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アメリカ証券市場のIT化の裏で起きていたアルゴリズム戦争、と言っても「電子せどり」的なかすめ取り系の取引だった訳ですが、そんな取引形態が誕生し、市場を席巻し、証券取引所のありようまで変えていってしまう、その経緯や背景を描いた本。
金儲けをたくらむ悪い金融屋さんが仕掛けたのかと思いきや、従来のトレーダーがズルして儲けていることに憤りを感じたプログラマーがIT化を仕掛け、取引手数料を安くして、流動性を高めて…という中でこんな流れになってしまった、というのが何とも皮肉です。
「電子せどり」的な取引は、いいとこ数分でポジションを手放して、その日毎に手仕舞いをするのですが、本の終盤にはそこから一歩進んでファンダメンタルズを踏まえたアルゴリズム取引の姿が示されたり、市場の是正に向けた動きがあったり、というのが希望として示されています。
「フラッシュ・ボーイズ」を読んだ後だったので、まだしもとっつき易く感じたのですが、素で読むにはちょっと辛いかも。少し難しく、読みやすくもなく、また誤植が結構あって、特に第4部はそれが目に付きました。残念。
末尾に解説を書かれている東証の方が「うちはアメリカとは違うんです!」とおっしゃっておられました。
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この一冊ウォール街のアルゴリズム戦争 スコット・パタースン著 人工知能も登場、米株取引の実相
2016/1/10付日本経済新聞 朝刊
米国や日本など主要国での株式売買は現在、コンピューターによる電子取引として実行されている。売買注文には引き続き価格・時間優先の原則が適用され、同じ値段なら1秒でも速い注文が優先される。株式市場は今や時間が勝敗を決する世界だ。株式取引の高速化といえば光ファイバー網の直線的な敷設や取引所コンピューターの隣に自社のサーバーを置くコロケーションなどが想起される。本書で議論されるのは、そうした物理的な時間短縮の動きではない。
主たる話題の第1は、取引所が売買注文の対当・執行のために採用するコンピューター・アルゴリズムの発展。第2は、人工知能を利用したアルゴリズム取引の台頭。第3は、そうした取引の進展が株価形成、投資家の収益に及ぼす効果を論じること。これらを強調するべく、アルゴリズム戦争という言葉が書名に付されている。
株式売買で利益を得るには、誰よりも早く情報を入手し、早くかつ安く売買を執行する必要がある。投資情報面での優位性を利用しえなくなるなか、新たな利益確保の手段として登場したのが超高速取引であった。収益の源泉は機関投資家の逸失利益であり、その隆盛自体、手放しで評価はできない。
超高速取引も桃源郷ではなかった。普及とともに収益機会は減少に転じた。残された道は取引所のコンピュータープログラムの特性を踏まえ、自らの売買注文が取引の待ち行列の一番前に出るよう発注プログラムを工夫することであった。株式取引の電子化が行き着いた先の一つは、プログラマーが生殺与奪権を握る世界であった。市場の効率性は向上したが、アルゴリズムに組み込まれたフィードバック・ループが暴走して「フラッシュ・クラッシュ」という価格の暴落を招くこともありうる。
もう一つの世界は投資判断に人工知能を利用したアルゴリズム取引である。リーマン・ショック直後、誰もが株式市況の回復を考えていなかった2009年2月、人工知能は買い場と判断し、積極的に株式を買い増し、利益獲得に大きく寄与した。
これが著者の見立てによる米国株式市場の実相であり、取引はプログラマーと人工知能が支配する世界に化したとされる。本書では、こうした株式市場の構造変化を促した天才プログラマーたちによるアルゴリズム開発競争や株式市場への挑戦を軸として、取引の変貌が物語風に生き生きと描かれている。株式市場のありようについて深く考えさせる本である。
原題=DARK POOLS
(永野直美訳、日経BP社・2400円)
▼著者は米ウォール・ストリート・ジャーナル紙の金融担当記者。著書に複雑な金融商品を扱う数学者たちを描いた『ザ・クオンツ』がある。
《評》同志社大学教授 鹿野 嘉昭
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株がいかにアルゴリズムで支配されてるか分かった。人工知能の時代が確実にきてる。アルゴの発達で、スキャルピングが超高速で行われてる。つまり、デイトレは参加が難しいかも。
市場がアルゴリズムに支配されている。
しかし、米国と日本では市場構造が違うらしい。
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7p
東京証券取引所でのコンピュータ主導の取引は2010年は10パーセントだったのが、2015年には75パーセントになっている。
高頻度取引の話。
498pの解説にもあるが、フラッシュボーイズの本のエピソード1みたいな話らしい。フラッシュボーイズは高頻度取引が最強って話で、これはそれが生まれた背景を掘り下げてる。
小説っぽい書き方だった。ほとんど読み飛ばした。
個人的にはもっと具体的なアルゴリズムの話が読みたいので。
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株式市場のオンライン化、高速取引、高頻度取引、AIトレーディングと、株式市場の革命の歴史。
今年1月に読んだ『アルゴリズム取引の正体』は技術的側面から書かれた本だったが、こちらは歴史と人物とビジネスに比重が置かれている。
ページ数の多い本だけど、面白すぎる。
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ウォール街でアルゴリズムを操る人間なんてみんな博士号を持った数学者やロケット工学者みたいなイメージだったけれど、ここで登場する面々は高校中退の天才だったり、ウォール街じゃなくて実はシカゴからやってますみたいのだったり、無粋で押しの強いぺてんまがいの連中だったりと、個性の強い面々。1/1000秒でマーケットを撹乱する注文を出したり、システムの裏を書いたりと、まあ戦国時代です。大変革をもたらした天才ハッカーのレイバンとビックデータを駆使するグリーンバーグには夢と好感を感じました。とても面白かった。