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「知ってしまったことは、簡単に削除できません。人間の不便な機能が元凶といえます」
「私、けっこう忘れてしまうんですけれど」
「忘れてしまったことを、外部に証明ができませんからね」
『本当に、自分の躰がここにあるという現実が、彼女にとって最大の足枷だった。』
『躰はときどき故障する。それに歳を取って劣化する。死んだらゲームオーバーなのだ。』
『壁には、なにもない。時計もカレンダも写真をポスタも。それに、家具もない。キッチンにいくらかの道具があったけれど、それも大したものではない。寝室にも、ベッドと布団があるだけ。クロゼットには、もう二度と着ないという衣料品ばかりだった。持っていきたいものが一つもない。自分の躰でさえ、ここに残していきたいほどだった。』
『たとえば、子供の頃から持っていたフィギュアがあったけれど、いつだったか形状をスキャンしてデータを取り込んだ。それをいつでも見られるし、動かせるし、表情を変えたり、成長させたりすることもできるようになった。そうなれば、薄汚れた原型はもう屍でしかない。物体は劣化し、長く存在し続けることができないのだ。彼女は躊躇なく、それを捨てることができた。結局は、すべてがそうなのだ。』
『今から行く場所は、スイスだ。否、それはスイスという地名、すなわちデータ名でしかない。国名なんて、インデックスに過ぎない。この世の固有名詞は、すべてフォルダ名なのだ。』
『生きていること自体が、単なる摩擦ではないのか。なにも生み出していない。ただ、熱を発しただけだ。火花を馬鹿にするなら、自分の生き方だって同じレベルではないのか。』
『でも、気づいたんだけれど、私たちって、理由のないものを受け入れない文化に染まっているのよ。』
「爆弾が爆発した時、そこにいる人が死にますね ー それは、誰のせいなのでしょう? 爆弾を作った人、爆弾を仕掛けた人、爆弾を仕掛けろと言った人、それとも、そういった人間を排除できなかった人、そんな人間を育てた人…。いくらでも理由が見つけられます。罪はどこまでも、連鎖する」
「島田さんは、甘いものはお好きですか?」
「好きと言ったら、出してくれるの?」
「いえ、そういうわけではありませんが…」
「貴女は、ジンバブエは好き?」
「え、どうしてですか?」
「あと、私はね、どちらかというと、サンタモニカの方が好き」
『できるだけ強く、大きいものの傘下に入るのが良い。この点では、自分も歳をとったな、と思う。若いときには、そうではなかった。正しいもの、自分が好きなものに寄り添おうと考えていたはず。』
「そうですね ー お互いが正当防衛で引き金をひくことは、たいていの戦争のパターンです」
「ありがとうございます。お待ちしておりました。」
「どうされたの? 悲しいのですか?」
「そうではありません。嬉しいのです。望みが叶いました。」
「望み? それは何?」
「生きているうちに、博士にもう一度だけ、お会いしたかった」
「生きている? それは何?」
「望みも、生きていることも…、わかりません」
「ええ、わからないわ」
『美しく。
綺麗。
人形のように。
人間のように。』
「その…、命とは何ですか?」
「そう。そのとおりです。その問いが、すなわち命なの」
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Gシリーズ。数時間まえ島田に接触してきた男が、電車内で殺される。
島田は、政府に協力し技術お披露目。
繋がってきた!!
C0293
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再読!1度目の感想でどんなこと書いてあったんだろうって思ったけど、まさにそう!同じ!
とにかく読んでる最中のワクワク感がたまらない。
飛行機事故は四季が直接関わってるわけじゃないと良いなあって少し思う。
金子君はどうしてそこまでお姉さんの死を追いかけてるのだろう?もちろん理不尽な気持ちはあるだろうけど、何か語られていないことがあるのかな?
島田さんの遺体はルナティックシティにあるの?
アミラとかデボラとかの並びに元島田さんがいたりしないのかなー?
以下は1度目の感想
すごい!ものすごい面白かった!
けどこの作品は森さんのいままでの作品が好きで追っかけてきてる人にしかわからないのではないだろうか?
金さんもカイさんも納得。
森作品キャラクタ事件年表みたいなの誰が作って〜。
ああ、次の作品も早く読みたいよう(*☻-☻*)
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Gシリーズ第10弾(?)
