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図書館で気まぐれに手に取った一冊。
思うところはあったが、主人公が家事スキルを高めていく様子や、運動会で子どもたちに元気をもらう描写には励まされた。仕事に忙殺される男性たちやその妻たちの苦悩も痛いほど味わえた。
字体の使い分け、著者の主観も含んだ注釈などが独特であり、新鮮な読書体験だった。登場人物同士の繋がりにも他ではなかなか見ないパターンがあり、なるほどと思いながら読んだ。
ストーリーとの絡みはあまり感じられなかったものの、主人公が読んだり書いたりした設定であろうパスタのレシピや秘訣は勉強になった。
男性の登場人物たちに、「家庭を顧みず家事を全くせず働く」「仕事を辞めて専業主夫になる」の2つの選択肢しかないらしい様子にはモヤモヤとしてしまった。「主夫になって良かった。仕事では味わえない素晴らしい体験ができた」という旨の回想があったが、いや、それは仕事しながらでも家事をしたり子どもの学校行事に携わったりすれば得られた経験では??現に今まで奥さんが仕事しながらそれらをやっていたんでしょう??とつっこみながら読んでしまった。「家事・育児は女がやるもの」という考え方に比べたら男女平等に近付いてはいるが、「家事・育児をする男性=専業主夫(≒経済的余裕がある特別なケース)」と捉えてしまう読者がいたら残念だなあと思った。考えすぎか。
また、ブログ上で(法に触れないとはいえ)悪いことをしたのに最終的には謝罪をせず、そのまま新しいことを始める様子が美談のように描かれているのは意図がわからなかった。「リア充」に繋げるためにインターネットの話を出したのかもしれないが、現に傷付いた人物がいる(その描写はあった)わけで、インターネットと現実はそこまで単純に線引きできるものではないと思う。
以上のモヤモヤは残ったが、総じてインパクトはあり、家事や仕事を頑張ろうと思わせてくれた一冊ではあった。