傷はいつまでも消えない
2016/02/13 08:54
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投稿者:はな - この投稿者のレビュー一覧を見る
今でも私は夢に見ます。夢を見すぎて疲れて起きることもしばしば。私の新しい家族が眠る寝室を出て、リビングで泣くこともしばしば。夢を見ながら泣き叫び、子どもに不思議そうにママ、こう言ってたよと言われたときの無力感。
私は古い家族の中で、いてもいなくても同じ存在だった。20才の頃酒に酔った母親にあんたが出来たとき、中絶する金は無かったから、殺そうと思って階段から飛び降りたり腹殴ったりしたと告白された。聞きながら、やっぱりそうなんだろうなと思った。私は胎児の頃からいらん存在だった。
今の母親は姉妹の中であんたが一番心配と言い、何もなかったように(母の記憶の中でネグレクトや陰湿な言葉の暴力は忘れられるくらいに軽いものらしい)私に接してくる。
1度問い詰めて謝ってもらったことがあるけど、そんなことしても何の足しにもならなかった。謝るならあの頃の小さな私に謝れ。姉が忘れた箸を届けてこいと言われて小学校の校門まで連れていかれ出来なかったら押し入れに閉じ込めた入園前の私に、木材置き場で泣いてた小1の私に、姉に血が出るまで殴られてるのに見てみぬふりをされた3年生の私に、土下座して謝れ。
もう古い家族とはなかば縁切りし、新しい家族を作り傍目には幸せなはずなのに。なぜ私は今も苦しまなければならないのだろう。
私は本作の子どもたちのように消えていたわけじゃない。なのにこんなにもまだ苦しんでいる。子どもたちの苦しみがどれほどのものか。
皆さんは普通の幸せな家庭で育ったのだと思いたいですが、どうか現実に虐待はあるのだと頭の片隅に置いておいて下さい。トラウマは中々消えてはくれないものだということも。
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消えた子どもとは、何らかの理由で社会とのつながりを絶たれた子どものことである。虐待、貧困、親の精神疾患など理由は様々ある。
たぶん僕は同じマンションに「消えた子ども」がいても気づかないだろうと思う。社会というか、身近な他人との関係は希薄で、そこに根本的な問題があるんじゃないか。
時間も金も人も有限だから、公的な機関だけでこの問題が解決されることはない。多くの方にこの問題を知ってもらって、一人一人が他人とのつながりを広げていけば、今より少しは前進するんじゃないでしょうか。
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図書館で借りた本。
貧困や親の虐待によって、家の外の世界と関わることができなくなった子を「消えた子ども」として、取材しテレビ放映されたことが書かれた本。消えた子どもたちの心に刻まれた傷は、深過ぎる。
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ショックでした。貧困や虐待、保護者の精神疾患等により、社会から“消えたこども”たち。彼らは自分ではどうすることも出来ません。何とかしてあげることは出来なかったのか。学校の先生がもっとふみこんで救えなかったのか、地域で不審に思わなかったのか、誰も気付かなかったのか。と、どこかに責任を持っていくことは簡単かもしれません。ですが、彼らを漏らさず救うことは難しいかもしれません。子どもが安心して育つ、そんな普通に思える家庭が思ったより少ないのかな、とショックでした。被害を受けている子どもを保護するだけでは解決しないでしょうね。まずは親となる世代の生活がキチンと営まれていないと、不幸な子どもは減らないと思います。
ユキさんが最期に書いた手紙に涙しました。彼女の死を無駄にしないためにも、私たちは考えなければならないと思いました。
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学校がある昼間に、公園で一人遊んでいる子どもを見かけた。
年齢は、小学生高学年だろうか。
もし、様子がおかしいようなら声をかけるかもしれない。
でも、たとえ痣があるように見えたとしても近くから怖い父親が出てくるかもしれない、と思ったら声をかけることもできないかもしれない。
あなたは、声をかけられますか?
