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細胞をもたない単純な姿のため非生物とされがちなウイルス。しかし「細胞」をもつとは言い難い共生細菌や遺伝子数が千を超える巨大ウイルスの発見で境界はぐらついてるとか。
ウイルスとは何か,生命とは何かを問いかけるために提出された極めて重要な概念を「丸刈りのパラドックス」と呼んだり,なかなか親しみやすく書かれてる。なぜ「禿頭のパラドックス」にしなかったのかがちょっとだけ気になるけど(笑)
“「ある中学生の髪がどこまで伸びたら丸刈りでなくなるのか」という問題を、本書では「丸刈りのパラドックス」と呼ぶことにする”p.56
タンパク質を作るリボソームを高性能3Dプリンターに喩えたり,導入部分での比喩も分かりやすくて親切。
そして部屋(細胞膜)の住人(DNA)は分身の術を会得していて,部屋にあるすべてのものの設計図も記憶している。この住人は分身の術を使うたびに部屋を2倍の大きさにして,二部屋に区切る。
ウイルスは部屋も家財も持たない家なき子。
不憫であるが実は逞しく,他人が住む部屋に侵入すると,自らの分身の術と設計図と,その部屋にある3Dプリンターを駆使してどんどん増えていき,あっという間に乗っ取ってしまう。
最終的には作ったレインコートを羽織って部屋を壊して出ていく。
スタンリーらによるTMVの結晶化の発見に絡めて問いかけられたテーマ,
“ウイルスは純化するとただのタンパク質と核酸という分子になってしまう。しかし一方、生きた宿主の細胞に入るとあたかも生命体のように増殖し、進化する存在となる。…どちらにウイルスの本当の顔があるのか…本書の底流となるテーマでもある”p.50
最後のあたりの力説で,著者なりの結論となってるんだけど,読んでて「ウイルスは生きてる,なるほど!」と感化されてしまった。いろんな境界生物がいるんだなあ。世界は奥が深い。
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内容メモ。
第一章 生命を持った感染性の液体
・マルティス.ベイエリンクー枠を突き抜けた純度を持つ男
研究に没頭した人生、孤独、卓越した見識と科学に対する妥協なき真摯な姿勢。
・生命を持った感染性の液体
シャンベラン濾過器によるウイルス(濾過性病原体)の発見、ベイエリンクはTMV(タバコモザイクウイルス)を発見。微生物ではなぬ可溶性の生きた分子であると主張。「液体」とした彼の表現、常識にとらわれない踏み込みの深さがベイエリンクの真骨頂。
・結晶化する「生命体?」
生命現象におけるタンパク質の重要性。TMVの結晶化に成功。ウイルスが、ただの物質のように結晶化する存在であることを示したスタンリーの発見、その最大の驚きは、それまで自明のものと考えられていた生命と物質の境界を曖昧にしたことである。ウイルス発見は純化するとただのタンパク質と核酸という分子になってしまうが、宿主の細胞に入るとあたかも生命体のように増殖し進化する。この二面性のどちらにウイルスの本当の顔があるのか?
