投稿元:
レビューを見る
村上さんの紀行文を読むときは、ワインを準備しておこう。
紀行文に地元グルメの話はつきものだけど、村上さんのはひと味違う。
予めツアーに組み込まれていた観光客向けレストラン、ではなく、ふらっと入った地元の酒場や、その辺のドラッグストアで買ってきたホットドッグとか、自分で探して見つけた気取らない食べ物が魅力いっぱいに登場するのだ。
例えば、本書でも、ボストンマラソンの完走後(この話は世の市民ランナーにとっても魅力的なエピソードである)でチェリー・ストーンという貝をスチームしたものを食べ、アイスランドで魚定食やシーフードスープを食べ、トスカーナではキアーナ牛(ステーキ好きにはたまらない肉牛だ)の骨のついた大きな塊を丸ごとローストしたものをご馳走になっていて、で、そういう料理と一緒に飲んでる赤ワインが本当に美味しそうなんだ。
実際、ワインの描写があるかというと、正直、思い出せない。
(トスカーナの赤ワインの話は確かにあるけど)
でも、文章から漂うカジュアルな風味感が、赤ワイン(そんな高くない気軽に買えるテーブルワイン)を思い出させる。
これはもう、飲むしかない。
それにしても、なぜ村上さんの紀行文のご飯は美味しそうなのか。
それには、本書のメインテーマ(?)でもある表題が関連している。
ここで「ラオス」は、別の国に置き換えても構わない。
「◯◯にはいったい何があるというんですか?」
村上さんの答えはこうだ。
「そんなことを聞かれても、僕には答えようがない。だって、その何かを探すために、これからラオス(or◯◯)まで行こうとしているわけなのだから。それがそもそも、旅行というものではないか」
何があるかわからないから旅をするということだ。
ご飯でも同じことで、先にも言った通り、村上さんの紀行文のご飯は、自力で探したものがほとんどだ。
偶然見つけた美味しいものを、その過程とともに味わう、それが旅行グルメの魅力なのだと思う。
国内線の飛行機内で、空港に着いたら何を食べようか、そんなことを考えながら読むのに最適な一冊です。
(赤ワインは準備しておくこと)
投稿元:
レビューを見る
春樹さんの言葉にふれたくて読みました。
いろんな場所の、いろんな風景が、人の営みが、心地よく響きました。
投稿元:
レビューを見る
春樹さんのエッセイは、
いつもちょっとププッと笑ってしまう
こんな旅ができたらいいなぁと思う
どこに行っても、自分なりの楽しみ方感じ方を
自然にできたらいいなぁと思いながら
惜しみながら本を閉じました
投稿元:
レビューを見る
時々村上春樹はこういう軽い文体になる。まあ、それもいいと思う。さりげなく本心が語られていたりして、そこが面白いと思う。とはいえ、多分、彼の言う「ひょひょいのひょい」に近いものだ。気軽に書いた紀行文。
投稿元:
レビューを見る
ボストン、アイスランド、ギリシャ、ラオス、そして熊本。村上春樹が処々の媒体に掲載していた紀行文を集めた一冊。
JALの機内誌に連載されていたパートもあってか、観光スポット案内的な、つまり実用的な箇所も多少見られるけれど、彼がどういう場所に興味を持つのかというそのセレクトも含めて面白い。例えば、ニューヨークのジャズスポットなんて、数多のガイドブックにレコメンドが載っているけれども、彼なりのレコメンドを見て現地に行くのは、それはそれで一つの楽しみ方だと思う。
一番しっくりくるのは、タイトルにもなっているラオスの章。仏教の僧侶が多数居住し、地元住民と一緒に托鉢を行うシーンや、宗教遺跡にまつわる伝承を地元住民から聞いて回るシーンなど、現代宗教が殆ど喪失かのような「物語を共有する」という原始宗教の姿が今にも残っている点が伝わり、現地を体験してみたくなる。
個人的には短文ながら、美食の街として知られるアメリカ東海岸・西海岸それぞれのポートランドのレストランの描写も捨てがたい。
投稿元:
レビューを見る
この本を読んだので,近いうちに熊本旅行をすることにした。あと,アイスランドはやっぱりそそられますね。生きている間に行ってみたいところです。
投稿元:
レビューを見る
「やっぱり、村上春樹さんらしい紀行文」という印象。
「『らしい』とは何か?」と聞かれると、回答に窮しますが、温度や匂いなど五感を刺激するような文章と表現できるかな。
ずいぶん前の文章もあり、また、ごく最近の文章もあり、少し文体などの変化もある気がする。
ただ気になったのは、「〜だけれど。」と文末を区切ることが多いことに少し違和感。
そういうものもひっくるめて、「村上春樹の文体」なのだろう。
村上春樹さんが訪れ、本書に書かれた各地は、どこも魅力的。そこには、活き活きとした、市井の人々の暮らしぶりがよく描写されている。
投稿元:
レビューを見る
村上春樹がこの20年ほどの間に訪れた世界の各所について、雑誌などに書いたものをまとめた紀行文集。
ボストンでのランニングについて。
「すかすかランド」アイスランド旅行記。
アメリカ東西2つのポートランドのグルメ事情。
かつて滞在したギリシャの島への再訪記。
