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WW2、ドイツで多くの本が焚書され、アメリカでは兵へ書籍を届ける兵隊文庫の活動が行われました。
ヒトラーによる思想戦に対抗する武器が、本だったのです。
士気の低下を防ぎ、精神を健全に保つのに役立つとされました。
我々の周りは平和になり本以外の楽しみも溢れていますが、今も厳しい戦争をしている地域では本一冊を切望する人々がいるでしょう。
本の持つ力を考えさせられる一冊。
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ナチスドイツは1億の書物を焼いたが、連合軍は1億2千万の書物を戦争に持ち込んだけど
という題目から始まるノンフィクション作品。
舞台は1940年代のアメリカ軍。
題字の通り、ナチスドイツは軍事的侵攻のみならず文化を侵す思想戦も繰り広げられており、それによって生じたプロパガンダも一因となり、フランスも破れてしまった。
それに対抗するため、アメリカの図書館司書を始め、市井の人々、そして軍、国家が立ち上がったというホントのお話。
思想戦対策と言うこと以上に兵士からは貴重な癒しとして歓迎されていたようです。
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第二次世界大戦時、アメリカが行った戦地の兵士へ図書を送った活動「国家防衛図書活動」の詳細をレポートしたノンフィクション。
その事実の興味深さ、深遠な意図と効果に驚かされるが、史実を淡々と綴っただけで、やや面白味に欠ける。洋の書物にありがちな、事実をひとつひとつ積み上げて全体論を構成する、学術論文的な内容。
ナチス・ドイツが焚書を行うシーンで物語はスタートする。ヒトラーの命で一億冊を超える書物を葬り去ったナチスに対して、アメリカは、戦地の兵隊にpaperbackを送り続け、その数はナチスが燃やした冊数を超える一億四千万冊だったというのが大筋。
その国家防衛図書活動がいかに立ち上がり、市民が賛同、やがて軍の正式プロジェクトになり、出版界も協力し行軍携行に適したpaperback“兵隊文庫”が生み出されていく経緯が史実を積み上げ記される。さらには、そうして戦場に送られた書物によって、兵士たちがいかに慰められたかというお話だ。
面白いのは、焚書を行ったドイツ、いやヒトラーも、兵隊文庫を戦場に送り続けたアメリカも書物の力を理解していたという点か。「本は武器」と考えた時、どういう行動にでるか、その裏表を対比させて描き出したのは巧いところだろう。
非ドイツ、非ナチスな書物、思想を封じ込めようとしたナチス、書物の力を信じ兵士の士気を高める手段に利用したアメリカ、まるで寓話の『北風と太陽』のような話だ。
とは言え、アメリカの「兵隊文庫」にしても、それに採用すべき書、すべきでない書の選別は行われていたというから、両者とも根の所は同じというのも、ちょっと暗澹とするところか(しかしアメリカは、それが思想統制にあたるとし、出版界が選別を止めさせるという健全さがあったとは記されている。ま、アメリカ人の著者だからね)。
戦地で兵隊文庫を回し読む様子、待ちきれず終わったページから破いて渡していったというエピソード。連合軍内で、米軍のこの兵隊文庫を羨ましがる英軍兵士の様子も可笑しい。
さらには、徴兵され戦地に赴くまで書物など手にしなかった兵士が、戦場の過酷さの逃避行先として書物を手にするようになり、知識を得て、その後、復員後は就職の一助にもなるという効果のほども丁寧にフォローして調べ上げているところは本書のすごいところ。
「兵隊文庫」は戦場での余暇以外に、兵士の教養を磨き、戦後の学習意欲や職業選択の幅を広げ社会復帰の助けになったとは、あまりの美談に鼻白むところもなきにしもあらずだが、ここは純粋に読書のすばらしさ、書物の尊さ、知識を得ることの大切さを「兵隊文庫」を通して示していると理解しておこう。
なにより、書物の役割として、戦場で兵士の精神状態の平衡を保ったという点は大きい。この証言が印象深い。
「兵士は人を殺す訓練を受け、前線では筆舌に尽くしがたいほど残忍な行為を目の当たりにした。しかし、「私たちの軍の兵士は、本を読むという行為をしているのだから、(まだ)人間なのだ、と思うことができました。」
ならば、と考える。
本を読んで人間性を取り戻せるなら、この「兵隊文庫」の活動は���各国、各軍がそれぞれに行うのでなく、国連が戦争当事国の両軍に対して書物を送り付け、殺し合いの愚かさ、浅はかさを気付かせるようにするべき行動じゃないのかな?
