投稿元:
レビューを見る
タイトルがとてもユニークで、一体これはどういう意味なんだろうという疑問を持ってページをめくり始め、読み進めるうちにこのタイトルの意味がわかってくる。戦争というのは元々、男たちが行うものであった。今でこそ女性兵士は多くいるが、第二次世界大戦当時はまだ女性が兵士として前線に出る、または戦地において戦闘部隊の補助などの兵役につくのは世界でも珍しいことだったと思う。女は銃後を守るというのが一般的な女の役目だった。しかし、この本に出てくる女性たちは、みな、16歳から20歳くらいで自ら志願して出兵し、数年間兵役を務めたのだ。ソ連では100万人もの女性が兵士として参戦したのだそうだ。
投稿元:
レビューを見る
女性として戦地に赴いた人たち。
一つ一つの語りはどれ一つとして同じものは何も無い。
これ程多くの女性達の語りをまとめたのは凄いこと。
戦争の記憶がとても生々しい。
投稿元:
レビューを見る
「戦争は女の顔をしていない」スベトラーナ・アレクシエービィチ著・三浦みどり訳、岩波現代文庫、2016.02.16
499p ¥1,447 C0136 (2017.10.23読了)(2017.10.12借入)(2016.03.25/3刷)
著者は、2015年のノーベル文学賞受賞者です。同じ著者の『チェルノブイリの祈り』は、2017年1月に読みました。
この本は、第二次世界大戦で、ドイツと最前線で戦ったソ連の女性たちへのインタビュー集です。1978年から2004年までに500人以上に話してもらったのをまとめたものです。
「ソ連では第二次世界大戦で百万人を超える女性が従軍し、パルチザン部隊や非合法の抵抗運動に参加していた女性たちもそれに劣らぬ働きをした。」(483頁)
「ソ連の従軍女性たちは十五歳から三十歳で出征していった人たちで、他国のように看護婦や軍医というだけでなく、実際に人を殺す兵員でもあった。ところが戦争で男以上の苦しみを体験した彼女たちを、次の戦いが待ち受けていた。従軍手帳を隠し、支援を受けるに必要な戦傷の記録を捨てて、戦争経験をひた隠しにしなければならなかったのだ。「戦地に行って男の中で何をしてきたやら」と戦地経験のない女性たちからは侮辱され、男たちも軍隊で同僚だった女性たちを守らなかった。」(485頁)
著者は、ベラルーシの人ですが、この本はベラルーシでの出版は許されていないということです。「ロシアでは、1997年の二巻本、2004年の普及版、2007年の選集のかたちで出ている。」(487頁)
祖国のためにと16歳、17歳で飛行士、砲兵、狙撃兵、等最前線で戦うことを志願していった女性たち、驚きあきれながらもそれを許した男性たち。
戦争の本はたくさん読んできましたが、白兵戦のすさまじさなどは、はじめて読みました。捕虜になっていた人たちは、戦後、国賊としてシベリア送りになったということも初めて知りました。
祖国のために最前線で戦ったのに、その経歴を戦後他人に語ると男たちの中で何をしてきたのかと同性には侮辱され、男性には嫌われたということで、過去の経歴を語りたがらない女性たちが多く、取材は難航したそうです。
集めてまとめた後も、出版に応じてくれるところが見つからず、二年待ったということです。
読んで気持ちのいい作品ではないので、やむを得ない面もあるとは思います。
【目次】
人間は戦争よりずっと大きい(執筆日誌より)
思い出したくない
お嬢ちゃんたち、まだねんねじゃないか
恐怖の臭いと鞄いっぱいのチョコレート菓子
しきたりと生活
母のところに戻ったのは私一人だけ…
わが家には二つの戦争が同居してるの
受話器は弾丸を発しない
私たちの褒美は小さなメダルだった
お人形とライフル
死について、そして死を前にしたときの驚きについて
馬や小鳥たちの思い出
あれは私じゃないわ
あの目を今でも憶えています
わたしたちは銃を撃ってたんじゃない
特別な石けん「K」と営倉について
焼き付いた軸受けメタルとロシア式の汚い言葉のこと
兵隊であることが求められたけれど、かわいい女の子でもいたかった
甲高い乙女の「ソプラノ」と水兵の迷信
工兵小隊長ってものは二ケ月しか生きていられないんですよ、お嬢さん方!