NYのジャズクラブについて。
シベリウスとカウリスマキの国フィンランド。
旅行とは何か、のラオス紀行。
ボストンでのおすすめの過ごし方。
アルファロメオとワインを楽しむトスカナ。
漱石とくまモンの「するめクラブ」in熊本。
…というのがそのラインナップ。
内容や訪問先に統一感はあまりないけれど、村上春樹らしいスタンスというか視点が一貫して感じられるので、違和感はなし。
各地の様子がきちんと伝わってくるし、気楽に読めるし、ところどころにフムフムと思わせる言葉があって、お得に楽しめる本。
やっぱりラオス編がいちばん面白かったです。
投稿元:
レビューを見る
とても久しぶりに村上春樹の紀行文を読んでいるな-、と進めていたら最近CREAで読んだ熊本旅行があり、そういえばと膝を叩いた。
投稿元:
レビューを見る
電子書籍派だけど、これは紙の本を購入。電子書籍版は写真が多いというけど、わたしのはキンドルペーパーホワイトなので白黒なので。。。まあそれはどうでもいいか。
なんだかさらっと読んでしまった。。。
「遠い太鼓」とか読み返してみたくなった。あのころはわたしはかなり村上春樹ファンで、小説もエッセイも紀行文も夢中で読んで大好きで、なんというか陶酔?していたんだけど。。。
わたしが年とったってこともあるし、村上さんだって年をとり、もう国際的に著名な「文豪」って感じになってしまったし。(しまった、ってこともないけど。いいことなんだから。)なにか変ってしまったものもあるのかも。どうも心に染み込んでいかないというかなんというか。なんだろう。。。
……まだ海外に行った話のほうがいいかな。なんでかわからないけど。
でも、読んだ直後は、なんか「自由」みたいなことを考えた。村上さんが、勤め人じゃないから自由に日にちの制限とかなく、時間がありあまるほどの旅行ができていいなあ、ということもあるけど、精神的に、その気になれば何日でも旅に出られて、予定やなにかに縛られないで滞在できるというようなことが。わたしなんて心理的になにか縛られていて、そういう自由な旅とかできない気がする。。。
投稿元:
レビューを見る
紀行文。
ボストン1、アイスランド、オレゴン州のポートランドとメイン州のポートランド、ギリシャのミコノス島とスペッツェス島、ニューヨークのジャズクラブめぐり、フィンランド、ラオス、ボストン2、イタリアのトスカナ、熊本県をめぐる。
文中より。
「かつて住民の一人として日々の生活を送った場所を、しばしの歳月を経たあとに旅行者として訪れるのは、なかなか悪くないものだ。」
これは身に沁みて理解できる。私もかつて住んだ土地に訪れることがある。あんなに親密な場所だったのに、久しぶりに行くとよそよそしい。それでも温かい気持ちになれるのだ。
私は国内だけど、村上さんは海外各地。そのカルチャーショックたるや相当なものなのだろう。
あらゆる刺激をうけて作品に反映させているのだろうな。
投稿元:
レビューを見る
村上春樹の久しぶりの紀行文。ノルウェイの森を書いたギリシャ、トスカーナや熊本に行く。縁があっての訪問となるのだが、そこでの感性を文章に。日常から離れた旅ならではの発見があり、それを読者と一緒に楽しんでいるかのよう。
ラオスもワイルドだなと思ったら、アマンリゾートに泊まるための旅だと分かってなるほどなと。素晴らしい体験だったのもうなずける。パスタを茹でたり、アルファロメオを運転したり、ただそれだけの小さななにか。それが、輝くような言葉とともにあることで、人を動かしたり、大切なこと、または大切でもないようなことも気づかせてくれる。
投稿元:
レビューを見る
ボストン、アイスランド、オレゴン州ポートランド、メイン州ポートランド、ミコノス島、スペッツェス島、
ニューヨークのジャズクラブ、フィンランド、ラオス、
ボストン2、トスカナ(イタリア)、熊本県。
いったいいつ日本に滞在しているんだろというくらい、各国に住んだり再訪したりしている。
で、”いろんな国にいくたびにそこの猫の外見や気質を詳しく観察することにしている”とういとこが笑ってしまった。
その猫比べの評論を一冊にまとめて出して欲しいくらい。
表題は”ラオス(なんかに)いったいなにがあるんですか?”とヴェトナムの人に質問されたことからつけたらしい。
プライベートな著者の写真も数枚載ってて、嬉しい。
水丸氏の描く絵に似てるぅ。
投稿元:
レビューを見る
タイトルで読みたいなぁと思い。村上氏にアジアの香りをあまり感じないのですが、ラオスとか、熊本のタイ人とか。なんだか新鮮でうれしく思いました。
投稿元:
レビューを見る
初読。図書館。どの場所も魅力的に描かれているが、ギリシャの島の再訪がいちばん切なくなった。住んでいた場所に時間をおいて帰ると、変わったもの、変わらないものがくっきりと浮かび上がる。寂しいような安心するような、それでいて自分の不在だけが確かな風景。ラストの島を離れる文章は、小説のように深く引き込まれてしまった。あとはアイスランドの湖くらいの温泉につかりたいのと、ラオスの僧侶の托鉢を見てみたくなったな。