投稿元:
レビューを見る
第二次世界大戦を舞台にした連作ミステリ。ミステリとしては「日常の謎」で、たわいもなくほんわかした謎解きという雰囲気なのだけれど。なんせ舞台が戦場なもので、ストーリーの方があまりに凄惨でした。むしろ謎が息抜きといった感もあります。
しかし戦争の凄絶さとは裏腹に。主人公ティムの物語は青春小説ともいえるかも。あまりに過酷な戦線での友情だったり成長だったりが描かれているのが読みどころです。どんどん仲間が死んでいくし、ラストでたどり着くあの場所の描写はそれこそ読むに耐えないのですが。読後感としては、爽やかというか穏やかというか。そして戦争のなくなった平和な生活を心からありがたいと思うことができました。
投稿元:
レビューを見る
第二次世界大戦時のコックたちが軍隊内で起こる謎を明かしていく話。
謎自体は小さい見逃してしまうようなもの。
直木賞にノミネートされてから気になっていて図書館でようやく借りられました。
読むのに時間がかかってしまったけれどとても面白かったです。
戦争描写も詳しくよほど調べられたんだろうな。
戦友も死んでいくのにはショックでした。
しかもキッドの一番の親友が死んだときは泣いちゃいました。
だからこそ最初のほうの穏やか(?)な時間とか粉末卵の事件のときが懐かしいです。
エピローグではその後もちょくちょく交流があったのは安心しました。
今回は図書館で借りたけれど買って手元に置いておこうかな。
そしたらまたグリーンバーグに会えるかも。
投稿元:
レビューを見る
内容(「BOOK」データベースより)
一晩で忽然と消えた600箱の粉末卵の謎、不要となったパラシュートをかき集める兵士の目的、聖夜の雪原をさまよう幽霊兵士の正体…誇り高き料理人だった祖母の影響で、コック兵となった19歳のティム。彼がかけがえのない仲間とともに過ごす、戦いと調理と謎解きの日々を連作形式で描く。第7回ミステリーズ!新人賞佳作入選作を収録した『オーブランの少女』で読書人を驚嘆させた実力派が放つ、渾身の初長編。
投稿元:
レビューを見る
前知識なく、てっきり海外ミステリかと思って読んでいて、途中で気が付いた。どおりで、翻訳にしては文章がこなれていて分かりやすい。
戦争を体験していない自分には、戦場のリアルは正直分からない。しかし、これまでに読んできた戦場を描いた小説やノンフィクションに比べると、物足りなく感じてしまった。著者の主眼はそこには無いのかもしれないけど。
投稿元:
レビューを見る
時は第二次世界大戦。何でも屋の両親と惣菜屋を営む祖母に育てられたティムは、連合国軍の兵士に志願し、いよいよノルマンディに降下した。一人のコック兵として。降り立った村で後方支援として配給食を調理しながら、前線でも戦う。そんな日々の中、補給兵のライナスからシードルと交換に降下に使用したパラシュートを譲ってほしいと声をかけられる。同じコック兵であり冷静沈着で頭の切れるエドや調子の良いディエゴとともに、ライナスの真意を知ろうとするが……。
戦場っていったいどこのファンタジー上の戦場なんだろって呑気に構えて読み始めてしまったので、現実じゃんって最初のパンチだった。
戦争中なのに、日常の謎ミステリ。青年たちの絆の物語でもある。戦闘の描写が丁寧で読んでいるのが大変つらい。良い意味で。謎自体は細やかなのだけど、状況ときちんと絡んでいるので不自然さもなく。ただやはりどうしても、現実に存在したかもしれない、あの戦争で戦っていたアメリカ兵なのだと思いながら読むと遣り切れない。日常の謎ミステリだけど、これは紛れもなく戦争の話なのだ。
投稿元:
レビューを見る
コックと兵士を兼ねるアメリカ陸軍の五等特技兵ティモシー・コールが訓練で知り合った仲間たちと共に第二次世界大戦を生き抜く物語。ミステリーはエッセンス程度ですが、各章に「不要となったパラシュートをかき集める兵士の目的」、「一晩で消えた600箱(3t分)の粉末卵」、「ある夫妻がわざわざ戦場で自殺した理由」、「深夜に彷徨う幽霊兵士の正体」、と戦場ならではの謎が配されています。ちゃんと特殊設定を活かした解ですし、謎が浮いていないのも素晴らしいです。
また、魅力的な登場人物が次々と命を落としていく戦場の苛烈さもしっかり描写されていて戦争小説としても読み応え十分。生き残った者達が40年後に再会するエピローグは感動的です。
投稿元:
レビューを見る
第二次世界大戦時のヨーロッパが舞台の連作形式ミステリー。
それぞれ真相は戦時中ならではだった。何気ない会話が不意に攻撃によって遮られ、彼らの心境・やり取りがどんどん変化していく様に胸が詰まる。
戦争を通して主人公ティムの心境も変化していくけど、芯の部分は変わらない彼にほっとする。
投稿元:
レビューを見る
ページ数は多かったけど、一気に読めてしまいました。
戦争ものですが、推理もの?もちろんコックさんのお話も。
本屋大賞候補ですので、読んでおいて損はありません!
