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数ヶ月積ん読しておいたものを眠れなかったので一気に消化してみたが、うーん、話題になった程の真価を感じることは難しかった。
そもそも自分の中が自分はウェルベックの作風(とされている)扇情的・快楽的なものに対して本心はどうあれ表向きは否定的な気持ちが先立ってしまい、あまり好感が持てないままだった。
前半のifストーリーはシャルリーエブドや昨年末の事件のこともあり非常にリアリティがあって楽しく読めた。だけど結局は主人公が改宗した理由、世間が迎合した理由も作中でイスラムが真に戦うべきとしている物質主義の極みみたいなところにあるあたり、結局展開に無理があるように思えてしまった。
物質主義は物語の中でも克服されないままであり、一部のインテリジェンス層を除き作中の庶民や欧州は真に服従したとは言えないのではという疑問は最後まで解消されなかった。これ絶対、今後数年で新しい格差に対する不満が出てきて同じ瓦解が生まれるやつや。
ただまぁ、ifストーリーとしてこれが欧州でとてもウケているという事実込で読むこと自体はとても面白かった。「半島を出よ」みたいなノリで捉えるのが正解だと自分の中で落とし所をつけることはできたのでそれで良いかな。
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内容自体はそれほど読みにくい小説ではないけれど、固有名詞が多すぎて(特にフランスに関する言葉)、広く一般の人に読まれようとは、つまり、世界中の地域においてリーダブルな読み物を作ろうとは、特に考えていないのかな、という印象。これ、みんなスラスラわかるのかしら。僕だけわからない・・・?
フランスでイスラーム政権が誕生する物語。ユイスマンス(そもそもこの人を僕は知らない)の研究者であるフランソワの生き方をたどる。インテリである彼が、ゆらゆらと国家の力に流されていく様子には、なんだかものさみしさと悲しさを感じた。
穏健なイスラーム党が政権を握った。イスラームについて、もっと知りたいなと思わされたのが、p251~の『O嬢の物語』のところである。
「とにかくわたしにとっては、『O嬢の物語』に描かれているように、女性が男性に完全に服従することと、イスラームが目的としているように、人間が神に服従することの間には関係があるのです。お分かりですか。イスラームは世界を受け入れた。」
人間の幸福が、服従にあり、その視線の先には、絶対的に超越する「神」の存在があるーこれはイスラームの考えの1つなのだろうか?
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2020年のフランス大統領選においてイスラーム政党が政権を握り、イスラームによる政治が始まる、とうこの小説が、まさにシャルリー・エブドのテロ当日に発売されるという偶然によって否が応でも世界の注目をあびることになる。現在のフランス社会の状況や、フランスの近代思想史、イスラームの影響力への実感といった知識がないとなかなかわかりにくい部分もあるので、佐藤優氏の解説がかなり理解を助けてくれた。ヨーロッパがギリシア危機などによってEU統合の夢から醒め始め、イスラーム系勢力に対して自信を失っているという指摘には肯首せざるを得ない。同じ一神教であるキリスト教がその求心力を弱めているのに対し、イスラームはますます強力かつ広汎にその勢力を伸ばしている。単純に世俗的な欲求が満たされると信仰を必要としなくなるということなのか、近代資本主義的な思想のもとに生きてきた主人公をはじめとする多くのフランス人達は、イスラームによる攻撃に対して悲しいほどに無力である。
神も家族も他人も信じないシニカルな現代人たる主人公は、この政変に伴い、イスラームに改宗してゆくが、その過程は暴力も神の啓示もなく、ただ彼の空虚な内面と、西欧文明の脆さだけがその理由であるように見える。それにしても女子学生や娼婦とのセックスの他にすることがないかのような主人公の虚無的なことといったらない。そんな凡庸な人間こそが、このように転向してしまいがちなのかもしれない。