そこで踏み出す一歩が、もしかしたらその子の明暗をわけるかもしれないのです。
義務教育が完備されたこの日本で、教育を受けられない子どもがいる。
社会から孤立してしまった子どもがいる。
厚木児相の例のように、白骨化されて発見された子どものニュースは、どうやら氷山の一角のようです。
行政を、親を、教師をただ責めるのは簡単かもしれないけれど、そうではなく、同じことを繰り返さないために、どうしたらいいのか。それこそが今求められるものでしょう。
もちろん行政でも再発防止のための検討会は開かれたようだし、報告書も上がっている。
でも、そこには浮かび上がってこない悲痛な声を救い上げたのが本書です。協力した子どもたちもまた、同じ子どもがもう出ないように…との想いから協力をしてくれたとのこと。報道の持つ力の強さを感じました。
行政が児童を保護するような権限が必要なときもあれば、里親や養護施設の職員が寄り添うような優しさが必要なときもあるし、広く社会に現状を伝える報道の力だってきっと欠かせない一助なのでしょう。
読んで改めて感じたのは、早期発見の重要性。
子どもには、なにせ未来がある。
私たち大人はそれを、守らないといけないんだと思います。実際のところ、誰がどこまで何をするかというのは難しいところがある。
体調が悪くて学校に行けていない、と本人なり親が言えば、学校に行けていない現状を確認できたとしても引き下がるしかない。無理に立ち入って完全に拒否されてしまう方がリスクが高い。
マニュアルにはできないような、個別で非常にデリケートな問題だと思うのです。だからこそ、完全な解決策はないのかもしれない。
けれど、1つ言えることがあるとすれば、諦めないことが子どもを救う唯一の鍵になるんじゃないかということです。
日々の生活の中で他人を気に掛ける余裕はなかなかないかもしれないけれど、少なくとも、諦めないことで救える命があるんじゃないか、と信じたい気持ちになりました。
この本が世に出たことの意義は、非常に大きいものだと思っています。そしてこの内容が放映されたこともまた、ものすごいことです。
デリケートな問題である故にきっとたくさんの壁があったでしょうが、こうして形にしてくれたことで私の意識が変わったように、影響を受けた人は少なくないはずです。
プロジェクトチームの皆さま、本当にお疲れさまでした。忘れられない1冊となりました。
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居所不明児童。
昨今話題にされる言葉だが、学校、教育委員会、児童相談書、役所、警察といった公的機関の連携が取れていないことばかりがことさらに強調され、当事者である子供達の姿が見えていなかった。
その見えていなかった当事者である子供達に焦点を合わせたのが本書。
中身は絶句するような、そして想像以上の文言が並ぶ。
家庭内監禁から始まり、小学生なのにオムツをずっとしている、ミイラ化していた子ども......。
ネグレクトなど親の虐待、無理解、疾患、DVなどからの逃避、避難。
理由は様々だが、子どもの尊厳や人権を最も守らなくてはならないものがそれを怠っており、行政がそれを掴みきれていないということに異論はない。
だが私はここで責任論や感情論を語りたいのではない。
親失格、行政の不始末、そんな言葉を投げつけるだけではこの問題は解決しないからだ。
なぜこうした子どもたちが生まれてしまうのか。
そこに至る過程を、背景を、私は知りたい。
子供達を救いたい。
そう思わずにはいられないほど、子どもたちの言葉が切実で胸に突き刺さるからだ。
人手を増やせば、細かく見ていけば改善される部分はあるだろう。
それなのに、予算がない、資格がない、場所がない、どうしてできない理由を探せるのに、するべき理由を挙げて行動に移さないのか。
私は自分の育児すらままならない。
50点貰えれば御の字だ。
だが、100点の人間でなければ動いてはいけない?