投稿元:
レビューを見る
コックが色々工夫して美味しいご飯を作る、(信長のシェフみたく)みたいな話を想像していたら思っていたより現実的な話だった。
バンド・オブ・ブラザーズと被っているところがあるので映像を思い出しつつ一気読み。
投稿元:
レビューを見る
戦場という極限状況だけど、謎解きは日常の謎で、さらに短編連作のようでいて、大きな秘密が最後に出てくるなど、仕掛けが面白かった。
投稿元:
レビューを見る
ミステリといえば誰かが死んで殺した人をみつけるのが基本だけれど、戦中、戦場が舞台のこの小説世界では人は簡単に死んでいってしまう
その状態での不思議なこととそうでもないことのドラマ
すごく、面白い
東野何某が好きな人なら気に入りそう
投稿元:
レビューを見る
私の視角にこの書名が入ってきたとき、米国の小説だと誤解した。このミスで国内2位にランクインしているのを見てはじめて日本人の作者であることを知った。
読み始めてすぐに「バンド・オブ・ブラーザーズ」のオマージュかなと推測。この点、参考文献やこのミス掲載の作者インタビューで「バンド・オブ・ブラーザーズ」に触れられている。
「コック」とあっても料理場面より戦闘場面の方が多い。一兵士を主人公にしても英雄譚にはせず、悲劇的なエピソードも恐れない。戦争小説だ。
前に読んだ「バルジ大作戦」の中で、アルデンヌで戦ったコックたちがこの戦いの中で一人前の戦士なった、みたいなことが書いてあったことを覚えている。
投稿元:
レビューを見る
第二次世界大戦を舞台に、コックとして戦地に赴く主人公を取り巻く物語。
このミス2位の通り、ちょっとしたミステリー要素はありながらも、戦場においては医療班と並ぶ縁の下の力持ちであるコックたちの目線から、仲間たちの出会いと別れを淡々と描く青春物語。
前線の兵士たちから馬鹿にされながらも、食料の分配や少しでも元気になるよう振る舞う食事など、コックのポジションがなくてはならないのが良く分かる。
戦争によって精神が崩壊して行く様や、いかにしてこの場から逃げることができるかを考える若い兵の話など、戦闘だけではないシーンがよりリアルで、戦争という非日常が良く描かれている。
ノルマンディー上陸から描かれているので、ドイツ軍との戦闘が中心であるのだが、ラストの収容所での死体の山の描写もまたリアルで、言葉での表現でありながら目を背けたくなるほどだ。
ちょっとしたミステリーな部分とコックたちの青春物語を中心にしている分、物語全体に温かさが感じられ、戦争の悲惨さを伝えていながらも読みやすく受け入れやすい内容になっているのだと思う。
エドが言う「責めたい気持ちと庇いたい気持ちがせめぎ合ってぼろぼろになる、そういうお前が良い人間に見える」なるほどそうかもしれない。
一年の最後の最後に素晴らしい作品に出会えたことに感謝。
また来年も良い作品に出会えますように。
投稿元:
レビューを見る
16/01/02読了
予想を裏切る展開はあまりない。ただ、戦争の只中にある兵士の日常なので、戦争の凄惨さと兵士たちのありふれたやりとりが地続きで語られることに、ときおり面食らう。個々の人物の性格が、わかりやすい典型的なところ8割に、意外性を2割まぶす感じで、これもスパイスになったり。とにかく、とても読ませる物語なのは確か。
我ながら失敗したなと思うのは、帯に書かれたコメントを全部読んでから読んでしまったこと。自分の読後感がそこに合わず、とてそれを超えたものでもなく、もやっとした気持ち。要は煽りすぎ。
帯ではエピローグを読むためにあるとのコメントがあったけれど、私は5章も追加したい。
投稿元:
レビューを見る
物語の舞台は第2次世界大戦末期のヨーロッパ。対ドイツ戦線の最前線に送られたアメリカ兵の主人公ティムが目の当たりにしたのは、仲間の死はもちろんのこと、地元住民への暴力からナチスによるユダヤ人の虐殺まで、これでもかといわんばかりの悲惨な光景の連続だった・・・。このような戦時下の「非日常」の中のちょっとした「日常の謎」、例えばパラシュート集めの目的や、超不味い粉末卵が一夜にして消えた事件など(中には「ちょっとした」ではすまない事件もあるけど)が、強烈な印象を残す戦闘シーンの間に緩衝材のような形で挿み込まれた構成が非常にユニークであり、面白く読めた。
ミステリの一方で日本人向けの戦争小説としてもよくできていると感じた。具体的にはアジアではなくヨーロッパを舞台とすることで、客観的な視点で「個人にとっての戦争」とは何なのかを考えることができるような仕掛けになっており、実際に読了後の余韻とともに考えをめぐらせた読者は私を含めて多いのではないかと思う。
個人的には戦争小説とミステリが幸せな融合を果たしたという印象だが、他にも友情小説・成長小説等々、多くの読み方ができる傑作だと思う。是非とも多くの方々に読んでいただきたい。