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フランスでは特にシャルリ・エブド事件のその日に発売されたことで注目されたとのことであるが、むしろその後のパリ同時多発テロの方から、この本が予言的と言われたということで興味を持ち読んでみました。
文学的なあれこれを小難しく書き連ねていたり(作者がインテリであることを誇示したいだけ?)、おそらくはフランス人またはフランス在住でないとわからないだろうと思う描写も多くて、そんなところがいかにもおフランス的で辟易したものです。
しかしながら、フランスにイスラム政権誕生!というこの小説を、予言的と簡単に言ってのけるにはあまりにもリアルな描写がところどころにあり、ぞっとしました。これはあくまでもフランスでの話ですが、多数の難民がなだれ込んでいるEU全体のどこの国で起きてもおかしくない内容だと思います。
難民が暴力的問題を起こさず、ひっそりとおとなしくしているのなら拒まず限りなく受け入れるのか?そしてその後は?国内の人種別人口比率が変わったらどうなるのでしょう。その点は日本だって他人事じゃありません。恐ろしい話です。人口が減っているからといって移民受け入れを解決策とするのは考えがあまりにも愚かすぎると思った本でした。
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インテリ向けのサスペンスって感じ?(昨日が誕生日だった)ユイスマンスを知らないと半分も理解できないかも。(知りませんでした(-_-))十分起こり得そうなお話だし、こうやって社会はいつの間にか劇的に変わっていってしまうという暗示的な話。
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もしもフランスにイスラーム政権ができたとしたら。
本書が発売されたのは、パリで起きた大きなテロの記憶も生々しい頃で、リアリティがあり過ぎて「凄い」「怖い」「予言のようだ」と評判になった。
信じるもの、普通だと思っていた価値観が根底から覆される感覚。
正直、私自身はその価値観を受け入れることに直感的な抵抗を覚える。文章に注釈が多く言い回しが独特。佐藤優さんの解説を先に読み、ようやく読了。
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面白かった。以下概略の説明。
・・・人間至上主義、自由競争主義に陥った現代社会が人間たちをどこへ運んだかというと、終わりなき欲望の絶海、機能不全に陥った家族制度、つまり文明退廃への道筋であった。人は何処まで行っても自然に隷属していて、逃れることはできない。自然から切り離されることは死を意味する。それを自覚させる最良のシステムが宗教、それも一神教の長、イスラームである。現代自由民主主義、宗教改革以降のキリスト教、共産主義、資本主義、ニヒリズム、無神論…地上にはいくつもの、人々を救うための様々な思想や実践的な手法が開発されたが、それらは結局人々を救う最良の方法ではなかったことを作中のムスリム知識人たちは論理的に説得する。キリスト教社会の中心地フランスで、イスラームがなぜ勃興したか。なぜ民主的占拠手続きを経てイスラーム政党が与党となったか。彼らはそれらの理由を極めて平和的に訴える。
これは最終的に、一人の無神論者がイスラームへと改宗するに至る物語なのだが、世俗的な描写が多くて、男がイスラームに転向する理由もひどく物質的である。しかし、それがかえって男の精神世界の向上を助けるのだから、面白い。結局私たちはどこへ向かえばいいのか?という問題に対して極めてリアリティのある回答を提示している点で、この小説はわたしたちの心へ強く訴えかける説得力を孕んでいる。
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フランスにイスラム政権が誕生したら ー これって一種のディサトピアもの?
