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とってつけたようなタイトルだと最終章の直前まで思って読んでた.
たぶん編集者に、受けるタイトルに改変されて最初の章と最後の章を付けたのかな、と.
九割くらいは、ほぼ科学史の話で、科学が尽く人文系の学問を否定した歴史の話だった.
とてもおもしろい.
ポストモダン主義という何か (1970年代のロックスター) をソーカルがデタラメ論文によってゴミだと見破ったこと.
でも結局ポストモダン (の「リゾーム」なるもの) が言いたかったのは、世界は複雑系でフラクタルだよね、というのが著者の解釈.
全てはフラクタルだ、という主張はかなりポエムまがっていたが、本書を最後まで、社会学の章くらいまで読めば、まあまあ、言いたいことはわかった.
それから、哲学がやってきたことは脳科学によって嘘っぱちだと明らかにされたこととかあるけど、
科学の中でも、進化論において、ダーウィンの頃から現代までの間にパラダイムは起きていて、もう昔の、単純に種の繁栄を目標にするような原理は古いものであって、
(例として、サルは子殺しをする)
もっと良い説明の仕方が出来ていて、それは社会生物学と呼ばれていること.
最終章で述べているのは、そういうパラダイムがあったのに未だに古いものにしがみついていて
(あるいはパラダイムを理解することができなくて)、
本を書いたり大学で学費をとって講義をしている人たちがいる.
そういうのにお金や時間を払うなよ、という社会批判だった.
橘玲という人の名前を初めて見たが、著作リストを見るとちらほら読んだことがあるのがあった. そんなに面白いとは思えなかったが、この本は純粋に (娯楽読み物としても) 面白かった.
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それなりに説得力はあるものの全面的には賛成できない。私は、ほぼ筆者とは同じ世代だが、若い世代には過去の「知」も学んで欲しいと思うし、そこから得られるものもあると思う。
ただ、現在のAI発達のスピードなどを見ていると筆者が予見している通りの方向に進んでいるのだと思う。功利主義の章は勉強になりました。
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複雑系、進化論、ゲーム理論、脳科学、功利主義
社会選択理論における不可能性定理:パレート効率性、個人合理性、耐戦略性のすべてを同時に満たすことはできない。
マンデルブローのラフネスはカオスよりも言葉としては正しいかも。混沌に秩序があったら混沌じゃないから。
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ちょっと哲学、特にフッサールへの評価が厳しすぎるんじゃないの、いや、それ以前に理解が誤っていないか?と思う。
また、結局すべてのことを進化心理学的な解釈で通そうとしている危うさがあって、いやいや、そんな単純なあてはめ方しちゃだめでしょ、と思うところも。
と、まあいろいろあるんだけど、むちゃくちゃわかりやすい記述でツボも抑えており、総じて知的興奮に満ちた内容。
これ一冊で現代の思想地図はだいたい理解できそうな感じ。
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著者は『知のパラダイム転換』が起きる前に書かれた本は、基本的に読まなくてもいい、という。人間は時間が限られているだけに、複雑系、社会生物学(進化生物学)、行動ゲーム理論など、最先端の研究結果を中心に読み進めていくべきと説く。
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様々な知の分野をつないで行き、最後には全てが連結する。 1章に「複雑系」を取り上げるこの本は、人類の知識や学問といったものも、一つの複雑系のスモールワールドのような全体像として浮かび上がらせる。この本で取り上げる知の分野は、重要な知のハブなのであり、この本自体も様々な書や学問のハブとなる一冊となっている。
古い哲学を一蹴するのは大胆で少し焦るが、異なるカテゴリを並べ配置してくれたおかげで、専門的な領域に分化せず、偏りのない概観を得ることもできたし、各分野に興味が湧いた。
ここにあるオススメ本をたどっていると、だんだん無知だった自分が恥ずかしくなってくる。
既出のレビューにある通り、読まなくていい本をひたすら並べるわけでも、読まなくていい理由をじっくり説くわけでもないので、やや誤解を生むタイトルではある。
しかし、これから幅広い知識の世界に歩みだそうという若者にとっては、結局同じ需要を満たすことになるから、そんなに問題は起きない気もするが。
私にとっては、これを読まないといつまでも知れなかったろう内容が多く、本当に助かった。ここに載っている内容だけが最重要な知の世界とは限らないと思うし、誤解しないようにしたいが、ここに出てくる知識はザックリとでも記憶必須な知の分野な気がしている。
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タイトルから想像していた内容とは違いましたが、「知の最前線」に、触れることができたという点で、非常に興味深いものでした。
