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久しぶりに読み応えのある本。じわじわ真相に辿りつく田川警部。でもその裏にある厳しい雇用形態などの悲しさもあって、最後は切なくなった。
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すごい作品。
震える牛を超える衝撃で、読みながら自分の価値観が変わっていくような、ある意味怖い作品だった。
日本はこのままでいいのか…自分は何も知らずに安穏としていたのか、とやるせない気持ちで苦しくなった。
「世界で一番企業が活躍しやすい国とは、世界で一番労働者がこき使われる国である」という言葉が、堪えた。
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ボクらロスジェネと呼ばれる世代の働き方や現代日本の過酷な社会システムが描かれた小説でした。
確かに戦後復興を遂げ、高度経済成長期にがんばった日本人は素晴らしいと思いますが、そこから権益の守りに入ってしまったのでしょうか。バブル崩壊の影響は現在にも及び、政治は労働者の現実を全く見ず、大企業の利益優先の政策でしかありません。
将来に対し希望を持てない生活の中にも、アイデンティティを見失わないという点にボクらの世代に生き方が隠されているのだと思いました。
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世の中、まだまだ知るべき事が多すぎる。
失業率という定義も国によって違うと言う事も最近知ったばかりであるが、日本における非正規社員の存在数であったり、扱われ方ということは全くもって知らなかった。
と言っても、私の周りの非正規社員は決して悪い待遇では無いと思っている、しかし世界と価格競争をしている産業においては、海外との競争、そして製作機械との価格競争、そう生産コスト競争を行っている。
メーカーは自社で人を雇用せず、派遣会社を通じて期間労働者を雇用する。と言いながらも、実は期間労働者では無く常時雇用であり、売上が落ちたときに採用しないという意味での期間雇用なのだ。
その期間労働に就いている多くの方は、地方の方が多いという。
このような雇用環境は、日本国内だけにとどまらず、世界的に似たものがあるのだろう。
もう一つ大きな気づきは、価格競争は世界的な問題で有り、国の産業を守るために、政府は様々な施策を行っている、それにより幾つかの産業は延命がなされているが、それも数年で息絶えると言うことで有り、それが実際現実になってきている。
この小説から見えてきたのは、現実を翻ってみる必要があることだ。実に読みやすく、引き込まれていったが、最後に残ったのは、身の回り、世界のことをしっかり見ていかなければならないと改めて思い知らされた。
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日本の大企業の病巣にメスを入れる会心作。
ハイブリッドカーは世界でもトップをいく先進技術だと思っていたのは、日本国民だけ。
日本の先進は世界の後進、日本の常識は世界の非常識、タイトルのガラパゴスに象徴されている。
世界に取り残される企業を延命しようとエコ減税がなされ、そのツケは国民が被る。
派遣切りや非正規労働者の実態、企業撤退後の地方の荒廃等など、よく調査されていると感心した。
「世界で一番企業が活動しやすい国にする」ことが、国民に何をもたらすのか?じっくり考えたい。
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自分の知り合いにはいないのでよくわからないが、派遣社員の実情は、こんなにも過酷なものなのか。
職場を転々とする派遣労働者の悲惨な生活が生々しく表現されていた。
また、企業の発展の裏にある闇の部分にも触れられている。
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#読了。
警視庁捜査一課で継続捜査を担当する田川は、既に自殺と処理されている身元不明者が何者かに殺されたと疑い、再捜査を始める。すると、被害者は派遣労働者として各地を転々としつつ、ある工場で重大な過失に気づく。田川は地道な捜査で犯人へと近づくが。。。
派遣労働者の厳しい労働条件や、生活環境などがリアルに描かれている。これが殺人の動機などかと疑問を持ちそうになるものの、詳細に描かれた現状を考えると、なんとなくやるせない思いも。「普通に働いて、普通に暮らす」、ますますそんなことが難しくなっている日本への警鐘に感じる。
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三重の亀山や岐阜の美濃加茂などかつては日本の大手製造メーカーで街づくりがされていたところが、今は空洞化。
日本だけの市場を見てきたつけが、製品にも街づくりにも広がり、産業の空洞化が、街の空洞化にもつながっている。
今や正社員といえども、台湾メーカーや中国メーカーに買収される中、終身雇用でなく安泰とは言えないが、それにしても期間工とよばれる作中の人たちはの生活は、実質的な金銭だけでなく精神を蝕んでいく仕組みになっていることが分かった。昼夜勤務バラバラな他人と、部屋を同じくして生活することは精神衛生上厳しいに違いない。
宮古島の助け合いの精神からお金を借り、就学した仲野。
成績優秀なのに友人に就職先を譲ってしまうという優しさ。
しかし、そこで同じ高専卒でありながら同級生との生活に開きが出てくる。一度非正規になるとそこから変わるのはなかなか難しい。
田川、八幡のコンビで犯人を見つけ、仲野が殺害された動機までたどり着く。自動車会社の社長、人材派遣の社長、その秘書、癒着した警官。どれもこれも自分の都合優先で生きていて、おいしい思いをしている。
結局、罰せられるのはとかげのしっぱきりではないが、正社員という立場と引き換えに、殺害の実行犯となった清村と長内。組織的に事実をつぶしてしまうという、やはり力を持つものが、うまいことやっているなという憤りを感じた。
執拗に犯人に迫っていく田川に人間味があって救いがあった。
時々三線で歌っている情景が描かれているが、それにほっとされられるが、それの情景が余計悲しくもあった。
あと、コスト管理優先でないと世界市場で戦っていけない今の産業はどこに向かっていくのかとも思う。
ファンドマーネージャー小島がたとえた定食屋での会話。日本という国は田川さん、田川さんは立派な大人。その大人に無理やりご飯を食べさせたら不健康になる。子供が大きくなることを成長というが、大人が成長とは言わず、肥満でありメタボ。
世界シェアを一気にかっさらうような画期的な商品がいくつも出れば成長とよべるかもしれないが、それが出てくるのを待つのも期待が薄く、現状のままの仕組みだと、いずれメーカーは破綻するような気もした。
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これから益々正社員が減って、非正社員が増えていくんでしょうね!