「兵隊文庫」を、アメリカだけにさせておく理由はない。
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書籍が持つ力を実感させられる話し。娯楽としての読書はもちろんよく分かるけど、戦場でそれほど本が読まれていたとは知らなかった。それをさせたアメリカってすごいなあ。旧日本軍にはそんな発想は微塵もなかったろうなあ。
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第二次世界大戦中、戦地で兵役についたアメリカ軍兵士たちのもとへ届けられたのは、水や食料、武器だけではありません。
娯楽が乏しい戦場において、多くの兵士が欲しがったのは「兵隊文庫」と呼ばれる小さな本でした。
1941年、図書館員たちが中心となり、兵士たちへ本を届けるプロジェクトが始まります。
このプロジェクトがきっかけとなり、出版社が中心となって「兵隊文庫」の出版へとつながっていきます。
「兵隊文庫」は、戦場で過酷な生活を余儀なくされる若い兵士たちの数少ない娯楽として、大変な人気を集めました。
ズボンのポケットに入れておくことができるサイズで、軽く、薄く、持ち運びやすい本。
雨風にさらされる戦場で何度も何度も読み返すことのできる本を作り上げることを目指し、出版社は改良を重ねます。
フィクションを中心とした様々なジャンルの「兵隊文庫」が出版され、兵士たちの心の支えとなりました。
著者は「兵隊文庫」に収録された作品の著者に宛てて送られた手紙などから、戦場で読書を楽しむ兵士たちの生の声を拾い上げ、辛く苦しい戦場での生活において、書物の世界に没入することがいかに精神的な支えになったかを描き出しています。
極限の状態に置かれた若者たちが「兵隊文庫」に魅了されていく様子には、人間性を維持することに対して書物が果たす役割について考えさせられます。
「兵隊文庫」を支えとし、戦場を生き延びた兵士たちの敵が誰だったのかということを考えると、また別の角度から読むことができる作品でもあります。
いわゆる典型的な「学術書」ではありませんが、一次史料なども丹念に精査されており、巻末の参考文献リストと相まって非常に読み応えがあるものとなっています。
(ラーニング・アドバイザー/図情 KOMINAMI)
▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1694080
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一億冊超を燃やしたナチス・ドイツ、かたや一億四千万冊を兵士に送ったアメリカ。読書とはとても分かり易い人間的行為である。
巻末のリストが大変興味深い。
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ナチスがヒットラーの思想に合わない本を燃やすというショッキングなエピソードから始まる。
1930年代に行われたこの事件は、レイ・ブラッドベリの「華氏456」を想起させた。(これが書かれたのは1953年)実際、本を守ろうとした人々が多くいた。守り通せた本もあったが、空襲で失われた本もあった。
一億冊ともいわれるこの焚書に対し、アメリカは戦地の兵たちにそれを上回る本を送り続けた。(ペーパーバック版は、兵士たちが持ち歩きやすいようにと生まれたもの)本を読むことで、戦地の兵士たちは「自分が人間でいられる」と感じたという。
戦争の知らなかった一面を知ることができた。
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すごく興味深かった。戦争で本が果たした役割なんて考えたこともなかったし、「書物大虐殺(ビブリオコースト)」「戦勝図書運動」「兵隊文庫」なんて言葉も恥ずかしながら初めて知った。ペーパーバックが戦争を機にメジャーになったということも。戦勝図書運動のくだりはリアル図書館戦争。ナチス・ドイツが良化特務機関で、それから本を守ろうとする図書館員たちの戦い。でもただ表現の自由、思想の自由を守るというのでなく、それが戦争に勝つための武器になるというところに、何とも言えない気持ちになった。
