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平易な文章で画廊とアート、アーティストの発掘、アートの価格の推移、アーティストによる自作の解説と価値の構築などを業界構造を述べてある。
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切り口が斬新な本だと思いました。
芸術を鑑賞する力をもっと身につける方法を鍛えても良いのではないか。という提言は腑に落ちました。というのも、アート=創作力の方にフォーカスが当りがちです。とかく創作に全く興味がない自分は、鑑賞する方が好きなので、こういうことを述べている本と出会えて心強かったし、良かったと思いました。
この本で一番インパクトがあった記述は下記の部分でした。強い印象が残ったので、そのまま抜粋して書いてみます。
「ISISは、資本主義的な価値観とは正反対の価値観を持っています。憎き資本主義に対するアンチテーゼとして、歴史的な遺産や芸術品を破壊するということは、彼らにとっては必然的な行為。皮肉なことに、彼らが遺産を破壊すると欧米にある芸術品が高くなる。」
という部分です。
著者の方はこの本が初めてのようですが、他にも出版されたら読んでみたい。と思わせる個性が凄く有りました。
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アートの価値と価格とは何か?どうやって決まるのか?美術と経済という、一見相容れないものがいかに本質的につながっているかがわかった。戦後日本の美術史を通して資本主義とグローバル化を再考するアプローチはとても興味深かった。
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アートと資本主義は、一見相反するようなものに思えるのですが、アートは資本主義そのものを体現していることを説いた本で、非常に興味深く読ませていただきました。
高級時計を例にとるとわかりやすいのですが、資本主義経済では「使用価値」が低いものほど「交換価値」が高くなり、アート作品はその典型例だと説明しています。
そして、良い画家というのは作品を作る才能と同時に、その作品にどんな価値があるかを客観的に判断できる能力ある人で、千利休はその典型例で、当時中国一辺倒だった価値観を、日本独自の文化の価値体系を作った偉大な芸術家なのです。
また、マーケットの視点で見ると、マーケットは常に”中心”から”周縁”に移動するのが、資本主義の道理であり、アートも同様に近代ではパリからヨーロッパの周縁に伝播していきました。そしてその中心も欧州から米国に移っていったのですが、それからは日本を通り越して、現在は経済と同様に中国がアートの中心になっているのですが、経済、アート共に、中国の次の世界が育っていないのが、世界の閉塞感につながっているのです。
このように、アートの視点から世界経済を的確に観察しているの視点は、非常に勉強になりました。
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素晴らしい教養本。
そして、まさかの金融とアート
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アートは「美術」であると共に、「商品」である。
=アートという「商品」を人々が評価し「価値」をつけるから。
絵画の値段はあってないようなもの
絵画は究極の投資対象(伸び代が大きい、しかし時間は掛かる)
その社会での文脈によって絵画の価値は異なるからこそ、伸び代が生まれる。
(旧時代では価値のなかったものが、新時代においては価値を持ちうる。)
——
モノには「使用価値」と「交換価値」がある。
・使用価値:商品が日常の中で使われることで生み出される価値。
・交換価値:他の商品と交換するときの価値。
希少性と有用性は相反する。
=使用価値と交換価値は相反するものである。
この、使用価値と交換価値の乖離が資本主義社会の一つの特徴
つまり、使用価値が低いがゆえに、交換価値が高いという絵画は、資本主義社会の特徴を体現したものである。
(「商品」と「作品」がパラレルな形で価値の転換を体現している)
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近代以前の絵画は何か(神)を伝えるための存在であった。
・神の存在が疑われたこと
・近代理性に対する懐疑と否定
により、現代アートが誕生した。
神から離れ、理性に対して不信感を持つというのは、ニーチェ、キルケゴールやショーペンハウエルから実存主義のサルトルに至る、近代から現代に続く哲学の至上命題。