登場人物のテイストが変わって懐かしいキャラクタが続々と。繋がりも広がってる印象。
次作、次々作とタイトル末尾が同じなのでラストは今回と同じような感じになるのかなとか。
にしても島田さん元気だなぁ
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アルファベットではなく、ギリシャ文字の「カイ」で「カイの悲劇」と読みます。Gシリーズの10作目であり、Gシリーズ最終章3部作の始まりの1巻になるようです。
確かに内容は、これから物語の終息に向けた加速度を感じるものでした。(きっと、収束はしないだろうけど)
相変わらず、謎解きはど~でもいい感じで流されます。「そりゃ、解決せんわなぁ」
これは、今まで森博嗣氏の一連の作品を読んで来た人たちへの物語なのかもしれません。実際、震えてる人が多数いるようです。
『たとえば、何故こんな無駄があるのか、とびっくりするようなストラクチャを見たことがあった。(…中略…)その変更も見越して作られている。新たなデバイスにも対応している。ハードの進化を予測していたかのように、適切なエリアが割り当てられている。』
この一節が、まぁ、著者のしてやったり感じゃないかと。
作中明かされる登場人物の正体は予想通りではあったのですが、そうすると時系列をどう整理すればいいのか、という新たな謎に悩まされる結果に。
これからの最終章、楽しみです。(いつ刊行されるのやら…)
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※いつも以上に本編に関係ないことを長々と語りつくしている上に、某古典ミステリ(お察し)のオチにも若干触れています。ネタバレは控えているつもりですが、勘のいい方にはピンと来てしまうかもしれません。ご注意下さい。
ブクログさんの「新刊お知らせメール」機能には、大分お世話になっています(唐突)。
お気に入りの作家名を登録しておけば、発売日の前日にメールでお知らせしてくれるなんて…何て痒いところに手の届いたサービスなのあざす…
というわけで、本作「χの悲劇」も、ご多分に漏れずブクログメール通知で発売を知ったわけですが。
メールの表題がチラッと見えた時にまず思ったのは、
「まーたクィーンの新訳 OR 新装版か…」
でした。
「最近ハヤカワさんから国名シリーズの新訳出てたけど、その流れかしらね…。作家アリスのドラマ化のお陰で、クィーンもフィーチャーされてんのかも…」
と、ボンヤリ思いながらメール本文開いたら。ら。
「■『χの悲劇』
2016-05-07
著者: 森博嗣 」
…………………………………あれ?????
ここからの私の動きは速かった。
急ぎの案件に手を付けるより速かった←
リンク先をクリックし、
ブクログさんの誤表記でないことを確認(失礼)。
Amazonさん始め、その他のサイトで、装丁を確認&内容紹介を通読しました。
間違いなく「森博嗣の書いたXの悲劇」が発売されることがようやく腑に落ちた私は、、、、、、、、
読む前からこの作品が傑作であることを確信したのです(後出し感)。
何てったって、このタイトルですよ。
そして、内容紹介には、「動くトラムの中で発生した殺人事件」の文言ですよ。
アメリカが生んだミステリーの巨匠・エラリー・クィーンの出世作へのオマージュ溢れる意欲作に決まっとろーが!!!!!(嬉)
というわけで。
読む前から期待値を半端なく高く設定するという、作者泣かせのミステリスキーの宿業が炸裂したわけなんですが。
期待値のK点、易々と超えられた………………………(感涙)。
触れたいことが多すぎるので、過剰な形容を自制する為にも以下、箇条書きで簡単に感想を。
【森ミスファンのツボ】
・森博嗣のデビュー作「すべてはFになる」で、チョイ役として出演したプログラマ・島田文子を主人公に設定=ふむふむ。
・真賀田四季の最初の事件とも言うべき「飛行機事故」に端を発する殺人事件=ほうほう。
・真賀田博士に限りなく近い場所&分野で仕事をしていた女性のモノローグ=最高。
・天才と天才の会話=最高に痺れた。
・最後の最後で明かされるある人物の名前=最高の極みありあまる。
続いて【エラリー・クィーンのXの悲劇を読んでるミステリスキーのツボ】
・Xの悲劇と同じ殺人現場=最高。
・Xの悲劇と同じ殺害方法=最高。
・Xの悲劇で使用さ���たトリックを匂わせるセリフ&地の文=ネタバレやー!!!!←←
とにかく、森ミステリィスキー&ミステリスキーのツボを、しっかりと、過剰なまでに、押さえた作品であります。
森先生、きっとドヤ顔で本作を執筆されたんだろうなあと想像いたします(どうでもいい)。
講談社タイガから出ている最新シリーズと言い本作と言い、ここに来て森ミステリィが真賀田四季を軸に加速度的に収束を早めている印象です。
シリーズを未読の方には不親切&それほど楽しめない作品かもしれませんが、犀川先生&萌絵ちゃんとの衝撃的な出会いと、真賀田四季の語る言葉に魅せられた私にとっては、最高にクールな作品でした。
森作品を読んで、こんなにエキサイトできる日がまた来ようとは。。。。。感涙!!!
