紙の本
子育てはぜいたく!?
2016/04/13 19:20
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
貧困世代とは、「稼働年齢層(10代から30代)を中心に形成される世代であり、貧困であることを一生宿命づけられた人々」とのこと。
内容ですが、第1章は5つの事例を紹介し、「子育てはぜいたく」という若者の実態に迫ります。第2章は、5つの若者論(労働万能説、家族扶養説、青年健康説、時代比較説、努力至上主義説)の誤りを指摘し、「大人がわからない悲劇」として捉えます。第3章は、ブラックバイトや奨学金問題を深掘りすることで「若者が学べない悲劇」として捉えます。第4章は、家賃負担が重たいために家を借りられない、実家から抜け出せない「若者が住めない悲劇」と捉えます。第5章は、5つの政策提言(労働組合への参加と労働組合活動の復権、スカラシップの導入と富裕層への課税、子供の貧困対策と連携、家賃補助制度の導入と住宅政策の充実、貧困世代は闘技的民主主義を参考に声を上げよう)を行っています。
私はどちらかと言うと貧乏な家庭に育ちましたが、終身雇用と安い賃料の公団に入居できたおかげで、何とか国立大学を卒業させてもらいました。しかし、今では終身雇用は崩壊し、安い住居も不足する中、親が教育費を十分賄うことができなくなっています。若者はブラックバイトを辞めたくても辞められず、仮に奨学金を借りても返すために結婚等を犠牲にしなければならず、さらに「子育てはぜいたく」とばかりに少子化に拍車がかかる始末。こうした若者の現状に愕然としました。日本の将来を占う上で、若者対策は避けて通れない問題だと、認識しました。
大企業のために非正規雇用を積極的に推進し、終身雇用を潰した小泉こそが、「自民党をぶっ壊す」と言いながら「日本をぶっ壊した」張本人だと思いました。
ところで、4月12日に開催された子供の貧困対策にかかる議員会合で、72歳の自民党議員が「高校も大学もみんなが援助するのは間違っている」と発言し、児童養護施設出身者の奨学金制度の拡充を一蹴。一方、私の妻に本書の内容を簡単に説明したところ「大変なのは分かったけど、奨学金給付はやりすぎ!」とこちらも一蹴。つまり、若者の貧困に対する世間一般の認識および理解は全く進んでいない中、行政や政治家の若者貧困対策への意識は低いと言わざるを得ません。
まずは、若者の貧困の実態とその対策の重要性を、周知することが肝要かと思いました。
紙の本
日本の未来が不安
2017/01/15 20:55
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:スーさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
本当にこのままでは大変なことになる。本書を読んで日本の未来に不安を覚えた。昔はもっと大変だった、そういう感覚ではいけないということなのでしょう。高齢者対策も大切だが、それは所詮コスト。若者対策は投資という感覚で考えるべきと思う。
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<目次>
はじめに
第1章 社会から傷つけられている若者=弱者
第2章 大人が貧困をわからない悲劇
第3章 学べない悲劇~ブラックバイトと奨学金問題
第4章 住めない悲劇~貧困世代の抱える住宅問題
第5章 社会構造を変えなければ、貧困世代は決して救われない
おわりに
<内容>
衝撃の書だと思う。うすうす感じていた若年層の貧困問題。とても分かりやすい論理的な文章で、白日の下にさらしてくれたと思う。確かに我々「大人」は、20代~30代の貧困層の問題を過小評価している。「働き口はたくさんあるではないか」、「もっと努力を」…などなど。私よりも高年齢の人ほど、その思いは強いだろう。ただ、時代は変わっている。経済的にも、社会構造的にも日本は劣化した国となっている。それは、「古き良き」時代を維持しようとする「大人」と、そうではないことを伝えられない(伝える手段が少ない)若者の、ギャップである。政治の問題、と一蹴することもできない。社会が変わらないといけない。そして、若者が声を上げ、政治を変えていけないといけない。第5章で、著者は5つの提言をしている、いずれも難しい提案だが、ゆっくりとおこなっていては、「日本」は滅んでしまう…
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「下流老人」という言葉を生み出し、世の中に投げかけた筆者が、次に書いたのがこの本。若者世代を「貧困世代」として、置かれている現状・日常の相談活動で接した若者の姿から、今後の支援活動にとって何が必要かを投げかけた一冊です。先日、直接話を聞く機会もありましたが、やわらかい口調も含めてとてもわかりやすい話でした。生活保護に関わる運動に参加する者であり、若者世代の子を持つ親であり、さらに親の介護に直面している者であるという、すべてがつながってきている状況にたって、とても身につまされる思いを持ちました。ぜひたくさんの人に読んでもらい、自分が何が出来るかを一緒に考え合いたいと思いました。
印象に残ったフレーズ(今後、自分の中で変化していくかも)
・「現代の若者たちは一過性の困難に直面しているばかりでなく、その後も続く生活の様々な困難さや貧困を抱え続けてしまっている世代である」
・若者対する社会一般的な眼差しが高度経済成長期のまま、まるで変わっていないのではないだろうか。
・ソーシャルワーカーはあらゆる生活のしにくさを抱えている人の相談を受け、その問題に対処するだけでなく、それを生み出す社会構造に働きかけていく職業人
・多くの相談者に向き合っていると、本人がどれだけ努力しても、自分の力だけでは生活再建が困難な状況にあると実感する
・努力至上主義を信奉することこそ、若者たちを追い詰めていく
・若者支援において決定的に言えるのは社会資源の不足である
・いつの時代も政府や世論の意向によって福祉対象者はあらかじめ定められているし、つくられている
・日本では若者は育てられない。年功賃金、終身雇用のないところで、私費負担で学費をまかなうことはもはや無理だ
・住宅は最大の福祉制度である
・社会構造を変えなければ貧困世代は決して救われない
提言1・新しい労働組合への参加と労働組合活動の復権
提言2・スカラシップの導入と富裕層への課税
提言3・子どもの貧困対策とも連携を
提言4・家賃補助制度の導入と住宅政策の充実が貧困を止める
提言5・貧困世代は闘技的民主主義を参考に声を上げよう