ごく出だしは、国民戦線vsイスラム同胞党に、UMPと社会党がどう絡むよ、みたいな展開も期待できた。けど結局、かなりの部分が主人公周辺の些事に終始する話なので、世界観/国家観をどうこう言うには客観性を欠くけど。。。少なくとも、陸続きの隣国がガッツリありぃ、EUの存在もありぃの現代フランスで(正確には設定2027年、近未来)、もう少し国外からの介入があると思うなあ、現実的には。
個人的には、20年振りに訪ねた修道院で修道士が自分を覚えていたことに修道院の生活にはいかに「出来事」が少ないかが偲ばれるシーン、が印象的だった。
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価値観は、一夜にして崩れることがある。日本が戦争に負けた途端、大人たちは豹変し、アメリカ流の民主主義を礼賛した。もしその当時、自分が大人だったら、どのように軍国主義と民主主義に折り合いをつけただろうか? そんなことを、思ってしまう本だった。
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人間の想像力は繋がっている。世界に内も外も無い。余りに近視的な文化圏の中にいる我々は、異国や異文化を外だと思い違うが、全ては想像力の中にある。人権も宗教も、ミニスカートもブルカも、同じ人間の欲望から生まれた。その見た目の差など、取るに足らない、本当は。主人公はそれを理解している。昨日まで信じていたことなんてさして重要ではない。価値はコンテキストに依存し、ならばコンテキストに従順な人間が評価されるのもまた当然だ。しかし私には勇気がない。本書のような思想的な危機に陥れば、古いアイデアにしがみついてしまう気がする。そもそも、なぜそんなふうに考えたかさえ思い出せないのに。どう生きるか、と問われ続ける読書体験。
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あ〜ぁ、だっせ
自分はまだいける、と思いたいのに
実は人生たそがれてきて焦ったオヤジが
若い子と結婚できるよ〜とそそのかされて
鼻の下を伸ばしてイスラム教に改宗する話
これイスラム教徒の人は読んで激怒しなかったのかな?
それともこれがイスラム教の真実?
ヨーロピアンのアイデンティティー崩壊が〜
とかなんとか前宣伝を聞いて読んだのだけど
どうなのこれ
行き詰まった知識階級の苦悩っぽい書き方をしてもだめ
要はそういう話しだ
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話題だったので。70ページぐらいまでよくわかんなかった。
てっきりディストピアの話かと思いきや、そうでもないというか、有り得るんだろうか。
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フランスを思い、ムスリムの友人を思い、知識階級にいる人たちを思う。
ありえないと思っていた現実に侵食されていく、それに安堵を感じるようになる。
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ウエルベックの過去の著作を読み返してみるとこの最新作の「服従」への道筋がより鮮明になる。モテ、非モテのセックス格差、高度のグローバリズム下における”心の満ち足り”、分断された個々人の癒えない孤独、西欧をはじめとした先進各国の地盤沈下、それらの国々の人々が抱える不安、宗教への回帰etc・・・。
闘争領域の拡大や素粒子ではあった露悪さ、あからさまな性的描写は近年の著作では影を潜めた代わりにこの作品では主人公は”服従”を行い満足を得るであろうことが示唆されている。
水面に石を投げ波動を発生させることにかなり成功したのではあるまいか。
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ウェルベック最新作にて初体験。2022年の近未来のフランス。議員選では、テロによる妨害、殺戮、大統領は穏健派イスラーム教信者となり、フランス国内の生活は徐々にイスラーム化していく。
現実にフランスにてイスラーム過激派の殺戮テロが実際に起こる前に書かれた預言書のようだ。しかしこの小説では殺戮の酷たらしい情景は一部表現あるがそこに焦点を当てた物語ではない。イスラーム化というあり得ない状況を次第に受入れるという主人公の葛藤と洗脳の物語。
イスラーム社会では男女別学、女性はベールを被る。
体の線は見えずセックスアピール出来ず、おしゃれで楽しみ事もなし。一夫多妻であっても結婚までのプロセスが面白いのにそれはなし。男尊女卑の世界で、禁酒と思いきや禁酒ではないようで、なかなか男にとって都合のいい世界だ。真面目に考えると笑えてくる。
イスラームの考えでは本来の自然界においては、男性は強い者が生き残り、弱い者は淘汰される。この強さ 現代では知性であり技術であったりする。その知性と技術力で裕福な生活をおくれる。妻を養えれる余裕があれば多妻でもいいと説く。 主人公フランソワは大学の文学教授だが、イスラーム教徒が説くこの自然界の理論に翻弄されていく。
改教の決定は一夫多妻の妻の選び方。って そこかい。
見方によってはブラックジョークとも読める物語であった。