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著名人の最後(死刑、虐殺、自殺、自然死などなど)をムリクリ現代日本論へつなげた小編で、登場人物は良いセレクト。イントロのゴエモンで死刑制度を問いかけ、ゲバラでは日本の政治家の不勉強ぶりを皮肉る。軽い偉人伝なのか、軽い現代日本批判なのかどっちつかずで、読者層も微妙だが。
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森達也の新境地。単純に、偉人の最期について書かれた本かと思った。そうではなくて、人間の臨終を通しての社会批評。批評の矛先は、死刑制度や日本人の国民性について。内容としてはいつもの森達也といっしょやけど、こんな手法を使えるとは。驚いた。また、取り上げる偉人たちがちょっとマニアックやし、ひとつひとつの内容も手抜きはない。まだ読んでないけど、長編小説も書いてしまうし、新作の映画も来年公開するし。森さんは、どこへ行くんやろうか。どこまで行くんやろうか。楽しみです。
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人間臨終図鑑、ではなくて人間臨終考。どうしても人間臨終図鑑のイメージに引っ張られるが、一人目、石川五右衛門で、いきなりそれを否定される。
秀吉と三成の会話。
「とにかく早く殺せ。国家権力の怖さを思い知らせよ」
「お言葉ですが殿下、この時代にはまだ国家という概念はござらん」
わあ、なんじゃこれ。人の死をだしにしたフィクション、というとちょっと違う。
一応取り上げた人の死に様のアウトラインは描けている。だがそこに、だいぶ自分の言いたいことがインストールされている。
登場する人物たちをあげてみよう。
石川五右衛門、ブッダ、バラバ、ラスプーチン、アイヒマン、ガガーリン、ノーベル、と洋の東西問わずいろんな人が登場する。最後に登場するのは飯島和夫。誰だそれ。飯島和夫(戦闘員)と書かれている。なんとショッカーの戦闘員である。戦闘員にも生活がある。資本家の手先になりたくないが両親の手前就職だけはしておきたい。でショッカーに就職する。だが度重なる仮面ライダーの妨害でプロジェクトの失敗がつづき、慢性赤字となってメインバンクから役員が送られてくる。ゲルショッカーの設立は計画倒産だ。
臨終考、なのでこの戦闘員も最期を迎える。ああなんじゃこりゃ。しかし、こういう人と、ゲバラだの親鸞だのも並列なのだ。アンドレ・ザ・ジャイアントも。
著名人であっても、死に際はそれほど詳しい記録が残っていたり公開されているとは限らない。だから存分に妄想をふるえた、と著者は語る。
人の死の話が面白いのは、経験出来ないワンチャンスだからだろうけれど、本書はそこを脇において、せっかく死んでくれた著名人でやりたい放題という背徳も、ちょっと魅力になっている。文字は、妄想は素晴らしい。何回でも死ねる。純粋にそれでいいのに、現代社会がかぶってくる。これは現代人の妄想だから。