結論:貧困世代をなくすために求められること
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これまで高齢者や子どもの支援ばかりに目を向けられていた社会福祉について(もちろんそれも大切なことですが)、若者の環境についても整えるべく様々な具体的ケースや提言がわかりやすくまとめられていました。
そういう私も、貧困世代ど真ん中。思い当たる節がありすぎでした。
福祉といえば高齢者や障がい者のためにあるものという固定観念があったので、海外の事例は目からウロコでした。特に、住宅関係。
「辞めたいなら辞めればいい」とか、「根性が足りない」とか、「生活保護は甘え」とか、とにかく精神論で語りたがる日本社会ですが、メンタルではカバーしきれないハードモードすぎる現実があるわけで……。まずはその認識の格差から是正していかないといけないという、長い長い道のりでさありますが、特に教育という未来への投資がもっと充実することを願って止みません。
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20160518
下流老人に続き、日本が抱える社会福祉の問題点を具体的に明らかにした一冊。
現代の若者たちが感じる生きづらさ。日本に蔓延る閉塞感の根本が、若者たちが当たり前に生きることすら難しいという状況にあるのだろうと思える。
例えば、日本が進める住宅政策。持ち家が当たり前にあり、誰もが目指すべきというような考え方事態がおかしいのだろう。それでも、住宅ローンの金利が低いと言って、35年ローンを組ませ、新築で住居を買うことを進め、そこへの控除を行う政策。また、持ち家を持つことが人生の目標とも言えるような世論。
こういった認識を変えることが、まず一歩であると著者は言う。
自分自身、教育現場に携わるものとして、学費が賄えないために教育を受けることができない若者に出会う機会が非常に多く、とても他人事には思えない。
少しでもこのような認識が広まり、私たち貧困世代が生きやすい世の中になるために、行動をおこさなければならないと強く感じた。
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ここに書かれているような現状があることを理解していませんでした。
高額な学費、辞められない学生の状況につけ込むブラックバイト、頼りになるどころか負担にさえなる家族の存在、住む場所さえ借りられない現状。
貧困は思った以上に深刻であり、そしてそれは決して当人だけの問題ではなく、社会全体の問題です。
進路ガイダンスで高校生に対して話をする機会が多いのですが、「貧困世代」の実状を理解し、話すべき内容を再考する必要があると強く感じました。
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「下流老人」で高齢者の貧困と格差の問題をあぶりだした著者が若者の貧困について「貧困世代」という衝撃的なネーミングで暴き出した。若者の貧困は、バブル景気の崩壊以降、人件費を削減するため、若者を犠牲にしながら、企業の成長や経済成長、あるいはシステムの延命や存続を進めるようになった。そのために1990年代後半以降に増えている非正規雇用は意図的に作られており、若者の貧困も同時に拡大を続けている。この構造的な変化に社会自身も若者自身も気づいてない中で声をあげれないでいる実情がある。また世界で最も高等教育に自己負担が多い日本では、親世代の収入減でバイトに頼らざるを得ず、また、そのバイトもブラック化が進んでいる実情、奨学金も米国並みにローンとなっている実情など、想像以上に現代の若者が置かれている状況が大変なことが分かる。加えて日本の福祉政策に住宅政策が抜けている点を指摘し、少子高齢化の原因を貧しい住宅政策を指摘する点は論理が飛躍しすぎな感じもしないわけではないが、納得の論考であった。貧困問題に関心がある人は必読本であると思った。
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背筋が寒くなるが、確かにうなずける話。労働組合が日本社会に根付いていないのは、体制により「アカ」と結びつけられてきたことと無縁ではあるまい。
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学校の給食費が払えないとか、修学旅行に行かれない生徒がいることは知っていましたが、ここまで若者の生活が劣化していることに気づきませんでした。奨学金を借りている学生が半数を超え、それも大半が有利子の奨学金であるため、就職がうまくいかなかった人は返済に困難を極めていることや、日本はOECD加盟国中GDPに占める教育機関への公的支出の割合が最下位であったことなどを知りました。政府も企業も目の前の金儲けのことしか考えず、将来への人への投資を蔑ろにしている実態が浮き彫りにされています。暗澹たる想いです。
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社会福祉は若者を対象にしていない。奨学金を返せない、返すのに年月がかかり結婚、家庭を持てない。賃金が低すぎて実家から出られない、独立できない、イコール家庭を持てない、子供を産めない。親からの負の連鎖…「一億貧困社会」は否めないのか。真剣、政治を変えないと。
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漠然とした「将来の不安」を、具体的に示しています。
やっぱりか。そうなるか。。。何とかしないと、と思える1冊。
一読の価値アリ!!
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現実に起きている問題として深刻に受け止めた。的を得ない議論で進展していく怖さを感じた。もう少し深く掘り下げて研究を進むていきたい。
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読後、日本の若者の未来を思うと暗くなる。ここに書かれているような悲惨な若者が大半ではないはずだ。でも、無視できない人数が苦行のような人生を歩んでいかねばならないのだとしたら、先行するものとして何か力になってあげたいと思う。
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http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062883580