第2章 丸刈りのパラドクス
・丸刈りのパラドクス
筆者の学生時代のエピソード。髪の毛何㎝をもって丸刈りと規定するか?同じように、ウイルスとは、生命とは何か?(生物の形質は一般的に連続値となることが多く何かの区分を作った場合、どこで線を引くべきか、問題になる。)
・細胞とウイルス
細胞とウイルスの構造の違いと、関係性について言及。ウイルスは“家なき子”。他人が住む部屋(細胞)へと侵入して部屋の中の家財道具を平気で使い、分身の術で自身を増やし、意気揚々と部屋を出ていく。
・ウイルスの基本的な構造
一般的にゲノム核酸をキャプシドというタンパク質で包み込んでいる(例外もある)。比較的多くのウイルスに共通するのが“エンベロープ”←宿主の細胞膜を剥ぎ取って作る。
・ウイルスのゲノム核酸
二本鎖DNA、一本鎖DNA,二本鎖RNA,一本鎖RNAと種類はさまざま。
・ウイルスの境界領域その1ー転移因子
ウイルスと類似性があるが宿主に病気を起こさない転移因子。アメリカの女性植物遺伝学者バーバラ・マクリントックによって発見された。一定の長さの配列がゲノムDNA上を「転移する」(動く)。DNAトランスポゾンとレトロトランスポゾンの2種の大きなグループがある。
レトロウイルスとLTRレトロトランスポゾンは限りなく類似している。唯一の違いは、前者がエンベロープを作り細胞外に出ていく(他の細胞に感染する)のに対し、後者はエンベロープを作らず感染性をもたないこと。これらは共通の祖先から発生したものと考えるのが妥当である。
・ウイルスの境界領域その2ーキャプシドを持たないウイルス
感染性がはっきりしない、感染しても病気を起こさないウイルスたちのなかには、キャプシドを持たないウイルスの多くが発見されている。もともとは普通のウイルスだったが、キャプシドを失い感染性を失ったもと考えられる。このように細胞質にずっと存在し増殖しうる核酸性因子の代表的存在がプラスミド。染色体DNAとは独立して自律的に複製を行う。
ウイルス、転���因子、プラスミド。これらは実際的にひとつながりである。安定して子孫(自己のコピー)を残す能力がある限り、なんらかの“進化”が起こりうるのは言うまでもない。ウイルスと呼ばれようが転移因子と呼ばれようが人間の作ったしきりの枠内に収まるかどうかは、それらにとってどうでもよいことである。
第三章 宿主と共生するウイルスたち
・エイリアン
寄生バチの幼虫が寄主を殺さず体外に出てくる奇妙な現象について。映画「エイリアン」を例にとって説明。
・ ポリドナウイルス
寄生バチメスの卵巣にあるカリックス細胞でのみ増殖する。産卵の際、卵と同時に寄主体内へ注入され、寄主の細胞に感染する。しかし通常のウイルスのように感染細胞内で増殖することはない。寄主のゲノムDNAからウイルスの遺伝子を発現させ、その産物であるタンパク質を寄主体内で生産する。このタンパク質が、顆粒細胞のアポトーシスを誘導したり、NF-κBという自然免疫の中心をなすタンパク質をターゲットとしてその活性を阻害する。さらに昆虫ホルモンの異常を引き起こし、寄主に変態を起こさせないようにする。
このようにポリドナウイルスは寄主である寄生バチに都合の良いように振る舞い一種の共生関係を築いている。「共生するウイルス」なのである。
・不思議に満ちたポリドナウイルスの起源
ポリドナウイルスは多数の環状DNAからなるが、通常ウイルスが持っているはずの自己の複製酵素やキャプシドタンパク質などの遺伝子を持たない。どうやって自己を増やすのか?答えは、寄生バチのゲノムDNA上にポリドナウイルスのキャプシドやエンベロープタンパク質等の遺伝子情報がコードされていたのだ。このようなものが本当にウイルスと呼べるのか?→実はポリドナウイルスは、昆虫に感染するヌディウイルスに由来することが明らかになった。ポリドナウイルスはそのむかし、ヌディウイルスのように寄生バチのDNA内に入り込んだ。しかし何がきっかけとなったか不思議に思えるが、作ったウイルス粒子内に自己DNAではなく寄生バチのゲノムDNAの一部を取り入れるようになった。そして自分自身は転移因子のように細胞外に出ることのない存在になり、自らが作ったウイルス粒子を、寄主細胞をコントロールするための「分子兵器」として寄生バチに提供するようになったのだろう。
