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▼あらすじ
高級キャバレー・エカルラート――
それは蝙蝠王と人間の美女との間に生まれた麗しき“妖精”たちが一夜の夢を見せる場所。だが、その実態は妖精を囲う檻そのものだった。
キャバレーの筆頭歌姫でありながら誰にも躰を許さず、己の出生を憂いていたイールは、満月の夜にヴェルレインと名乗る男と出会う。
「お前を俺だけの妖精にする」と突然言い放った男は、莫大な金でイールの夜を買い、巧みな手管で翻弄する。絆されるイールだったが、実は彼に大きな企みがあることを知り…。
***
頽廃、耽美、官能…これらの言葉がしっくり来るような世界観に引き込まれ、久し振りに、読み終えてしまうのが惜しいと感じた作品でした。
匂いや情景、雰囲気などの描写が上手く、ワクワクしながら読み耽りました。
それと、ラフェリの設定が作り込まれていてとても面白かったです。
ラフェリはエカルラートで男娼として働く背中に羽の生えた美しい妖精達で、蝙蝠王と人間の美女との間に生まれるのですが、これが結構残酷で、どこからか拉致した女を無理矢理孕ませて作るんですね。
しかも、ラフェリを生んだ直後、女は即座に殺されるという容赦の無さ。
そして女の恐怖と苦痛が強ければ強いほど、見目麗しいラフェリが生まれるそうで。
救いが無さ過ぎて可哀想だとは思いましたが、とても面白い設定だと思いました。
また、ラフェリはその美しい容姿に加えて美しい声を持ち、口にするものは花と血液のみで、精液の代わりに花蜜を分泌する…という人外ならではのファンタジックな設定も新鮮で面白く、イールがヴェルレインを相手に初めて花蜜を分泌したシーンでは強烈な花香が此方にまで漂って来るようでした。
読み応えがあるのに読みやすく、ヴェルレインとイールが心を通わせていく様子も丁寧に描かれていて良かったです。エロの方も甘々で、でも挿入出来ないのがまたもどかしくて、だけどそこがまた何とも言えず良い!みたいな…(笑)
あと、ヴェルレインがイールに花の絵を描いてみせるシーンが地味に萌えた…。
ただ、最後の方で少し詰め込み過ぎたような気がしなくもないんですよね。
兄弟設定と子供は要らなかったんじゃないかなぁ…。
百歩譲って兄弟なのは良いとしても子供は要らなかった気が…。
それと何より、蝙蝠王のバトルがあっさり過ぎて不完全燃焼でした。
どうやってあの巨大な蝙蝠王を倒すのかとワクワクしていた反面、割とあっさり戦闘終了した上に結局、蝙蝠王逃がしちゃうし!!
いや、そこはきっちり仕留めないと駄目でしょ!みたいな…。
クライマックスな訳だし、もう少し盛り上がりと緊張感が欲しかった。
あとは五十何人も居るラフェリが一人も死なずに脱出出来たのも上手くいき過ぎなような気もしましたが…まぁ、ハッピーエンドだしこの辺は良いか…。
そんなこんなでちょっぴり惜しい部分はありましたが、それでも最近読んだ小説の中では間違いなく楽しめた方なので満足です。
葛西リカコ先生の透明感のあるイラストも作品の雰囲気や世界観に凄く合っていて素敵でしたし、���編や他のラフェリのお話が出るなら読んでみたいかも。
評価は少し甘めにつけて★5という事で!