いまいましい女と五月のバラの花
空を前にした時の不思議な静けさと失われた指輪のこと
人間の孤独と弾丸
家畜のえさにしかならないこまっかいクズジャガイモまでだしてくれた
お母ちゃんお父ちゃんのこと
ちっぽけな人生と大きな理念について
子供の入浴とお父さんのようなお母さんについて
赤ずきんちゃんのこと、戦地で猫が見つかる喜びのこと
ひそひそ声と叫び声
その人は心臓のあたりに手をあてて
間違いだらけの作文とコメディー映画のこと
ふと、生きていたいと熱烈に思った
訳者あとがき 三浦みどり
解説 著者と訳者のこと 澤地久枝
**********************************
*注意*以下の抜き書きにすさまじい場面の描写が含まれていますので、
想像力豊かな方は、読まないでください。
**********************************
●生きるとは(9頁)
戦争という事実だけではなく、人が生きるとは、死ぬとはどういうことなのか、その真実を書かねばならない。ドストエフスキイの「一人の人間の中で人間の部分はどれだけあるのか? その部分をどうやって守るのだろうか?」というあの問いを。
●女が語る戦争(12頁)
女性の戦争についての記憶というのは、その気持ちの強さ、痛みの強さにおいてもっとも「強度」が高い。「女が語る戦争」は「男の」それよりずっと恐ろしいといえる。
●心の痛み(62頁)
生きて帰っても心はいつも痛んでる。今だったら、足とか手をけがした方がいいと思うね。身体が痛むほうがいいって。心の痛みはとても辛いの。
●ユダヤ人(101頁)
「ユダヤ人には次のことを禁ずる―歩道を歩くこと、美容院へ行くこと、店で何かを買うこと、笑うこと、泣くこと」
●教育(104頁)
祖国と自分たちは一心同体、という教育を受けていました。
●男物のパンツ(124頁)
戦争で一番恐ろしかったのは、男物のパンツをはいていることだよ。これは嫌だった。
●人間(185頁)
神様が人間を作ったのは人間が銃を撃つためじゃない、愛するためよ。どう思う?
●白兵戦(216頁)
戦闘は激しいものでした。白兵戦です……これは本当に恐ろしい……人間がやることじゃありません。なぐりつけ、銃剣を腹や眼に突き刺し、のど元をつかみあって首をしめる。骨を折ったり、呻き声、悲鳴が渦巻いています。頭蓋骨にひびが入るのが聞こえる、割れるのが……戦争の中でも悪夢の最たるもの、人間らしいことなんか何もない。
突撃のあとは顔を見ない方がいいんです。だって、それは全く別の顔ですもの。普通、人間が持っている顔じゃないんです。
●野戦病院(222頁)
野戦病院ではどうだったか? 手術室の衝立のかげに大きな桶が置いてあって、そこに切断した手や足を置いていたんです……前線から大尉が、仲間の負傷者を連れてきた時のことです。
その大尉が衝立の陰に行って、その桶を見てしまったんです……大尉は気を失ってしまいました。
●スペインの子供たち(260頁)
ドイツ空軍による空襲が始まった。私はキエフに連れてこられたスペインの子供たちが収容されている孤児院で働いていたんです。スペイン市民戦争の1937年にソ連に連れてこられた子供たち。
スペインから来た子供たちは庭に塹壕を掘り始めました。もうそういうことの全てを知っていたんです。
●捕虜(439頁)
「ソ連の将校は降伏しない、わが国で捕虜になった者はいない、生き残った者は裏切り者だ」
☆関連図書(既読)
「チェルノブイリの祈り――未来の物語」スベトラーナ・アレクシエービッチ著・松本妙子訳、岩波現代文庫、2011.06.16
(2017年10月25日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
ソ連では第二次世界大戦で百万人をこえる女性が従軍し、看護婦や軍医としてのみならず兵士として武器を手にして戦った。しかし戦後は世間から白い目で見られ、みずからの戦争体験をひた隠しにしなければならなかった―。五百人以上の従軍女性から聞き取りをおこない戦争の真実を明らかにした、ノーベル文学賞受賞作家のデビュー作で主著!