著者はできる限り、平易に噛み砕いて記述してくれているのだろうけど、なかなか高度でした。
今の人文系の大学で教えられている学問のほとんどが時代遅れであり、「法と経済学」が世界の主流になっているということは、心に留めておこうと思います。
ビットコインもちらっと出てきていて、2年以上も前の内容とは思えなかったのですが、実際にはより発展しているのでしょう。
著者の最新作にはこれからも注目していきたいです。
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人生の限られた時間でどの本を読むべきか。
毎日1冊読んでも発行されてる本の0.02%にしかならないんだから、読まなくていい本をまず決めよう。その基準は「知のパラダイム転換」の前後で区切ること。
5つのジャンルについて紹介されていますが、ある程度知識がないと難しいです。
関心がなかったジャンルをかじれるのと、それぞれおすすめ本を紹介しているので、気になったものを読んでみようと思います。
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最近流行っていたので、読みました。知らないことが多くて面白かったです。
1章の著者の学生時代に文系学生の間で崇められた難解なポストモダン思想書が、専門外のデタラメの科学用語を使い、あらゆる体系を相対化しようとして自然科学に喧嘩を売り、ソーカル事件などで返り討ちにあったという話から、これらは読むのはコスパが悪い、とバッサリ捨てようとしてるところがちょっと私怨を感じて、好みでした。
2章以降の話は、人文社会科学系批判としては、あまり当たらないような気がします。学部レベルの経済の教科書でも、ゲーム理論や行動経済学の成果についてけっこう言及してるし、既存の体系と全く違うものというよりは、体系の拡大みたいな気がするので。
哲学は詳しくないですが、意識の問題以外にも色々と哲学がカバーする領域はあるし、脳科学の成果があるからと言って哲学がいらない、というのも乱暴な気がします。
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複雑系、進化論、ゲーム理論、脳科学の爆発的な進歩。これらは従来の学問の秩序を組み替えるだけでなく、何千年と続いた学問分野を消し去るインパクトをもつ。
著者はさまざまな知のパラダイム転換を語ったのち、それらがひとつにつながることをマッピングしてみせる。その地図の基盤となるのは「進化論」である。
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人文系の人が読むべき最近の目ぼしいトピックを紹介したサーベイ本。読むべきトピックの一つに功利主義があったので気になって読んでみたが、なぜ最終的に功利主義が正義論として優れているとされているのかが一読した限りではわからなかった。テクノロジー(設計主義)と相性がよいからだろうか。
進化論のところはおもしろかったが、脳科学のところはまとまりがなかった。人文系の学生は生き残るためにこういうトピックを学ぶべきだ(それよりも古いものには価値はない)という話だが、たしかにポストモダンには価値はあまりないだろうと思うが、これだけだと薄っぺらい人間になるので、ミルとかデカルトとかプラトンとかアリストテレスとかマルクスアウレリウスその他には価値があるので読んでほしいと思う。というか、日本には読む価値のある古典はないのか。
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著者が「知のパラダイム転換が起きた」とする4分野(複雑系・進化論・ゲーム理論・脳科学)と功利主義に絞って読書案内をする。各分野についての解説もその歴史を追う形で読みやすくまとめられている。
複雑系については、マンデルブロを軸にその歴史を追っている。マンデルブロがプリンストン高等研究所の博士研究員となった時、ノイマン、オッペンハイマー、アインシュタイン、ゲーデルなどの知性が集まっており、のちに「この時(の経験)を超えることがなかった」と回想している。マンデルブロは「複雑系」という言葉は使わず、「ラフネス」や「フラクタル」を使った。複雑系を研究する数学・物理学であるカオス理論は、エドワード・ローレンツがコンピュータによる天候のシミュレーションから発見したバタフライ効果に始まり、それは臨界状態と相転移で説明される。
