紙の本
なんだか、語り口に無理を感じてしまうんですが、ここまで絵本が簡単に生まれてくるというのを読まされると、ただただウラヤマシイ・・・
2005/07/21 20:01
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
なぜか、五味太郎の絵本を子供たちに読んで聞かせた記憶がありません。ABCや、あいうえおの本くらいはきっと手にしているはずなのに。五味の絵が好きなのは昔も今も変わらないというのですから、謎です。
それにしてもカバーを飾るイラスト群の可愛らしいこと、煙草大嫌いの私には、本の裏に載っている灰皿さえ、五味の絵であれば許せます。
しかも、です。本を開けば、平均して一頁に一枚は挿絵というか、写真やコラージュ、オブジェが載っていて、それがなんとも愛嬌があります。動物の絵、ダンボールを引きちぎってそれにチャチャっと線を入れたようなもの、針金をクルクルって巻いたようなものなど、もし売っていたら買いたくなるようなもの満載。写真に関しては見開きや、一頁を使ったものが多くて、それが如何にもデザインの現場みたいで好感度アップです。
その写真が楽しいのが、6Bを中心とした鉛筆たちが何とも表情豊な20、21頁。紙が綺麗に分類・ストックされている様子が、五味の姿勢を教えてくれる46、47頁。五味の著作を海外の出版物も含めすべて見ることができる圧巻の115〜126頁。カラーインクが綺麗に棚に収められているのが何だか折り目正しい工場を思わせる162、163頁。五味の著作が綺麗に棚に並ぶのを見開きで楽しめる170、171頁。
でも、五味の創作を秘密を教えてくれるのは、やはり文章。本の内容は大きく三つのChapterに分かれ、それがさらに細かくなっています。
たとえばChapter 1 絵本を作る、には「絵本を作るのってかんたんさ」「「パクリ」という手もある」「たとえば絵具」。Chapter 2 絵本が生まれる、には「突然考えつく」「言葉を素材・画材として使う」「絵本で触れてみる」。Chapter 3 絵本と暮らす、には「読書 宝島 泉鏡花 Ray Bradbury 芭蕉 歌舞伎」「読者 印税 おともだち 無視 e-mail 産業」「夜 ひとり 作業 刺激的 頂点 and then・・・」などあって、最後に五味太郎全書籍リストがつきます。
五味は1945年生まれというから、私の大好きな画家小杉小二郎と同い年。年齢も同じなら、描かれるものの愛らしさというのも、描法はまるで違うけれど、どこか似通っています。生き方だってそうかもしれません。煩わしい人間関係は嫌いで、といって人間嫌いではない。嫌な人からは自然と遠ざかり、好きなものでも、あくまで自然のままに付き合う。決して「もっと知ろう」などとはしないで、でも自然に近しくなることは大歓迎。
もしかすると二人とも道具好きかもしれません。とくに、オブジェを見ているとそんな気がします。こういう比較はご当人たちには迷惑なことかもしれないですが、好きな二人の作品やアトリエの表情が、どことなく似通っているのを見ると、こんなことを書いてみたくなります。
五味の話に戻りましょう。この本の特長はやはり、特有の語り。たとえば「色と形、これはもう絵本の素材としてはたっぷりさ」という一文。おしまいの「・・・さ」というのは、この本全編を通じて出てきますが、特にChapter2あたりからその比重が増してきて、あれ、前の文章、こんなだった?と思うほど、違和感を覚えます。イメージする五味と違うな、無理してこんな語り口にしなくてもいいのに、と思います。でも、語られる内容は、肯くことばかり。羨ましい・・・
それと、巻末の夥しい作品リスト。五味の作品の多くが海外で翻訳される、と知って我がことのように嬉しくなります。原作のある絵本は作りたくない、だから全部、創作というのを読んで頭が下がるだけ。紙の話、カラーインクのこと、編集者との関係や、はなしの生まれる様子、どれを読んでも、夢が一杯。全部読みたくなりました。それにしても可愛いイラストやスケッチ、オブジェ。正直、欲しい・・・
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絵本作家、五味さんの本。もの凄い数の絵本を創作されたカレの頭のなかというか、制作の姿勢がうかがえる。けっこう適当な感じでよい。面白い。かたっくるしくない。
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子どものころ、絵心など皆無だったという五味太郎氏。それでもやっぱり「それが突然、描くんだね」。理屈ナシにおもしろい絵本をつくる人の、絵本に対する理屈ヌキの思い。
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五味太郎は大好きです。 テーマが「絵本の翻訳」なので、絵本について知るのにいいかと思って読んでみました。ストーリーのでき方やら絵の描き方(というか画材とか紙とかのこと)やらいろいろ載ってて面白かったんですが…絵本の翻訳の資料としては微妙でしたorz 純粋に絵本作家目指す方にはとてもいいと思いますよ★ ...2007.01.26
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絵本「きんぎょがにげた」などで有名な五味さんのエッセイです。
口語体の語り口調で、つらつらと書かれているのだけど、五味さんという人の魅力が端々に感じ取れます。絵本への思い、取り組み方など、題名どおりの内容だけど、五味さんの思想と一緒に雰囲気みたいなものが、分かりやすく伝わってきます。各章ごとのページデザインやイラスト、写真など魅力がいっぱいです。これもまた「絵本」なのかなぁと感じました。
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五味さんが語る、絵本の作り方、アイディアの出し方、自伝、2004年までの作品リスト。五味さんのいろんな作品を読んだファンならば、作品が生まれてくた裏話が聞けて面白いかも。やっぱり五味さんはエッセイよりも絵本の方が伝わりやすいかな。
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日本の絵本作家といえば最初にこの人が頭に浮かびます。作者の絵本を作ることに対するこだわり、モノを作る人だったらきっと参考になると思います。
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子どものころから。合わねえな、と感じたら距離を取るのさ。合うなと思ったら放っておくの。かんたんなのよ。・・・とは五味さんのやり方。
潔いよね!私もやってみよ!