次作、Ψとωへの期待が、否が応でも高まります!!!本家の傾向から考えて、次の事件は密室モノで、犯人は××かな!!!←←
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やはり、森博嗣は驚きを与えてくれる。文章でもって、それを行う彼は素晴らしい。
読み終わって、物語に触れることの幸せを感じた。
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おもしろい!!!
ここに来て、大きな物語が進みだした感スゴイ!
懐かしい名前がたくさん出てきて、ワクワクしながら、エピローグに驚きを隠せないまま、一気に読了。
とにかく、次作が待ち遠しい。
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久々のGシリーズ.読後感がスゴイ.森博嗣さんの本をずっと読んでいた人にはたまらない仕掛けがいっぱい.この本から純粋に読むとどんな感じなのかは,正直わからない.
確か,どこかのインタビューで小説を書く際に「中毒性」を意識して書いていると言われていたように思うけれど,これはその中毒性から来る快楽をしっかりと含んでいる.
すべてがFになるからの世界がずっと続いているところがまたスゴイ.新しい講談社の文庫のシリーズとの関連性がありそうでなさそうで,そんな想像力をかき立てるようなところがはまるんだろうなぁと.
そして,本文を読んでいればわかるけれど,最後の数行でしっかりとやられた感がスゴイ.これまでのGシリーズとはちょっと毛色は違うけれど,面白かった.
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ε飛ばしたけど、楽しく読めた。
繋がっていく感覚が快感。
1冊読むと今までのシリーズ全部読み返したくなる。
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Gシリーズなのに、S&Mシリーズの設定に関わる話だったり、スーパーハッカー(今回の文脈ではクラッカーかも)のサーバーハッキングの描写がとてもとても胸熱な展開だった。
みんな歳とったのねというのと、今後どうなるかがとても気になります。
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本格ミステリを崇拝しているわけでもない森さんから、まさかの「Xの悲劇」。タイトルからしてすでに掴みが完璧な本書は、主人公が控えめながら時を様々超えて、Gシリーズの最終巻に正しくふさわしい一冊である。
ただタイトルはあくまで今までに法りギリシア文字のχであり、読みは「カイノヒゲキ」だ。いや、念のために……。
森さんの著作を今まで読んで来た方には、もう何も説明は必要ない。何を書くにもすべてがネタバレになるような気がするのでレビューにもならず申し訳ない。メインが島田文子であることが何より不可思議で、でも素晴らしかった。
講談社タイガで始まっている新シリーズを読んでいる方には、さらに楽しみというか、深みが広がったのではと思う。私はそちらを先に読んでいたのだが、本書を読み終えてなんとも云えない、畏怖のようなものさえ湧き上がった。『四季』を読んだ時のような、一時的な感動とは違う。やっぱり森博嗣はすごい。誰がなんと云おうと、この人の世界が、文章が、何所までも広がって行くその思考、すべてが好きだ、と強く思う。
失礼ながらたくさんの人に読んで欲しい、とは思わない。思わず独り占めしたくなるような幸せをいつもありがとうございます。森さんの新刊が発売したときは、朝から買いに行き、読むわけでもなくただ持ち歩く。持っているだけでワクワクする。そして家に帰ってからひとりじっくりと読む。この幸せがまだあと少し楽しめるなんて、贅沢だ。
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ネタバレせずにはいられない……!!1
ネタバレの感想は好きではないので、ネタバレチェック入れなくて済むように普段は気を付けているのです。
んが。
これ言ってしまったらもうネタバレてしまうのですよ!!1
Gシリーズだから、海月くんいつ出てくるんだろういつ出てくるんだろう。
来ないな。来ないな。って思ってたのですよーー!!!1
「う、うわーーーえ?え?え、えええええ!!うわーーーーーええっ?ええー」
と、言葉にならない驚きと共にお勧めして頂いたのですが
タイトルからして、「X」だって思うじゃないのですか!