ゲーム理論が生まれた時代背景には、米ソが核兵器で対峙した冷戦があった。ジョン・フォン・ノイマンは、ノイマン型コンピュータを開発してコンピュータの父と呼ばれるが、プリンストン高等研究所やランド研究所、ペンタゴンやマンハッタン計画などにも関わり、生きた伝説となった。「ゲームの理論と経済行動」はベストセラーとなり、死の直前まで対ソ戦の戦略を聞こうとする国防長官や米軍幹部たちに囲まれていた。ジョン・フォーブス・ナッシュは、21歳でゲーム理論の金字塔となった論文を発表した(ナッシュ均衡)。30代で統合失調症を発症し、長い闘病生活を送ったが、60代になって奇跡的に回復したことでも有名になった(「ビューティフル・マインド」)。ゲーム理論は古今東西の戦略書を片っ端から分析できることを示し、戦争や競争の戦略については強力な説明能力を持ち、生物の生態も説明できることもわかった。しかし、経済学においては、すべての情報を入手して合理的に行動する前提が当てはまらない。ダニエル・カーネマンは、人にはファスト思考とスロー思考(直感と理性)があり、負荷が低いファスト思考に頼りがちであることを明らかにした(「ファスト&スロー」)。限定合理的な人間をモデルにした行動ゲーム理論では、ゲームを繰り返すことによって学習し、ひとつの均衡に収斂していくことが示されている(ロジット均衡)。しかし、市場や社会は複雑系だから、個々のゲームから全体を理解することはできない。これに解決を導くツールとして、統計学やビッグデータが活用されている。
進化論では、相手の内面を読解する能力が長けていることが有利であることから、相手の気持ちを映す鏡を自分の中に持つようになり、自分という意識を生み出した(ニコラス・ハンフリー「内なる目」)。
最終章では、社会をよいものにするための功利主義が取り上げられる。フランス革命後、右翼を王党派で共同体主義の保守派が、左翼を共和派が占め、共和派は自由を求めるリベラルと、平等を重視するデモクラットがいた。その後、経済格差を悪として徴税や再分配で結果を平等にする立場がリベラルと呼ばれるようになり、本来の自由主義者はリバタリアンを名乗るようになった。市場は複雑系なので、ネットワークのハブに���くの資源が集まり、富は集中して格差は拡大する。功利主義は、最大多数の最大幸福の原理としてジェレミ・ベンサムが提唱した。ジョン・ロールズは、人はリスク回避を好むのだから、自分が不利な状態で生まれてくるリスクを想定して、その利益が最大になるようなルールを人は好むはずだと考えた(「正義論」)。アマルティア・センは、機能と潜在能力(なし得ることとなり得ること)の最大化を目指すことを提言した(「人間の安全保障」)。マーケットデザインは、市場の機能が使えないときにゲームを上手にデザインする技術で、誰にも不利益を与えずに幸福を追求するのはよい(パレート効率性)、抜け駆けによる利益がないこと(個人合理性)を「コア」として重視する。ウソを申告するなどの戦略によって利益を得ることができないこと(耐戦略性)を満たしたコアを実現することはできないことが数学的に証明されているが、戦略によって市場全体の配分を変えるのは難しい。
著者がこの本で取り上げた分野の位置づけが237ページの図で表されている。進化論が土台にあり、神経レベルの遺伝学や脳科学と意識レベルの進化心理学、個人レベルの行動ゲーム理論や行動経済学と社会・経済レベルの統計学やビッグデータが、それぞれミクロとマクロの関係で位置づけられ、どちらも複雑系の理解が役立つというイメージだ。
これらの分野以外を読書リストから除外するかどうかは各個人の判断だろうが、取り上げられた分野の概要紹介とブックガイドとしては、とても刺激的で、久しぶりにワクワクする本を読んだという読後感だった。
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「寿命を考えると、死ぬまで頑張っても、世界中の0.02%の本しか読めない。だったら、『読むべき本』より『読まなくていい本』の基準を教えたほうが役立つでしょ、教えるよ」という本。
「今の文系学問の多くが、複雑系や脳科学をはじめとした科学のパラダイムシフトによって、とっくに時代遅れになっている」という誰もが”何となく認識してる、だけど実態はきちんと把握していない”ことを、詳らかにしていく。
この手の本には「古典をバカにするなんてけしからん」という批判が飛ぶけれど、そこへの再批判も、きちんと橘氏は用意している。
現実が変わったことを知った状態で過去を振り返る人間と、現実の変化を知らずただただ難しい言葉遣いを読む悦に浸る人間と。現実を変えれるのは、前者である、と明言するのだ。
タイトル「読まなくてもいい本」という尖った橘節が、逆に読者の幅を決めてしまっているのがモッタイナイ。
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着眼点は好きだし、読むべき書物の諸々も、なるほど的を射たチョイスだと思う。各ジャンルにつき系統立てて読み込んで、その結果、最新の知見からして必要最低限の書物に絞り込まれているのが十分に理解出来るし。あとの問題は、ここで取り上げられている諸問題に関して、自分の関心をどこまで持っていけるか、っていうこと。個人的には、本書で結構お腹いっぱいになってしまい、”次はじゃあ是非この本を!”みたいな感じになれんかった。残念。
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つまりは古いパラダイムで書かれた本はいくら読んでもベターワールド(より良い世界)には繋がらないということらしい。筆者は進化論や経済学、ゲーム理論に功利主義などを説明しながらそのパラダイムとは何かを論じる。まぁ、確かに大きな知の地図を作ってそれに沿って読書をしていくのは効率がいいのかもしれないが(少なくとも本屋の本を片っ端から読むより),そんなものを作り終えた段階で読書より次のステップに進めそうな気がしなくもないが・・・