投稿元:
レビューを見る
コルホーズ…集団農場
パルチザン…占領軍への抵抗軍
ペレストロイカ…再構築
スターリンの大粛清後の対独戦争。
皆戦場に行きたがっていた。
共産主義への強烈な信奉。祖国を守るということ。
・女性という家庭や温かさの象徴が戦場にいるというコントラスト。
・女性の戦争への耐性の無さ。女性らしさを保とうとすること。→戦争で失われる幸せに縋る女性を描くことでありありと負の側面が浮かび上がる。
ハイヒール。花。香水。
家庭への恋しさ。
・女性への男性の接し方→愛情や弱さが垣間見える(フェミニズム的には??)
身を挺して女性を守る。
愛情をせがむ。声を聞きたがる。
・戦争の辛さ
生理。地が赤く染まる。
出産。子供を抱えての出撃。
男性用下着。
・よりパーソナルな女性
二つの真実を生きる。自分自身の真実と、新聞のにおいのする大きな真実。
時として小さなことが大きなこと、歴史全体に勝つ。
・戦後の救えなさ。
戦場の雌犬と呼ばれ、独身で共同住宅。PTSDを抱えながら生きる。
生理が止まったまま戻らない人も。もう子供は産めない。
投稿元:
レビューを見る
ノーベル賞受賞の戦争物。
北朝鮮情勢が緊迫し、戦争がやや身近になりつつあるので読んだ。
男性主体の場である戦場で、女性でありながら使命感にかられ、出て行った人たちの証言集。
戦場の女性というのは戦後隠すべきことだったようで、あまり語られなかったらしい。
さらに、状況は悲惨。
長期にわたってこれが続いたと思うと気が滅入る。
そんな中で男性として戦場に出、戦後女性に戻る。
そのギャップにまた、精神的におかしくなりそうだ。
戦争は単に反対すれば良いというものではなく、目を背けずに可能な限りいろんな面から把握し、理解し、その上でなくすためにどうするかを考えるべきだ。
また、個々人としては起こってしまう戦争に対し、生き延びるために、精神的にめいってしまわないために、過去を知るべきである。
投稿元:
レビューを見る
★第二次世界大戦でソ連侵攻してきたドイツ軍との戦闘において出征した女性達の言葉を集めた証言集。
戦争の凄惨な現実と、戦後の苦しみが話し言葉で書かれている。
・女性に必要な下着などの配慮はない。
・軍服も男もの。
・女らしいこと、刺繍などを求めた。
・女であるとしてからかいの対象。
・恋愛は御法度だったが、している者も大勢いた。大恋愛はいくつもあった。ただし、周囲の飢えた男全員から身を守るために一人を選ぶしかなかった人も。
・ドイツ軍の残忍な殺戮をよく目撃。家族や恋人を殺されて、憎まずにはいられなかった。
・それでも怪我をした捕虜や、飢えた捕虜、ドイツ人の子供は見捨てられなかった。
・女性も戦争の熱狂によって兵隊に志願した。
・地雷除去の小隊長、狙撃兵、高射砲指揮官(伍長)、モスクワ艦隊大尉(退役中佐)になった女性も居た。本書では看護師、衛生指導員、軍医が多いように感じられる。後方支援の電信兵、洗濯係に止まらない。
・4年に及ぶ戦闘が終わって故郷に帰ったり、嫁ぎ先に行っても、戦場で男を相手にしていたとして非難の的にされた。
・男達はそれを庇ってくれなかった。
・傷痍軍人として手帳を交付されていたが、上記の理由で使わず、飢えた人も大勢いた。
・戦後の方が地獄だった女性も多い。
・なぜそこまで熱狂させられたのか、戦争に突き進んだのかに対する考察は殆ど無い。ただしスターリンの失策には気付いた人がいる。共産主義を素晴らしいといって肯定している一途さが、読んでいてつらい。
・中立地帯と言いつつ、スパイが入り乱れて激しい戦闘と裏切り、虐殺が続いたベラルーシは、家族が人質に取られたり酷かった。
・・・感想
高校の教科書に採用してほしい。何の授業がいいか分らないけれど。必須科目。そのくらい、生々しく戦争の真実を語っていると思う。情報量が多すぎて整理しきれない。一生かかって、何度も読むべき本のような気がする。
投稿元:
レビューを見る
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの著作を読むのは、『チェルノブイリの祈り』に続いてこれが2冊目であるが、実際に出版されたのはこちらが先で、アレクシエーヴィチの第1作とのことである。
女性が戦争にどう参加したか、また戦中・戦後をどう生きたのか、なかなか語りたがらないインタビュイーからの綿密な聞き取りによって、「戦争」そのものを抉り出す筆致は見事と言うしかない。
さらには、国内事情もあってなかなか出版が許されなかったという事情も、訳者あとがきや解説によって知った。いつの時代でも、権力は真実を隠そうとする。しかし、いくら隠そうとしても隠しきれないのが「真実」というものであるということを改めて実感させられた。
投稿元:
レビューを見る
