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ジョイス・キャロル・オーツの最新作。
『うまくいかない愛をめぐる4つの中篇』と副題がついているが、1作の長さは中篇にしてはやや短く、短篇と中篇の間ぐらいのボリュームだった。
この『うまくいかない愛』というのがなかなか曲者で、確かにそこに『愛』のようなものはあるのだが、DVちっくであったり、モラルハラスメント風であったり、はたまたストーカーめいていたりと、一見、普通っぽく見えても根底にはかなり歪んだものが見え隠れしている。本書に収録された中篇4本は、どれも、その歪みまくった『愛』が徐々に漏れ出し、じわじわと登場人物を苛む様子が描かれている。
表題作にもなっている『邪眼』の不気味さが一番好き。
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怖いっ。面白いっ。寓話的な感じはほとんどなく、リアルにこだわっているのかなあ、という気がする。
「邪眼」は「レベッカ」を連想させられるような前妻後妻もので、不気味ながらも、いそうなんだよねこういう夫、こういう前妻。。。
「すぐそばに いつでも いつまでも」は怖い。ひたすら怖い。
「処刑」は意外な展開で、ちょっとあっけにとられてしまった。
「平床トレーラー」はいつのまにかこっち側に味方してしまう。
充分巨匠なのに、こんな怖さをえぐるジョイス・キャロル・オーツ、いいなあ。。。
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「邪眼」「すぐそばに いつでも いつまでも」「処刑」「平床トレーラー」の4編。
ぞくぞくと面白かったー!クレイジーラヴ。
『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』まだ読んでなかった。読まねば。
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5/31 読了。
最悪の読後感を残す最高の中篇小説集。モラハラが何だかわからない人は言葉がいかに暴力をふるうものか表題作の「邪眼」を読んでみてほしい。勝手な理想の押し付け合いと搾取、暴力とディスコミュニケーションと隷属関係こそ、人間が<愛>と呼びならわしているものだと告発する、<歪んだ愛>ではなく<愛は歪みである>ことの物語。
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歪んだ愛の物語。
危険を孕んだ執着心を持つ相手に出会う時、早く気がついて身を守らないと、彼らの歪んだ愛のストーリーに巻き込まれてしまう
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アリス・マンローがノーベル賞とった時、普通の人が抱く悲哀や喜びを描いてノーベル賞をもらえるって素晴らしいなと思ったのだが、ジョイス・キャロル・オーツが何度も候補に挙がっているという噂を聞くと、普通の人がちょっとしたことで道を踏み外し、いつの間にか常軌を逸した行動をとるようになったり、誰しも抱く妬みや憎しみが暴走してしまったり、普通の人が平凡な顔の下に恐ろしい本当の顔を隠していたりする、ある意味日常と隣り合わせの恐怖を描いて右に出る者のいない(少なくとも今生きている作家では)オーツがとったらそれもまた素晴らしいなと思っている。
この短編集もどれもぞっとする面白さ。特に表題作の、若い妻が、社会的に成功した男に追いつめられる様子はリアルですさまじい。
「処刑」は、よくニュースで見聞きするようなクズ(稼げず、学ばず、反省せず、我慢せず、自分が楽して暮らすことが最優先の、悪いことはすべて人のせいにするヤツ)の心情をこれでもかと描いて見せるが、親の盲目的な愛情はさらに恐ろしい。恋に憧れる思春期の娘さんたちには「すぐそばに いつでも いつまでも」をぜひ読んでほしいし、「平床トレーラー」は幼児性愛に大した罪はないと考えている人に読んでほしい。
まったくどれも良かった。
ただ『とうもろこしの乙女』はもっとよかったので、★一つ減らした。
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繊細だからいろいろ感じてしまって生きるのがしんどい。かたや周りにいる人はおおらかにきめこまやかに周囲にやさしさを振りまいている人がいる。「繊細」とは後者のような人物を表すのではないか。だとしたら前者は?こういう周囲との立ち回りについてよくわからない。1人の人間としてしか生きてきてないから。こういうことを考えるから親戚の法事とか出るのかしんどいのかしら。とにもかくにも、この本はトーストした食パンにマーガリンがじんわり溶けていくように、私にじんわり溶け込んでいく。