳しく書かれているが興味深い。そもそもなぜ人間は寝なくてはいけないのだろうか。なんとなく読みながらレインボーマンのヨガの眠りを思い出した(レインボーマンは力を使い果たすと身体が石化して5時間仮死状態になる)。面白い本でした。
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タイトル通り「意識はいつ生まれるのか」をテーマにした本。著者の戦略は、まず意識の有/無を定義し、それぞれの場合の脳の状態を観測して差分を調べることで、意識が発生するための「脳の状態」に関する条件を探ろうとするものである。
人間の脳のうち、小脳のニューロンが800億個と脳全体の半分以上が集まっているにも関わらず、小脳を取り除いても生命は維持できる上に意識も存在している。一方、大脳皮質には約200億個のニューロンしかないが、大脳皮質の障害は意識状態に大きな影響を与える。このことは、単にニューロンの数が意識を生み出しているわけではないことを示している。また、睡眠状態の脳の活動の量を測定すると、ほとんど覚醒時のそれと変わらない。一方、TMS (Transcranial magnetic stimulation: 経頭蓋磁気刺激法)により直接的に脳内のニューロンを刺激した反応は睡眠時と覚醒時は大きく違っており、睡眠時は同期した単調な反応しか生じないのに対して、覚醒時のそれは非同期な複雑な反応をするという。著者は、この違いが「意識がいつ生まれるのか」を判定するために非常に重要なものであるとする。
著者らは、このような近年得られた知見をもとに、「ある身体システムは、情報を統合する能力があれば、意識がある」(p.111)という仮説を提唱し、これを「統合情報理論」と名付ける。彼らはシステムの統合度と複雑性を表す数値をΦと定義し、それを「ある物理的システムがあらゆる方法で揺さぶられたとしたら、どのような反応をしうるか、を表す数値である」(p.270)と定義する。そして意識レベルを表すこの値は「脳が潜在的に持つ選択肢の数によって左右される」(p.270)とし、その数を測定することで判定が可能だとする。もちろん、この値を現時点で直接的に測定することはできない。しかし、著者らはそれを将来的には測定し客観的に比較することが可能な数値であるとしている。そのことで、動物に意識はあるのか、コンピュータは意識を持つことができるのか、といった問いを数字的に測定可能な問いに置き換えることができるとしている。
この本に対する批判があるとすれば、著者らが提唱する情報統合理論におけるこのΦの測定可能性が、少なくとも本書の中では「一連の複雑な計算プロセスを経る必要がある」とするだけで明確ではないことだろう。「外側から観察するだけでは不十分」で「あらゆる方法でシステムに揺さぶりをかけるだけでなく、情報がいろいろな構成要素によってどの程度共有されているかも調べなければならない」としているが、このような「あらゆる」という仮定を導入しなければならないものが自分にはそれが測定可能であると思えない。これらの疑問は、専門的な研究論文などでは言及され、解消されているのだろうか。 また、何ゆえにΦの値が意識レベルを表すものであるのかの根拠が弱い(ほとんどない)という問題も挙げることができる。「『意識とは何か』という哲学的な問いには答えない」としているからといって、その疑問に答えなくても、彼らの主張が成立することを説明しなくていいということにはならない。
繰り返しになるが、本書は「意識がいつ生まれるか」について説明するもので���り、「意識とは何であるか」を説明するものではない。そこに物足りなさを抱くこともあるかもしれない。
本書では、脳梁を切断したときに、どうやら二つの個別の意識があるらしいことや、脳の局所的反応から意識生成までに0.3秒~0.5秒かかることを説明している。これらの事実は、意識が情報の統合から生まれるという仮定と合致するものである。いずれにせよ、この辺りの知見は近年の脳を測定する技術が進展したことの成果である。技術の進化はつい最近のことであり、かつ発展途上でもあるため、「意識とは何か」ということに関してもまだまだこの先にも新しい話はありそうだ。
なお、第一章から第九章までを第五章を中心にして、前半四章で階層的に出される問題に対して、後半四章でミラーにして回答をするような構成になっているが、その工夫の効果はいまいち感じられなかった。期待していたものに対しては少し十分なものではなかったのかな。
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「意識経験を支える基盤は、統合され、なおかつ均質ではないシステムである」を合言葉に、探索を進めていこう。
意識が生まれるのは、電気信号が閾値を超えるからである、と私はこの本を読んでそう結論づけた。小脳は、均一のものが集まりできているので、それをバラバラにしても原理上機能する。しかし、大脳はそうではない。各部分がそれぞれ違った働きをしており、それら間の活動が意識を生み出す。しかし、ここで面白いのが、左脳と右脳内にあるそれらの役割が広く被っている点である。だから、脳梁を切っても意識は生まれている。
結論はでていない。意識を持つのは人間だけなのかすらわからない。物体に意識はあるのか。最近の研究では、植物状態だと診断された患者にも意識がある場合があると示された。”意識”とはなにか。デカルトのいう”我思う、ゆえに我思う”なのか。それとも、意識があると対外的に表現できなければ意識はないのか。
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意識がなぜ発生するのかについては以前から興味があったので、たいへん面白かった。
哲学的な考察ではなくあくまで実験結果あるいは事実に基づいての研究である。
何しろ人間の脳は勝手に実験はできないのでその手段は限られる。実験の手法は電磁波を利用して脳を刺激してその脳波を検出するものである。
実験の対象は通常の人の起きている場合、寝ている場合の他に、事故で脳に障害を負った人に対しての実験などが行われている。
情報統合理論というのが意識の発生についての重要な理論であり、脳のそれぞれの部分の独自の反応が会話をするように影響することによって意識は発生しているようなのだが、まだまだわかっていないことが多すぎる。意識発生のメカニズムについてわかるまでにはまだまだ時間がかかるだろうが興味が尽きない問題だ。
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とても分かり易く、そして面白い!!
意識の尺度として、情報の多様性と統合が重要であるという統合情報理論は直感的にもしっくりくるし、実験的検証にも耐えられるということでエレガント。
もっとも”いつ”意識が生まれるのかは分かっても”なぜ”意識が生まれるのかは未だ深い謎である。