図書館で何気なく手に取り、読むのにすごく時間がかかりましたがこれは読んで良かった。中高生に是非読ませたい本だ。戦争って嫌なもんだ、という事が物凄くストレートに届く本だと思う。男性は戦争を美化したり、戦死した仲間を英雄視したりする人も居るけれども女の目から見た戦争はただただ汚く、恐ろしく、不衛生で、死んだ人は何も語らないという非常にシビアで現実的な目で語っている気がする。負傷者救護の後に軍服が血と泥で固まり、支えもいらずにズボンが直立していた、なんて表現に背筋が段々と寒くなる。生活に必要な日用品が戦闘でこんな風に変化する。その恐ろしさを体験した人の口から語られるのはむごいことでもあるのだけれども、話してくれてよかった、と思う。
それにしても戦争から帰ってきた後も女の子なのに…と周囲から冷たい目で見られた事には唖然とします。捕虜となってようやく帰ってきた後に今度は自国の政府に告発される男たちも。嫌な時代だったんだな。
米原万理さんのエッセイにあったフレーズで、愛国者とは政治家には莫迦みたいに騙され、征服者には手もなく利用される人間、とありましたがこれを読むと「祖国を守る」という大義名分のためにどれだけ多くの女性・子供が志願兵として徴兵されたのだろう。戦時中はどこの国も大概教育という名の洗脳を行っていたのだろうけれども本当に罪深いことだな、と思います。
私の子供の頃も駅には傷痍軍人が菰を引いてハーモニカを吹いていたりする所に遭遇したなぁ、なんてふっと思いだしました。段々戦争を知る世代が亡くなり、若い世代で戦争又やむを得ず、というような思想が見えてきている中、こういう本は是非若い人に読んでもらいたいな、と思いました。漫画やゲームと違って実際の戦争なんて怖くて痛くて汚くてひもじくて疲労困憊して睡眠もとれないような生活のなかで人間性を捨てるものなのだという事なんだなって。ああ、戦争なんてイヤだ、という本なので是非是非広く色々な人に読んでもらいたいなと思いました。
投稿元:
レビューを見る
とてもじゃないけど言葉が見つからない。なにより辛いのは、この本の中では味方同士だったロシアとウクライナの間で戦争が起きて、いつ終わるかもわからないこと。
もちろん、WWⅡ当時のソ連だったウクライナとロシアの関係性は、「味方同士」と一言で言いきれるほど簡単なものではなかったけれど…
戦争の体験談を見聞きするときは、語ることなく死んでいった人たちの空白も強く感じる。死んだ人の言葉は誰も聞くことができない。
戦争も共産主義国家も同じくらい病んでる。
捕虜になって、生きて戻ったら戦後に裏切者としてラーゲリ(強制収容所)送りなんて…大日本帝国も軍人、民間人問わず捕虜になることを許さなかったけれど、捕虜になった人をわざわざ戦後にまで罰したりまではしなかった。戦後に大日本帝国は存在しなかったから、そうできなかっただけかもしれないけれど。戦争中の沖縄では捕虜が日本軍の情報を漏らすことを警戒して、捕虜収容所に手りゅう弾を投げ込んだりはしていた。
従軍中に夫に出逢い戦場で結婚した人の証言もちらほらあった。
それで、戦場に司祭を連れて行っていたのかしらと考えて、この当時のソ連ではおそらく信仰というものは一切封じられていたのを思い出した。
ソ連時代の結婚式について調べたら、このページが出てきた。花婿の賠償の儀式がなかなか愉快だ。
https://jp.rbth.com/lifestyle/83265-soren-no-kekkonshiki
戦前に結婚していた人にはほとんど影響がなかったようだけど、まだ若かった女性は軍の中で娼婦のような役割をしていたのだろうと戦後になってから憎まれて見捨てられたという話をしている人が思っていた以上に多かった。その女性たちは力の限りに戦ったのに。
戸口にコールタールを塗られて、結婚相手が見つからなくなった娘がろくでもないごろつきと結婚することになったロシアの小説を思い出したけれど、誰が書いた話かを思い出せない。
戸口にコールタールを塗るというのは、「この家の娘は身持ちが悪い」ということで、一度塗られると爪はじきものにされてしまう。そういう文化の延長で、兵士になった若い女性を排斥するというのは意外ではない。
ロシアによるウクライナ侵攻後のアレクシエーヴィチのインタビュー
https://www.nhk.jp/p/etv21c/ts/M2ZWLQ6RQP/blog/bl/pvo4Ar54QB/bp/pZjm3ORlpG/
投稿元:
レビューを見る
「チェルノブイリの祈り」もそうだったが、ソ連の別な一面を見たという印象。こんなにも多くの女性が戦争に関わっていたということも当時の日本にはありえないこと。もしこれから戦争が起きたら、次は日本も女性まで駆り出されるに違いないけれど、そんなことが起きないことを祈る!