→価値を転換することで、アトム化(孤独化)された個の存在が生まれた。
→近代以降の「不安」 cf)芥川龍之介が「漠たる不安」により自殺する
すべての価値が絶対性を失い相対化する中で、唯一、芸術はその価値の転換を体現しがら、美という新たな求心性を持つ。
cf)文学においてのサルトルやボーボワールなどの実存主義
絵画においての抽象表現主義などの現代アート
近代以降の西欧に起こった合理主義に疑問符をつけ、素朴な人間の生の存在や感覚に信を置く。
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日本は高度経済成長期とバブル経済期でソフトパワーによる外交策に失敗した。
cf)1990年に日本人がゴッホとルノワールの絵画を250億円で落札。その金で『雪舟』(現在はボストン美術館蔵)を買い占めていれば日本の美の評価が変わっていた。
歴史的に見て、ギリシア文化やローマ文化、中国文化のように世界の覇権をとった文化が周囲に影響を及ぼし、さらなる統治を広げた。
覇権の変遷は絵画のマーケット変遷にも当てはまる。
フランス、イギリス→ドイツ、イタリア、スペイン、ロシア→(第二次世界大戦)→アメリカ→中国
アートや学問は根本から基準を覆すことできる。だからこそ支配者はアートや学問を迫害する。
cf)中国の文化大革命、ナチスドイツによる『退廃芸術』の制限
日本は公共事業を中心とする「ハコモノ政策」で、外交ができない。
cf)フランスのポンピドゥー・センターやイギリスのテート・モダンが好例。
これからは、文化と経済、政治が有機的に結びつかなかければな���ない。
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村上隆の『スーパーフラット』
:日本の伝統的な絵画から、最近のアニメや漫画に至る独特の「平面性」、日本における正当美術とポップアートの区別の無さや、日本社会自体の階層性のなさといった、あらゆる場面での日本の平面性をひとまとめにした概念。
日本のオタク文化とアニメ・漫画文化の特徴を抽出し、そこに『新ジャポニズム』と新たな価値づけして売り出した。
=自らを言語化することで客観的に捉え、マーケットの中でどう位置づけるのか。
芸術活動や表現活動はお金が必要、だからこそ芸術家にもビジネスの感覚が必要。
加えて、歴史性と物語性が現在のグローバルな時代には重要。
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「美」は距離感から生まれる。
:対象から離れてその関係性をあらためて見直したところに、「美」という概念が生まれる。
対象から離れることは、生活から離れ「用」の世界から離れるということ。
つまり有用性から距離をとること。
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<メモ>
漫画文化は、平安末期から鎌倉時代初期に生まれた『鳥獣戯画』、江戸時代の浮世絵や美人画、近代の藤田嗣治の少女の絵、それらに連なる。
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言ってることは変わらないけど相変わらずおもしろい。ピカソがなぜ偉いか?の話は書いてない。でもそれもお話を聞いたときから時間が経っているってのがあるかも。たぶん取引情報とかから相場が作られるメカニズムがインターネットで格段に進歩していそう。
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アートと資本、資本主義の関係を論じるなんてすごすぎ。著者の豊かな教養もすばらしい。目からうろこの一冊でした。
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美術鑑賞を趣味にするようになって、美術作品が持つ、人の心を動かす力の大きさというものを、実感するようになりました。
しかしまだ、芸術や美術作品とはどのような存在なのか、自分の中で整理できていない部分があり、ヒントになりそうな本があれば読むようにしています。
そんな中、アートと資本主義に関して論じた本があると知って、Amazonで取り寄せて読んでみることにしました。
著者は、現代アートを取り扱う、銀座の画廊の2代目社長。
まず冒頭で、モノの価値とはどういうものなのかを説明し、その視点で見た時のアート作品の特異性を挙げています。
次に第二次世界大戦後に著者の父親が立ち上げた、日本初の現代アート専門画廊の成り立ちと、その後の経緯を辿ることによって、日本において現代アートがどのように発展、変遷してきたのかを説明しています。