・聖アントニウスの火
中世ヨーロッパで流行した疫病。ライ麦のエンドファイト(共生菌)である麦角菌が生産する麦角アルカロイドが原因。そんなエンドファイトと共生するウイルスの話。ウイルスがエンドファイトに感染→エンドファイトの植物との共生能力が発揮されるケースもある。(パニックグラスは65℃の高温にも耐える、これはウイルスが感染したエンドファイトを持つため。)
このようにウイルス感染が宿主に何らかのメリットを与えている事例が多々あることがわかってきている。
人間の場合だと、ヘルペスウイルスの潜伏感染によりインターフェロン生産が増え、マクロファージが全身にわたって活性化→リステリア菌やペスト菌に感染しにくくなる、など。感染の際に内在化して宿主ゲノムと一体となり、今は外から新たにやってくるレトロウイルスに対してガード役として活躍している。
第四章 伽藍とバザール
・伽藍とバザール
コンピューターソフトウェアの開発様式の対比から生まれた概念。伽藍=大企業主で開発される様式/バザール=中心となる企業がなく、色んな技術者がパーツとなるソフトウェアを持ち寄る形式。
生命進化もまた一部はバザール型進化でありウイルスやその関連因子が関与している。
・胎盤形成
シンシチン(母親の免疫系による攻撃から胎児を保護する合胞体性栄養膜の形成に関与)というタンパク質は、レトロウイルスが持つenvという遺伝子に起源を持つ。envタンパク質は宿主細胞の細胞膜に融合する性質。即ちシンシチンは細胞融合を起こして合胞体性栄養膜を作り、多数の核を有する一つの巨大な細胞の層となることで免疫細胞が子宮血管から胎児側へ侵入するのを防いでいる。
・V(D)J再構成
抗体分子の可変部(V領域、D領域、J領域)の多様性に関与する酵素(RAG1,RAG2)は、トランスポゼース(トランスポゾンの転移を触媒する)という酵素と遺伝子配列上の類似がある。解析の結果RAG1は転移因子に起源を持つことが分かった。
胎盤形成や抗体の多様性。生物進化は、ウイルス関連因子の役割ぬきに語れないものがある。
・遺伝子制御モジュール
転移因子が遺伝子発現をオンオフするスイッチになったり、ボリュームを調節する役割を持つ場合もある。元となったウイルスが我々に偶然感染し、ヒトの遺伝子に転写開始位置を提供し、それ自体は因子としての活性を失ったが、スイッチ機能のみは失っておらずそれが利用されているのだ。
・空飛び、海泳ぐ遺伝子
原核生物の遺伝子の少なくとも1割以上は親からではなくゆきずりの他人から譲り受けている(遺伝子の水平移行)。
毒素合成遺伝子を取り込んだλファージが無害な菌に感染することで、無害だった菌が有害な菌に変わることがある。(腸管出血性大腸菌O157株の生産するベロ毒素は、赤痢菌のシガ毒素と同一。)また、海洋ではシアノバクテリアに感染するシアノファージのもつ皇后背関連遺伝子が、海洋の生態系のなかで遺伝子をかき混ぜる役割を果たしてきた。
・遺伝子を運ぶ「オルガネラ」?
ウイルスは、遺伝子を細胞から細胞へと水平移動させるオルガネラ(細胞小器官)である、という「ウイルス進化論」。「遺伝子を水平移行するための装置」=GTAの発見。これは非ウイルス性、非プラスミド性因子で形体はファージに似ているが、ファージと異なりGTAに入ってるDNAの配列は個々に異なり全て宿主細菌のゲノムDNA由来だった。このGTAの遺伝子水平移行は異なる細菌間での遺伝子の交換、すなわち「交配」の役割を担っている。
第5章 ウイルスから生命を考える
・手足のイドラ(幻影)
ウイルスに手足を付けると生物のように見える。地球上には多種多様な生物が生息しているが、生きているといえるのか?と思うような生き物も少なくない。
・「移ろいゆく現象」としての生命
生命の本質は、漸進的に、かつ恐らく半保存的に、変化・発展していくことにある。表面的な姿かたちや機能は時と共に変わっていく。細菌や人間は進化の中で全て繋がっている。
・ウイルスと代謝
ウイルスは代謝しないので生命で���ない、という主張について。