投稿元:
レビューを見る
著者が、対独のソヴィエトの戦争において従軍したーー否、戦争に“かかわった”女性たちに聞き取って記録した本。そうまとめるのは簡単で、けれど正確にはなり得ない。興味を持たれた方は一読されるのがいちばん良いと思う。男のことば、単語の羅列に封じられてきたかなしみがあふれ出してくるようで、読みながら、ずっと雷に打たれたようだった。動けず、それでも頁を繰り続けた。
想像力が少しでもあるひとは考えるべきだ。ひとりびとりに戦争がなにをもたらすか、を。
……吉本隆明のことばを一部だけ引用する。
(前略)人間が地を這いつくばって戦い、銃器を手にし、血を流し、死を賭してやっていることは、現在では、どこでどんな崇高そうな理由が付けられていても、ただの暴力行為にすぎない(後略)ーー文学者と戦争責任について
だが、依然として戦争は「在る」のだ。私たちはそれにどう抵抗し、慰めを得、武器を手にせずに戦えばいいのだろう?
投稿元:
レビューを見る
第二次世界大戦の独ソ戦で、ソ連軍に従軍した女性たち500人以上へのインタビューから成る一冊。
発掘された女性たちの声は想像を絶するもので、戦争という巨大な化け物の残酷で常軌を逸した側面を浮かび上がらせる。でも、女性兵士へのインタビューより、印象に残るのは前書きに相当する冒頭の『人間は戦争よりずっと大きい』だ。
「人間は戦争の大きさを超えている。人間のスケールが戦争を越えてしまうような、そういうエピソードこそ記憶に残る。そこでは歴史を越えたもっと強いものが支配している。わたしは視野を広げて、戦争という事実だけではなく、人が生きるとは、死ぬとはどういうことなのか、その真実を書かねばならない。」
こうした義務感に駆られた背景、そしてインタビュー前の不安と葛藤、インタビュー後の思いなどが錯綜しながら赤裸々に独白のような形で綴られる。膨大な数のインタビューが本書の最大の価値ではあることは疑いもないけれど、文庫本41ページに及ぶこの著者独白にはそれに劣らない価値が確実にある。
投稿元:
レビューを見る
2020年1冊目。そもそも第二次世界大戦で兵士として女性が戦場に行ったということを知らなかった。戦争から帰ってきたあとの偏見もあったという生の声をインタビュー形式で記載。
投稿元:
レビューを見る
勇気ある漫画家がマンガにしましたが、やはり、ここに戻ってきてほしいですね。マンガの感想はブログでどうぞ。
https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202002060000/
投稿元:
レビューを見る
リアルな戦闘を体験した女性たちの声が生々しすぎて、読んでいられません。これでもか、と押し寄せる感じ。どの証言からもシーンが浮かんできて耐えられませんでした。辛すぎます。文で読んでても目を背けたくなるほど。あの場面をくぐり抜けた彼女たちが日常に戻るまでにどれほどの時間がかかったのかがしのばれます。医者を目指していたけれど、もう医者にはなりたくない。あの時の自分は今とは別の存在。どの言葉も深く響きました。