電子書籍
意識研究の最前線であり、現在の科学で最も有力な仮説
2018/05/10 09:30
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:病身の孤独な読者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間の意識の謎に科学的に取り組む世界的に有名な神経科学者のトノーニらの研究をわかりやすく解説した書籍。トノーニらの研究は、Science誌などをはじめとした一級の学術ジャーナルにも掲載されているくらい現在の意識研究を引っ張っていると言っても過言ではない。人間の心(意識)の有無を情報学の知見を取り入れて客観的指標を作成しようとするトノーニらの研究を一冊で知ることができる名著だと思われる。科学に興味を持つ読者と心や意識について語る人にとっては、必須の書籍である。
紙の本
意識について探るサイエンス・エンターテインメント
2015/11/04 02:20
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nori*tama - この投稿者のレビュー一覧を見る
意識とはどのように生まれるのか、意識があるものとないものの違いは何かなどの疑問について総合情報理論を基に解明していくサイエンス・エンターテインメント。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:7013 - この投稿者のレビュー一覧を見る
まだまだ知らないことも多いことに気が付かされた。様々なことについてこれまで以上に知識がふえることだろう。シンプルに書かれている点もよかった。
紙の本
謎とは何?
2020/09/02 14:29
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:L療法 - この投稿者のレビュー一覧を見る
大変読みやすい、意識と、脳についての本。
中国語の部屋のはずが、日本語の部屋とか、日本未公開映画のタイトルが、日本語に訳されてて原題がわからないとか、本題と関係ないところが気になるものの、大変読みやすくわかりやすい。
意識を確認することの困難さなど、様々な謎を、追求していく、謎解き作品。未解明なことは謎として残るので、ミステリよりは、SFに近いと思われる。
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頭から体に伝わる電気信号。
それが体を動かすのだけれと、反射とはまた違う個人の意識はどうして生まれるのか。
普段全く考えたことがない内容だったので、とても面白く読めた。
でも結局は解明されておらず、むだまだ研究の余地がある分野で面白い。
基本的な脳の役割から説明してくれているので、復習+αの知識も得られる。
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タイトル通り「意識はいつ生まれるのか」をテーマにした本。著者の戦略は、まず意識の有/無を定義し、それぞれの場合の脳の状態を観測して差分を調べることで、意識が発生するための「脳の状態」に関する条件を探ろうとするものである。
人間の脳のうち、小脳のニューロンが800億個と脳全体の半分以上が集まっているにも関わらず、小脳を取り除いても生命は維持できる上に意識も存在している。一方、大脳皮質には約200億個のニューロンしかないが、大脳皮質の障害は意識状態に大きな影響を与える。このことは、単にニューロンの数が意識を生み出しているわけではないことを示している。また、睡眠状態の脳の活動の量を測定すると、ほとんど覚醒時のそれと変わらない。一方、TMS (Transcranial magnetic stimulation: 経頭蓋磁気刺激法)により直接的に脳内のニューロンを刺激した反応は睡眠時と覚醒時は大きく違っており、睡眠時は同期した単調な反応しか生じないのに対して、覚醒時のそれは非同期な複雑な反応をするという。著者は、この違いが「意識がいつ生まれるのか」を判定するために非常に重要なものであるとする。
著者らは、このような近年得られた知見をもとに、「ある身体システムは、情報を統合する能力があれば、意識がある」(p.111)という仮説を提唱し、これを「統合情報理論」と名付ける。彼らはシステムの統合度と複雑性を表す数値をΦと定義し、それを「ある物理的システムがあらゆる方法で揺さぶられたとしたら、どのような反応をしうるか、を表す数値である」(p.270)と定義する。そして意識レベルを表すこの値は「脳が潜在的に持つ選択肢の数によって左右される」(p.270)とし、その数を測定することで判定が可能だとする。もちろん、この値を現時点で直接的に測定することはできない。しかし、著者らはそれを将来的には測定し客観的に比較することが可能な数値であるとしている。そのことで、動物に意識はあるのか、コンピュータは意識を持つことができるのか、といった問いを数字的に測定可能な問いに置き換えることができるとしている。