資格がというなら少なくとも教員免許はある。
10年で失効させてしまうのはもったいない。
学習支援ならできるはず。
障害児を抱えているけれど、動きにくいけれど、それでもそれを知っているから何かをしたいのだ。
小さなことからでも始めたい。
子どもは希望の塊だ。
この「社会」というパンドラの匣の中にあっても、なお輝きを放つのが彼らだ。
力に、なりたい。
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18歳で保護されるまで一度も家から出られなかった少女、貧困により車で各地を転々として小学校に通えなかった期間がある少年、精神疾患の母親を支えるために学校へ通うことができなかった少女……存在しているにも関わらず学校や社会から認知されず、暴力や貧困の中で苦しんできた子どもたちを追ったドキュメントのルポ。著者はNHKスペシャルの取材班。全国の施設等から、衣食住の「普通」さえ奪われた子ども達自身の声を聞く。
本人から聞く話はどれも壮絶だ。虐待の話は、それが大人である我が身であればとても耐えきれるものではない。なにも知らないままに理不尽な暴力を振るわれ、そして解放された今もフラッシュバックに苦しんでいる。小中学校に通えず、ずっとペットのような扱いを家族から受けてきて、社会常識を知らず学歴は中学卒業がただ一つ、身元保証人はいない。働きたくても学歴が一行しかない履歴書と、身元保証人がいないこと、「普通と違う」と見られることが恐くて前に進めない。前に進もうとする度に壁にあたり、戸惑い怒り立ち止まる。
真面目に読むと心が苦しい。
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NHKスペシャルの取材班の親書にはいつも心を動かされる。
本書も、虐待等によって、社会から隔離され消えてしまった子どもたちの実態を、本人や保護施設の職員、学校職員のインタビューなど丁寧な取材により明らかにしている。
豊かな国と信じている日本の中にも、貧困に苦しむ子どもは6人に1人と言われており、貧困、虐待で苦しむ子どもたちを一人でも救いたいという思いでいっぱいになる。
子どもは親を選べない。自分の子どものように周りの子どもたちにも関心を持って気にかけていきたい。
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https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000884762015.html
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■虐待の心理の三つの特徴(山梨県立大学 西澤哲教授)
①体罰肯定感
・自分自身が身体的虐待を受けて育ったという親は「子育てには体罰が必要」という養育観を持つことがある。そうした養育観に基づいて自分の子供にも暴力をふるう。
②子供からの被害の認知
・虐待やネグレクト的な養育環境で育つと自己否定感情を持ちやすく「幼児期初期の子供なのに自分のことを馬鹿にした目で見た」,乳児の泣き声が「自分を責める声に聞こえる」など,子供からの非現実的な被害を感じて虐待する。
・親に奪われた有能感を取り戻そうとして虐待することもある。
③自己の欲求の優先傾向
・子供の頃虐待やネグレクトにさらされてきたために愛情が十分に満たされず,そのために大人になっても自己の欲求への固執が起こり,子供の欲求や要求と自分のそれとがぶつかった場合に自己の欲求を重視する。その結果,虐待やネグレクトを行う。
■「自分が親として子供に関わる」という現在の親子関係に「自分が子供として親に育てられた」という過去の親子関係が侵入してくる。いわば,この二つの親子関係の重なりにおいて虐待という行為が発生すると考えられる(山梨県立大学 西澤哲教授)
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図書館で借りた本。学校に来ない子どもの追跡状況をルポした内容になっている。児童養護施設に保護された子ども達は、どうやって保護に至ったか?そこには貧困やDV、ネグレクト、親が精神疾患など理由は様々。一度も学校に通えなかった子もいた。心身の影響も負の意味で大きく学習も大変になりその後の人生に大きな痛手となる。子は親により環境が選択されてしまう悲しい現実。
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仕事柄、思い当たる箇所がいくつかあってどきりとした。
親が子に依存してしまって登校できなくなるケースは、ままある。
東京都文京区の取り組みが素晴らしい。6つの部署から所在不明児童へアプローチしていけるらしい。
ただこれも、財政状況とか人口規模とか絡むんだろうなと難しさを感じた。
個人にできることは限られているって無力感と、一歩踏み出すのは個人しかいないという有責感が残った。
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NHKドキュメンタリー番組の調査班が調べた、「消えた子どもたち」の実態。
実際に虐待からのサバイバー少年少女や、子どもを隠匿した親の証言インタビューなど、当事者の生々しい声も集めている。
しかしこうやって語ってくれるのは、救い出されある程度自分の体験を言語化し客観的に社会化することが出来た人たちである。
年端もいかない子、死んでしまった子などは語ることもできない。
児相の人たちも、学校の教師も、親に遠慮があるし。また施設も一杯だし、措置保護したら親との係争が続くので腰が引けている。
はっきりしているのは、県や自治体を超えて家族を
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NHKスペシャルで育児放棄をされた子供たちを取り上げた特集があったようで、その取材の様子をより掘り下げて本にしている。読んでいると、こんなにひどい目にあった子供たちがいるのかと、驚いてしまう。具体的なケースを数例取り上げながら、みんなが無関心になってしまうことがいけないと説いている。
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これは重い。虐待、ネグレクトなどで社会との接点がなくなってしまった子供達を追跡ルポ。親自身が精神疾患を持っていたり、貧困だったり、社会の闇の深さ。子供や親からのSOSの早期発見、対応が大事。見て見ぬふりがよくないなぁと反省。マイナンバーカードも一つの手なのかな。