ヒトだって自己の維持に必要な代謝系の一部を外部環境に依存しており、決して自己完結はしていない。生物として単独で代謝経路を保有することは必須ではない。
・生命の鼓動
ジェラルド・ジョイスは生命の定義について“生命とは、ダーウィン進化する能力を持つ、持続的な化学システムである”とした。これはNASAによる生命の定義にも採択されている。生命最大の特徴は、自己を維持しながらも、そこからの展開・発展を繰り返すことであり、これが進化と呼ばれるプロセスである。進化は「自己のコピーを作る仕組みを持つ」、「そのコピーにバリエーション(変異)を生み出す性質を持つ」という原理を内包する。
ウイルスはこの原理を内包した装置を保有しており、「生命の鼓動」を奏でている存在である。
終章 新しいウイルス観と生命の輪
・開かれた「パンドラ」の箱
人類が知ってはいけなかった新しいウイルスパンドラウイルスの発見。それは細胞構造を持っておらずウイルスとしても奇異な形態だった。このウイルスはインフルエンザウイルスなどより体積比1000倍も大きく細菌に近いサイズで、キャプシドの内側に脂質膜があり、2本鎖DNAをもつ。キャプシドとエンベロープの一部に開口部がある。これまでのウイルスの常識には無い構造だった。さらにゲノムサイズが大きいことからパンドラウイルスは物理的には「細菌」に近い。その遺伝子の93%は他のどんな生物とも似ていないまさに「エイリアン」のような存在。
・生物に限りなく近い巨大ウイルスたち
ウイルスはより速く効率的に増殖するためにゲノムを単純化させコンパクトにする方向で進化してきたと考えられてきたが、ミミウイルスやパンドラウイルスのようなジャイアントウイルスを見れば決したそのような一方通行の進化ではなく、彼らは驚くべき速度で遺伝子を溜め込み「生物」へと近づいているようにも見える。
イオンチャネルなどの膜輸送システムを持っていかれるクロロウイルスも発見された。これはいわゆる「細胞膜」としての機能の始まりと捉えられる。ウイルスは「進化のロジック」を内包した装置を保有しており、様々に変化しうる存在である。パンドラウイルスの発見は新しいウイルス観、新しい生命観への扉を開いた出来事だった。
・そして生命の輪
「一個の生物」とは?人間は自我の意識によって世界を認識している。しかし生物としてのヒトは個体としての意識ほどには他から独立していない。腸内細菌、常在菌やミトコンドリアなど多数の他者の助けを借りて生きており、生物として独立はしていない。
生命の様式は、あえて形容するなら、生き物同氏が繋がった「生命の輪」とでも言うしかない。そしてウイルスもそのなかにいる。ウイルスは確かに細胞性生物とは少し異なっているが「生命の鼓動」を奏でる存在であり、生物進化に大きな彩りを添えてきた。ウイルスは生命の輪に無くてはならない重要な一員である。
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どちらかというと生物ではないという意見が主流なウイルスであるが、生物の進化はもちろん、さまざまな生命活動に密接に関わっており、それ自体も生命につながる存在であるからウイルスは生きているんだ!という主張と思われます。
なんとも言えないけど、ウイルスに関する様々な話がとても興味深く、この宇宙は何でこんな複雑な仕組みを矛盾なく作りあげたんだろうと空恐ろしくなります。
この世界は人間には解けない謎が多過ぎる。
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●ウイルスが、人間をはじめとした様々な生物を進化させてきたのだといった話は、それほど突飛なことではないのだと感じた。
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ウィルスは自己増殖しないので生命ではない、と言われているが、生命とは何かを改めてよく考えると、実はウィルスも生命ではないのか、と問いかける本。
蛾の幼虫に卵を産んで寄生する蜂(カリヤコマユバチ)の、寄生幼虫が寄主を巧に操るようすは、実はウィルスが関係しているとは、なんということか!