この本に対する批判があるとすれば、著者らが提唱する情報統合理論におけるこのΦの測定可能性が、少なくとも本書の中では「一連の複雑な計算プロセスを経る必要がある」とするだけで明確ではないことだろう。「外側から観察するだけでは不十分」で「あらゆる方法でシステムに揺さぶりをかけるだけでなく、情報がいろいろな構成要素によってどの程度共有されているかも調べなければならない」としているが、このような「あらゆる」という仮定を導入しなければならないものが自分にはそれが測定可能であると思えない。これらの疑問は、専門的な研究論文などでは言及され、解消されているのだろうか。 また、何ゆえにΦの値が意識レベルを表すものであるのかの根拠が弱い(ほとんどない)という問題も挙げることができる。「『意識とは何か』という哲学的な問いには答えない」としているからといって、その疑問に答えなくても、彼らの主張が成立することを説明しなくていいということにはならない。
繰り返しになるが、本書は「意識がいつ生まれるか」について説明するもので���り、「意識とは何であるか」を説明するものではない。そこに物足りなさを抱くこともあるかもしれない。
本書では、脳梁を切断したときに、どうやら二つの個別の意識があるらしいことや、脳の局所的反応から意識生成までに0.3秒~0.5秒かかることを説明している。これらの事実は、意識が情報の統合から生まれるという仮定と合致するものである。いずれにせよ、この辺りの知見は近年の脳を測定する技術が進展したことの成果である。技術の進化はつい最近のことであり、かつ発展途上でもあるため、「意識とは何か」ということに関してもまだまだこの先にも新しい話はありそうだ。
なお、第一章から第九章までを第五章を中心にして、前半四章で階層的に出される問題に対して、後半四章でミラーにして回答をするような構成になっているが、その工夫の効果はいまいち感じられなかった。期待していたものに対しては少し十分なものではなかったのかな。
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意識を説明する理論として、統合情報理論というものが提唱される。
「ある身体システムは、情報を統合する能力があれば、意識がある」というもので、これ自体は目新しいものではなく、前半はやや退屈。
後半はとたんに面白くなってくる。
この理論の一つ、重要な点は定量化を可能にしている点で、系の複雑さがΦ(ファイ)として測られる。Φの具体的な計算法は「難しすぎるから」ということで説明されていないが、経路の情報を含んだ組み合わせの數のようだ。なので、小脳のようにニューロンの数こそ多いが、小脳皮質間の連絡線維というものはなく、独立したモジュールが集まったような系では低くなる。また、モジュール間の連結が多ければいいというものではなく、全てのモジュールが同じように繋がった系では、結局はどのモジュールが興奮しても全てのモジュールにそれが伝播するだけなのでやはりΦは小さくなる。ある程度のランダムさをもった結合の系でΦは大きくなるようで、脳のように層化していたり半球にわかれている方が値が大きくなる。
もう一つは、実際に理論を確かめているところで、TMSによる刺激後の脳波をとり、意識がある場合はその棘波が脳全体に複雑な形で広がるのに対し、意識がない(睡眠、昏睡)の場合は同じ波形が広がっていくだけであることを確認している。これもΦの値が小さい系(睡眠・昏睡)では同じ波形が伝播するだけで、理論とよく合っている。
また、われわれがコンピューターに意識がないと考える根拠は、われわれ自身がそれを組み立てたから、ということにすぎない。その動作の秘密を知り尽くしているからだ、というのもナルホド、という感じ。やはり意識は何らかの創発性によって生み出されるもので、そのためにはよく分からない部分が残っていないとダメなんだろう
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脳が意識をなぜ持つのかについて書かれた本。意識を持つのは視床下部-皮質系であり、シナプスの複雑な繋がりによる。統合情報理論というものに基づき、意識を検証、考察している。脳神経が多様な相互作用をもち、かつ統合され、統合された情報量が最大となるときに意識が出現するという。その情報量の単位をφと定義している。つまり意識の発生は複雑ネットワークにより多様な情報が処理され、なおかつそれが全体に共有されている状況で発生すると考えられる。それはとても納得のいく考えだ。脳神経のネットワークはスケールフリーでスモールワールドとなっている。しかし、シナプスの電気信号の全体、そのもやもやしたものが、1つの意識として表出されるメカニズムにはまだまだ謎があり、興味が尽きない。
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意識とは,という問題に実践的で,地に足のついたアプローチで取り組んでいる印象。脳の統合情報理論というものはこの本で初めて知ったが,とても興味深い概念。
