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「サルタヒコの謎を解く」
猿田彦という名は古代日本史や神社の名前でよく聞くので何が書いてあるのだろうと思って読んでみた。
読んでみると古事記、日本書紀に始まる神話の話から始まり、出雲、大国主神の国譲りの話、銅鐸の歴史的存在とその意味、「サ」という神聖な音に始まる「サ、サダ、サナダ」の意味について考察している。そして、日本各地に残る地名や祭りの共通点をみて、出雲、近江、伊勢、三河、遠江、信濃に渡る文化圏の移動を<サナダの道>としてその存在を指摘し、松江、松坂、浜松、松本からなる<松の道>、宍道湖、琵琶湖、浜名湖、佐鳴湖、諏訪湖と連なる、<湖の道>を想定し、さらに、それらが<辟邪>、<食物増殖>の信仰と関連し銅鐸信仰、猿田彦信仰と関連しているという。
地名がいろいろ出てきているにもかかわらず、日本のどこにあるのかの地図は本の中に無いし、いろいろと指摘している文化や祭りの写真もなく、重要視している銅鐸の写真も分布図もないほとんどが文章だけの本なので非常にわかりにくい。
古事記、日本書紀に関してもなじみがないのでよくわからないし、著者は一般向けに理解してもらおうとして書いているのだろうかと疑問に思う。
また、理工系の人間にはとても考えられないような、似ているとか、想像されるとかとても感覚的な部分が多く本当なのかどうなのかがよくわからない。
そう考えて読んでいると著者は最後の後書きに連立方程式を解くような数学的論証はできないと書いていて、やっぱりそうかと苦笑した。
限られた証拠から古代の歴史を考えるのはロマンがあると考え、小説などにするのは良いが、学問として成り立つのかどうかはとても疑問に思った。