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この本が想定している主な読者層は、大学におけるキャリア支援担当教職員と、就職活動前の学生とある。個人的には、所属セクションが異なるため、いずれの属性にも当てはまらないが、紹介された知見のいくつかから貴重な示唆を得た。特に本書のコンセプトは興味深い。本書の構成は、「『研究知見にインスパイアされた確かな実践』を私たち自らが社会に提案し、それに関心をもつ多くの実践者に鑑賞・吟味していただき、さらに実践して」(p.12)もらうために練られたものであり、非常に挑戦的・意欲的だと感じた。このような志向での研究成果の発信は、実は経営学、教育学、その他社会科学分野でも実施されてもよい方法だろう。
本コンセプトを裏付ける論文と軽重様々な手順書群には、「現場」と呼ばれている一般の人々が無理なく入り込んでいけるテーマ設定やデザイン上の工夫が随所にある。また描かれたリアル社会人は、当然共感できることばかりで、既に社会で活躍している方にも、さりげなく振り返りの機会を提供している。例えば、自分自身や同僚をp.54で紹介された社会人カードの類型に分類し、チーム編成の見直しを考えたりすることもできる。p.58のロールモデルの図表も興味深く、もしなんとなく周囲にロールモデルが乏しいと感じていたとしたら、それはキャリアの中で中期にいるためではないか、と先行研究から考えたりすることもできる。また、大学においてアクティブ・ラーニングの手法を用いて教育活動を行う場合でも、学生が受身ではなく能動的に参加するための仕掛けの必要性(p.121)に指摘しており意義深い。
本書に示されたように、研究する側が実践者や現場に歩み寄ってきているのだから、実務を担当する側も、理論や研究を意識するベクトルも大切ではないか、と改めて感じた。また本書の企画・成功例を見て、「実践者が身を研究現場に投企して表現すること」も、研究と実践の関係を説明する方法の一つといえるのではないかとも思った。
このように書いたところで、想定された読者の周辺からのコメントになってしまったことに気付いた。アクティブ・トランジションを日々目の当たりにする現場にいる方々にとっては、上でふれることができなかったプラクティカルな内容が豊富であることを念のため補足しておく。
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専門職養成におけるトランジションは本書が示す内容とは多少違うだろうけど,働くことをいかに自分に引き寄せて考えるかは重要である。むしろ,専門職だからこそ切実だな。
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めっちゃ面白かった。
ワークショップ編と論文編、それぞれがちゃんと補完し合う関係になっていて、論文は難しい(というか論文特有の読みにくさがある)けどなるほど、と思う結果だし、それを活かしたワークショップは一回やってみたいなと思うものばかり。
キャリア教育に関わっている人は是非ご一読を。
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最終教育課程(ここでは大学が基本想定)の終了前から行われる就職活動から、内定・入社前フォローアップ、入社後を通じて、理論的・体系的な対応をすることで不要に離職率が高まることを回避しましょう(有益な学びの期間として活かしましょう)。
...といった内容、かな。
自分は企業に勤める者であり、高校生の子供がおり、新卒採用に関わった経験もあるので関心があり読んでみた。
"自分の子供に対して"という点では特に実感はわかず。
採用時に、内定後・入社前フォローに関しては参考になったし、今後に機会が有れば具体的に活用したいと思った。
ただ、残念ながら自分が勤務する企業は小さく、
新卒者は毎年採用するとは限らないし、人数も多くない。
企業側で出来るワークショップ、という点では、参考にしようが無いかな、と。
執筆者陣が全て東大の准教授・博士課程・研究者で占められている。
統計の結果数値や、学生側から得られた声など、どの程度バイアスが掛かっているんだろう?
ワークは全て東大が舞台なのかな?などと考えると、どうにも他人事のように感じてしまう。
読み難くは無いが、内容的に"楽しい"書籍ではないのは当然か。