哲学的ゾンビ,自由意志,等の問題。
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素人には難解な内容を『潜水服は蝶の夢を見る』での閉じ込め症候群や、ネーゲルの『コウモリであるとはどのようなことか』などを例にあげるなど、人文学的アプローチで著者は軽快に解説してくれている。訳の日本語は柔らかくて優しい。どうやら翻訳者はタブッキの研究者のようだ。
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用語も平易で、文章もこなれていて、かつ構成もミステリー小説を意識して書いたと著者が言うように、疑問とその回答を対置する形で書かれていて、この種の科学読み物の中ではずば抜けた読みやすさだと思う。
ただ、結局のところ本題の意識が何かということに関してはよく理解できなかった。
構造的な話、情報量の話、情報の統合の話というヒントは提示されているが、結局結論としては解明されていないわけで、その点がちょっと読んでいて歯がゆいというか、物足りない気がした。
まあしょうがないと言えばしょうがないが。
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「意識」というものに対しては、小さい頃からずっと不思議に感じている。
「意識=自分=人生そのもの」のように思ってきた。
意識って何なんだろう?
サルや猫や魚や虫に意識はあるのか?
どこまであってその境界は?
死んだら意識はどうなるのか?
肉体と意識は分離できるのか?本当に一体のものなのか?
死んでも意識が残るということは不可能なのか?
意識をコピーできないのか?
などなど…
ほぼ半世紀生きてきたが、意識に対するクエスチョンマークは一向に減ることはない。この間、ニューロンやシナプスの構造や働きが解剖学的・生理学的に解明されてはきたが、意識の謎は解明されない。
しかしこの本は少し手がかりが見える。
特に植物状態や昏睡状態に陥っている人の意識の問題は深刻で、かつ示唆に富んでいる。それは、意識のある状態とない状態の境界に位置する問題だからだ。
情報量と伝達の構造と多様性(複雑性)が鍵になる。
これは組織の在り方や人間社会の在り方のヒントにもなる。
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【由来】
・My Yahooの講談社現代ビジネスRSSで
【期待したもの】
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※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。
【要約】
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【ノート】
・
【目次】
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■『意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論』★4つ(5点満点)
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最近、読書量の3,4割を占めるサイエンス本。
AI進化の文脈で、「意識とは何か?どうなったら意識を持ったと言えるのか?」といった議論が、またに聞かれる。
このとき、脳の科学的解明が難し過ぎることになり、哲学論争になってしまうことが多い。哲学者、脳科学者、AI研究者、などなどが、複数の意識の定義を主張している。
しかし、「サイエンス的な議論」は、これまで見たことがなかった。サイエンスの世界で当たり前の、科学的仮説を検証・証明する行為がない。
「意識はいつ生まれるのか」は、私の知見の中では、初めて「意識」について、科学的アプローチで正面から、「意識は、どこにあるか?」「意識のある/ないの境界はどこか?」などを、10年の歳月を掛けて検証考察した本。
「意識って何?」と思った人は、このアプローチは視点として知っておいてよいだろう。
ちなみに、かなり一般向けにかみ砕き、専門的な説明は極力省いているので、普通の人でも読めます(注:私は、普通の人ではありませんw)
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意識や自由意思とは一体なんなのだろうか。こういった脳科学系の本は好きで色々読むが研究や実験が進めば進むほどに答えが近くなるというより遠ざかるような気さえする。それでも非常に惹かれる分野である。睡眠時の意識についても詳しく書かれているが興味深い。そもそもなぜ人間は寝なくてはいけないのだろうか。なんとなく読みながらレインボーマンのヨガの眠りを思い出した(レインボーマンは力を使い果たすと身体が石化して5時間仮死状態になる)。面白い本でした。