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太宰賞受賞作「変わらざる喜び」
ある仕掛けが、作者の言いたいことを読者の心に深々と刺す構造になっていて、考えさせられた。たくらみを持った小説、というべきか。
稲葉祥子さんの「装飾棺桶」
最初は興味深く、最後の方は切なさと共に読了した。
ザリガニ型棺桶という圧倒的な異物、ほんの小さなずれの積み重ねが取り返しのつかないことになっていく様が、丁寧に綴られていて心に沁みた。
「こんな風に後悔したくない」と強烈に思った。
小説に書かれている世界を飛び出して、現実を生きる読者に何らかの感情(なぞるような共感ではなく自発的な)を起こさせるのが、物語の持つ力だ、と思った。
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一行目:恋人が授かった初めての娘は、まもなく生後二ヶ月になるところだった。
太宰治賞=純文学すぎる、と思っていたので身構えたが、読みやすかった。
職場を去った主人公恵那は、何となく毎日を過ごしている。一方、不倫の恋人には娘が出来ていた。
ざわつく心をうまく表しているーと思いきや、恋人は元上司の奥さんのほう。仕掛けもあったか!と感心。
恵那の友人メリッサがいいキャラをしていて、ぼんやりとした登場人物だらけの本作品を上手に引き締めている。
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先物買いのつもりで毎年読んではいるものの受賞してからが続かないような…そして選考からしをん氏が抜けまた小川さんも抜けるとなるとめっきり寂しくなるような太宰治賞。
まぁそれは置いておくとして今回の受賞作は伊藤朱里さんの「変わらざる喜び」、いろんな意味で「企み」が炸裂しその内容は詳しくは書けない。先例として映画化されたあの作品があるので企みが狙いと取られる恐れもある、しかしこの作品は壊れかけた女子の復活の物語でありその視点から描かれる情景は企みこそ自然なのだと思う。
よって作者に悪意などなくそればかりか冒頭の数行ではっきりと明言しているではないか…読み手はそこの違和感にもっと拘るべきだったのである。
賛否両論あるが私はこの人は巧いと思った、一読の価値はある