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実にアナクロだがだからこそ熱い青春小説の傑作。
唯一の欠点は続編がすぐに読めないこと、勿論あるよねこれ。
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格闘技のノンフィクションの最高峰の木村政彦本にも出てきた、高専柔道の流れを組む七帝柔道についての、著者の自伝的小説
木村本でも思ったけど細かい部分についての著者の記憶力や裏取りのしつこさがいい意味で半端ない
私の嫌いな根性論と精神論の強い内容だけど、ここまで突き抜けていると爽快でたまらない
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いろいろ難しい事も書いてたが、読み終えると何だか爽快感を覚えるいい小説だったと思う。
まさにドキュメンタリー的小説。
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「増田俊也」の自伝的青春群像小説。
国際化しスポーツ化してゆく講道館柔道に対し、一本しかないルールで15人戦。全く異なる性格の大会「七帝戦」に勝つためだけに、少数の抜き役と大半の分け役に分かれ、分けるためだけに地獄の特訓をひたすら続ける。「練習量がすべてを決定する柔道」、「体格や才能ではなくひたすら負けない柔道」、そのためには「ひたすら寝技にこだわる柔道」。
連続最下位を続けるどん底の状態の北大で、大学生活のすべてを、ひたすら寝技だけをこなす毎日。支えは共に闘う仲間たち。悩み、苦しみ、精神も肉体も限界を超えながら、少しずつ前進していくその姿に胸を打たれずにはいられない。
「柔道好きか、俺たち?」「好きじゃない。「なぜ続ける。「七帝戦に勝つためだけ。ただ仲間と勝つためだけ」。
小説としてはどうかとか関係なく、★★★★★
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私の苦手なもの、嫌いなものが、これでもか!のてんこ盛り。旧制高校的バンカラぶり、男同士の絆、圧倒的な「力」の誇示、極限までの肉体的鍛錬、汗、涙、ヨダレ、女は添え物的扱い、いやもう数え上げればキリがない。
ああ、それなのにそれなのに、どうしてこんなに面白いの?! 冒頭からその世界に引きずり込まれ、熱気立ちのぼる筆致に圧倒されて、六百ページ近くを一気に読んでしまった。全くなんでこんなに惹きつけられるのか?
七帝戦は知っていたが、それが柔道から始まったもので、しかもその柔道が講道館柔道とは違うルールで戦われているのは知らなかった。「寝技の京大」というのを聞いたことがあるように思うが、しかしまあ、それがここまで壮絶なものだったとは。著者自身の北大での四年間を下敷きにして描かれる、高専柔道の姿がまずは驚きである。
大学生活の一切を柔道に捧げ、汗と涙にまみれ、絞め技に失神し、怪我を繰り返し、精神的にもとことん追い込まれながらボロボロになるまで練習する、その目標は、スポーツ紙の小さな記事にさえならない七帝戦である。払う犠牲の大きさとあまりに釣り合わない。しかし、彼らはそこにすべてをかける。
なぜ? どうしてそこまで自分を追い詰めるのか? 著者は答を提示しない。二年目の七帝戦で終わるラストにカタルシスはない。おそらく続きが書かれるのだろうが、そこにもきっとないだろう。これはスポーツ小説として異色だ。定型外のそのはみ出し方が、心をとらえて放さない迫力を生んでいる。
いや本当に、こういう「限界まで追い詰めることでむき出しの人間性をさらけ出しあう」という関わり合い方は、私の日常からも、愛する世界からも、極北にある。それでも、ここに出てくる人たちの何と魅力的なことか。特に、直情的でわがままな竜澤(主人公増田の親友となっていく、その描写がとてもいい)、熊のような風貌の和泉先輩が強く印象に残った。少ししか出てこないが、峠君という線の細い青年(彼は柔道部員ではない)が優しく描かれていて、それもこの物語を荒々しさから救っているように思った。
北大を中心とする札幌の街の描写が美しく、物語に奥行きと情感を与えている。主人公が「北大は札幌の街に抱かれている」と思う場面があるが、まさにその通りだ。人口百五十万もの大都市が、森が茂り川の流れる北大キャンパスを中心とするかのように広がる。おおらかな北の大地が学生たちを包み込んでいる。雪に覆われる長い長い冬の厳しさ、美しさが、妥協のない物語によく似合っている。
心に残る場面はいろいろあるが、増田と竜澤が北二十四条の交差点で柔道部東征歌を歌うところが好きだ。「通行人たちは遠巻きにして見ていたが、歌い終わると笑顔で拍手してくれた」 なんだか泣けてくる。
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努力は実るとは限らない。でも、努力しないと成し遂げることは難しい。陳腐な表現です。流した汗は嘘をつかないわけではなく、がんばっても成し遂げられないことはいくらでもある。私もこれくらい大学生のときにがんばったらどうなったんだろう?まあ、3流クライマーのままだっただろうな!しかし、つまらない書き方だが、努力する姿は美しいと思うな。
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こんな柔道があったのか!講道館柔道とはかけはなれた寝技主体の一見何の面白味もない格闘技に青春をかけた男たち。なんと泥臭いスポーツ根性もの。しかし読んで胸が熱くならない人はいないだろう。今年の本屋大賞候補一押し.
