紙の本
テーマは非正規派遣
2016/04/03 23:20
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Freiheit - この投稿者のレビュー一覧を見る
派遣労働者として転々とし、団地で死体となった。迷宮入り直前に窓際の刑事がメモを手掛かりとして臨む。サスペンスの長編。
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警視庁捜査一課継続捜査班・田川信一シリーズの、
2作目です。(前作は、『震える牛』となります)
本作品では…、主人公の田川刑事が、偶然にも、
身元不明遺体リストの中から、他殺事案を発見し、
その捜査の過程で、新車開発の不正に端を発する、
大手自動車メーカーと、大手人材派遣会社による、
隠蔽工作の殺人事件へと発展していく構図ですが、
上巻は、よぅやく外堀に辿り着くまでが描かれ、
下巻で、一気にお話が展開していく構成でした。
前作に対して、ボリュームが2倍となった分、
全体的に、丁寧に書き込まれている印象でした。
一方で、
序盤から事件の黒幕や構図が明示されていたので、
所謂、終盤でのドンデン返しはなく、
警察ミステリーとしての謎解き要素はなぃですね。
とは言え、それが売りの作品ではなぃですから…。
非正規雇用労働者の悲哀から導出された動機は、
所謂、お涙頂戴ものの動機としては新鮮な感じで、
そこに、田川の捜査を介して、読者を導いていく、
お話の構成、展開力や文章力は、逸脱でした…。
ただ…、
それだけに、同僚刑事のSや、最後の決着などは、
そんなに魑魅魍魎とせずに、もっとシンプルに、
スッキリとしたものでもよかったのかな~とも…。
(結構、モヤモヤ感や残念感も残りました…)
あと…、
前作の「平成版砂の器」もそぅでしたが…、
本作の「平成版蟹工船」といぅキャッチも、
何となく、そこじゃなぃ感?がありました。
まぁ、そんな重箱の隅を突くよぅな感想は、
ボク的には、良著の場合の常でありまして、
読み応えのある内容の一方で、
読み易ぃ、面白ぃ作品でした!
次回作にも、期待したぃですね!
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一気読みで面白かったけど、根本的にネットで流れてる情報に対して、このような殺人が起きるのか、疑問に思うことも。でも、詳細にわたる自動車や派遣の現状には目をみはりました。
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社会問題とミステリのハイブリッド小説。
どっちつかずなだけど、派遣の現状は強く伝わってくる。
主人公の刑事は優秀なんだろうが、それより運がとてつもなく強いことは間違いない。
読むと装丁写真の意味がよく分かる。
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殺人事件の真相と、請負派遣の闇とが同時に明かされていく様は、読んでいて、圧巻。実際に派遣会社の社員として働いていたから、内情は知っているけど、それでも読んでいて、辛くなることがたくさんあった。社会派の作家ならではの切り口だと思う。ただ、タイトルにそんな深い意味はなく、頻繁に「ガラ携」と表記されるのは、しつこさを感じた。
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遂に田川刑事は仲野殺害の実行犯にたどり着く。一方で鳥居は人材派遣会社やトクダモーターに、捜査状況を流し続け、証拠隠滅を図る。実行犯の仲野殺害の動機は、派遣から正社員にしてもらうことであった。そこまで派遣と正社員の差は広がっているのか、現実は良く判らないが、派遣の状況から抜け出すのは大変なのだろう。これは勤め人であれば全ての人が陥るかもしれない事態だ。
自動車メーカーの不正は、現実にVWや三菱自動車において再三行われており、他社がやっていない保証はない。また、人材派遣業が抜いている金も半端無い割合である。
消費者は騙され続け、政府と企業に食い物にされる。
ガラパゴスの日本企業に未来はあるのか。
このような硬派な社会事件を著者にはもっと書いてもらいたいものだ。
ラストは案の定トカゲの尻尾切りで決着したのが残念。
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『普通の派遣としての実態は全く一緒なのに、私は偽装請負という形で工場のラインで働いていました』
元派遣の工藤が実情を語る。
派遣労働者を一つの請負業者とみなす偽装請負。労働基準法や労働派遣法は適用されない。
企業側の言い分があるにしても、労使との溝は深い。
本道も忘れずに抜け道は通りたい。。。
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ほぼ一気読み。すごい丁寧に話が練られている。聞いたことはあるが、非正規労働者の悲惨な生活ぶりが胸に迫った。あと、日本の自動車業界は本当に大丈夫なのだろうか。
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警視庁捜査一課継続捜査担当の田川信一は、身元不明のままとなっている死者のリストから殺人事件の痕跡を発見する。
派遣・請負の不安定な雇用問題と効率化と利潤追及のみに走る悪徳な経営者。
この犠牲になる派遣社員。
著者得意の社会派ミステリーです。
テンポ良く展開していく話です。
田川刑事の執拗な捜査で、事件が段々解明されて行く。
しかし、板の厚さを0.5ミリも変えたら、設計やラインを変更しないと生産できないような気がするけど、どうなんだろう。
車両重量も変わるから、型式認定も取り直さないといけないような気がするけど・・・。
50台だけ作るって、コストダウンと言うより、コスト高になるような気がする。
説明して欲しかった。
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辛い、読んでて心が辛くなった。
ストーリーも良くてあっという間に読み終わった。
法廷の部分まで書いてほしかったな
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う〜ん、、、なんだろう。
ミステリとしては中途半端な出来だし、派遣問題やハイブリッドの燃費問題(街中ではよいが高速はイマイチ)などの社会問題を書くにしても浅いし、ということで個人的には食い足りない感じ
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日本のガラパゴスと言えば誰もがケータイ電話を思い浮かべるでしょうけど、今の日本では車や産業形態までガラパゴス化しているのだと思い知らされました。ミステリとしても秀逸です。ハイブリッドカーに乗っている人や興味のある人は必読の1冊。
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上下巻一気読み。派遣からやっと正社員になれたんだ。派遣社員の辛さがわかった。「俺達はガラパコスの最前線にいる」本当に仲野さんいい人だ。その後も知りたい。
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この相葉英雄という作家は、この社会に憤っている。その怒りを、田川刑事を通して見事に読者に伝えている。田川刑事の捜査は本当に丁寧で、1つ1つ小さなことを積み重ねていく。相葉英雄の文章もそうだ。
今回の事件は、社会の歪みがもたらした結果起こってしまった。ある車の会社の部品に疑問を抱いた1人の非正規雇用労働者の仲野。彼が会社を訴えようとした際、理不尽にも殺されてしまう。彼を殺した実行犯にもそうせざるをえない実情があり、その犯人よりも、怒りはこうした社会にぶつけるべきではないかと思わされる。非正規雇用労働者の実態や巨大組織の隠蔽問題等、ノンフィクションを読んでいるようだった。
上下巻トータル600ページほどのボリュームだが、一気に読ませる力がある。しかし、読後感は爽快とは言えず、僅かなシコリが残る。
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トクダモーターズの工場に派遣された仲野が自殺と見せかけて殺害された事件。
田川刑事の執念の捜査によって真相が暴かれたものの、結局、トカゲの尻尾切りで下っ端が逮捕されただけで幕を閉じようとするが、きっとまだなにか最後にあるに違いない。
いや、あってほしい。長内の裁判での情状証人として法廷に立つ田川刑事にもう一頑張りしてもらいたい。
普通に働き、普通に食べ、普通に家族と暮らすことがそんなに難しいことなのかとやりきれない気持ちになった。