社会的な問題はほぼ全て自然現象とおなじものだ・・って悟る う〜んなかなかやなあ
子どもへの感覚も良くわかる!生き方も。
私は朝型だけど。
早朝、世界を独り占め。いっこの生き物として、いろんな生物と朝の時間、すれ違うのが至福の時間。
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五味さん、子供の頃から好きでとてもお世話になりました。
大人になった今、その考え方や生き方にとても憧れますし、「わかる〜!」と思ってしまうところも多々あり…、捻くれ者と言われる私は仲間を見つけた感覚で嬉しかったです。
心が軽くなり、励まされました。
くだけた五味さんらしい文体も温かいです。
子供の頃に惹かれるものには、やはり何かあるんだなと思いました。
いい出会いをしました。
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楽しくて楽だから絵本を作りつづけてる。
○○に影響を受けて〜とかそういうのいらないんだな、となにかストンと腑におちる潔い生き様感。
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絵本作家から五味太郎をはずすわけにはいかない。絵本作家が漫画家のようにアシスタントをおく話はあまり聞かないが五味太郎さんは1人で作られているようです。この本は書くと言うより喋っているとの感じがしましたよ。2005年発行ですから五味さん60歳の時の思いでしょうか。編集者との関係も割とあっさりとしてあるようで、我が道を行くの感有り。それにしても五味さんの絵本、読んでない方が多いのだから、参りました。
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五味太郎さんがどんなことを考えながら、あの自由でおもしろい本をたくさん産み出したのかがわかる作品。「楽しくやるってことは楽にやるということさ。生まれつき得意なことをやるのが楽なので、それが楽しいということね。」五味太郎さんが楽しみながら作った本だから、読んでいて楽しくなっちゃうんだろうなー
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絵本を作ってみたいと思って、読み始めました。
かんたんさ。ってたくさん書いてあって、作れそうな気がしてきました。
語り口、考え方、本当に最高に面白い本です。
「幼い人々をとにかく導きたいと思う大人の存在に嫌悪感があるのさ。」
という言葉が印象に残りました。
いわゆるためになる絵本より、「なにこれ?!笑」っていう絵本を作りたいなと思います。
私の子どもは「みんなうんち」が大好きです。
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五味さんがコーヒー飲みながら、目の前でしゃべっているみたいな感じ。東京弁でさ!
「生まれつきちょっと文句をつけるクセがあるのは認めるけれど」
だってさ!
いちばん興味あるところはJAZZ。いわゆるMODERN JAZZに関しての記述。自分ではできないことを絵本にしたんだって。
ジョンコルトレーン、デクスター・ゴードン、マイルス・ディビス、マッコイ・タイナー、バド・パウエル、アート・ブレイキー、チャーリー・ミンガスなんて人々の音楽が好きみたい。
NYのビレッジ・バンガードでフレディ・ハバードに「君のためにもう一曲やろう」って言われるぐらいの真剣なリスナーになった話など。
五味さんはとにかく、コーヒーとジャズの匂いのする人。
絵本だって、それが滲みでちゃうんだ。
「楽しくやるってことは楽にやるということさ。生まれつき得意なことをやるのが楽なので、それが楽しいということね。」
なんてことが、さらっと言えちゃうんだもんね。すごいや!
この本は何回も何回も読んで楽しめる本かもしれん。