紙の本
骨太ドラマに魅せられた
2016/03/31 12:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よしおくん - この投稿者のレビュー一覧を見る
久しぶりに骨太なミステリーを読ませてもらった。現代アルゼンチンの闇は深く、苛烈だった。社会、政治的な背景や時代性を背景にしたり、内容に取り込むと、ミステリーは普遍性を獲得し、重厚で良質な緊迫感をはらむ、優れた作品となる。
思えば、ハリー・ボッシュ・シリーズも初期の作品は、米国社会に大きな傷跡を残したベトナム戦争を背負っていた。だからこそ、あれだけのものになったのだ。
「マプチェの女」で唯一、気にあるところがあるとすれば、ジャナを主人公に据えた作者の選択だ。ジャナは実に魅力的な登場人物だが、ジャナとその友人のLGBTたちを描くことで、作品からきりきりと苛むような緊迫感を少し削ぐ結果となったのではないか。あるいは、それが作者の意図したことなのかもしれないが。個人的にはジャナを登場させず、ルベンのみを主人公として書いたなら、どんな作品になったのか、とても気になる。
いずれにしろ、近年では出色の作品であった。
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なかなか掘り出し物。南米舞台は新鮮やし筋はオーソドックスやし理解しやすい。
表紙の女性はもうちょい胸なくてもいいんちゃう(描写的に)
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久しぶりにドップリ漬かる小説だった。近年はエンターテイメント・ミステリーと言えどもプロットの面白さだけでは成立せず、歴史や政治、恋愛、性風俗など様々な要素を重層的に積み重ねて、アクションあり、サスペンスあり、ラブロマンスありとサービスし放題にサービスしないとなかなか評価される作品には仕上がらない。
『マプチェの女』はまさにそのようにして成功した作品で、アルゼンチンを舞台にスペイン人入植期の原住民虐殺と、1976年の軍事クーデターから開始され1980年代まで続いた『国家再編成プロセス』(国家権力による左派勢力の大量誘拐、失踪)を背景に、マプチェ族の末裔ジャナと探偵ルベンが戦争犯罪者を暴くというストーリー。文庫で 650ページほどの大著で、ボリュームもたっぷり。最後の 200ページほどは手に汗握るクライマックスが延々と続くイメージで、堪能した。
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国の歴史に関わる事件といい
マプチェ族の女、探偵の男
深い傷を持つ二人が惹かれ合う構図
あれ?オカシイな〜
やだなぁ〜コレもしかして…
探偵は女にモテるし…
女は闇を抱えて強気だし…
コレって「ドラゴンタトゥーの女」
の縮小版かな…とか、序盤は嫌な汗を
かいていたのですが
作者に失礼でした。すみません。
600ページというボリュームですが
なんとも読み進めたくなる。
第3部のタイトルページで鳥肌が立ちました。
「ミレニアム」に手を出しづらいと感じてるあなたは是非コチラをどうぞ。
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激烈。一言で表すとこの言葉かしっくりとくる。
しかし、そうであるが故の儚さと美しさがあった。
気概と闘志、どんな状況でも目を逸らさず、真っ直ぐなジャナ。軍事政権時代に弄ばれ、壮絶な拷問に耐えながらも憎悪を糧に生き続けたルベン。
2人の生きる姿は、荒々しく獰猛であるのに、どう見ても美しかった。
久々に読み応えのある本で、ズブズブにのめり込んだ。
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アルゼンチンにおける過去の圧政、軍事独裁政権、あるいはファシズム時代の負の遺産の発掘と同じく先住民族に対する差別をテーマにしたミステリー。フィクションには違いないが、アルゼンチンの暗黒部分が圧倒的なスケールで押し寄せてくる。
次の殺人を防ぐための事実の調査が、結局次の殺人を生み出してしまうという負のスパイラルの連続。読んでいて気が重くなる一方だ。しかもその合間に触れられるアルゼンチンの酷い歴史とそれに紐づく警察や宗教界の対応。
しかし、それでも次々読み進めてしまうのは場面転換や、ジャナやルベンが遭遇する少しの光が前向きに展開していくからだろうか。
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軍事政権による残虐行為の犠牲者。その犠牲者も、そもそもネイティブを虐殺して土地を奪った侵略者の末裔だったりしちゃう。深く考えさせられるアルゼンチンの闇を舞台とした追いつ追われつのアクション&バイオレンスにハラハラドキドキ。ジャナとルベンが心を通わせるシーンには涙腺崩壊。オススメされたときは分厚さに怯んだけど、読んだよかったです。
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エグい描写もありながら、テーマは人間の残酷さを抉る所から、マプチェ族の血を引くヒロインと探偵が権力と戦うハードボイルドを描く。闇を抱えながらも再び立ち上がった人間は強い。せこい倫理観を超えた所に、真の生命力があるのだろう。
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侵略者による先住民の大虐殺および軍事独裁政権による反体制派の弾圧(誘拐・拷問・殺害)というアルゼンチンの負の歴史が正面から扱われていることに伴って暴力描写も凄惨を極めており、恐ろしくはあったが大変勉強になった。「女装のゲイ」という翻訳は妥当なのか、原語でどのような言葉で表現されているのか気になる。