生命進化は伽藍(整理され主導された環境)かバザール(種々雑多なものが入り交じっている環境)かなんていうのも、興味深い内容であった。
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2019年6月13日 74冊目(6-4)
この度食あたりになったのをきっかけに。
原因となるウイルスや菌を特定することなく、対症療法となったが。
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帯に「成毛眞氏絶賛!」とある。見事に騙された。15ページに「その」が6ヶ、「それ」が4ヶ、「この」が1ヶ出てくる。15行に代名詞がてんこ盛りで講談社の編集者は無能と評価せざるを得ない。
https://sessendo.blogspot.com/2020/01/blog-post_45.html
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コロナウイルスの猛威に怯える今だからこそ、
あえて「ウイルスってそもそも何だっけ?」に
立ち戻ってみた。
ウイルスと共存し、ともに進化する動物など
生命とは?個とは?自明性を掘り崩される。
ベイエリンクや、バーバラ・マクリントックなど
優れた生物学者に共通する
どんなにとんでもない実験結果も常識で判断しない
姿勢なども示唆に富む。
また読みたい。
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新型コロナウィルスの感染騒ぎにつられて本書を読んだ。
肝心なウィルスの説明はなかなか難解だが、ウィルスとは何か、細菌との違いは何かが分かった気がする。特に私には序章と終章が大変味わい深かった。「ヒトとしての生」と「人としての生」なるほど。
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ウイルスとは何か、今まさに世の中を惨禍に巻き込んでいる新型コロナとは何か、なぜ生まれたのか、何者なのか、、よくわかる。
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昨今の状況から、ウィルスは人類にとって単なる敵と見てしまっていた。ところがそれはウィルスの1つの側面であり、胎盤の進化等人への恩恵もある事がわかった。また、最新の研究から生物と見做せるとの考えやその不思議な振舞いは興味深く思った。簡潔な良書。
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【「ウイルスは生きている」・・・と僕は思う】(文中より引用)
身近な存在でありながら一口では捉えがたい性質を持つウイルス。最新の研究を丁寧に紹介しながら、ウイルスとは、そして「生命」の定義とは何かについて思考を巡らせた作品。著者は、細胞構造機能学を専門とする中屋敷均。
知っているようで知らないウイルスに関する知識を得つつ、つくづく自然界って摩訶不思議だなと痛感させられる一冊。特に代謝に関する著者の俯瞰的な指摘には思わず唸らざるを得ませんでした。薄いですが一気読み間違いなしの作品です。
こういうご時世なので手にとってみましたが☆5つ
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面白かった。宇宙の始まりとは?と同じくらい、生物の始まりとは?って謎に満ちてるし生物と無生物の明確な区分ってあるの?って思った。生物種ヒトとしての私の体は単なる遺伝子の入れ物。でも人格を持つ人でもある。
胎児を攻撃しないように守る胎盤の働きを発現させるのが、過去に感染したウイルスの遺伝子によるもので、このウイルスがなければ、哺乳類は生まれなかった。
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面白い!
新型コロナウイルスがこうも人間を翻弄しているのはウイルス自身に何等かの意志があるのでは、という疑問から本書にたどり着いた。
ウイルスは生きているのか 生物か物質か
専門的な解説ではあるものの、分かりやすく、論点が整理されている。
少なからず、ウイルスは生きていると思った。
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専門的でありながら具体例が非常に分かりやすくて良い本。
自分が大学生の頃に読みたかった。
生物系の大学生、院生にぜひ読んで欲しい。
加えて話題のコロナウイルスについても
敵を知らず騒ぐのではなくまずは知ることも大切。
本書を読んで最も衝撃を受けたこと。
ウイルスは敵じゃないということ。
むしろ生物、そしてヒトの進化にも大きな影響を及ぼしている。
以下の具体例が特に素晴らしいと思った。
細胞は部屋、細胞膜が壁、タンパク質を作るリボソームは3Dプリンター、そして住人はDNA。
なんともわかりやすい。
守られた快適な部屋に住んで好きなもの作り放題の3Dプリンターを持ったDNAに対してウイルスはレインコートだけをまとった家なき子。
自己複製ができないから寄生して生きていくしかない。宿主を殺したら自分も死ぬ。
今回のコロナウイルスのように危険なウイルスというのは宿主との関係性がわからずに大暴れしている状態。
感染しても無症状の人がたくさんいるのはむしろウイルスとして正しい状態ということ。
むしろヘルペスウイルスなんかは人を守る働きまでしている。
また、インフルやコロナは手洗いの効果がある理由はエンベロープに包まれているからというのも初めて知った。脂質膜だから石鹸で溶ける。
つまり石鹸で洗わないと水でいくら洗っても意味がない。
ノロウイルスはエンベロープを持たないから手を洗っても意味がない。
へー!と思うことがたくさんで面白かった。