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あまりに激烈な、そしてあまりに純粋な青春がここにある。
「七帝ルール」という現在の国際ルールの元になる「講道館ルール」とは別の進化を遂げてきた旧帝大七校にのみ残るルールで「七帝戦」での勝利を目指す北大生の青春の物語。
最後の最後になって「辛いのは北大だけじゃない」という事に気づく主人公。
続きが是非読みたい。
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1986年北大1年。体育会柔道部。そのまんまの小説。柔道部や援団、飲み屋は一部(というかほぼ)実名。
1987年法大1年、横道世之介と時代背景が同じとはとても思えない。(北海道新聞に書評を書きました)
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北の海が底抜けに明るい青春時代の思い出なのに対して、この作品はとにかく暗い。札幌の雪深さと寒さが練習の辛さを増幅させているかのよう。ところどころでほっとできるエピソードが交えられているが、どうしても痛みや悩みが先にきてしまう。だからこそ試合に破れた後の主将のセリフがハッピーエンドであるかのような爽快感を生むのだろう。
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著者の北大1年次~2年次の高専柔道記。
いや、常軌を逸してますね。正気じゃない。何人も辞めていく姿が描かれていますが、辞めない奴が異常としか言いようがない。抜き役はまだ分りますが、分け役がここまでして続ける意味が分らない。指を潰され、耳を餃子にして、ひたすら6分間耐え抜く技術を磨くのに、大学4年間を練習漬けで費やすとか正気じゃない。(とはいえ卒業生は国Ⅰ受かってキャリアになっていたりするので、著者がその中でも際立っていたのかもしれませんが)
しかし、読んでいるだけで暑苦しく、苦しく、そして筋トレしたくなってきます。
「俺も1日1時間くらいのトレーニングで疲れていちゃあかんな、朝も走ろう」という気分にはさせてくれます。
いや、世の中こういう人たちが普通に歩いているのだから、間違っても喧嘩なんてしちゃいけませんな。これからも大人しく生きよう。
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柔道、一度もやったことはないし、
きちんと見たこともない。
だからルールも知らない。
でも、充分に面白かったです。
決して綺麗でも爽やかでもないけれど、
だからこそ、決して色あせることがない「時」がここにある、という感じ。
今の柔道界をこの小説に出てきたような人達がたてなおしてくれたら、と
願ってみたりします。
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柔道と言えば講道館柔道しか思い浮かびませんでしたが、こんな柔道があったんですね。
井上靖『北の海』に描かれていた「練習量がすべてを決定する柔道」、高専柔道がこんな形で現在も続いていたというのが驚き。
小説自体は30年前の北大が舞台ですが、作者のブログを見ると今年の七帝戦の様子が載っていますから、ちょっと見に行ってみたいかも。
作者さん自身の体験が基になっているということで、ご都合主義な“最後は勝って大団円”とはならない。
努力したから勝つとは限らない。
だって他の学校の部員だって同じように(あるいはそれ以上に)努力をしているんだから。
それは当たり前のことなんだけど、やっぱり勝つところも読んでみたいですね。
主人公が二年目で終わるこの小説、続編は期待してもいいんでしょうか?