ミステリで悲劇でXと来れば……来れば……!!1
近未来感溢れる香港でトラム内殺人。
しかも毒吹き矢。
こちらが痺れてしまうかと思ったのです。
主人公は島田女史。
名前だけ聞いてもピンと来なかったのですが、全ての元凶「すべてが~」や「有限と微小~」にも登場していたとか。「キウイγ」には居たの覚えてるような……。
若き日の真賀田博士との思い出や、まだ島の研究所に居た頃のお話や。懐かしいけどとっても新鮮。
こうやって関係があった人から語られる他の登場人物って言うのは、やっぱりニヤニヤしてしまうものなのですよね。
長いシリーズや、最近読んだのだと上遠野浩平の「彼方に竜がいるならば」とか。
もうね、途中で登場する雇われハッカー達が、誰だろう、誰だろうwkwkって、気になってメイドも誰だろう……って考えてたのですけど、飛行機事故についての告白で一気に
「う、うわーーーえ?え?え、えええええ!!うわーーーーーええっ?ええー」なのですよね!!1なるのですよね!!11
途中の素子少佐的な潜入もスピード感があって引き込まれたのですけど、後半の掴みが本当に強い。
お姉さんが居る人を思い出してみてもあやふやで、あれ?古美術やってたお姉さんが誰か居たような……あれ?けど、それって飛行機事故関係ないような……などなど。結局wikiで調べ直したのでした。
お前かああああああああああああああああああ!!1そして奥さんはあの子かあああああああああああ!!1
そこかあああああああ!!1と。繋がりはそこにあったのですか!と。
後はもう気になって一気に皆読んでしまったはず。
途中で休憩できなかったのです。
そして明かされる時系列で言うといつのどの部分なのか。
この後続くであろうシリーズはどうなってしまうのかと言う不安も多少残るのですが、何て言うか、とてもドラマチックだったのです。
森博嗣に関しては、最初は科学者。次に感じたのは宗教家。その次は文学者。その次は……と読む度にイメージが変わっていくのですけど
この本を読んで、やっぱり森博嗣って詩人も行けるんじゃ……!!1
リルケの詩集とか実は好きなんじゃ……!!1いえ、無いのでしょうけどね。
島田さんの形に出来ないキモチが読了後にじんわり染み込む感じだったのでした。
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あの夏、真賀田研究所でプログラマとして働いていた島田文子は、いくつかの職を経て、香港を拠点とする会社に籍を置いていた。人工知能に関するエキシビションの初日、島田は遠田長通という男に以前、愛知で起きた飛行機事故に関する質問をされる。トラムという動く密室で起きる殺人。その背後に感じられる陰謀。静かだった島田の生活が、その日を機に大きく動き始める。Gシリーズの転換点。後期三部作開幕!
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"シリーズを通して読んできた"という前提ありきの評価ではあるものの、Gシリーズ最高傑作であるのは間違いない本作。
というか、このクロニクルの一つの到達点として、個人的には森博嗣作品の最高傑作に挙げたい一冊だった。
言葉のすべてが美しく、それでいて詩的になりすぎず。エンターテイメント小説としての完成度も高い。
事件の犯人もが"コード"であるというのも、「すべてがFになる」から始まった物語の到達点としてすごく気持ち良い落とし所。
また、Vシリーズの大きな仕掛けにも通じる、「そうだったのか!」的な気持ちよさもあり。
すっかり惰性で読んでいた感のあるGシリーズですが、ここか!ここへつなげるための布石だったのか!
唯一欠点があるとすれば、またしても「すべてがFになる」から読み返したくなってしまうという点。
ある意味、とてつもなく凶悪な時間泥棒になってしまうかもしれないので要注意です!