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最後の著者の言葉(あとがきでなく本文)に尽きる。宗教においても多様性があることがいかに大事か。
もちろん、それぞれの宗教を真剣に信じ、構築する人たちがいたことが前提だが。
仏教、一神教の記述が手厚いが、ヴェーダ、儒教、神道、琉球、アイヌ、ソクラテス、エッダ(北欧神話)なども取り上げており、とても興味深い。
宗教教典という広大な分野を一書になした著者に脱帽だ。
・金剛般若経「応無所住而生其心」を「大麦小麦二升五合」と覚えて悟った。空
・縁起を相依相関関係として捉えたのは、龍樹。それまでは縁起は因果(一方向)だった。
・古代人は、一般に歴史上の実在と神話的フィクションを区別しない。
・他にも移民の国はたくさんあるのに、アメリカだけは自意識が強く建国物語をもっている。
・イエスと同じく貴人が不思議な生まれ方をするという伝説は世界中にどこにでもある。
・イエスが一番嫌ったのは宗教的偽善者である。
・規則崇拝は副産物として偽善者を生むのが常である。
・宗教的な人格では、自分の自我と自分ではない超越的な何ものかが、自分の中で二つの層をなすことはよくある。
・イスラムは、この時代としては例外的に女性に高い地位を与えた。算術的に平等ではないが。
・近代は両義的。中世的な身分秩序を破壊する一報で、植民地主義や競争原理を通じて差別や格差はどんどん助長してきた。