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仕事の都合でまとめて読めず、少しずつ読み進んだ。
それがかえって、この小説の時間軸と合った気がする。
とにかく厚く熱い男の柔道小説。読んでいる間中、彼らの体から立ち昇る湯気に包まれていた。
地獄の様な練習漬けの日々の末に掴むもの。
ずっしり腹に響く小説だ。
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筆者こと主人公は「七帝柔道」という寝技中心の柔道に憧れ二浪の末にその一角を占める北海道大学に入学した。そこから物語ははじまります。『寝技中心の柔道』に己の全てを賭ける男たちの青春を描いた小説です。
実をいうと僕は、大学時代に1度だけ、七帝戦、もしくは七大柔道大会というものを見たことがあるんです。ここで行われる柔道は、講道館ルールと呼ばれるオリンピック等で見られるものではなく、現在で似た様なものはブラジリアン柔術のように(ルーツが同じだから当然といえば当然)ひたすら寝技で戦うというもので、さらにいうなれば関節を極められてもギブアップはせず、締め技が入れば落ちる(意識を失って気絶する)という本当に壮絶な試合であったことを思い出します。
僕が見ていたときは女子の試合があり、彼女等も必死になって試合をしていたことを本書を読みながら思い出しました。確か、そのときは記憶によると主催校だった北海道大学が優勝し、選手はもちろんのこと、OBとおぼしき年配の男性も男泣きに泣いていたことを思い出しました。さらに僕は、物語の舞台である北海道大学のキャンパスおよび北大の界隈は様々な業者として北大キャンパス内に入って仕事をし、さらには精神的な彷徨を重ね続けた場所であるために、読みながら書かれている地名や北大の学部。さらにはキャンパス内の施設や彼等が酒を酌み交わしたり、食事をしたりしていた店も『あぁ、あそこか』と思いながら、あの無為を極めた歳月はこの小説を理解するためにあったのかと、そんなことを錯覚しながら最後まで読んでおりました。
この小説は旧帝国大学系大学のひとつといわれる北海道大学を舞台にそこで華やかなキャンパスライフをすべてかなぐり捨てて『高専柔道』と呼ばれる特殊な柔道の流れをくむ『七帝柔道(もしくは七大柔道)』に明け暮れる若者たちを描いた青春群像劇となっております。最初の話に戻るかもしれませんが、ですので、これを読みながらきっと僕は試合会場で現在はOBとなったであろう本書に出てくる学生たちの誰かとすれ違ったことがあったのではあるまいか?そんなことを考えておりました(ここでは名前を伏せますがDVDまでリリースしている師範の一人とはすれ違っています。)
主人公こと筆者は名古屋での高校時代に、寝技で相手を圧倒し続ける名大選手の柔道を見て、『大学に入ったらこの柔道をやろう』と青雲の志を持って2浪の末に北海道大学に入学します。読み始めて『だったら地元の名大や京大、阪大でもできたのになぜ流れ流れて北大へ?』という疑問があったのですが、地元を離れて暮らしたかったと書かれていて、納得がいきました。先に入学していた高校の同級生である鷹山氏に柔道をやめたことを筆者は打ち明けられます。しかし『柔道をやるためにここにきた』という決意のもと、入学式にも出ない。授業にもほとんど顔を出さないというバンカラな学生生活を送りながら、柔道部の門をたたくことになります。
そこで展開されるのはひたすら延々と寝技ばかりを繰り返す光景と道場全体を包む異様なまでの熱気でした。同期と共に入部し、先輩たちにメチャクチャなまでに押さえ込まれ、関節技を極められ、締められては落��される…。そんな日々の中で彼と共に入った同期は次々と去っていくのです。筆者を鍛えた主将の金澤氏は勉強もすさまじい努力を重ね、国家公務員一種キャリア試験をパスし、建設省に入省するのです。この顛末を読むとあまりの壮絶な展開にため息が出ました。
1年目の七帝戦は惨敗に終わり、OBたちもほとんど来ない中、男泣きに泣く部員たち、これは読んでいて胸が詰まりました。そこで後任の主将に任命されたのは和泉唯信氏という広島出身の男でした。和泉体制になってから柔道部の練習はさらに過酷を極めます。満身創痍で寝技の練習を限界までするのはもちろんのこと、さらには道警の特錬という柔道エリートたちのいるところへ行っての出稽古をはじめ、北海道の柔道で有名な大学や高校の柔道部を招いて稽古をする場面は呼んでいて涙が出そうになりました。
彼等に叩きつけられ、極められ、締め落とされながらも徐々に自分の強さを実感する筆者こと主人公たち、それに加えてウエイトトレーニングなどの過酷な練習メニューを黙々とこなしていくのです。そんな中で迎えた2年目の七大戦を迎えることになります。そこでのくじ引きで対戦相手となった阪大の態度に業を煮やした和泉氏をはじめとする北大メンバー。阪大に敗れ、それでも一縷の望みをかけて挑んだ敗者復活戦の対東大戦。最下位を脱出するために壮絶な覚悟を持って試合に臨むも立ち技主体の彼らに寝技で敗れるという悲劇的な結末に。またしても去年と同じ結果になってしまったことに筆者同様、『努力は報われないのか…。』と読みかけのページを閉じて天を仰いでしまいました。
本書はテーマとなっている七大柔道のように、われわれ読者をぐいぐいと物語世界にひきこみ(七大柔道の寝技に引き込むテクニック)一気に読み進めることのできる青春群像劇の極北であることを、ここに確信いたしました。