その上で、世界の中での日本の位置づけと、その視点でアートがどのような意味を持つのか、さらには現代においてアート作品を作成・発表するとはどのようなことなのか等々、話が発展していきます。
読み終えて感じたのは、「アートという切り口でこれだけのことが論じられるのか」という、率直な驚きでした。
・世界の覇権を握るとはどういうことなのか
・マネーの流れはどのように変遷してきたのか、その中で日本はどのような位置付けなのか
・芸術作品を作るにあたって、過去の作品や他者の視点と、どのように向き合うべきなのか
地球儀を俯瞰するような視点から個人の内面に至るまで、さまざまな気づきを、与えてもらえました。
発売されてから2年以上経ってから読んだのですが、「探してでも読んで良かった」と思える内容でした。
アートの製作者やアートを扱う人たちというのは、さまざまなことを考えて、アートと向き合っているのですね。
この分野に対する興味を、さらに深めてもらえた一冊でした。
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借りたもの。
美術を通してみる経済学。
絵画の「使用価値」と「交換価値」が、特に今の現代美術において割に合わないような高値になってしまう理由を、資本主義の仕組みなどから紐解く。
p.42からの織田信長の茶の湯政策、それを引き継いだ豊臣秀吉から垣間見る、美と政治・経済の関係と、翻弄される形になった千利休の話は面白い。
そうした日本や世界の美術史の流れから、東京画廊で垣間見る現代日本美術史の流れ、「もの派」についてまとめている。それらから(直接はつながっていないが)村上隆、会田誠に至る……
美術史の流れから“価値”を見出された作品が値上がりする。それは“投資”であることを裏付ける。
しかし、日本は投資をするという考えが弱い。その理由を著者は日本人の権威主義から来ていると考えているが、それはすなわち、自分で考えるという事を放棄しているからではないだろうか?自信がなくて……
p.184で言及される‘「イスラム国」が文化遺産を破壊する理由’が目から鱗だった。宗教的感情論ではなく、そこには戦略的な思想統一(排斥)の意図があった。
芸術の経済的な価値の話に留まらず、お金に換算するのも本来憚れるような真価――自由とその力――についても言及される。
それに合わせて、著者の現代日本の美術界を取り巻く方針、価値判断の遅れへの憂いと憤慨を感じる。
美術(館)が国内事業のハコモノとしてしか認識されず、海外諸国の外交戦略として文化事業を牽引している様と比較して。
日本の美術がそれに遠く及ばないはずは無い。私はそれを信じている。
東京画廊( http://www.tokyo-gallery.com/ )
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アートは経済、特に資本主義と密接に絡んでいるからこそ、いろいろのものが見えてくる。
価値観や思想、哲学、様々なものが込められ、今や音楽より批判精神が宿っているように個人的に思っている。
そしてアートから外れるが、最後の方に書かれている、低金利、成熟社会、高度消費社会、縮小する経済、少子高齢化、さらに自然災害に伴う原発事故など、日本の状況はある意味、資本主義社会の最先端というか、資本主義社会の未来であるという、日本を課題先進国との指摘は重く受け止めた。
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アートと資本主義という相反しそうなものの理解が深まったと同時に、画廊という自分が触れることのない世界を知れて面白かった
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アート、特に現代アートはさっぱりわからなくて少しでもわかりたいと思って読んだ本。
一見全く訳がわからないアート、なぜ数億円もするのかわからないアート、それらにもちゃんと意図が、理由があり、それをすごくわかりやすく説明してくれている。
まずは本物の作品をわからなくてもたくさんたくさん見て、アートを視る感覚を身につけたい。
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2023.02.26 初版が出てからかなり経ってからの読了。もう少し早く読めばよかった。部分的に批判的すぎるのではないかと思うところはあるが、全体としてとても刺激を受けた。この本自体がアートになっていて、考える機会を与えてくれる。とても素晴らしい本であった。良い出会いだった。感謝したい。