原題「When Books Went to War:The Stories That Helped Us Win World WarⅡ」。邦題だと戦地で本が兵隊さんの心の支えになった…みたいな感動的な感じだけど、原題だと本が「武器」として扱われていたことが直球で伝わってくる。
確か「きけわだつみの声」で「目が腐るほど本が読みたい」みたいな言葉があった気がするのだけれど、本がもたらすものというか、心の中の自由や安らぎって大事なんだな…と日米両方の兵隊さんと本とのかかわりに学んで複雑な気持ち。今も戦地で本を心の支えにしている人がいるのだろうな…。
とにかく貴重な事実に光を当てたノンフィクションだと思う。
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「アウシュビッツの図書係」つながりで入手。
言論の統制のために多くの本を焼き払ったドイツに対し自由の国アメリカは史上最大の図書作戦で一億余冊の本を兵士に提供した。
本書では物資の不足や必要性の議論のなか粉骨砕身で奮闘した図書館員の活躍と戦地の兵士達に計り知れない力を与えた本の偉大さを具に描く。
しかし見方を変えればこれは一種のプロパガンダでありペーパーバックをポケットに欧州、太平洋、朝鮮、ベトナム…そして今もなお戦地へと送り込まれる兵士を思うといかに美辞を並べ立ててもこの本の持つ負の側面しか見えて来ない。
大きく重い本を読める時代こそ平和なのである
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日本はどうだったのかな。
後書きにちらっと書いてあったけど、
日本はどうだったか知りたくなった。
アメリカ兵の何%が読書していたのかな。
暇だったということが一番びっくりした。
読書する時間があったのか。
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兵隊文庫を作って戦地の兵士達に届けるというこのプロジェクト,こういうことを考えまた実行するところがアメリカの強さだと思った.全く知らなかったことだが,この中でペーパーブックスの躍進があり,また政治的にも検閲の問題にも対処した.特に,戦時図書審議会とタフト上院議員との第5編における攻防にははらはらした.
それにしても,焚書も本の力を恐れてのものだから,本の持つ力は本当に偉大だと改めて思った.
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ノンフィクション。ナチスが焚書により一億冊を超える本を消し去ったのに対し、アメリカは、一億四千万冊もの本を兵士に送り続けた。図書館員が始めた、全国から寄付された本を兵士に送る戦勝図書運動。そして、戦時図書審議会による、兵隊文庫の出版。ポケットに入る小さなペーパーバックである兵隊文庫を、兵士たちはいつも持ち歩き、読んでいた。要塞の中で、蛸壺の中で、入院中のベッドの上で、砲弾が飛び交う茂みの中で。兵隊文庫はいつでも兵士たちの力になった。戦争の是非は別として、本が持つ力を思い知らされた。
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ドイツ的ではないことを理由に、ナチス・ドイツは大量の書籍を
焚書にした。
禁書・焚書などと聞いたら、読書好きはそれだけで憤死してしま
いそうだ。なんてことをしてくれたんだ。本に罪はないだろう。
だが、戦争は思想の戦いでもある。思想を検閲したナチス・ドイツ
に対し、アメリカは戦地の兵士が自由に本を読めるようにと、これ
また大量の書籍を前線へ、基地へ、艦船へ、輸送船へと送り出した。
「兵士に本を届けよう」。最初は国民へ呼びかけ、書籍の寄付を募った。
それが大きな運動となり、戦時図書審議会が創設され、出版社、印刷
会社をも巻き込んで兵士たちのポケットに収まる軽量化された小型版
の書籍「兵隊文庫」が作られるようになった。
輸送船の中で、塹壕で、野戦病院のベッドの上で。兵士たちは本を
貪るように読んだ。それは唯一の娯楽だったから。軍隊に入るまで
読書の習慣がなかった者でも、兵隊文庫には夢中になった。
そして、少なくない兵士の復員後の生活に、戦争中に読んだ本が
影響を与えている。
過酷な戦場で、兵士たちは兵隊文庫に安らぎを、慰めを、本国と
