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本書は旅行ガイドブックではないし、島々の美しい自然や絶景を収めた写真集でもない(そもそも、写真は無い)。本書は、書名にもある「絶対に行くことがないであろう島々」でかつて起こった出来事や、島民の生活、歴史、文化などを文学的に書き綴ったものである。当然、著者も実際に訪れてはいないので、リアル感のある記述にはなっていないが、よく調べてありなかなか興味深い。想像力を働かせて読むべき本だ。
感想
①島の発見の歴史を見ていると、大航海時代から18世紀が圧倒的に多い。当時の航海者達のベンチャー・スピリットに感動する。今のように世界の全体像が詳細に把握できている時代ならまだしも、当時よく未開の地への冒険に挑む気になれたものだ。(実際、命知らずが多かったようだが)
②文明から隔絶された島で生きた人たちに関する記述を読むと、その人たちの心の内を推し量らずに入られない。逆に彼らが外の世界の様子をどのように捉えているのかが非常に気になる。
③絶海の孤島でも、そこに暮らしている人たちがいて、日々の生活を成り立たせている(無人島は除く)。我々と生活様式は違えど、人も集団もそのように隔絶された世界でも普通に生きていける。人間の生命力に感じ入ると同時に、不思議な安心感を覚えた。
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まず行かないような50の島のストーリーが1ページと、地図1ページに書かれている。地図には人の手が入った場所はオレンジになっていて、その他も繊細な描写が美しく。1ページにまとめられた話はすべて実話で、おもしろいストーリーもあれば、そうでないものもあるが、写真が無い分、想像力は掻き立てられる。
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旧東ドイツ出身の世者が綴る、50の島の物語。
実際にある島の、実際にあったエピソードであろう…にもかかわらず、この幻想性は何だろうか。
ファンタジーの…フィクションのような。
うつくしく詩情に満ち、絶望と諦観に溢れている。
これは霧のむこう側、手の触れない遠いところの物語だ。
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カテゴリに分けることが出来ない、分ける必要があるだろうか?
静謐な文章、緻密な地図、薄い青色の海、明るい灰色の陸地、時折鮮やかな橙色の集落と道路。
サブタイトルと同様に私も生涯行くことはないだろう島々の歴史とも創作とも区別が付けがたいエピソードが語られる。
そして誰が名づけたかは知らないが、島々の名前のなんと心ひかれることか!
最初に「孤独」が登場する。島とは海によって隔てられた地であり、辺境でありながら島にとっては海こそ辺境となる。
写真でなく地図で描かれているところがまた想像力をかきたてる。
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地球上の様々な島をピックアップ。それぞれの島にまつわる多々なエピソード。
島国日本からは、硫黄島が収録。なるほど
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地球上に存在する知られざる孤島を紹介している本。ナポレオンで有名なセントヘレナ島、流刑地で有名なノーフォーク島、硫黄島の決戦という映画にもなった硫黄島、地球温暖化による海抜上昇の影響で沈没寸前のタワー島。地球温暖化による海抜上昇の影響で沈没寸前といえばツバル(ツバル共和国)が思い出されるけれど、タワー島なんてあったんだ。島の話一つとっても、世界にはまだまだ知らないことがたくさん。情報化社会で世界の全てのことを知った気になっている自分の無知や傲慢な思い上がりを思い知らされた。
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最近はあまり雑誌は読まなくなったのですが
SAVVYが好きで別冊保存版で気にいったのがあれば買って
いつか行きたいなあ~なんて眺めています。
『奇妙な孤島の物語』はヘアサロンに行った時に読んだ月刊SAVVYの
“おすすめの本”に載っていて読みました。
題名だけでお気楽にユートピア的な島のお話しを想像していたのですが
著者は旧東ドイツ出身の方で地図だけが世界を知る術
小さい頃からいろいろな地図を見ていたそうです。
『島は世界の縮図である―。』
『風変わりな物語をもつ50の孤島へ、はるかなる旅へと私たちを連れ出す―』
北極海の3つの孤島からはじまり、大西洋、インド洋、太平洋、南極海の孤島にまつわる歴史やお話しが綴られています。
北極海からはじまったので結構ダークで・・・
なんだ?!この本は・・・と思いましたが、結構面白いです(笑)
地図や居住者数などの情報も載っていて、島に思いを馳せながら読みました
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島は世界の縮図である―。地図だけが、世界を知る術だった旧東ドイツ出身の作家はみずからの手で美しい地図と文章を作り上げた。イースター島、タオンギ環礁、硫黄島、プカプカ島、セミソポクノイ島…かくも風変わりな物語をもつ50の孤島へ、はるかなる旅へと私たちを連れ出す―「もっとも美しいドイツの本」賞受賞。(アマゾン紹介文)
一島一島が興味深い、『行くこともない』島々。位置や広さ、人口などのデータが、エッセイのような短文と合わさって想像をかきたてる。
それにしても近代の欧米はほんとにやりたい放題だったんだなぁ…。
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50の孤島への夢想を表現する、物語と地図の本。
・北極海・・・孤独、ベア島、ルドルフ島。3ヶ所。
・大西洋・・・昇天島、セント・ヘレナ島、南トゥーレ等、9ヶ所。
・インド洋・・・南キーリング諸島、クリスマス島等、7ヶ所。
・太平洋・・・プカプカ島、硫黄島、ティコピア島等、27ヶ所。
・南極海・・・ローリー島、フランクリン島等、4ヶ所。
地形用語集、索引有り。
2ページで、右ページに物語・島のデータ・位置・歴史等の概略。
左ページに地図の構成。
50の島の様子、歴史、人物等を語る物語と地図の本です。
作者は、旧東ドイツ出身。閉ざされた孤島のような国。
地図が世界を知る術でした。地図により膨らむ想い。
実際に訪れていなくても、島を語ることは出来ます。
夢見心地な(悪夢も)文章は、冒険、記録、ホラー、ミステリー、
民話、民俗誌、観測記、ボランティア募集パンフレット等で。
描かれるのは、島の発見者、滞在者、流刑人、元皇帝、学者、
女性飛行家、未確認飛行物体、アリVSカニ、一色覚者、俳優等。
描かれている島の地図は生き物の様にも見えます。
島の名前(別名も)の訳語が、あるのも良い。孤独、昇天、危険、
受難、欺き等。はたして孤島は楽園か?地獄か?
