投稿元:
レビューを見る
世の中に経済の量を測る指標としてGDPが多くの人に使われていて、日本のGDPがかなり昔に世界二位の座から落ちて久しいです。為替にもよりますが、今では中国にかなり水を開けられている様ですね。
量では確かに増えていないし相対的に低下しているのは理解できますが、その質についてはどうなのだろうかをずっと思っていました。そのな私の目の前に現れたのがこの本でした。
国連が作成したのは、総合的な豊かさとして、人的資本・生産した資本・天然資本の3つの資本から評価を行っています。そして一人当たりの「総合的な豊かさ」は、アメリカを抑えて「一位」とのことです。日本は天然資本は低いものの、生産した資本や人的資本において優れている様です。
日本の人口は今後減少していきますが、質を高めて世界から憧れられるような存在になりたいものですね。
以下は気になったポイントです。
・そもそもGDPは国民の幸福度を測るために考えられた数字ではなく、その由来を遡れば、国の軍事力を見積もるために考案されたもの(p5、19)
・2011年には国連総会がGDPを超えて、暮らしの質を測る新しい経済統計の開発を要求する、という決議を採択し、2012年6月に、新統計と報告書を作成した。2014年12月には2回目の報告書が出た。持続可能度を示す4つの資本の残高を計算している(p6)
・EU各国、アメリカ、そして中国までもが、新指標を念頭に置きながら戦略を練っている(p8)
・イギリスの不況がアメリカよりも深刻になったのは、1925年財務相であったチャーチルが、1ポンド=4.86ドルという経済合理性を無視した、為替相場のまま金本位制に復帰したのと、歳出削減で財政赤字を出さないようにすればポンドへの信頼が回復して景気がよくなると思ったことにある(p21)
・ユーロ加盟国を代表するエコノミストが討論し、GDPを大きくするために採用された新しい生産項目は、売春婦の売上と、麻薬取引額であった(p36)
・2015年3月、米商務省では、企業が行う研究開発投資を新たにGDPの金額に加えることを決めた、3%程度アップ(p37)
・GDPで計測できないものとして、1)各国が分業のなかでどれだけ付加価値の高いものに参画しているか、2)消費者の満足度向上、3)持続可能度の低下(p44)
・個人的諸活動の質を評価するうえで重要なのは、1)賃金労働の時間と質、2)無報酬の家庭内労働、3)通勤時間、4)余暇時間、5)住宅状況、の5分野である(p54)
・数値化の難しい社会関係資本を除く三資本(人的資本・生産した資本・天然資本)の資本残高は、アメリカに次いで二位、一人当たりでは一位である(p63)
・人的資本=(教育年数+訓練年数)x教育を受けた人の数x平均賃金の現在価値(p66)
・中国はGDP成長率こそ高いが、投資主導成長のために消費がゆがんだ経済である、個人消費の割合は、32%であり、60%の日本、70%のアメリカに比べて少ない(p132)
・2015年2月、BIS(バーゼ���銀行監督委員会)は、国債をリスク資産として扱い、自己資本に入れないという新しいルールの検討を始めた。すると、大手銀行は、1)融資抑制して資産縮小、2)劣後債等の社債発行、3)国債を売る等の対応が必要になる(p151)
・日本のGDP統計が新しいベースに改訂されるのは、2016年7-9月の確報発表からだが、その時点で研究開発支出が上乗せされる。この上乗せは3%程度と言われている(p158)
・研究開発費を毎年3%成長させていくと、2020年にはGDPが600兆円となり、安倍首相の唱える600兆円とほぼ同じになる(p159)
・日本での健康寿命は男:70歳、女:75歳、寿命は男:80歳、女:86歳である。平均寿命と健康寿命の差は10年程度(p185)
2016年4月17作成