の繋がりを感じていたんだろうな。読書好きとして嬉しく思うし、
このような「もう一つの戦争史」を発掘してくれ、作品として
まとめてくれた著者に感謝したい。
この兵隊文庫は日本の出版史にも大きな影響を与えている。進駐軍が
日本に持ち込んだ兵隊文庫を入手した出版社などが翻訳版を発行して
いるのだ。
「私たちは皆、本が燃えることを知っている──しかし、燃えても
本の命は絶えないということも良く知っている。人間の命は絶えるが、
本は永久に生き続ける。いかなる人間もいかなる力も、記憶を消す
ことはできない。いかなる人間もいかなる力も、思想を強制収容所
に閉じ込めることはできない。いかなる人間もいかなる力も、あら
ゆる圧政に対する人間の果てしなき戦いとともにある本を、この世
から抹殺できない。私たちは、この戦いにおける武器は本である
ことを知っている。」
兵士に書籍を送ることに賛意を示したルーズヴェルト大統領の
声明だ。
そう、本は永遠に生きる。ナチス・ドイツが焚書にした作品さえ、
兵隊文庫で復活し、それを携えた兵士たちがヨーロッパ戦線に
向かったのだから。
巻末には発行された兵隊文庫の一覧が掲載されている。翻訳大国
日本であるが、翻訳書が出ていない作品が多いのが残念だ。
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非常に興味深い内容だった。
「危険な読書」で荒俣宏さんが「ぶっ飛んだ」と言っていた本。
ナチス・ドイツは、焚書により思想統制をおこなった。それに対して、アメリカは「本こそが思想戦の武器である」として、兵士のために無料で「兵隊文庫」として本を送った。娯楽が少ない戦場で非常に人気があったという 。
兵士は、人を殺す訓練を受け、残虐行為を目の当たりにする生活の中、兵隊文庫を読むことで、まだ人間なのだ、と思うことができた。
読書は、凝り固まった脳を揉み解し、ストレスをどこか遠くへ投げ去ってくれる。そして再び困難を乗り越える勇気を与えてくれる。確かに、兵士にとってすごい武器だ。
アメリカという国の強さの理由が垣間見えた気がした。
「夏空白花」を読んだ直後だけに、なおさら感じた。
兵隊文庫は、戦時の紙の供給制限もあり、ポケットに入れられるくらい小さなペーパーバック版になった。持ち歩けていつでも読めることは武器としてとても重要だった。厚くて重いハードカバーは文庫本と違って、どうしても積読本になってしまう率が高いもの。
(まあ、「罪と罰」みたいに中身が厚くて重い本は、文庫本であってもなかなか読み進まないものではあるけれども…)
ところで、フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」は発売当初は失敗作とみなされていたが、兵隊文庫として改めて出版されて兵士の心をつかんだ。その評判が本土の人たちに伝わって広く読まれるようになり、アメリカを代表する文学作品になったのだという。
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本書は第二次世界大戦のドイツ、ミュンヘンにおいて、ナチスの命令により、彼らの政治思想に合わない、もしくは”退廃的”とされた書物が燃やされるシーンから始まる。そうしたナチスの蛮行へのアンチテーゼとして、書物の力を信じたアメリカでは、世界各国へと散らばった兵士たちに、軽くて頑丈な専用のペーパーバックを発行した。戦地での息抜きとして、このペーパーブックは大変愛好され、延べ1.4億冊が戦地へと送られたという。
本書はこうしたアメリカの戦地向けペーパーバック”兵隊文庫”がどのように誕生し、兵士たちがどのように読んでいたのかという事実をまとめたノンフィクションである。本書を読むまで、こうした取り組みの存在は全く知らなかったが、書籍の力を信じて、”兵隊文庫”を作成し続けたアメリカの図書館員たちの奮闘には心が揺さぶられる。
そして、歴史上、重要なのはそれまで書籍を読むという経験をしたことがなかった兵士たちが、戦地で優れた書籍をむさぼるように読むことで、彼らの基礎学力が押し上げられ、結果として復員後の市民生活においてもプラスの役割を果たしたという点である。
書籍をテーマにした戦争の歴史として、非常に面白い一冊。