ペンギンの恐怖。ノーフォーク島の夢のような一日の翌日は?
読者も想像力を働かせて、夢想の世界に浸り、発見します。
そう、地図は『世界の縮図』であるということを。
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七つの海に数多ある孤島。そのそれぞれが自分の物語を抱え持っている。著者シャランスキーは、訪れたこともなく訪れる予定もない島を美しいデザインに落とし込み、いくつもの声を使い分けてその物語を綴った。歴史的な事実に基づいているが、どこか幻想味を帯びた物語と島の地図からなる特別な地図帳。
人が地球儀、あるいは世界地図を眺めるとき、最初に目につくのは青い海にポツンと浮かぶ孤島かもしれない。孤島には不思議な名前がついていることも多いから、その名前でググってみる。逆に、地名辞典をパラパラと眺め、気になる島を地図で探すこともあるかもしれない。そんなふうにじわじわと知らない島について調べるうち、頭のなかに島ができあがる。実際に訪れてみたら気にいる要素なんてひとつもなさそうな島でも、脳内旅行をするうちに愛着が湧いてくる。
そんなふうにして頭のなかにできあがった自分だけのフィールドノートを覗かせてもらっているような本だ。抑制的なデザインだが必要な情報はきっちりと詰まった島の地図の、海の青と人工物を表すオレンジの対比はとても美しい。そこに添えられた文章はノンフィクションながら、たとえばナポレオンの亡骸を引き取るためセントヘレナ島にやってきた船は紫色の帆を掲げていたということを描写するだけで、そこはかとない幻想味が漂う。
だが、観光欲を刺激するようなことはほとんど書かれていない。水爆の実験場に選ばれた島の、失われた住人と失われた自然環境のこと。漂流の末たどり着いた島に先住していた男たちが隠している秘密のこと。紀行作家が書き残した島での乱交の習慣のことなど。地図には西洋人が勝手につけた地名と、現地語の地名がまぜこぜに記されている。英語では理想郷のような名前で呼ばれる場所が、誰も近寄れない岩山だったりするのだ。
知らない土地に惹きつけられる気持ちはポジティブな感情だ。一方で、その好奇心と冒険心が多くの土地と人びとを蹂躙してきた。シャランスキーの語りには、自身が西洋人だからこそ持ち得る植民地主義への冷静な批評精神が宿っている。シンプルだが印象に残る島の地図と、線で表された歴史、そして1ページ足らずの物語。この見開き2ページのデザインフォーマットによって、「見知らぬ土地に思いを馳せる」行為自体について考えさせてくれる。美しさと確かなメッセージが完全に融合した見事な一冊。
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行くことはないだろう島々。ここに出てくる島で知っているのは硫黄島とイースター島だけ。悲惨な話やロマンチックな話など。
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企画も、造本も、タイトルも、そして文章もめっちゃカッコイイ。〈多くの孤島は、二重の意味で人を寄せつけない。そこに至る旅は長く苦しく、上陸は命がけであって、時に全く不可能である。そしてたとえ上陸できたにせよ、蓋を開けてみると――はじめから予想できそうなものだろうに――あこがれの島は不毛で無価値だった、となる例はごまんとある。〉〈島は楽園かもしれない。地獄でもあるが。〉〈果てのない地球の端で招いているのは、手つかずのエデンの園ではない。その逆に、遠路はるばるやって来た人間達が、ここで化物になる。辛苦に満ちた探検を重ねることによって、人間達が地図から追い払ってしまったはずの化物に。〉