貧富の差が開いていくのでしょう。
安心して暮らせる世の中になるにはどうしたらいいのでしょうか?
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未解決事件の捜査ミステリーの下巻。
請負問題、欠陥車など、全ての案件がつながり見事な大団円を迎えた田川刑事の粘りの勝利に感嘆しました。
権力者たちの落としどころは腹立たしく田川刑事の最後の一矢がどのようになったかが気になりましたが、エピソードはエピソードなの?という感じでした。
社会派ミステリーとしても松本清張ばりに面白いですし、現代の世相と未来への警鐘はかなり応えました。
メーカー勤務の自分としては、製造現場がほとんど海外なので、ガラパゴス的な問題は身近にはないと感じていますが、国内生産をしているメーカー勤務の友人たちの話を聞くと、この物語は少なくとも話し半分以上は実際に起きていると思いました。
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:よかった所
「働けなくなったら」「金が稼げなくなったら」のことを改めて考えさせられた。崖っぷち生活に自分が落ちたらやっぱり自力では這い出せない気がする。”この切羽詰まった日常から抜け出す糸口をあげる”と囁かれて、フラフラの頭で踏みとどまれるかどうか、正直自信がない。また刃物で刺せとか、首を絞めろというより人殺し感の薄いだろう”水筒の中身を飲ませるだけ”というやり方もズルいなと。「貧乏の鎖は俺で最後に」との願いが聞き届けられる社会ってどこかにあるんだろうか。
:よく分からなかった所
告発先が行政でもマスコミでもウィキリークスでもなく、掲示板という所が「?」と思った。本人は告発というより愚痴の延長で「ヤベーぜココw」ということだったのか?ヤバイことに慣れ過ぎて、誰かに相談するとか自分が消されるかもとか警戒してなかったのか。優しくて頭がよくて不運だった人、という人物像が若干ぶれる気がした。
:よくなかった所
上巻で予想した嫌な流れが当たった。
事件は割とあっさり解決するんだけど、前作同様尻尾切りで真実をほぼ闇に葬る形。村上龍とかならそこから仮想未来のシュミレーション小説になったりするんだろうけど、この本は問題を提起するだけ。
総評
昔の政党コピー「安定は希望です」とかいうのを見てすっごい腹が立ったのを思い出した。社会派小説なのはいいんだけど、犯人を追うドキドキ感はないし、悲惨な現実は浮いてくるし、ならそれをどうにかする希望みたいなのもない。告発なんだったらノンフィクションとかの方が??という気もするし。微妙だ。刑事さんが悪いわけじゃないのに。「ぼんくら」とかも似たような作りなのに何でだろう。何だかんだいって地獄見物ツアーと言うか、悪気なく対岸の火事ぽい感じがするからかな。暗澹たる気分に余裕があるというか、逃げ切り世代というか。続き出そうだけど同じ感じだったら読まないかも。
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<下>も読了。この小説は警察モノのミステリーの形態をとっているが、経済小説、いやむしろ現在の日本経済、格差社会や政治の歪みを登場人物たちに語らせた告発本であったように感じた。シャープの衰退の背景には液晶テレビに対するエコポイントという麻薬の注入があったようだし、エコカー減税という麻薬を注入され日本だけで売れているトヨタのハイブリッド車が次の液晶テレビなのかもしれない。成熟した日本経済の現実を直視して、そろそろ”成長神話”から脱却して新しい社会を築いていかないと日本の崩壊も近いような気がした。この本は面白いんだけど、ドラマ化とか映画化は無理だろうなぁ。
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下巻も面白かった。最後ちょっと説明不足ちゃうんかなと思うところもどうでもよくなる。文学としての良さはよく分からんけど,私は作者にとても共感するかな。
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読了。相場英雄さんの「ガラパゴス」です。
読み始めて、誉田哲也と池井戸潤をプラスして、2で割って少し薄めたような感じかな?と思いました。
自殺に見せかけた殺人事件。企業の隠蔽。警察の腐敗。派遣労働者の雇用環境・・・
今の時代、こんなにも普通に働くことが難しいんでしょうか?4年制の大学でても3割が非正規社員にしかなれないって、別な記事で読みましたが、やっぱり本当なんですね。
物語は刑事物なんですが、普通に生活していたら気が付かない現代の問題を痛烈に皮肉っています。私も、エコカー減税とか「何で?」と思ったクチでしたから。
地デジも、たぶんそうだったんだよね?地デジでTV売り切ったら、今度は4K?次は8K?キリがない・・・
新しい物に買い換えて貰わないと、社会がなりたたなくなっているこの消費社会。
なんとも、やるせない気持ちの読了感です。
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ガラパゴスというようりも、ハケンの話。
そんなに復活できないものなのか。
「最後の受け皿だがね」は、使う会社にとっても、また登録する人にとっても言えているのも事実。
確かにちょっと前に「家電エコポイント」ってやっていた。それが家電メーカにとっての最後の花火みたいなものだったのかもしれない。じゃ、今の「エコカー減税」も同じことになるのか。自動運転が出てきた今、10年後もしかしたら5年後振り返るとそうなってしまってるのかも。今後は、自動運転のソフトウェア・サービスでクルマを選ぶ時代がくるのかもしれない。パソコンのように。